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小夜
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さよ
ふりがな文庫
“
小夜
(
さよ
)” の例文
鉄砲口の
袷半纏
(
あわせばんてん
)
に
唐縮緬
(
とうちりめん
)
のおこそ頭巾を冠った少女が、庭の塵っ葉を下駄に
蹴分
(
けわ
)
けて這入って来た。それはこの家の娘お
小夜
(
さよ
)
であった。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかもその際私の記憶へ
鮮
(
あざやか
)
に生き返って来たものは、当時の私が妻の
小夜
(
さよ
)
を内心憎んでいたと云う、
忌
(
いま
)
わしい事実でございます。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
只
天
(
あま
)
とぶ
雁
(
かり
)
の
小夜
(
さよ
)
の枕におとづるるを聞けば、都にや行くらんとなつかしく、
暁
(
あかつき
)
の千鳥の
洲崎
(
すさき
)
にさわぐも、心をくだく
種
(
たね
)
となる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「自害したのはお
小夜
(
さよ
)
といってな。三年前に死んだ時は十八だった。両親には過分のお手当を下すったはずだ。
下谷
(
したや
)
で安楽に暮しているよ」
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
上のお
小夜
(
さよ
)
は
楓
(
かえで
)
のやうな
淋
(
さび
)
しさのなかに、どこか
艶
(
なま
)
めかしさを秘めてゐた。妹のお里はどこまでも派手であでやかであつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
ふと、こんな
小夜
(
さよ
)
のあらしは過ぎたものの、覚一は何か
索然
(
さくぜん
)
としたここちで、もう琵琶を取りあげる気にもなれないでいた。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
色白く、傾く月の影に生れて
小夜
(
さよ
)
と云う。母なきを、つづまやかに暮らす親一人子一人の京の
住居
(
すまい
)
に、
盂蘭盆
(
うらぼん
)
の
灯籠
(
とうろう
)
を掛けてより五遍になる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その金谷の宿から少し
距
(
はな
)
れたところに、日坂峠というのがあって、それから例の
小夜
(
さよ
)
の
中山
(
なかやま
)
に続いているんですが、峠の
麓
(
ふもと
)
に一軒の休み茶屋がありました。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『
小夜
(
さよ
)
嵐』三に、ぶたのもしき坊主とあるは頼みにならぬ坊主で豕に関係なし。僧と豕について次の珍談あり。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
菊川の
家並
(
やなみ
)
外れから右に入って
小夜
(
さよ
)
の中山を見ず。真直に一里半ばかり北へ上ると、俗に云う
無間山
(
むげんざん
)
こと
倶利
(
くり
)
ヶ
岳
(
だけ
)
の中腹に、
無間山
(
むげんざん
)
、
井遷寺
(
せいせんじ
)
という
梵刹
(
おてら
)
がある。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
小夜
(
さよ
)
の
中山
(
なかやま
)
というからには
彼方
(
むこう
)
も山に相違ない。この次に予定を拵える時には山という字のつくところは一切抜きにしてやる。毎日こうじゃ生命が続かない」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
長割下水のあたり、しんしんと
小夜
(
さよ
)
ふけて、江戸の名物木枯もどうやら少し鎮まったらしい
気勢
(
けはい
)
でした。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お
小夜
(
さよ
)
が最後にこう云ったが、これはもっともの
希望
(
のぞみ
)
というので小町はお小夜が取ることになった。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
わたくしは胸の底が
疼
(
うず
)
くような、なま温いような、
擽
(
こそばゆ
)
いような、……
小夜
(
さよ
)
ふけに寝床の中で耳を澄ましますと、わたくしの鼓動が優しくコトコトと鳴るのでございまス。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
我
(
わ
)
が
背子
(
せこ
)
を
大和
(
やまと
)
へ
遣
(
や
)
ると
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けてあかとき
露
(
つゆ
)
にわが
立
(
た
)
ち
霑
(
ぬ
)
れし 〔巻二・一〇五〕 大伯皇女
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けてから降り出した
小雨
(
こさめ
)
のまた
何時
(
いつ
)
か知ら
止
(
や
)
んでしまった
翌朝
(
あくるあさ
)
、空は初めていかにも秋らしくどんよりと
掻曇
(
かきくも
)
り、
濡
(
ぬ
)
れた小庭の植込からは
爽
(
さわやか
)
な涼風が動いて来るのに
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ひとしきり、その
小夜
(
さよ
)
あらしが走って、ピタとやんだのちは、まるで海底のような静かさだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「東海道の
小夜
(
さよ
)
の中山では、はらみ子の母の遊魂が、夜な夜な
飴
(
あめ
)
を買いに出たという、それが思い出される。ただし、いま現にやつがれが見たのは、遊魂にしてはいかめしい」
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
よく愛誦したものであるが「旅館の燈幽にして、鶏鳴暁を催せば、匹馬風に嘶いて、天竜川をうち渡り、
小夜
(
さよ
)
の中山越え行けば、白雲路を埋み来て、そことも知らぬ夕暮に……」
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
卯月
(
うづき
)
のすえ、ようようきょうの旅泊りは
駿河
(
するが
)
の国、島田の宿と、いそぎ
掛川
(
かけがわ
)
を立ち、
小夜
(
さよ
)
の中山にさしかかった頃から豪雨となって途中の菊川も
氾濫
(
はんらん
)
し濁流は橋をゆるがし道を越え
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
やすらはで寝なましものを
小夜
(
さよ
)
ふけて
傾
(
かたぶ
)
くまでの月をみしかな、は実に好い歌であるが、あれも右衛門自身の情から出た歌では無くて、人に代って其時の情状を写実に詠んだものである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
吾背子
(
わがせこ
)
をやまとへやると
小夜
(
さよ
)
ふけて
鶏鳴
(
あかとき
)
露にわれ立ち
霑
(
ぬ
)
れし (巻二)
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「お
小夜
(
さよ
)
も波止場まで正坊を負ぶつて送りに行つてまだ戻らんがな。」
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
友
(
とも
)
は
心
(
こゝろ
)
強
(
がう
)
にして、
小夜
(
さよ
)
の
螢
(
ほたる
)
の
光
(
ひかり
)
明
(
あか
)
るく、
梅
(
うめ
)
の
切株
(
きりかぶ
)
に
滑
(
なめら
)
かなる
青苔
(
せいたい
)
の
露
(
つゆ
)
を
照
(
てら
)
して、
衝
(
つ
)
と
消
(
き
)
えて、
背戸
(
せど
)
の
藪
(
やぶ
)
にさら/\とものの
歩行
(
ある
)
く
氣勢
(
けはひ
)
するをも
恐
(
おそ
)
れねど、
我
(
われ
)
は
彼
(
か
)
の
雨
(
あめ
)
の
夜
(
よ
)
を
惱
(
なや
)
みし
時
(
とき
)
、
朽木
(
くちき
)
の
燃
(
も
)
ゆる
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
小夜
(
さよ
)
ふけてほかに人こそ音すなれいづこの闇を行けるなるらむ
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そう云っている時、小間使いのお
小夜
(
さよ
)
が
襖
(
ふすま
)
を開けた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
初蝉を独りききたる獄の
小夜
(
さよ
)
久々の雨通り降りたり
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
負けず
小夜
(
さよ
)
福子の写真を私も
睨
(
にら
)
み上げる。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
から/\と鳴り居る
小夜
(
さよ
)
のいねこぎ機
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
なぎたる海の如き
小夜
(
さよ
)
なか。
かの日の歌【二】
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
守りて靜かに
小夜
(
さよ
)
は
經
(
へ
)
まし。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
また更に
小夜
(
さよ
)
をおどろき
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
小夜
(
さよ
)
には小夜のしらべあり
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「おい、お
小夜
(
さよ
)
」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
同時にまた私の進まなかった理由の
後
(
うしろ
)
には、去る者は日に
疎
(
うと
)
しで、以前ほど悲しい記憶はなかったまでも、私自身打ち殺した
小夜
(
さよ
)
の面影が
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先代の旦那が若い時、
小夜
(
さよ
)
の中山で山賊の手に陷ちて難儀してゐるところを、私の親父に助けられたとかいふ話で、大層恩に着てゐましたよ。
銭形平次捕物控:127 彌惣の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
拝啓
柳暗花明
(
りゅうあんかめい
)
の好時節と相成候処いよいよ御壮健
奉賀
(
がしたてまつり
)
候
(
そうろう
)
。小生も
不相変
(
あいかわらず
)
頑強
(
がんきょう
)
、
小夜
(
さよ
)
も息災に候えば、
乍憚
(
はばかりながら
)
御休神
可被下
(
くださるべく
)
候
(
そうろう
)
。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は、それを見て、どういふわけか「命なりけり
小夜
(
さよ
)
の中山——」といふ西行の歌の句が胸に浮んでしやうがない。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
さてさて、人間の吉凶はわからぬものじゃて。——お
小夜
(
さよ
)
も、あの大変以来、噂のみして、案じて居ったところじゃ
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日坂は金谷と掛川との
間
(
あいだ
)
の
宿
(
しゅく
)
で、
承久
(
しょうきゅう
)
の
宗行卿
(
むねゆききょう
)
や、
元弘
(
げんこう
)
の
俊基卿
(
としもときょう
)
で名高い
菊川
(
きくがわ
)
の
里
(
さと
)
や、色々の人たちの紀行や和歌で名高い
小夜
(
さよ
)
の
中山
(
なかやま
)
などは、みなこの日坂附近にある。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「山武士態のが、
小夜
(
さよ
)
更けの段畑で、鋤を振っていたというのだな。それでわかった」
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
県
(
あがた
)
、
赤魚
(
あかえ
)
、
月丸
(
つきまる
)
、
鯖
(
さば
)
、
小次郎
(
こじろう
)
、お
小夜
(
さよ
)
の六人である。お小夜だけが女である。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小夜
(
さよ
)
更けぬ。町
凍
(
い
)
てぬ。どことしもなく
虚空
(
おおぞら
)
に笛の聞えた時、恩地喜多八はただ一人、湊屋の軒の蔭に、姿
蒼
(
あお
)
く、影を濃く立って謡うと、月が棟高く
廂
(
ひさし
)
を照らして、
渠
(
かれ
)
の
面
(
おもて
)
に、扇のような光を投げた。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
澄みとほる
小夜
(
さよ
)
の
雉子
(
きゞす
)
のこゑきけば霜こごるらし笹の葉むらに
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「お
小夜
(
さよ
)
や、トーストを持って来ておくれ」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小夜
(
さよ
)
には小夜のしらべあり
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
再婚の話を私に持ち出したのは、
小夜
(
さよ
)
の
親許
(
おやもと
)
になっていた校長で、これが純粋に私のためを計った結果だと申す事は私にもよく呑み込めました。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
考へたもので、差當り人身
御供
(
ごくう
)
に上がつたのは、近頃熱くなつて通つて居る、深川の踊り子、辰巳で一番と言はれた、美乃屋のお
小夜
(
さよ
)
といふ
妓
(
こ
)
ですよ
銭形平次捕物控:295 万両息子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのおなじ日の落ちゆく
陽脚
(
ひあし
)
をいそいで、まだ
逆川
(
さかさがわ
)
に
夕照
(
ゆうで
)
りのあかあかと
反映
(
はんえい
)
していたころ、
小夜
(
さよ
)
の
中山
(
なかやま
)
、
日坂
(
にっさか
)
の
急
(
きゅう
)
をさか落としに、
松並木
(
まつなみき
)
のつづく
掛川
(
かけがわ
)
から
袋井
(
ふくろい
)
の
宿
(
しゅく
)
へと
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠江国
(
とおとうみのくに
)
日坂
(
にっさか
)
の
宿
(
しゅく
)
に近い
小夜
(
さよ
)
の
中山街道
(
なかやまかいどう
)
の
茶店
(
ちゃみせ
)
へ、ひとりの女が
飴
(
あめ
)
を買ひに来た。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小
常用漢字
小1
部首:⼩
3画
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
“小夜”で始まる語句
小夜着
小夜子
小夜衣
小夜曲
小夜嵐
小夜鳴鳥
小夜鶯
小夜時雨
小夜衣草紙
小夜坊