トップ
>
坑
>
あな
ふりがな文庫
“
坑
(
あな
)” の例文
方角も
真直
(
まっすぐ
)
じゃないが、とにかく見える。もし
坑
(
あな
)
の中が一本道だとすれば、この灯を
目懸
(
めが
)
けて、初さんも自分も進んで行くに違ない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鉱山の
坑
(
あな
)
の闇が不思議の赫きになつて、歎息の声が哄笑の声になる。丸で種類の変つた人間が丸で性質の変つた冒険をするのが面白い。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
馬車あまた火山の
坑
(
あな
)
より熔け出でし石を敷きたる街を
馳
(
は
)
せ
交
(
か
)
ひて、間〻馬のその石面の
滑
(
なめらか
)
なるがために
躓
(
つまづ
)
くを見る。小なる雙輪車あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
戦場へ出ても、長陣の時などは、野原に
坑
(
あな
)
を掘らせて、坑のなかに
桐油紙
(
とうゆし
)
をしきつめ、それへ湯をいっぱい汲みこんで、
浸
(
ひた
)
ったりした。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
運命なのか、地面へ飛び下りるつもりの彼女は、丁度その
坑
(
あな
)
へどんと
俯伏
(
うつぶ
)
せに
陥
(
お
)
ちこんだ時、
如何
(
どう
)
とも全力が尽きてしまった。
ある遊郭での出来事:公娼存廃論者への参考資料としての実例
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
▼ もっと見る
昔掘った金の
坑
(
あな
)
の跡が、蛙の
腸
(
はらわた
)
を拡げたように山の中へ幾筋も喰い込んでいまして、私共なんぞも雨降り揚句なんぞにそこへ行ってみると
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
月が不意に入って
四辺
(
あたり
)
が急に真暗になってしまった。大異は驚いて歩いた。そこには深い深い
坑
(
あな
)
があった。大異の体はその中へ堕ちてしまった。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
松
(
まつ
)
の
東面
(
とうめん
)
の
方
(
はう
)
に
坑
(
あな
)
を
開
(
ひら
)
かうとして、
草原
(
くさはら
)
を
分
(
わ
)
けて
見
(
み
)
ると、
其所
(
そこ
)
に
掘
(
ほ
)
り
掛
(
か
)
けの
小坑
(
せうかう
)
がある。
先度
(
せんど
)
幻翁
(
げんおう
)
が
試掘
(
しくつ
)
して、
中止
(
ちうし
)
した
處
(
ところ
)
なのだ。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
私がもし秦の始皇帝ならば、
焚
(
た
)
くべき書、
埋
(
うず
)
むべき
坑
(
あな
)
はいかほどあるか。私は相応に知っている。決して文芸に就いては風俗壊乱のみを
狙
(
ねら
)
うべきでない。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
旧約の少年ヨセフが、父の命により十人の兄を尋ね来て
坑
(
あな
)
に打込まれはては売られし所と伝ふ。この処に径一丈ばかりの泉あり。ヱル・ハフイレーの泉と称す。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「ここで、すこし
休
(
やす
)
んでゆこう。」と、
良吉
(
りょうきち
)
は、
自転車
(
じてんしゃ
)
を
止
(
と
)
めて、さながら、
坑
(
あな
)
のあちらの、ちがった、
世界
(
せかい
)
からでも
吹
(
ふ
)
いてくるような、
風
(
かぜ
)
を
胸
(
むね
)
に
入
(
い
)
れていました。
隣村の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
汝についてはまた汝の契約の血のために、我かの水なき
坑
(
あな
)
より汝の
被俘人
(
とらわれびと
)
を放ち出さん。(九—一一)
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「俺達も、年を取れば、青のようになるんだろうなあ。青! 俺達も今にこの
坑
(
あな
)
の中でお前のようになるんだよ。お前よりももっともっと惨めになるかも知んねえ。」
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
河内介は彼の頭上に高貴な夫人が君臨するのを暫く待っていたけれども、あまり久しくその
坑
(
あな
)
の
縁
(
ふち
)
に留まる訳に行かないので、その日は
空
(
むな
)
しく引き返したのであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
炭坑と云えば一寸つらいようだけれど、何も
坑
(
あな
)
の中へはいって仕事をするのじゃなし、普通の事務員だと云うから、却ってそんな所で働いた方が面白かないでしょうか。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
最後に氷の張り詰めた大地に
坑
(
あな
)
を掘って、その犬と一緒に其処にはいって抱合って死ぬことにするんだが、と、その有様を寝床へ入ってから、よく想像して見たりした。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「それで、あなたは、その火の
坑
(
あな
)
ん中へ落ちたいのですか。そして永遠に燒かれたいのですか。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
大勢の家来が寄って、その柱にどろどろした油をしたたかに塗り始めると、ほかの家来どもはたくさんの柴を運んで来て、柱の下の大きい
坑
(
あな
)
の底へ山のように積み込んだ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
昔
如来
(
にょらい
)
この辺を経行した時猴が蜜を奉ると仏これに水を和してあまねく大衆に施さしめ、猴大いに喜び躍って
坑
(
あな
)
に
堕
(
お
)
ちて死んだが、この福力に由って人間に生まれたと載す。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
臧はこのことを聞くともう数人の者をつれていって
窖
(
あなぐら
)
を
発
(
あば
)
きはじめた。そこに四、五尺の深さになった
坑
(
あな
)
があった。しかしそこには石ころばかりで金らしいものはなかった。
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
彼奴
(
あやつ
)
は元来
詐欺賭博
(
いかさま
)
で
入獄
(
いろあげ
)
して来た男だけに、することなす事インチキずくめじゃが、そいつに
楯突
(
たてつ
)
いた奴は、いつの間にか
坑
(
あな
)
の中で、
彼奴
(
あいつ
)
の手にかかって消え失せるちう話ぞ。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
韓非子
(
かんぴし
)
・
商鞅
(
しょうおう
)
・
李斯
(
りし
)
らの英傑が刑名法術の政策を用いたからであって、その二世にして天下を失うに至ったのは、書を焚き儒を
坑
(
あな
)
にしたに基づくことは、人の知るところであるが
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
自分の跨がっている
坑
(
あな
)
の直前は背丈位の石垣になっていて、隣の家の横側がその石垣と密接している。物音はその一番奥の所でしている。表から
磚
(
たん
)
の積んだのが見えている辺である。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私邸に起臥しては朝暮
衣食
(
いゝし
)
の獄に繋がれ、禁庭に出入しては年月名利の
坑
(
あな
)
に墜ち、小川の水の流るゝ如くに妄想の
漣波
(
さゞなみ
)
絶ゆる
間
(
ひま
)
なく、枯野の萱の燃ゆらむやうに煩悩の
火燄
(
ほのほ
)
時あつて閃めき
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
我々にとっては、彼等を同じ運命の
坑
(
あな
)
に放り込んでしまうことが必要なのだ。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
常に
己
(
おのれ
)
を
博士
(
はかせ
)
ぶりて、人を
拒
(
こば
)
む心の
直
(
なほ
)
からぬ、これをさそうて信頼義朝が
讐
(
あた
)
となせしかば、
終
(
つひ
)
に家をすてて
一一六
宇治山の
坑
(
あな
)
に
竄
(
かく
)
れしを、
一一七
はた
探
(
さが
)
し
獲
(
え
)
られて
一一八
六条河原に
梟首
(
かけ
)
らる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
坑
(
あな
)
の深さが二尺余りに達したが、甕の口が出て来ない。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
さてこゝに
坑
(
あな
)
を
穿
(
うが
)
てば「よし」といひて
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
坑
(
あな
)
の奥
カンテラ
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
右の腕を
繃帯
(
ほうたい
)
で釣るして左の足が義足と変化しても帰りさえすれば構わん。構わんと云うのに浩さんは依然として
坑
(
あな
)
から上がって来ない。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いくら無住同様な寺にせよ、
欄
(
らん
)
や建具は手当り次第、
薪
(
まき
)
にしているし、大小便をした
坑
(
あな
)
に土さえ
埋
(
い
)
けて行こうとした様子もない。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其代
(
そのかは
)
り二十八
日
(
にち
)
には
大失敗
(
だいしつぱい
)
をして、
坑
(
あな
)
に
入
(
い
)
ると
忽
(
たちま
)
ち
異臭
(
ゐしう
)
紛々
(
ふん/\
)
たる
物
(
もの
)
を
踏付
(
ふみつ
)
けた。これは
乞食
(
こじき
)
の
所爲
(
しよゐ
)
だと
思
(
おも
)
ふ。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
運命の
坑
(
あな
)
黙々として人を待つ。人は知らず
識
(
し
)
らずその運命に歩む。すなわち知らずというとも、近づくに従うて一種冷ややかなる
気
(
け
)
はいを感ずるは、たれもしかる事なり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
そしてその底から淋しい感激がこみ上げてきた。——自分は一思いに九州へ落ちて行こう、真暗な
坑
(
あな
)
の中へでも。身を捨てて生きて働いてやれ!——そう彼は心のうちで叫んだ。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
青は鉱山主の温情主義から、
坑
(
あな
)
の中に養われていた。十何年間を、地の底の
暗闇
(
くらやみ
)
の中に働いていたのであったが、最早すっかり老衰してしまって、歩くことさえも自由ではなくなっていた。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
燕王手を
拍
(
う
)
って笑って、
李九江
(
りきゅうこう
)
は
膏梁
(
こうりょう
)
の
豎子
(
じゅし
)
のみ、未だ
嘗
(
かつ
)
て兵に習い陣を見ず、
輙
(
すなわ
)
ち
予
(
あた
)
うるに五十万の衆を以てす、
是
(
これ
)
自ら
之
(
これ
)
を
坑
(
あな
)
にする
也
(
なり
)
、と云えるもの、酷語といえども当らずんばあらず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その設計に従ってその時自分がヌクヌクともぐり込もうとした
坑
(
あな
)
の、何と、うじうじと、ふやけた、浅間しくもだらしないものだったか。今の三造には腹が立って腹が立って堪らないのである。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかもその行方定めぬ旅というのが、火の
坑
(
あな
)
へ転げ込んで行く、お雪ちゃんの赤ん坊そのままです——あなたは自分の赤ちゃんが、地獄の火の坑へ
這入
(
はい
)
って行くのをそのままに見ておられますか。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
火の
坑
(
あな
)
から流れ出た
熔巌
(
ようがん
)
の
冷
(
さ
)
めたような色をしている。
杯
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
さてこゝに
坑
(
あな
)
を
穿
(
うが
)
てば「よし」といひて
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「火が一面に燃えてる
坑
(
あな
)
です。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「——敵もまた城内から、同じ方向へ
坑
(
あな
)
を掘り進めて来たものらしく、爆薬の火計にかかって坑内のお味方はほとんど全滅を
蒙
(
こうむ
)
りました」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腰を折ったり、四つに
這
(
は
)
ったり、背中を
横
(
よこ
)
っ
丁
(
ちょ
)
にしたり、頭だけ曲げたり、
坑
(
あな
)
の
恰好
(
かっこう
)
しだいでいろいろに変化する。そうして非常に急ぐ。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「私はやはり九州の炭坑へ行きます。
坑
(
あな
)
の中へはいってでも働きます。」
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
然
(
さ
)
う
斯
(
か
)
うして
居
(
ゐ
)
る
間
(
うち
)
に、
松下
(
しようか
)
南面
(
なんめん
)
の
方
(
はう
)
は
大概
(
たいがい
)
掘
(
ほ
)
り
盡
(
つく
)
して
了
(
しま
)
つた。
余
(
よ
)
は九
月
(
ぐわつ
)
二
日
(
か
)
幻翁
(
げんおう
)
佛子
(
ぶつし
)
の二
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に
行
(
ゆ
)
つて、
掘
(
ほ
)
らうとしたが、
既
(
も
)
う
余
(
よ
)
の
坑
(
あな
)
は、
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
の
根方
(
ねかた
)
まで
喰入
(
くひい
)
つて
了
(
しま
)
つて、
進
(
すゝ
)
む
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
ぬ。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
炭坑の
坑
(
あな
)
は二つに区別されている。
竪坑
(
たてこう
)
。
斜坑
(
はすこう
)
。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
鎌倉にこそ入ったが、そして直義をも
捉
(
とら
)
えはしたが、尊氏自身もまた、みずから掘った
坑
(
あな
)
にひとしい重囲に墜ちていたのだった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
着いて見ると、
坑
(
あな
)
が四五畳ほどの
大
(
おおき
)
さに広がって、そこに交番くらいな小屋がある。そうしてその中に電気灯が点いている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
龐徳
(
ほうとく
)
は、手足にからむ味方を踏みつぶして、ようやく
坑
(
あな
)
から這い出して、
坑口
(
あなぐち
)
から槍の雨を降らしている敵兵十人余りを一気に突き伏せ
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
明かなる君が
眉目
(
びもく
)
にはたと行き逢える今の
思
(
おもい
)
は、
坑
(
あな
)
を出でて天下の
春風
(
はるかぜ
)
に吹かれたるが如きを——言葉さえ
交
(
か
)
わさず、あすの別れとはつれなし。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
坑
常用漢字
中学
部首:⼟
7画
“坑”を含む語句
坑道
坑口
炭坑
金坑
坑外
竪坑
大坑
斜坑
坑掘
坑中
紅宝玉坑
焚書坑儒
坑夫
煖坑
銀坑山
此坑
金坑狂時代
炭坑元
火坑変成池
火坑
...