もと)” の例文
しかしさうすると、宮廷以外の人形をもつてする才男の説明が、全部宮廷の才男をもととして説かなければならないことになるのです。
神楽(その二) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
芳賀博士はこの話を『今昔物語』十巻三十八語のもとと見定められた、その話は昔震旦しんたんの猟師海辺に山指し出た所に隠れて鹿を待つと
翟晴江てきせいかう通雅つうがを引いて、骨董は唐の引船の歌の「得董紇那耶とくとうこつなや揚州銅器多やうしうどうきおほし」から出たので、得董の音は骨董二字のもとだ、と云つてゐる。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
したが、こゝな浮氣者うはきもの、ま、わしと一しょにやれ、仔細しさいあって助力ぢょりきせう、……この縁組えんぐみもと兩家りゃうけ確執かくしつ和睦わぼくへまいものでもない。
そのもとは前に記した単純なヤマツバキから出たもので、永い歳月の間人手にかかりて栽培せられて居るうちに変り品が一つ出来二つ出来
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かゝれば福祉さいはひが見る事にもとづき愛すること(即ち後に來る事)にもとづかざる次第もこれによりて明らかならむ 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自分の意匠づけた一つの型がもとになって幾万の数が出来て、それが外国へ行くということも考えようによっては面白くもある。
事実を蒸溜じょうりゅうしてこしらえた理論などをKの耳に吹き込むよりも、もとかたちそのままを彼の眼の前に露出した方が、私にはたしかに利益だったでしょう。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夫人はもと利息のために務に金を貸していたが、手許てもとがくるしくなったので、壮い男の入智いれぢえで山岡の宅地を奪ってほかへ売ろうとしているのであった。
白っぽい洋服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大抵もとの語は、わづかにその半を存するのみなり。さて詩のつたなさは、すこしも始に殊ならず。その始に殊なるは、唯だその癖、その手段のみなるべし。
そこで今の『美人びじクリイム』、これもその手にかかつたので、もとは貧乏士族の娘で堅気であつたのだが、老猾おやぢこの娘を見ると食指大いに動いた訳で
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
世界の最も文明なる最も強壮なる国民と相競うという事については、そのもとを養わなくてはならん。その源はなんであるといえば即ち女子の教育である。
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
音も沙汰もございません故、母は案じて泣いてばかり居りましたのが、眼病のもとで、昨年から段々重くなり、此の頃はばったり見えなくなりましたから
「その風邪が万病のもとじゃ、と誰でも申すことでごわりまするが、事実まったくでな。何分御注意なさらんとなりません。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは何時か子規氏を訪ねた際、氏の態度が倨傲であったという事がもとであって、かような事に及んだのらしい。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
それからこの石垣の島だけではないが、またニーラスクという言葉があって、是も地底の意に解せられているが、まだ一部分そのもとの心持が残っている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かまれて暖簾のれんはぢれゆゑぞもとたゞせば根分ねわけのきく親子おやこなからぬといふ道理だうりはなしよしらぬにせよるにせよそれは其方そなた御勝手ごかつてなり仇敵かたき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
茶山が号の本づく所の茶臼山は、もとの名秋円山あきまるやまである。道之上みちのうへ城址の在るところで、形より茶臼の称を得た。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
武士として心得違いではあったに相違ないが、もとをただせば、大筒役としての役目の大事を考えお互の工夫を土台の言い争いで、深くとがむべき筋合のものではない
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もとはとえば自分の方で呼還よびかえすようにくわだてゝ置きながら、うわべに人をあざむくと云うのは卑劣ひれつ至極なやつだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その仏文の訳がもとになって、その後さらにイタリー文にも訳され、かの地の新聞に連載され、何千リラ(日本の金で二、三百円のものだった)を受け取ったりした。
酒虫しゅちゅうは材料を聊斎志異りょうさいしいからとった。もとの話とほとんど変わったところはない。(新思潮第四号)
校正後に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
改築か虫干かの必要上こちらへ移入してある間に乞食が経蔵の空屋に入って焚火をしたのがもとで先年経蔵が焼けてしまったが偶然中味だけがここに残されたということだ。
武州喜多院 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしたら独りごとのように「とかく夫が細君に甘いのが間違いの起るもとやのんですな」いうて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「後生願わん者は糂粏甕じんたがめ一つも持つまじきもの」とは実際だ。物の所有は隔てのもとで、物の執着しゅうちゃくは争のである。儂も何時しか必要と云う名の下に門やら牆やら作って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
景の細君が実家へ帰った後、景の友人達はもとのように復縁させようと思って、しばしば景に交渉したが、景がどうしても承知しないので、とうとう夏侯かこうという姓の家へ再縁した。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
その階段てのが、一切のもとなのよ。ね小倉さん。実は、ありもしない幻の階段のために、実在してる人間が、永劫えいごうに苦しむってことはいいことなの。あんたにはわかるはずだわ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
申子しんし(一二五)卑卑ひひ(一二六)これ名實めいじつほどこす。韓子かんし(一二七)繩墨じようぼくいて事情じじやうせつに、是非ぜひあきらかにす、きはめて(一二八)慘礉さんかくにしておんすくなし。みな道徳だうとくもとづく。
因て之を向〔問〕ふに朝鮮の「カツ テレ カハ ラ」の人民と答ふ。但此人は象胥ツウジに似て能く我が國語に通ぜり。而蚫獵の故をなじるに彼答に曰。もとより此島の蚫を獵するの意なし。
他計甚麽(竹島)雑誌 (旧字旧仮名) / 松浦武四郎(著)
愛蘭アイルランドの詩人イエエツは気分ムウドほど大切なものはない、歴史上の大事件でも煎じつめると、ふとした人間の気分一つにもとづいてゐるのを見付けることが少くないといつてゐるが、実際さうで
今日難波屋が巨万の富を擁するにいたりましたも、もとただせば御当家の御恩顧。
入婿十万両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やはり阿蘭あたりから来たものがもとだろうな。とにかくうまくこなしてある。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その狂乱のもとはいかに。かれが出でがけに曰ひし一言、深く社会の罪を刻めり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
とにかく学問は常識以外の智識を養うものにして、もとより教育を受けたる者にて、偉人物輩出することがある。けれども教育足りて常識を失い、ける人間を死せしむるものなしとも限らぬ。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
右の下の隅にしたるは土瓶形どびんかた土器の横口よこくちにして。模樣もようは赤色のを以てゑがきたり。右の上の三個は、土器表面ひやうめんに在る押紋を其もとに還したるものにして、りも直さずひも細工の裝飾なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
その禍乱のもとを尋ぬるに、今を距る事三十年前、欧羅巴の大乱治平せしとき
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あんずるに、松山かゞみのうたひは鏡わり絵巻ゑまきといふものをもととしてつくれるならん、此ゑまきにも右の松の山の事見えたり。さて松の山の庄内に菱山といふあり、山の形三角なるゆゑの名なるべし。
その残りはもとの額よりは少ないという数学上の明白な原理に反して、遣うても遣うても少しも減らぬのみか、なおその上に増加してゆくとは、実に天地間にこれほど不思議なことはないであろう。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
かくいう意味は、私の今の学説が、数学者にして同時に経済学者であった少数の人々が解してくれたような私のもとの学説と全く同一であるということにある。私の学説は次のように要約し得られる。
從つて背中も胴も痛むので病人は覺えず死力を出して寢返りを打たうとすると其板の如く腫脹してゐる腹は遮二無二突張つて是亦耐へ難き痛みを起すので已むを得ず又もとの位置に復した。さうして
翟晴江てきせいこう通雅つうがを引いて、骨董はとう引船ひきふねの歌の「得董紇那耶とくとうこつなや揚州銅器多ようしゅうどうきおおし」から出たので、得董の音は骨董二字のもとだ、といっている。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
平安宮廷の歌合せのもととなり、而も形式化して残つた歌会始の式を見ても、舎人と共に、女の召人なる采女が中心となつてゐた事が思はれる。
それから墓石に乗ってして見たが、もとよりうすればくであろうというのぞみがあったのではなく、ただるよりもと、いたずらに試みたばかりなのであった。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実に頼少たのみすくない世の中で、その義理も人情も忘れて、罪も無い私の売られたのも、もとはと云へば、金銭かねからです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
このあたりにて斯くまで道を失はんとは、流石さすがに思掛けざりき、目暮の景色をもてあそうち、俄に暗くなりしを見て、近道より歸らんとおもひしが事のもとなりといふ。
信は慶応紀元二月十八日に夭した。迨夜はもと荼毘だび前夜であるが、俗間には法要の前夜を謂ふ。此には後の義に用ゐてある。得悟は棠軒の子紋二郎の法諡である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
要するに、近世に於ける科学の発達に伴う兵器の進歩と、国際貿易の発達にもとづく各国の経済関係の複雑密接とは、事実上戦争をして不可能ならしむるものである。
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
なお二箇月の暇をむさぼることにとりきめて貰ったのがもとで、とうとうその二箇月が過去った十月にも筆をらず、十一十二もつい紙上へはようたる有様で暮してしまった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
渡天の途中しばしば女事で失敗したり、殊にはこの書の末段に、仏勅して汝懶惰にして色情いまだほろびざれども浄壇使者とすべし、汝もと食腸寛大にして大食を求む。
晋「感冐かぜをひいたか、そりゃ大切だいじにしないと宜しくないよ、感冐は万病のもとと申すからの」