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幌
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ほろ
ふりがな文庫
“
幌
(
ほろ
)” の例文
老栓はなおも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していると、黒い人は提灯を引ッたくって
幌
(
ほろ
)
を下げ、その中へ饅頭を詰めて老栓の手に渡し、同時に銀貨を
引掴
(
ひっつか
)
んで
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
けれども青い
幌
(
ほろ
)
を張った、
玩具
(
おもちゃ
)
よりもわずかに大きい馬車が小刻みにことこと歩いているのは幼目にもハイカラに見えたものである。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
粗末な箱型をしたものに、
幌
(
ほろ
)
とはほんの名ばかりの、継ぎはぎだらけの
鼠
(
ねずみ
)
いろの布を
被
(
おお
)
っただけのものである。
馭者台
(
ぎょしゃだい
)
なんぞもない。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
月光を受けて銀のように、自動車の
幌
(
ほろ
)
は光っている。往来には一人も人がいない。無人の街路をまっしぐらに、自動車は走って行く。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
胴中には青竹を
破
(
わ
)
りて曲げて環にしたるを
幾処
(
いくところ
)
にか入れて、竹の両はしには
屈竟
(
くっきょう
)
の
壮佼
(
わかもの
)
ゐて、支へて、
膨
(
ふく
)
らかに
幌
(
ほろ
)
をあげをり候。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
兎も角も変装を済ませた私は、
異形
(
いぎょう
)
の
風体
(
ふうてい
)
を人力車の
幌
(
ほろ
)
に隠して、午後八時という指定に間に合うように、秘密の集会場へと出かけました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
遠くけたたましい車輪の音がするので振り返って見ると、目黒の方から
幌
(
ほろ
)
をかけた人力車が十台ばかり、勢いよく駆けて来る。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
余は寝ながら
幌
(
ほろ
)
を打つ雨の音を聞いた。そうして、
御者台
(
ぎょしゃだい
)
と幌の間に見える窮屈な空間から、大きな岩や、松や、水の断片をありがたく拝した。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
幌
(
ほろ
)
をうしろへ落としたらどうです。そうして、こうやって始終人力車に乗って私につきまとうのは、いったいどういうわけだか話してください」
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
いずれも、
幌
(
ほろ
)
が被せられていて、顔は見えない。幌の小さいセルロイド窓から、金五郎の白い繃帯だけがちらちらした。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
其処
(
そこ
)
へ美術学校の方から車が二台
幌
(
ほろ
)
をかけたのが出て来たがこれもそこへ止って何か云うている様子であったがやがてまた
勧工場
(
かんこうば
)
の方へ引いて行った。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と云いも
了
(
おわ
)
らぬうちに
山勘横町
(
やまかんよこちょう
)
の角から一台の速力の早いらしい
幌
(
ほろ
)
自動車が出て来て私達の前でグーッと止まった。
先刻
(
さっき
)
の軍艦色のパッカードである。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
はばかるように車の
内外
(
うちそと
)
から声がかわされた。
幌
(
ほろ
)
にのしかかって来る風に抵抗しながら車は
闇
(
やみ
)
の中を動き出した。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
幌
(
ほろ
)
をかけていない車の上は寒いので、わたしは両袖をかきあわせながら
俯向
(
うつむ
)
きがちにゆられて行った。わたしはこの年の四月に父をうしなったのである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
暗い外で客と話している
俥夫
(
しゃふ
)
の大きな声がした。間もなく、
門口
(
かどぐち
)
の
八
(
や
)
つ
手
(
で
)
の葉が
俥
(
くるま
)
の
幌
(
ほろ
)
で揺り動かされた。俥夫の持った
舵棒
(
かじぼう
)
が玄関の石の上へ降ろされた。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
四人乗りだが、きょうだけは六人満載して、
幌
(
ほろ
)
のうえに女がふたりずつ腰かけてる。一行正式の
西班牙
(
スペイン
)
装束だ。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
生糸を積んだ
幌
(
ほろ
)
荷馬車の前を横ぎっても、誰も、そのすがたを、特に、不生産的
冷蔑
(
れいべつ
)
な眼で、見るものはない。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幌
(
ほろ
)
を
弾
(
は
)
ねた笹村の
腕車
(
くるま
)
が、
泥濘
(
ぬかるみ
)
の深い町の入口を行き悩んでいた。空には暗く雨雲が垂れ下って、屋並みの低い町筋には、湯帰りの職人の姿などが見られた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
椋島
(
むくじま
)
技師は大臣のさし廻してくれた
幌
(
ほろ
)
深
(
ふか
)
い自動車の中に身を
抛
(
な
)
げこむと、始めて晴々しい笑顔をつくった。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そとは雨がぽつぽつ降っていて、ひどい暗さで、ただパンテレイモンの
嗄
(
しわが
)
れた咳をたよりに、馬車のありかの見当がつくほどだった。そこで馬車に
幌
(
ほろ
)
をかけた。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
日の
映
(
あた
)
った往来には、お房の遊友達が立留って、ささやき合ったり、
眺
(
なが
)
めたりしていた。黒い
幌
(
ほろ
)
を掛けて静かに引いて来た車は、その娘達の見ている前で停った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたし
)
、
北海道
(
ほくかいだう
)
に
行
(
い
)
つても、
誰
(
た
)
れにも
知
(
し
)
つた
人
(
ひと
)
に
逢
(
あ
)
はふとは
思
(
おも
)
ひませんわ。
私
(
わたし
)
はたゞそつと
自分
(
じぶん
)
が
前
(
まへ
)
に
殘
(
のこ
)
した
足跡
(
あしあと
)
を、
車
(
くるま
)
の
幌
(
ほろ
)
の
間
(
あひだ
)
からでも
見
(
み
)
てくれゝばいゝんですもの。
追憶
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
あのときにはおくみは生みの母にでも別れて出るやうに悲しくて、
幌
(
ほろ
)
の中でおろ/\と泣いて行つた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
深々と
幌
(
ほろ
)
をかけた車の中で、帰路を急がせる切ない思いをして、母はしっかり幼児を抱えている。花火見物の最中に天候が一変してひどい雷雨となったからである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
小畑信二は薄暗いトラックの
幌
(
ほろ
)
のなかで、あとへあとへと動く風景を見ていた。黒みをおびた沿道の松の枝が、ゆったりと波うつように揺れながら急速に小さくなる。
その一年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その後に、二臺の
幌
(
ほろ
)
をはねた馬車が續いてゐた。ひら/\と飜る
面紗
(
ヴェール
)
や搖れ動く帽子の
羽毛
(
うまう
)
などがその乘物に一杯だつた。
騎手
(
きしゆ
)
の中二人は若い元氣のよさゝうな紳士だつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しめっぽい匂いのする
幌
(
ほろ
)
の上へ、ぱらぱらと雨の注ぐ音がする。疑いもなく私の隣りには女が一人乗って居る。お
白粉
(
しろい
)
の薫りと暖かい体温が、幌の中へ蒸すように
罩
(
こも
)
っていた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
相乗りの
幌
(
ほろ
)
かけ車に姿をつつみて、開きたる門を真直に入りて玄関におろしければ、
主
(
ぬし
)
は男とも女とも人には見えじと思ひしげなれど、乗りゐたるは三十ばかりの気の
利
(
き
)
きし女中風と
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
どうやら雨がやってきそうだが、なにかまいませんよ、
幌
(
ほろ
)
をおろしますからな……
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
婆「
然
(
そ
)
うでございますか、それじゃアはるや、大急ぎで車を
誂
(
あつら
)
えなよ、仕立は高いから四つ角へ往って綺麗そうな車を見つけて来な、
幌
(
ほろ
)
の漏らないようなのを、大急ぎで早く往って来な」
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
幌
(
ほろ
)
の中で聞いている京都の春雨の音は静かであったが、それでも賑やかな通に出ると俥の
轍
(
わだち
)
の音が騒々しく行き
交
(
まじ
)
ってやわらかみのある京都言葉も、
慌
(
あわただ
)
しげに強く響いて来るのであった。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
予は持て居た
双眼鏡
(
そうがんきょう
)
を
翳
(
かざ
)
した。前なる
透
(
す
)
かし
幌
(
ほろ
)
の内は、丸髷に結って
真白
(
まっしろ
)
に塗った美しい若い婦人である。後の車には、
乳母
(
うば
)
らしいのが
友禅
(
ゆうぜん
)
の美しい着物に包まれた女の児を
抱
(
だ
)
いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
暗い
幌
(
ほろ
)
のなかの乗客の眼がみな一様に前方を見詰めている事や、泥除け、それからステップの上へまで溢れた荷物を麻繩が車体へ縛りつけている恰好や——そんな一種の物ものしい特徴で
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
雨の
小息
(
こや
)
みもなく降りしきる響を、狭苦しい人力車の
幌
(
ほろ
)
の中に聞きすましながら、
咫尺
(
しせき
)
を弁ぜぬ暗夜の道を行く時の情懐を述べた一章も、また『お菊さん』の書中最も
誦
(
しょう
)
すべきものであろう。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それから
半衿
(
はんえり
)
のかかった着物を着た、お茶屋のねえさんらしいのが、なにか近所へ用たしにでも出たのか、小走りにすれ違った。まだ
幌
(
ほろ
)
をかけたままの人力車が一台あとから駈け抜けて行った。
普請中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
下ろした
幌
(
ほろ
)
のセルロイドの窓から十一月の鈍い午後の日光のうちに、
澱
(
よど
)
んだように立ち並んでいる、屋根の低い朽ちかけているような建物を見たときに、それが名高い色街であるというだけに
島原心中
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私は
幌
(
ほろ
)
の
内
(
うち
)
に小さくなっていますと、
車夫
(
くるまや
)
はぼとぼとぼとぼと引いて行きましょう、
饅頭笠
(
まんじゅうがさ
)
をかぶってしわだらけの
桐油合羽
(
とうゆがっぱ
)
をきているのですが、雨がたらたらたらたら合羽から落ちましてね
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
芸者が黒い人力車に乗って私を追い越す。うすい
幌
(
ほろ
)
の中でふりかえる。
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
側欄がついて
幌
(
ほろ
)
がない広い荷車で、四つの車輪と六頭の馬とを持っており、鉄の
釜
(
かま
)
や鋳物の
鍋
(
なべ
)
や
鉄火鉢
(
てつひばち
)
や鉄鎖など音のする荷物を積んで、中には病人らしい数人の男が縛られたまま長く寝ていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
馬車の
幌
(
ほろ
)
の下の二人に湿気が
沁
(
し
)
み通ってきた。二人はたがいにひしと寄り添って黙っていた。ほとんど顔をも見合わさなかった。昼とも夜ともつかない妙な薄ら明かりに、二人は包み込まれていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と、不意に目の前の菊坂を、金色の造花や、銀色の造花を持つた人足が通つて行くのが見えた。続いてあとから、普通の花を持つた葬儀社の人足や、
幌
(
ほろ
)
をかけた
俥
(
くるま
)
などが幾つも幾つも通つて来たのだ。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
うれしくてうれしくて
吾
(
あ
)
はなきにけり
幌
(
ほろ
)
ををろせといひにけるかな
小熊秀雄全集-01:短歌集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
瘠馬にひかれたその馬車は黒い
幌
(
ほろ
)
からしずくをたらしながら
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
風を含み
膨
(
ふく
)
れる体を
帆
(
ほ
)
に
幌
(
ほろ
)
とでも讃えたのでなかろうか。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
黄
(
き
)
にかがやける枯草の野を
幌
(
ほろ
)
なき馬車に乗りて
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
幌
(
ほろ
)
をかけた車はしずかに街道をきしって行った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
幌
(
ほろ
)
馬車となるとそうは行かない。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
何とも
応
(
こた
)
えるものがない。車は
千筋
(
ちすじ
)
の雨を、黒い
幌
(
ほろ
)
に
弾
(
はじ
)
いて一散に飛んで来る。クレオパトラの
怒
(
いかり
)
は
布団
(
ふとん
)
の上で
躍
(
おど
)
り上る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俥
(
くるま
)
は
幌
(
ほろ
)
を
深
(
ふか
)
くしたが、
雨
(
あめ
)
を
灌
(
そゝ
)
いで、
鬱陶
(
うつたう
)
しくはない。
兩側
(
りやうがは
)
が
高
(
たか
)
い
屋並
(
やなみ
)
に
成
(
な
)
つたと
思
(
おも
)
ふと、
立迎
(
たちむか
)
ふる
山
(
やま
)
の
影
(
かげ
)
が
濃
(
こ
)
い
緑
(
みどり
)
を
籠
(
こ
)
めて、
輻
(
や
)
とともに
動
(
うご
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時庭木の若葉の間に二つの車の
幌
(
ほろ
)
が見えた。幌は垣の上にゆらめきながら、たちまち目の前を通り過ぎた。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“幌”の解説
幌(ほろ)(en: tarpaulin 、en: tarp )は、風雨や砂ぼこりなどを防ぐために車両などを覆うための防水布。トラック、オープンカー、鉄道車両、乳母車、馬車などに用いられ、これを取り付けた馬車は幌馬車と呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
幌
漢検準1級
部首:⼱
13画
“幌”を含む語句
幌馬車
札幌
幌車
幌向
幌泉
野幌
幌型
浦幌
幌俥
幌内
美幌
幌蚊帳
濡幌
幌骨
書幌
札幌農学校
札幌麦酒
黄幌
蚊帳幌
透幌
...