トップ
>
杣
>
そま
ふりがな文庫
“
杣
(
そま
)” の例文
宇之さん、水のある処へ来ると茶があらア、向うに
杣
(
そま
)
だか何だか居るようだぜ、申し少々お願い申しますがね、私共は日光から
山越
(
やまごし
)
を
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
世
(
よ
)
の
譬
(
たとへ
)
にも
天生峠
(
あまふたうげ
)
は
蒼空
(
あをぞら
)
に
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
るといふ
人
(
ひと
)
の
話
(
はなし
)
にも
神代
(
じんだい
)
から
杣
(
そま
)
が
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れぬ
森
(
もり
)
があると
聞
(
き
)
いたのに、
今
(
いま
)
までは
余
(
あま
)
り
樹
(
き
)
がなさ
過
(
す
)
ぎた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
杣
(
そま
)
・猟夫などの徒の山言葉では米を草の実というと聞く。これと正反対に山中の水溜りに稲草という一種の水草を生ずる所がある。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この辺に住んでおりますのが
慓悍
(
ひょうかん
)
な信州人でして、その職業には、牧馬、耕作、
杣
(
そま
)
、炭焼——わけても牧馬には熱心な人民です。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
M君がお正月らしいという。足あとさして、「誰か登った人があるね」といえば「この上で、いま木を切っているから、その
杣
(
そま
)
でしょう」
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
▼ もっと見る
で、
杣
(
そま
)
しか通わなかった道に、湯治客の草鞋のあと
繁
(
しげ
)
く、今は、阿弥陀沢村の一戸にまあたらしい白木の看板が掲がって——御湯宿、藤屋。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
まだ夜の明けぬうちに
杣
(
そま
)
がやって来て、そこにある松の木を伐り倒す。巨幹は地ひびきして倒れると、またもとの静寂に
還
(
かえ
)
る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
なれど「れぷろぼす」は、
性得
(
しやうとく
)
心根
(
こころね
)
のやさしいものでおぢやれば、山ずまひの
杣
(
そま
)
猟夫
(
かりうど
)
は元より、往来の旅人にも害を加へたと申す事はおりない。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
第二中学の模様など聞いているうち船員が出帆旗を下ろしに来た。
杣
(
そま
)
らしき男が艫へ大きな
鋸
(
のこぎり
)
や何かを置いたので窮屈だ。
高知がえり
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「金沢の山役人が、山の登り口を
塞
(
ふさ
)
いで、里の者はたった一人も近づけないばかりでなく、
杣
(
そま
)
も炭焼も山は上れないだよ」
天保の飛行術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その男の商売は
杣
(
そま
)
で、五年ばかり木曽の方へ行っていたが、さびれた故郷でもやはり懐かしいとみえて、この夏の初めからここへ帰って来たのだそうです。
木曽の旅人
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
兵馬は十津川から追いかけて来る間、山中の
杣
(
そま
)
に聞くとこんなことを言いました——ある夜、一人の武士が、この
山間
(
やまあい
)
の水の流れで
頻
(
しき
)
りに眼を洗っていた。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其蔭に小さな小屋がけして、
杣
(
そま
)
が三人停車場改築工事の木材を
挽
(
ひ
)
いて居る。橋の下手には、青石峨々たる
岬角
(
かふかく
)
が、橋の袂から斜に川の方へ十五六間突出て居る。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其
蔭
(
かげ
)
に小さな小屋がけして、
杣
(
そま
)
が三人停車場改築工事の木材を
挽
(
ひ
)
いて居る。橋の
下手
(
しもて
)
には、青石
峨々
(
がが
)
たる
岬角
(
こうかく
)
が、橋の袂から
斜
(
はす
)
に川の方へ十五六間
突出
(
つきで
)
て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いまは越路の
杣
(
そま
)
やかた”などという類のものであるが、いうまでもなく、後人の作であり、“波の八島”の歌は、ほかの地方にも、伝わっているように聞いている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杣
(
そま
)
の入るべき
方
(
かた
)
とばかり、わずかに
荊棘
(
けいきょく
)
の露を払うて、ありのままにしつらいたる路を登り行けば、松と
楓樹
(
もみじ
)
の枝打ち交わしたる半腹に、見るから清らなる
東屋
(
あずまや
)
あり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
山ふところの小村には、
杣
(
そま
)
の焚く火が赤く見えて、死灰の闇に、風の響さえかすかなのが心細い。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
「火事の知らせかな。それにしても、
杣
(
そま
)
や炭焼きではなさそうだ。馬術に達した奴らしい」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あの
日
(
ひ
)
の
出
(
い
)
づる
邊
(
へん
)
、
我
(
わが
)
故國
(
ここく
)
では
今頃
(
いまごろ
)
は
定
(
さだ
)
めて、
都大路
(
みやこおほぢ
)
の
繁華
(
はんくわ
)
なる
處
(
ところ
)
より、
深山
(
みやま
)
の
奧
(
をく
)
の
杣
(
そま
)
の
伏屋
(
ふせや
)
に
到
(
いた
)
るまで、
家々
(
いへ/\
)
戸々
(
こゝ
)
に
日
(
ひ
)
の
丸
(
まる
)
の
國旗
(
こくき
)
を
飜
(
ひるがへ
)
して、
御國
(
みくに
)
の
榮
(
さかえ
)
を
祝
(
いわ
)
つて
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
であらう。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
政吉 (入口を閉め、おさんを睨み、上へあがらせ、土間の片隅を探し、
杣
(
そま
)
屋のつかう古いよきが手に触れるので、土間へ抛り出し、釘箱と金槌を持って、入口の戸を釘づけにする)
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
小さな
杣
(
そま
)
道が多くて、私にはすぐその地圖が何んの役にも立たない事を知つた。
黒髪山
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
この近在に住んでいるものは
杣
(
そま
)
で、半分ばくち打ち見たような人間ばかり……こういう人を相手に約束をして、五月という日限をした処で、当てにするものが無理だという位のものですから
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
さて、
杣
(
そま
)
をしてきらしめしに、その切り口より血潮は滴々と流れ出でたり。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
阿耨多羅三藐三菩提
(
あのくたらさんみやくさんぼだい
)
の佛たちわか立つ
杣
(
そま
)
に冥加あらせたまへ (傳教)
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
斧の
柄
(
え
)
を
手
(
た
)
握
(
にぎ
)
りもちて、肩かゞむ
杣
(
そま
)
の
工
(
たくみ
)
を
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
祈りこし我が立つ
杣
(
そま
)
の引かえて
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
わが立つ
杣
(
そま
)
に
冥加
(
みょうが
)
あらせたまえ
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
籾
(
もみ
)
臼
(
うす
)
つくる
杣
(
そま
)
がはやわざ 水
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
白き鹿立つ
杣
(
そま
)
の霧。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
然
(
しか
)
も
猶
(
なお
)
これは
真直
(
まっすぐ
)
に真四角に
切
(
きっ
)
たもので、およそ
恁
(
かか
)
る
角
(
かく
)
の材木を得ようというには、
杣
(
そま
)
が八人五日あまりも懸らねばならぬと聞く。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と云っている所へ雑木山から出て来たのは、その
杣
(
そま
)
の女房と見えて、歳ごろは二十七八で色白く鼻筋通り、
山家
(
やまが
)
には稀な女でございます。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
十六歳から六十歳までの
人別
(
にんべつ
)
名前を
認
(
したた
)
め、病人不具者はその旨を記入し、大工、
杣
(
そま
)
、
木挽
(
こびき
)
等の職業までも記入して至急福島へ差し出せと触れ回した。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
高田の藩中数十軒の
薪
(
まき
)
は、皆この山中より伐出す。
凡
(
およ
)
そ
奉行
(
ぶぎょう
)
より
木挽
(
こびき
)
・
杣
(
そま
)
の
輩
(
やから
)
に至るまで、相誓ひて山小屋に居る間、
如何
(
いか
)
なる怪事ありても人に語ること無し。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
御岳の
神領
(
しんりょう
)
であるから、
斧
(
おの
)
をいれる
杣
(
そま
)
もなかった。そこに、ご神刑の千
年
(
ねん
)
山毛欅
(
ぶな
)
とよぶ
大木
(
たいぼく
)
があった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杣
(
そま
)
か、大工の手つだいもして、こうした日曜には、やさしくも神の御前にぬかずくと見える。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
稀に残る家は門前草深くして庭上露
茂
(
しげ
)
し、
蓬
(
よもぎ
)
が
杣
(
そま
)
、
浅茅
(
あさぢ
)
が
原
(
はら
)
、鳥のふしどと荒れはてて、虫の声々うらみつつ、黄菊紫蘭の野辺とぞなりにける、いま、故郷の名残りとては
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ただ時どきに山中の
杣
(
そま
)
小屋などへ姿をあらわして、弁当の食い残りなどを貰って行くのである。時には人家のあるところへも出て来て、何かの食いものを貰って行くこともある。
くろん坊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
訝
(
いぶか
)
しげな眼で眺めて居つたが、やがて又初一念を思ひ起いた顔色で、足もとにつどうた
杣
(
そま
)
たちにねんごろな別をつげてから、再び森の熊笹を踏み開いて、元来たやうにのしのしと
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
杣
(
そま
)
の灯す
灯火
(
ともしび
)
か? それにしては火勢が強い。山賊どもの
焚火
(
たきび
)
かもしれない」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あくどい
蒼蠅
(
うるさ
)
さがわりに少なくて軽快な俳諧といったようなものが塩梅されているようである。例えばドライヴの途上に出て来るハイカラな
杣
(
そま
)
や
杭打
(
くいう
)
ちの夫婦のスケッチなどがそれである。
映画雑感(Ⅴ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
五の
爺
(
じい
)
さん……材木屋といっても、
杣
(
そま
)
半分の
樵夫
(
きこり
)
で、物のいいようも知らないといった
塩梅
(
あんばい
)
ですから、こういうものを相手にして掛け合って、話が結局旨く運ぶかどうか、甚だ危ぶまれましたが
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
阿耨多羅三藐三菩提
(
あのくたらさんみゃくさんぼだい
)
の仏たちわが立つ
杣
(
そま
)
に冥加あらせたまへ (
伝教
(
でんぎょう
)
)
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
斧
(
おの
)
の
柄
(
え
)
を
手握
(
たにぎ
)
りもちて、肩かゞむ
杣
(
そま
)
の
工
(
たくみ
)
を
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
世の
譬
(
たとえ
)
にも
天生
(
あもう
)
峠は
蒼空
(
あおぞら
)
に雨が降るという、人の話にも
神代
(
かみよ
)
から
杣
(
そま
)
が手を入れぬ森があると聞いたのに、今までは余り樹がなさ過ぎた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのへんに住んでいる人たちの仕事には、
飼馬
(
かいば
)
、耕作、
杣
(
そま
)
、炭焼きなどありますが、わけても
飼馬
(
かいば
)
には熱心で、女ですら馬の性質をよく暗記しているほどです。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これは上州
吾妻郡
(
あがつまごおり
)
の
四万
(
しま
)
の山口と申す所へ抜けてまいる間道で、
猟人
(
かりゅうど
)
か
杣
(
そま
)
でなければ通らん
路
(
みち
)
でございますが、
両人
(
ふたり
)
は身の上が怖いから
山中
(
さんちゅう
)
を怖いとも思わず
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
人これに逢えども害を
作
(
な
)
さず、大工の持つ
墨壺
(
すみつぼ
)
を事の
外
(
ほか
)
ほしがれでも、遣れば悪しとて与えずと
杣
(
そま
)
たちは語る。言葉は聞えず、声はひゅうひゅうと高く響く由なりといっている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
人の知らぬ
小太郎山
(
こたろうざん
)
の峡をぬけて、
奥
(
おく
)
へ奥へと二
里
(
り
)
ほどはいった
裏山
(
うらやま
)
、ちょうど、
白姫
(
しらひめ
)
の
峰
(
みね
)
と
神仙
(
しんせん
)
ヶ
岳
(
たけ
)
との三
山
(
ざん
)
にいだかれた
谷間
(
たにま
)
で、その渓流にそった
盆地
(
ぼんち
)
の一
角
(
かく
)
を
杣
(
そま
)
や
猟師
(
りょうし
)
は
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おれがあの時吹き出さなかったのは、我立つ
杣
(
そま
)
の
地主権現
(
じしゅごんげん
)
、
日吉
(
ひよし
)
の
御冥護
(
ごみょうご
)
に違いない。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
源兵衛は仕事の都合で山奥にも
杣
(
そま
)
小屋を作っていると、その小屋へかの黒ん坊が姿をあらわして、食いものをもらい、仕事の手伝いをする時には源兵衛の家へもたずねて来ることもあって
くろん坊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“杣”の解説
杣(そま)とは、古代から中世にかけて律令国家や貴族・寺社などのいわゆる権門勢家が、造都や建立など大規模な建設用材を必要とする事業に際して、その用材の伐採地として設置した山林のこと。後に一種の荘園として扱われるようになった。
(出典:Wikipedia)
杣
漢検1級
部首:⽊
7画
“杣”を含む語句
杣夫
杣道
杣人
杣山
杣男
杣人足
杣口
杣小屋
杣引
杣木
杣木山
杣木片
杣田