えん)” の例文
〔評〕三條公の筑前に在る、或る人其の旅況りよきやう無聊むれうさつして美女を進む、公之をしりぞく。某氏えんひらいて女がくまうく、公ふつ然として去れり。
折から、明夜は八月十五日、ご邸内に名月のえんが催されるから、月見がてらに、訪ねて参れという有難いおことばなので
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
望月もちづきである。甲斐かい武田勝頼たけだかつよりが甘利四郎三郎しろさぶろう城番じょうばんめた遠江国榛原郡小山とおとうみのくにはいばらごおりこやまの城で、月見のえんもよおされている。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とてもつもらば五尺ごしやく六尺ろくしやく雨戸あまどけられぬほどらして常闇とこやみ長夜ちやうやえんりてたしともつじた譫言たはごとたまふちろ/\にも六花りくくわ眺望ながめべつけれど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うんほしかゝってあるさるおそろしい宿命しゅくめいが、今宵こよひえんはしひらいて、てたわが命數めいすうを、非業無慚ひごふむざん最期さいごによって、たうとするのではないからぬ。
時平或日あるひ国経くにつねもとえんし、酔興すゐきやうにまぎらして夫人ふじんもらはんといひしを、国経もゑひたれば戯言たはぶれごととおもひてゆるしけり。
ある、この老人ろうじんは、むらほうてゆきました。そして、おうさまが宿やどなしどもや、乞食こじきたちをおあつめなされて、正月しょうがつのごえんひらかれるということをいたのです。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
忘年会の会場は小学校の裁縫さいほう室、青年会と処女会の合流で、えんたけなわとなり余興がはじまった。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これなどはいかにも、旅行中りよこうちゆう新室にひむろえんらしく、あかるくてゆったりとした、よいおうたであります。現在げんざいかやが、むかうにえてゐる、とをしへてゐられるのではありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それからのち、馬賊の首達は、月見のえんをやることもできなくなり、酒の酔もだんだんとさめてきたので、たいへんさびしかつたといふことです。(大15・6愛国婦人)
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
島原しまばら祇園ぎおんの花見のえんも、苦肉の計に耽っている彼には、苦しかったのに相違ない。……
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宗室そうしつくわいして、長夜ちやうやえんるにあたりては、金瓶きんべい銀榼ぎんかふ百餘ひやくよつらね、瑪瑙めなう酒盞しゆさん水晶すゐしやうはち瑠璃るりわん琥珀こはくさら、いづれもこうなる中國ちうごくいまかつてこれあらず、みな西域せいゐきよりもたらところ
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
興義点頭うなづきていふ。誰にもあれ一人、二四だん家のたひらの助の殿のみたちまゐりてまうさんは、法師こそ不思議に生き侍れ。君今酒をあざらけ二五なますをつくらしめ給ふ。しばらくえんめて寺に詣でさせ給へ。
暇日開宴迎客傾 暇日かじつ えんひらき 客をむかえてつく
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
仲なおりのえん
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
えんをたすけ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さっそく介抱して、二人を蘇生させ、翌日は、詫びの一えんを張って、心から謝し、なお後日の義を約して、夫婦、孟州大街の入口まで送って来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時平或日あるひ国経くにつねもとえんし、酔興すゐきやうにまぎらして夫人ふじんもらはんといひしを、国経もゑひたれば戯言たはぶれごととおもひてゆるしけり。
雪夜せつやえん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
夜に入っては、幕将すべてを集めて、彼のために餞行せんこうえんを盛んにした。餞行の宴——つまり送別会である。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
晩になると、薄暗い魚燈のもとで、父娘おやこは酒の支度をしてくれた。ささやかなえんではあるが別れの名残だった。権十が酒の相手をし、お松は、洗濯したはかまほころびを縫っていた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにこのえんには、突ッ張った裃姿かみしもすがたがない点も一段うれしいところであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どもをやしな主人あるじもこゝにきたて、したがへたる料理人にしたる魚菜ぎよさい調味ていみさせてさらにえんひらく。是主人このあるじ俗中ぞくちゆうさしはさんつね文人ぶんじん推慕したふゆゑに、この日もこゝにきたりて面識めんしきするを岩居がんきよやくせしとぞ。
首尾よく宋江と花栄の檻車かんしゃを打ち破り、二人の身を山上のとりでへ助け入れてから、さてその夜は、再生再会のよろこびと事のいきさつの語り合いで、一朝の悲境も一転、まるで凱旋がいせんえんにも似ていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どもをやしな主人あるじもこゝにきたて、したがへたる料理人にしたる魚菜ぎよさい調味ていみさせてさらにえんひらく。是主人このあるじ俗中ぞくちゆうさしはさんつね文人ぶんじん推慕したふゆゑに、この日もこゝにきたりて面識めんしきするを岩居がんきよやくせしとぞ。