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きょく
ふりがな文庫
“
曲
(
きょく
)” の例文
「こん夜は、上総の身寄りの娘が来たので、見物につれて来た。……が、しらふで帰るのも
曲
(
きょく
)
がない、何かで、一杯もらいたいな」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
障子のうちの作者は、影法師の動きだけで十分に鶯たることを鑑定し得るのであろうが、それだけではいささか
曲
(
きょく
)
がない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
さて、ご
主君
(
しゅくん
)
は、そのほうのびわの
名声
(
めいせい
)
をおききになり、
今夜
(
こんや
)
はぜひ、そのほうの、とくいの
壇
(
だん
)
ノ
浦
(
うら
)
の一
曲
(
きょく
)
をきいて、むかしをしのぼうとされている。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
どうもだれかあの家に人がいて、どうやってもひきこなせないひとつの
曲
(
きょく
)
を、
始終
(
しじゅう
)
いじくりまわしているのですね、——それはいつもおなじ曲なのです。
影
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
一
曲
(
きょく
)
終
(
お
)
わると、すすり
泣
(
な
)
く
女
(
おんな
)
の
声
(
こえ
)
がしました。
翌日
(
よくじつ
)
この
店
(
みせ
)
をやめて、
故郷
(
こきょう
)
へ
帰
(
かえ
)
った
女
(
おんな
)
があります。
彼女
(
かのじょ
)
の
故郷
(
こきょう
)
が、
彼
(
かれ
)
の
歌
(
うた
)
が、
彼女
(
かのじょ
)
の
魂
(
たましい
)
を
呼
(
よ
)
びもどしたのです。
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
そういう
気持
(
きもち
)
をおしきって、全く
誠実
(
せいじつ
)
でないとわかっている
曲
(
きょく
)
を書くような時には、
気
(
き
)
をつけてかくしておいた。どう思われるだろうかとびくびくしていた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ふりかえって見ると、甲州街道の木立に見え隠れして、旗影と少年音楽隊の
曲
(
きょく
)
が次第に東へ進んで行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いま、抜刀を下目につけて、喪家の痩せ犬のように、
曲
(
きょく
)
もなく直立している左膳の姿を眼の前にして。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おれがききとれていたら、
爺
(
じい
)
さんはにこにこしながら、三つ
長
(
なが
)
い
曲
(
きょく
)
をきかしてくれました。おれは、お
礼
(
れい
)
に、とんぼがえりを七へん、つづけざまにやって
見
(
み
)
せました。
花のき村と盗人たち
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
なにか流行歌の一節らしいが、文句はそれだけ、
曲
(
きょく
)
もでたらめで、そのときによって違っていた。
ばちあたり
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして
重
(
おも
)
い
体
(
からだ
)
を
器用
(
きよう
)
に
調子
(
ちょうし
)
をとりながら、
綱渡
(
つなわた
)
りの一
曲
(
きょく
)
を
首尾
(
しゅび
)
よくやってのけましたから、
見物
(
けんぶつ
)
はいよいよ
感心
(
かんしん
)
して、
小屋
(
こや
)
もわれるほどのかっさいをあびせかけました。
文福茶がま
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
林のはずれを右へまがって、大通りへつづく
横町
(
よこちょう
)
まできたとき、
陽気
(
ようき
)
な
楽隊
(
がくたい
)
の
曲
(
きょく
)
が流れてきた。
美しき元旦
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
表題
(
ひょうだい
)
の心の独立と体の独立ということもその一つである。僕が友人に対して
俺
(
おれ
)
の
飯
(
めし
)
を食いながら反対するのはけしからんという一
喝
(
かつ
)
は、たしかに僕の
根性
(
こんじょう
)
の
曲
(
きょく
)
を
曝露
(
ばくろ
)
する。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
妖怪変化
(
ようかいへんげ
)
というものは、「
無
(
な
)
」いといってしまっては
曲
(
きょく
)
のないものにはちがいない。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
前に悪い
壻
(
むこ
)
を取って騙された時なんぞは、近所の人に
面目
(
めんぼく
)
ないとは思っても、親子共胸の底には
曲
(
きょく
)
彼
(
かれ
)
に在りと云う心持があったので、互に話をし合うには、少しも遠慮はしなかった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
もし人情なる
狭
(
せま
)
き立脚地に立って、芸術の定義を下し得るとすれば、芸術は、われら教育ある士人の
胸裏
(
きょうり
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
邪
(
じゃ
)
を
避
(
さ
)
け
正
(
せい
)
に
就
(
つ
)
き、
曲
(
きょく
)
を
斥
(
しりぞ
)
け
直
(
ちょく
)
にくみし、
弱
(
じゃく
)
を
扶
(
たす
)
け
強
(
きょう
)
を
挫
(
くじ
)
かねば
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俺らの芸をお名ざしで
御贔屓
(
ごひいき
)
だ、籠抜け一枚でも
曲
(
きょく
)
がねえと思うから、誰かこの仲間にお
相伴
(
しょうばん
)
をさせてやりてえと思うんだが、いずれを見ても道楽寺育ちだ、荒熊でいけず、阿房陀羅でいけず
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
単純に井戸の中では、あんまり
曲
(
きょく
)
がなさ過ぎる。あの用意周到な人物が、そんなたやすい場所へ隠して置く筈がない。君は呪文の最後の文句を覚えているでしょう。ホラ、六道の辻に迷うなよ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
余は
直
(
ちょく
)
は全く余に存して
曲
(
きょく
)
はことごとく余を捨てし教会にありとは断じて信ぜざるなり、余に欠点の多きは爾のしろしめすごとくにして余の言行の不完全なるは余の充分爾の前に白状する所なり
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
さて、ふたりは、
鏡
(
かがみ
)
の
間
(
ま
)
に出て行きました。そこで
夕飯
(
ゆうはん
)
の
食卓
(
しょくたく
)
について、王女づきの
女官
(
じょかん
)
たちがお
給仕
(
きゅうじ
)
に立ちました。そのあいだ、バイオリンだの、
木笛
(
きぶえ
)
だのが、百年まえの古い
曲
(
きょく
)
をかなでました。
眠る森のお姫さま
(新字新仮名)
/
シャルル・ペロー
(著)
「女が
玉簫
(
ぎょくしょう
)
を吹いて聞かせた。
曲
(
きょく
)
は
落梅風
(
らくばいふう
)
だったと思うが、——」
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同行二 でもあまり
曲
(
きょく
)
がなさ過ぎます。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
肯
(
あえ
)
て
霓裳
(
げいしょう
)
一
曲
(
きょく
)
を数えんや
無
(
いな
)
や
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この新年号第一回は、一ノ谷合戦から、次の屋島合戦へかかる半年の中間期を、義経の周囲から書き出してゆく“
序
(
じょ
)
の
曲
(
きょく
)
”となっている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勇
(
いさむ
)
ちゃんは、ハーモニカを
唇
(
くちびる
)
にあてて、
姉
(
ねえ
)
さんの
好
(
す
)
きだった
曲
(
きょく
)
を、
北風
(
きたかぜ
)
に
向
(
む
)
かって
鳴
(
な
)
らしていたのです。
青い星の国へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さて、多くのびわ
歌
(
うた
)
の中で、この法師がいちばんとくいだったのは、
壇
(
だん
)
ノ
浦
(
うら
)
合戦
(
かっせん
)
の一
曲
(
きょく
)
でありました。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
老人はその
曲
(
きょく
)
を
弾
(
ひ
)
いた。——クリストフは
祖父
(
そふ
)
と一しょに
作曲
(
さっきょく
)
したことが、ひどく
得意
(
とくい
)
だった。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
向
(
むこう
)
をむいてうんさえ発せざる以上は、その
曲
(
きょく
)
は夫にあって、妻にあらずと論定したる細君は、遅くなっても知りませんよと云う姿勢で
箒
(
ほうき
)
とはたきを
担
(
かつ
)
いで書斎の方へ行ってしまった。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
借金返えしも
渋面
(
じゅうめん
)
つくって、さっさと返えしては
曲
(
きょく
)
が無い。『人生は厳粛也、芸術は快活也。』
真面目
(
まじめ
)
に計算しましょう。
笑顔
(
えがお
)
で払いましょう。其為にこそ私共は生れて来、生きて来たのです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「だって、罪じゃあないか」
咎
(
とが
)
めるような美しい眼、「据物斬りを見せるといったくせに、自由の
利
(
き
)
かない人間をバッサリなんぞは
曲
(
きょく
)
がない」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
知
(
し
)
らないよ。」とクリストフは
悲
(
かな
)
しい声でいった。「ただ
美
(
うつく
)
しい
曲
(
きょく
)
を作りたかったんだよ。」
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
法師はなんともいえない気持にうたれながら、しずかに一
曲
(
きょく
)
をひきおわりました。
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
手を
膝
(
ひざ
)
に眼を
閉
(
と
)
じて聴く八十一の
翁
(
おきな
)
をはじめ、皆我を忘れて、「
戎衣
(
よろい
)
の
袖
(
そで
)
をぬらし
添
(
そ
)
うらん」と結びの一句
低
(
ひく
)
く
咽
(
むせ
)
んで、四絃一
撥
(
ばつ
)
蕭然
(
しょうぜん
)
として
曲
(
きょく
)
終るまで、息もつかなかった。
讃辞
(
さんじ
)
謝辞
(
しゃじ
)
口を
衝
(
つ
)
いて出る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「もし汝の武勇が秦朗に勝るものならば、司馬懿は
讒者
(
ざんしゃ
)
の言に
過
(
あやま
)
られたもので
曲
(
きょく
)
は彼にありといってよい。同時に、汝の言も信ずるに足りよう」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さ、
火焔独楽
(
かえんごま
)
の
曲
(
きょく
)
まわし、いよいよかかりますがそのまえに、ちょっと、おうかがいしたいことがございます。どうか、話してくださいまし」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いくども
口上
(
こうじょう
)
をやりなおして、
独楽
(
こま
)
を空に投げあげたが、水を降らせるどころか、
廻
(
まわ
)
りもしないで、石のように
曲
(
きょく
)
もなくボカーンと自分の頭の上へ落ちてくるばかりだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鈴慕
(
れいぼ
)
の
曲
(
きょく
)
。
夫
(
つま
)
を恋う
女鹿
(
めじか
)
の想いを
憐々
(
れんれん
)
と
竹枝
(
ちくし
)
のほそい孔から聞くような鈴慕の哀譜であった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、秀吉はふいに、つかつかと
彼方
(
かなた
)
の壁へ向って歩いて行った。そこには日本的な六
曲
(
きょく
)
屏風
(
びょうぶ
)
が二面だけ現わして立ててあった。彼は手をかけてその六曲全面を部屋へ
展
(
ひら
)
いた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いいえ、何も別段なことじゃないんですけれど、ちょうど、お隣で断わられた
虚無僧
(
ぼろんじ
)
さんに一
曲
(
きょく
)
吹いて貰いたいと思いますの。ご苦労だけどここへ呼び入れて下さいませんか」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おれの考えでは、いつも、同じ所で、色気もなく、飲んでいても、
曲
(
きょく
)
がない。ひとつ、純友の帰国を送りながら、一しょに、淀川を舟で下り、
江口
(
えぐち
)
の遊女をあいてに、盛んな送別会を
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
サ、はやくまわしてみせい、はやく
火焔独楽
(
かえんごま
)
の
曲
(
きょく
)
まわしをやってみせい
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鈴慕
(
れいぼ
)
の
曲
(
きょく
)
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曲
常用漢字
小3
部首:⽈
6画
“曲”を含む語句
委曲
屈曲
曲節
折曲
彎曲
謡曲
曲事
迂曲
曲線
大曲
曲尺
序曲
曲芸
戯曲
一曲
曲舞
行進曲
部曲
小曲
曲者
...