手筈てはず)” の例文
そこで外科医二十名が立会のうえで、あなたを地面に寝かせ、あなたの眼球に、鋭く尖った矢を、何本も射込む手筈てはずになっています。
翌々日、二人は、手筈てはずしめし合わせて、向島から竹屋へ渡舟わたった。二人の後から五、六名の捕手とりてが、平和な顔をして、歩いて行った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか、じゃあ一ととおり話しておこう、飛行機はあす、未明に出発するが、向うへ行ってからの手筈てはずも大体ついているから安心だ」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それは椋島むくじま技師が陸軍大臣と打合わせた手筈てはずにより、投獄と世間をいつわって実はひそかに某所ぼうしょで作りあげたフォルデリヒト解毒げどく瓦斯であった。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
庭番を召喚の手筈てはずをするのも、やっとこさだったくらいですから(多分あなたも通りすがりに、庭番に気がおつきになったでしょうな?)
吉兵衛の遺書と一緒に、その仔細しさいを大目付衆まで、夜の明けないうちに届け出る手筈てはずができているんだぜ。どうだ御用人。いやさ、木原さん
跡部は荻野等を呼んで、二にんとらへることを命じた。その手筈てはずはかうである。奉行所に詰めるものは、づ刀をだつして詰所つめしよ刀架かたなかけける。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
仕事は余りに楽過ぎて彼の器用な小手先を使う機会のないのは如何いかにも残念だった、でも宵から今に至るまで手筈てはずは万事好都合に運んでいた。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
料理屋へは打合せに行く、三吉の方へは電報を打つ、この人も多忙いそがしい思いをした。その電報が行くと直ぐ三吉も出て来る手筈てはずに成っていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何か、直ぐに連れてここへ来る手筈てはずじゃった、猿は、留木とまりぎから落ちて縁の下へ半分身体からだ突込つッこんで、斃死くたばっていたげに云う……嘘でないな。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして鶴子が旅行免状の事は至急運びがつくように大使館から直接その筋の役所へ交渉してもらう手筈てはずだという事であった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
じつ神界しんかいから、あめらせるにいては、同時どうじかみなりほうせてやれとのおたっしがまいったのじゃ。それでいまその手筈てはずをしているところで……。
こう云う事もあろうかと考えて、しも時間に余裕があったら、その間に先へ廣小路の方へ行って来ようと、あらかじ手筈てはずめて置いたのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その先輩のお宅で嫁と逢って、そうして先輩から、おさかずきを頂戴して、嫁を連れて甲府へ帰るという手筈てはずであった。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
日が暮れてからイエスはひそかにベタニヤを出で、十二弟子とともに都に入り、かねて手筈てはずをしておいた家に来られた。
土方は手勢てぜいをまとめて清川に向い、まんいち高橋その他の邪魔立てもあらば、机竜之助と岡田弥市とがこれに当るという手筈てはずをここにきめました。
この日のため、主君のお帰りになる日のために——ほとんど二年に近い留守の毎日毎日を、こういう手筈てはずを考え、ととのえていたのかと思われる。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
源兵衛はやがて御堂へ来る手筈てはずで、此の道を来ることになっている。わしは僧侶のことじゃ。恋の手引きは出来ぬ。
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
残るはわずかに邸の後片付けを終ってひとまず国へ引き揚げる手筈てはずになっていたジャヴェリとカパディア氏とあと三人ばかりの印度人のみであったが
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
もし、万一お間違がありますと、手前共の方では、ぐ相当な法律上の手段に訴えるような手筈てはずに致しておりますから。後でおうらみなさらないように。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
差出せば次右衞門は此刀このかたなを申請あつく禮をのべいとまを告て門前迄いで先々まづ/\仕濟しすましたりとほつと一いきついて飛が如くに役宅へ歸り此趣このおもむきを越前守へ申上彌々いよ/\召捕めしとる手筈てはず
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くにかへつて田地でんちを買ふ約束をしたり、いへたて木材きざいを山からすやうにしたり、ちやんと手筈てはずけて江戸えどかへつてると、塩原多助しほばらたすけんでゐた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そうですか、それでは僕が出て行ったあとも、引きつづいて、ここへ取寄せるように手筈てはずしておきましょう」
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
クララが今夜出家するという手筈てはずをフランシスから知らされていた僧正は、クララによそながら告別を与えるためにこの破格な処置をしたのだと気が付くと
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
一人の若い偉大なフランスの芸術家を圧倒するために、手筈てはずが定められ奸計かんけいがめぐらされたと報じていた。
ところが停車場にはどういう手筈てはずになっていたのか、素子のほかに大使館づき陸軍武官の藤原威夫が来た。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
翌日学校へいくとなにごともなかった、正午の食事がすむと委員が校長に面会をこう手筈てはずになっている。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
何んでも早く青木から身受けの金を出させようと運動しているらしく、先刻もまた青木の言いなり放題になって、その代りに何かの手筈てはずめて来たものと見えた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
彼は三日の後には退院すべき手筈てはずなりければ、今は全くえて務を執るをも妨げざれど、事のきはめて不慮なると、急激なると、瑣小さしようならざるとに心惑こころまどひのみせられて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「君にはほんとうに気の毒でした。実はまだ手筈てはずだけで、表向おもてむきにしなかったものだからねえ……」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
呵々かか大笑、がやがややっているところへ、ノックもなしにドアが開いて、のそりとはいって来た人物を見ると、長身、筋肉的、砂色の毛髪、手筈てはずによれば、ソフィアで
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
アハハハそうだろう、今直ぐ広海子爵の処へ往って洋行の手筈てはずめて来給え。向うの方はモー出来ている。この上は万事の打合せをして洋行の期日を極めるばかりだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
兼ねて用意のほしひなどで腹をこしらえ、お文庫の残った上はその壁にせめて小屋なりと差掛け、警固いたさねばなりませんので、寄り寄りその手筈てはずを調えておりました所
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
しまいには病院の入口から病室まであきあきするほど長い廊下のところどころに人が立って××さんの姿がみえると同時に出来るだけはやく病室へしらせる手筈てはずになった。
妹の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
もとより周到な犯人のことですが、予定を外れた緊急の場合も予想して、その時の手筈てはずも立てていたので、千草殺しはなんなく片づいた。と、思わざる失策に気づいたのです。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
メレジスの小説にこんな話がある。——ある男とある女がしめし合せて、停車場ステーションで落ち合う手筈てはずをする。手筈が順に行って、汽笛きてきがひゅうと鳴れば二人の名誉はそれぎりになる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いよ/\といふた。荷物にもつといふ荷物にもつは、すつかりおくられた。まづをとこ一足ひとあしきに出發しゆつぱつして先方せんぱう都合つがふとゝのへ、それから電報でんぱうつて彼女かのぢよ子供こどもぶといふ手筈てはずであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
出発に先立って、彼は友の葬儀について修道院の僧たちとしかるべき手筈てはずをととのえた。友はヴルツブルクの寺院に埋葬されることになったが、その近くには彼の名高い親戚がいた。
捕卒は家の前に立って手筈てはずを定め、門を開いて入って往った。扉は無くなりのきは傾き、しきがわらの間からは草が生え茂って庭内は荒涼としていて、二三日前に見た家屋の色彩はすこしもなかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そしていろいろ知恵をしぼって、お爺さんを呼び出す手筈てはずをきめました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
同じ武家の姫となぞらえて迎えるような手筈てはずは、とうに、はぎ野は知っているはずだった、母からの衣裳や髪化粧の具、うちかけかさねの数々もひそかに母からわたされていることを知っている経之は
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そうこうしているうちにがあけましたが、その日、私は町へ行く手筈てはずになっていたのです。しかし私の心はすっかり滅茶滅茶になっていて、到底商売上の取引などは出来そうにもありませんでした。
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
おそくも本日午前十時までに、槍下で、昨日温泉から直接槍に向うた友人と出逢う手筈てはずだ、というていたが、今後なお五時間もかからねば、目的地に達する事が出来ぬのに、はや定刻を過ぎているので
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
なおまた討入って勝負のつかぬうちに御検使が出張になった場合、それに応ずる口上にいたるまで、すべて十二箇条にわたって残るくまなく討入の手筈てはずを定めた上、最後に退口のことを念頭に置いては
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
手筈てはずみなんだ、のこるは貴僧こなたおこなうてもら神聖しんせいしきばかり。
そしてそれを実行する細かい手筈てはずを二人で決定した。
「そんな手筈てはずにしておこうじゃないか」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
これから俺たちと手筈てはずをあわして、阿波の本国へ忍び込んで、蜂須賀家の内部をすっかり探りきわめてしまおうという大望のある人だ
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「本当だとも。そんな手筈てはずがついていなければ、僕たちのような弱い二人で、なぜこんなあぶない塔の中へはいりこむものか」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鏖殺みなごろしにしようという曲者ですから、一筋縄では行きません、もう一刻経てばこの家にいる曲者と、外にいる仲間と、一ぺんに縛る手筈てはずが出来ております