御手みて)” の例文
聖の御頭みつむりかすかに後光をはなち、差しのべたまへるふたつの御手みての十の御指は皆輝きて、そのたなひらの雀子さへも光るばかりに喜び羽うち
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ねがわくはわが求むる所を得んことを……願くは神われをほろぼすをしとし御手みてを伸べて我を絶ち給わんことを」と彼はひたすらに死をねがう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
じっさいの政治、権勢、栄位欲をみたす君王ノ座は、遠い源平時代以前から“院ノ御所”にいます上皇、或いは法皇の御手みてにあったのである。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(死に場所を選びつつ)今私の霊をあなたの御手みてたくしまする。(俊寛の死骸を負いたるまま岩の上より海に身を投げる)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おお、そうですぞ、おまえさんの正直な美しい恋のまことが、やがてきっと、大きな御手みてにみちびかれてゆきまする。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「聖なる大殉教者ゲオルギイ。この肉体はあなたの御手みてにお任せします。だが魂は——いいや、いやです、厭です。」
ヂュリ 巡禮じゅんれいどの、作法さはふかなうた御信仰ごしんかうぢゃに、其樣そのやうにおッしゃッては、そのいかァいどく聖者せいじゃがたにも御手みてはある、その御手みてるゝのが巡禮じゅんれい接吻禮キッスとやら。
「遠き門出の記念として君が御手みてにまいらす。朝夕つちかいしこの草にいこう思いを汲ませたもうや」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
または徳川の御手みてに属しけるみぎり甚太郎幼稚にして孤児となるを憐れみ、祖父高坂対島つしま甚太郎を具して摂州芥川に遁がれ閑居せし節、日本回国して宮本武蔵この家に止宿とまる。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
多くの者は救いを自然の御手みてに委ねようとはしない。そうして自らの力において、自然の御業みわざを奪おうとしている。作られたものに美が薄いのは、心が自然にそむいた報いである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
取らしょうと、笛の御手みてに持添えて、濃い紫の女扇を、袖すれにこそたまわりけれ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可思議なる神の御手みては、我をきておん身の生涯の祕密の裡に立ち入らしめ給ひぬ。されど心安くおもひ給へ。われは沈默を死者に誓ひしが故に、ロオザにだに何事をも語らざりき。
うぐいす駒鳥こまどりと、大麦の冠つけし神々と、ひたいみどり夕蝉ゆうせみと、いと高くいと優しく、また美しく静かなる、女神 Pomoneポモン御手みてによりて、匂はされたる大空の見渡す晴光はれと、共に踊らん。
食国をすくにとほ御朝廷みかどに、汝等いましらまかりなば、平らけく吾は遊ばむ、手抱たうだきて我は御在いまさむ、天皇すめらがうづの御手みてもち、掻撫かきなでぞぎたまふ、うち撫でぞぎたまふ、かへり来む日あいまむ
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、世界を祝福する御手みてからき散らし給ふ薔薇ばらの花、羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、その金色こんじきしんあかがねづくり、そのあだなるりんの上に、露とむすぶ涙は基督クリスト御歎おんなげき、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
御手みてもろともそよ片山のこがらしにまぎれ消ぬべき我ならばとも
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
細きわがうなじにあまる御手みてのべてささへたまへな帰る夜の神
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
君が母はやがてわれにも母なるよ御手みてとることを許させたまへ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これには代へじ、「慈悲」の御手みては祕むれど、銀のはかりざを
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
御手みてそへて悲しみ給へ野かざるを戀なき人の十九夏草
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
食国をすくにの とほ朝廷みかどに 汝等いましらし 斯くまかりなば 平らけく 吾は遊ばむ 手抱たうだきて 我は御在いまさむ 天皇すめらが うづの御手みてち 掻撫かきなでぞ ぎたまふ うち撫でぞ 労ぎたまふ 還り来む日 相飲まむぞ この豊御酒とよみき
君臣相念 (新字旧仮名) / 亀井勝一郎(著)
尊き御手みて御足みあしを柔かに拭ひまつりし
椅子にいる神樣が御手みてずから
我々に御手みてを伸ばされる。
きのふは、御手みて淺間野あさまの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
御手みてに収めんなどとするわけはない。武力がなくば出来ぬことだ。六波羅飛脚は、どうかしておる。ばかな取沙汰ではあるぞ。事あらだてるな
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我らより熱誠なるいのりの出ずる時、神はその大なる御手みてを伸ばして海を制し給う。かくて我らのうちの海は止まるのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
釋迦佛は靈山れいざんより御手みてをのべて、御頂おんいたゞきをなでさせ給ふらん、南無妙法蓮華經南無妙法蓮華經。
多くの者は救いを自然の御手みてに委ねようとはしない。そうして自からの力において、自然の御業を奪おうとしている。作られたものに美が薄いのは、心が自然にそむいた報いである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
熱あるものは、楊柳ようりゅうの露のしたたりを吸うであろう。恋するものは、優柔しなやか御手みてすがりもしよう。御胸おんむねにもいだかれよう。はた迷える人は、緑のいらかあけ玉垣たまがき、金銀の柱、朱欄干しゅらんかん瑪瑙めのうきざはし花唐戸はなからど
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寂しく貧しくましますが故、へりくだり、常に悲しくましましき。いといと悲しくましましき。それ故にすゑ遂に神を知らしき。そのひじり道のべに立たしたまへば雀子は御後みあとべ慕ひ、御手みてにのり、肩にとまりき。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕月夜さくらがなかのそよ風に天女さびたる御手みてとりわし
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
御手みてにはわれがしんざう御腕おんかひなにはあてやかに
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
神の御手みてに返されしなりけり。
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
……母者ははじゃは地蔵尊を信仰なされ、わしも地蔵尊を身の守りにして来たが、しょせん地蔵菩薩ぼさつ御手みてでも救いがたい阿修羅の申し子だったとみえる
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして宇宙人生のすべての出来事はその究竟的原因を聖旨せいしに置くと見るを正しとするものである。しかり万事万物の本源を握る者は神の御手みてである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
立處たちどころ手足てあしあぶるべく、炎々えん/\たる炭火すみびおこして、やがて、猛獸まうじうふせ用意よういの、山刀やまがたなをのふるつて、あはや、そのむねひらかむとなしたるところへ、かみ御手みてつばさひろげて、そのひざそのそのかたそのはぎ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
寂しくて貧しきが故、へりくだり、常に悲しくましましき。いといと悲しくましましき。それ故に、すゑ遂に神を知らしき。その聖道のべに立たしめたまへば、雀子は御後みあとべ慕ひ、御手みてにのり、肩にとまりき。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
世に君の御手みてえて今は死なむとぞ昼夜感じ三とせのへぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
御手みてにはわれがしんぞう御腕おんかひなにはあてやかに
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
じつは、かねて意中をしたためおいたこの一書を、折あらば、資朝卿の御手みてへ渡さんものと、道中、隙を窺うていたが、さて警固の眼の隙もない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さざなみの寄するなぎさに桜貝の敷妙しきたえも、雲高き夫人ぶにん御手みて爪紅つまべにの影なるらむ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あめの使に御手みてとられまし
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と、にわかにみことのりして、御手みて彫弓ちょうきゅう金鈚箭きんひせんをたずさえ、逍遥馬しょうようばに召されて宮門を出られた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十八公麿は、ふたつの小さいを、ぱちとあわせて、笑くぼをうかべた。子どもの掌は、菩薩ぼさつ御手みてのように丸ッこいものである。人々は、思わずにこと微笑をつりこまれた。すると——
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかなる職業のていにも、貴賤のすがたにけじめなく、ありのままに、いるがままの生活くらしの形にても、仏の御手みては、本願へ導き給うぞかしと、仰せられるので、いと易い道であるがゆえに
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおきな御手みて
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)