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堪
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こら
ふりがな文庫
“
堪
(
こら
)” の例文
一
(
いっ
)
たい、おまえは私に似て情熱家肌の純情屋さんなのに、よくも、そこを
矯
(
た
)
め
堪
(
こら
)
えて、現実に生きる歩調に性情を
鍛
(
きた
)
え直そうとした。
巴里のむす子へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大へん
悔悟
(
かいご
)
したような顔はしていましたが何だかどこか
噴
(
ふ
)
き出したいのを
堪
(
こら
)
えていたようにも見えました。しょんぼり
壇
(
だん
)
に登って来て
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
追かけて
撲
(
ぶ
)
ちのめそうか、と思ったが、やっと
堪
(
こら
)
えた。彼は此後仙さんを
憎
(
にく
)
んだ。其後一二度来たきり、此二三年は
頓斗
(
とんと
)
姿
(
すがた
)
を見せぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と
後
(
あと
)
は涙に物云わせ、
暫
(
しば
)
し文治の顔を見詰めて居りますと、文治も
堪
(
こら
)
え兼て熱い涙を流しながら、お町の手を握って引寄せますると
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そしてその眼は子供によって仕方がなく湧き出た
笑
(
ゑみ
)
を
堪
(
こら
)
へながら、子供をさゝへて、その小さな赤い口に僅の食物を入れてやった。
晩餐
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
▼ もっと見る
呼吸
(
いき
)
を詰めて、うむと
堪
(
こら
)
えて
凍着
(
こごえつ
)
くが、
古家
(
ふるいえ
)
の
煤
(
すす
)
にむせると、時々
遣切
(
やりき
)
れなくなって、
潜
(
ひそ
)
めた
嚔
(
くしゃめ
)
、ハッと
噴出
(
ふきだ
)
しそうで不気味な真夜中。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さて、兵隊さんの原稿の話であるが、私は、てれくさいのを
堪
(
こら
)
えて、
編輯者
(
へんしゅうしゃ
)
にお願いする。ときたま、載せてもらえることがある。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ようやくに
堪
(
こら
)
えてソーッと目を見開いた時、濃茶色の洋服にめっきり老いた三遊亭圓遊も、しきりにハンケチで目頭を拭いていた。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
相變らず笑の外には表情を知らない相手だから、噴出すのを
堪
(
こら
)
へてゐるやうな顏付ではあるが、あまり意外な返事に三田も驚いた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
山野夫人は、フラフラと身体がくずれ相になるのをやっと
堪
(
こら
)
えた。そして大きな目で明智をにらむ様にして、どもりながらいった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
聴水は
可笑
(
おか
)
しさを
堪
(
こら
)
えて、「
慌
(
あわただ
)
し何事ぞや。
面
(
おもて
)
の色も常ならぬに……物にや追はれ給ひたる」ト、
問
(
とい
)
かくれば。黒衣は初めて
太息
(
といき
)
吻
(
つ
)
き
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
知って今まで
堪
(
こら
)
えていたというのも……その乃公の心持は……アハハハハハハハ。こんなことをお前に話したところで始まらないなア。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
だから先生が教室へはいると同時に、期せずして笑を
堪
(
こら
)
える声が、そこここの隅から起ったのは、
元
(
もと
)
より不思議でも何でもない。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おまっちゃんは糸で編んだ網に入れてある、薄い
硝子
(
ガラス
)
の金魚入れから水が
洩
(
も
)
って廻るように、丸い大きな眼に涙を一ぱい
溜
(
ため
)
て
堪
(
こら
)
えていた。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼女はホントに体の具合が悪かったのだ、気分の悪いのを
堪
(
こら
)
えているのが、狂った僕にはよそよそしくとしか写らなかったのだ。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
性の悩みに
堪
(
こら
)
えきれないでいることだけは明らかな事実で、その関を突破さえすれば、洪水のように流れ出して来るのだという。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
(追おうとするのをぐっと
堪
(
こら
)
えているが、必らず戸口まで走って)
合爾合
(
カルカ
)
! 達者で暮らせ。
札木合
(
ジャムカ
)
によろしくとな。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
と
種々
(
いろん
)
なことが
逆上
(
こみあが
)
って、咽喉の奥では
咽
(
むせ
)
ぶような気がするのを
静
(
じっ
)
と
堪
(
こら
)
えながら、
表面
(
うわべ
)
は陽気に面白可笑く、二人のいる前で、
前
(
さっき
)
言った
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
お客は
可笑
(
をか
)
しさが一杯なのを、奥歯でじつと
噛
(
か
)
み
堪
(
こら
)
へながら、ともかくも英語で返事をした。すると、女史の機嫌が急によくなつて来た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今日
(
きょう
)
の日のためばっかりに、どんなことでも、
堪
(
こら
)
えて来たとじゃないですか。これまで、堪えきれんようなことも、随分あった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
彼等は云ひたいことを
堪
(
こら
)
えるといふ必要もなかつた。思つたこと感じたことは何時もその場その場で喧嘩のやうに口外してしまふのである。
円卓子での話
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
爺さんはそこまで話して来ると、目を
屡瞬
(
しばたた
)
いて、泣
面
(
づら
)
をかきそうな顔を、じっと押
堪
(
こら
)
えているらしく、皺の多い筋肉が、微かに動いていた。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
じっと
堪
(
こら
)
えている涙のため、息をはずませながら、怨みに燃えた美しい瞳を彼のほうへきらりと投げかけて、リーザは言った。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
例の気象で、伯父はそれを、目をつぶってじっと
堪
(
こら
)
えようとするのである。時として、
堪
(
こら
)
えに堪えた気力の隙から、かすかな
呻
(
うめ
)
きが洩れる。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
其痛みを
堪
(
こら
)
えて我
生血
(
いきち
)
に指を染め其上にて字を書くとは一通りの事に
非
(
あら
)
ず、充分に顔を蹙め充分に
相
(
そう
)
を
頽
(
くず
)
さん、
夫
(
それ
)
のみか名を書くからには
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
今まではしばらく
堪
(
こら
)
えていたが、もはや包むに包みきれずたちまちそこへ泣き
臥
(
ふ
)
して、平太がいう物語を聞き入れる体もない。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
何を云っても黙って居られる。自分も妻の右衛門同様、相手にされずに黙過されるに至っては匡衡も
堪
(
こら
)
えきれなくなったろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
痛みの残りをじっと
堪
(
こら
)
えて、彼女は、その場の人々に笑いかけ、短い言葉で安心させ、それから、優しく、にんじんにいう——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
時間は
何時
(
なんじ
)
だか、
夜
(
よ
)
はとうていまだ明けそうにしない。腕組をして立って考えていると、足の甲がまたむずむずする。自分は
堪
(
こら
)
え切れずに
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
立ち上った勝平は、フラ/\と
蹌
(
よろ
)
めいてやっと踏み
堪
(
こら
)
えた。彼はその
凄
(
すさま
)
じい眸を、真中に据えながら、瑠璃子の方へジリ/\と迫って来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
最後の
抽出
(
ひきだし
)
には来月生れると云ふ
小児
(
こども
)
の紅木綿の着物や
襁褓
(
むつき
)
が幾枚か出て来た。次の間から眺めて居た美奈子は
堪
(
こら
)
へ兼ねてわつと泣き伏した。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
さして立去たり
跡
(
あと
)
に殘りし男は
猶
(
なほ
)
内の樣子を
窺
(
うかゞ
)
ひ居る故
旅僧
(
たびそう
)
は見付られなば殺されもやせんと
息
(
いき
)
を
堪
(
こら
)
へて車の
蔭
(
かげ
)
に
屈
(
かゞ
)
み居る中此方の
板塀
(
いたべい
)
の戸を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
長時間そこに立ち盡し、あれこれと氣を使ひ、最後に金を受け取る頃には、彼等は何となく
堪
(
こら
)
へ
性
(
しやう
)
をなくして了つてゐた。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
伯母リジイがぷんぷんしてさっそく帰り支度をはじめたとき、部屋のあちこちから友達の眼がのぞいて、そして、いちように笑いを
堪
(
こら
)
えていた。
字で書いた漫画
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
もはや
堪
(
こら
)
えられんで二郎は泣出そうとした時に、
先刻
(
さっき
)
のみすぼらしい乞食が現われて、私がお
家
(
うち
)
へ
連
(
つれ
)
て行って
上
(
あげ
)
ましょう。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「おのれらは、そのうちにとばかりぬかしおるが、おれをば、ふぐり玉の下敷にして殺す気かのう。うちゃもう、この上は
堪
(
こら
)
えてつかわさぬぞ」
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
じーっとそれを口の中で
堪
(
こら
)
えていても、次第に、それはどうしても堪えきれなくなって来た。彼女はとうとう真赤になってふき出してしまった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
その翌日から、妻は年中
堪
(
こら
)
えに堪えていたヒステリが出て、病床の人となった。乳飲み児はその母の乳が飲めなくなった。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
冷たしとは思ふまじしかも此日は風寒く重ね着しても身の震ふに
褸
(
つゞれ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
裾
(
すそ
)
短かく濡れたるまゝを絞りもせず其身はまだも
堪
(
こら
)
ゆべし二人の子供を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
悲哀の念急に迫りて、同志の手前これまで
堪
(
こら
)
えに堪え来りたる望郷の涙は、
宛然
(
さながら
)
に
堰
(
せき
)
を破りたらんが如く、われながら
暫
(
しば
)
しは顔も得上げざりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
水野が
堪
(
こら
)
え堪えし涙ここに至りて玉のごとく手紙の上に落ちたのを見て、
聴
(
き
)
く方でもじっと
怺
(
こら
)
えていたのが、あだかも電気に打たれたかのように
遺言
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ひとりずっと、心の中のかなしみに
堪
(
こら
)
えているのが、彼の性でした。ジェハンじいさんは、よく彼に言い聞かせました。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
二
日
(
か
)
と
云
(
い
)
ふものアンドレイ、エヒミチは
堪
(
こら
)
へ
堪
(
こら
)
へて、
我慢
(
がまん
)
をしてゐたのであるが、三
日目
(
かめ
)
にはもう
如何
(
どう
)
にも
堪
(
こら
)
へ
切
(
き
)
れず。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
マリユスはそれを見てもはや
堪
(
こら
)
えることができなかった。「お父さん、許して下さい、」と彼は心に念じて、指先で、ピストルの引き金を探った。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
此子
(
これ
)
が
為
(
ため
)
、我が為、不自由あらせじ、憂き事のなかれ、少しは余裕もあれかしとて、朝は人より早く起き、
夜
(
よ
)
はこの通り更けての霜に寒さを
堪
(
こら
)
へて
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
真面目な、
静
(
しずか
)
な顔付で、色艶が余り好くなくって。口は何事も
堪
(
こら
)
えて黙っているという風な、美しい口なのね。額と目とには気高い処がありますね。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
負傷の身を
堪
(
こら
)
えてどうやら此の場所まで来たところを、自制のない群衆のため、無残にも踏み殺されたものであって、弦三は死んだが、その願いは
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とうとう
堪
(
こら
)
えきれなくなって、
私
(
わたくし
)
はいつしか
切株
(
きりかぶ
)
から
離
(
はな
)
れ、あたかも
磁石
(
じしゃく
)
に
引
(
ひ
)
かれる
鉄片
(
てつきれ
)
のように、一
歩
(
ぽ
)
良人
(
おっと
)
の
方
(
ほう
)
へと
近
(
ちか
)
づいたのでございます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
娘の丸い肩が、
堪
(
こら
)
へ性もなく顫へるのを、お靜は後ろからソツト抱き締めるやうに、手拭で涙を拭いてやりました。
銭形平次捕物控:318 敵の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しみじみとした感傷に囚われようとするのを、周平はじっと
堪
(
こら
)
えた。顔を上げると、保子の清い
露
(
あらわ
)
な眼はちらと瞬いて、長い睫毛の奥に潜んでしまった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
堪
常用漢字
中学
部首:⼟
12画
“堪”を含む語句
堪兼
堪忍
居堪
堪能
得堪
堪難
持堪
御堪能
不堪
押堪
一堪
堪忍袋
御堪忍
手堪
堪弁
堪能者
亦堪嗟
静思堪喜
難堪
踏堪
...