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やいば
ふりがな文庫
“
刃
(
やいば
)” の例文
「それはわからぬ」とどなったのは、縁の上の一閑斎で、「
刃
(
やいば
)
の稲妻、消えた提灯、ヒーッという女の悲鳴、殺されたに相違ない!」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
流れる
刃
(
やいば
)
を取直す間もなく、第二第三の銭は流星のごとく飛んで拳へ、額へ、そして第四の銭は危なく眼の玉を打とうとしたのです。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかるに初めて彼は、フランス人が尊重してる尚武的な自由の意味を、おぼろに理解し始めた。それこそ理性の恐るべき
刃
(
やいば
)
であった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その梶川と一緒になって、内匠頭の
刃
(
やいば
)
を奪りあげたという偶然にも些細な事で、お坊主の関久和へも、
銀子
(
ぎんす
)
三十枚の賞賜が下がった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
取るに足らぬ女性の
嫉妬
(
しっと
)
から、
些
(
いささ
)
かの
掠
(
かす
)
り傷を受けても、彼は
怨
(
うら
)
みの
刃
(
やいば
)
を受けたように得意になり、たかだか二万
法
(
フラン
)
の借金にも、彼は
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
昨日今日、今までも、お互に友と呼んだ人たちが、いかに殿の仰せとて、手の裏を
反
(
かえ
)
すように、ようまあ、あなたに
刃
(
やいば
)
を向けます。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
竜之助は
敢
(
あえ
)
て兵馬を怖れて逃げ隠れているのではない。兵馬は目の先に近づいて、それでどうも
刃
(
やいば
)
を合せることができないのです。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その脊は
覆
(
くつがへ
)
りたる舟の如し。忽ち彼雛鷲は
電
(
いなづま
)
の撃つ勢もて、さと
卸
(
おろ
)
し來つ。
刃
(
やいば
)
の如き
利爪
(
とづめ
)
は魚の背を
攫
(
つか
)
みき。母鳥は喜、色に
形
(
あらは
)
れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
と云いつゝ飛込んで
一討
(
ひとうち
)
にと小三郎へ斬り掛りました其の
刃
(
やいば
)
の下へ、鼠の頭巾を冠った人が這入ってまいり、小三郎を
後
(
うしろ
)
に囲いながら
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それであッてこのありさま,
刃
(
やいば
)
の
串
(
くし
)
につんざかれ、矢玉の雨に砕かれて異域の鬼となッてしまッた
口惜
(
くちお
)
しさはどれほどだろうか。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
金
(
きん
)
の
小鳥
(
ことり
)
のやうないたいけな
姫君
(
ひめぎみ
)
は、
百日鬘
(
ひやくにちかつら
)
の
山賊
(
さんぞく
)
がふりかざした
刃
(
やいば
)
の
下
(
した
)
に
手
(
て
)
をあはせて、
絶
(
た
)
えいる
声
(
こえ
)
にこの
世
(
よ
)
の
暇乞
(
いとまごひ
)
をするのであつた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
彼は不意に日本刀を抜いて、
裁縫
(
さいほう
)
していた
己
(
じぶん
)
の女房を殺して、それから店へ出て主人を殺し、そして、己もその
刃
(
やいば
)
に
斃
(
たお
)
れたものであった。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして、暗いなかを手あたり次第に斬り廻ったが、
刃
(
やいば
)
に触れるものは菜の葉や菜の花ばかりで、一向にそれらしい手ごたえはなかった。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
如何なる憤怒絶望の
刃
(
やいば
)
を以てするも
劈
(
つんざ
)
きがたく、如何なる
怨恨
(
えんこん
)
悪念の焔を以てするも破りがたい
闇
(
やみ
)
の
墻壁
(
しょうへき
)
とでもいいましょうか。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は灌木の方へ一歩進んで手をのばすと、ベアトリーチェは彼の心臓を
刃
(
やいば
)
でつらぬくような鋭い叫び声をあげて駈け寄って来た。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
彼は、刻々にましてくる水面をにらみながら、ジャック・ナイフの
刃
(
やいば
)
を水平にして、ガラス天井の下を横に深くえぐっていった。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
またロベルト・グイスカールドを防がんとて
刃
(
やいば
)
のいたみを覺えし民、プーリア人のすべて不忠となれる處なるチェペラン 一三—
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
いくら
蒲団
(
ふとん
)
を頭からかぶっても、意識は水のようにすみ切って、すみ切った意識の中で、苦しみの
刃
(
やいば
)
が縦横に彼女の心をきりきざんでいた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
梭櫚
(
しゆろ
)
の毛を植ゑたりやとも見ゆる
口髭
(
くちひげ
)
を
掻拈
(
かいひね
)
りて、
太短
(
ふとみじか
)
なる
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
むれば、聞ゐる妻は
呀
(
はつ
)
とばかり、
刃
(
やいば
)
を踏める心地も為めり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
刃
(
やいば
)
に
衅
(
ちぬ
)
らずして世界を統一することは固より、われらの心から熱望するところであるが(六二頁)、悲しい哉、それは恐らく不可能であろう。
最終戦争論
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
「昔、この辺に
蛇身鳥
(
じゃしんちょう
)
刃
(
やいば
)
の
雉
(
きじ
)
という怪物が出没いたしました。何がさて蛇体に刃の羽を生やした怪鳥でございますから……」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
鑿
(
のみ
)
のような
刃
(
やいば
)
のついてゐる
一寸
(
いつすん
)
ぐらゐの
小
(
ちひ
)
さい
石斧
(
せきふ
)
もありますが、これは
石斧
(
せきふ
)
といふよりも、
石鑿
(
いしのみ
)
といつた
方
(
ほう
)
が
適
(
てき
)
してゐるように
思
(
おも
)
はれます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
英国公使アールコックに自分の
愛妾
(
あいしょう
)
まで与え許している、堀織部はそれを
苦諫
(
くかん
)
しても用いられないので、
刃
(
やいば
)
に伏してその意を
致
(
いた
)
したというのだ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし彼の懐疑の
刃
(
やいば
)
は論理そのものにまで向わなかった。真の自己否定的自覚に達しなかった。彼の自己は身体なき抽象的自己であったのである。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
是はとばかり眼を閉ぢ、氣を取り直し、鍔音高く
刃
(
やいば
)
を鞘に納むれば、跡には燈の影ほの暗く、障子に映る影さびし。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「もうしもうし
花魁
(
おいらん
)
え、と云われて
八
(
や
)
ツ
橋
(
はし
)
なんざますえとふり返る、
途端
(
とたん
)
に切り込む
刃
(
やいば
)
の光」という変な文句は、私がその時分南麟から
教
(
おす
)
わったのか
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
カピ長 えい、
劍
(
けん
)
ぢゃといふに。
見
(
み
)
いあれを、モンタギューの
長者
(
ちゃうじゃ
)
めが
來
(
き
)
をって、
俺
(
おれ
)
に
見
(
み
)
よがしに
刃
(
やいば
)
を
揮
(
ふ
)
りをる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
死体には一面に太い
襞
(
ひだ
)
が盛り上っていて、肋骨が浮き上り、傷は左横から、
刃
(
やいば
)
様のもので頸動脈が貫かれていた。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この人達の耳にも、死刑になると云う話がもう聞えたので、中には手を
束
(
つか
)
ねて
刃
(
やいば
)
を受けるよりは、
寧
(
むしろ
)
フランス軍艦に切り込んで死のうと云ったものがある。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
今度こそはようように待たれたむっつり右門の
太刀
(
たち
)
のさばきに接しられそうな形勢となりましたが、剣もまたその心をくんでか、細身二尺三寸の玉散る
刃
(
やいば
)
は
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
男は次第に
刃
(
やいば
)
を抜き出しながら、茶色の髯の奥で光る白い歯を見せて、ゆるやかに微笑んで、僕の顔を見た。
不可説
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
坦々
(
たんたん
)
砥
(
と
)
の如き何
間
(
げん
)
幅
(
はば
)
の大通路を行く時も二葉亭は木の根
岩角
(
いわかど
)
の
凸凹
(
でこぼこ
)
した
羊腸折
(
つづらおり
)
や、
刃
(
やいば
)
を仰向けたような山の背を縦走する危険を聯想せずにはいられなかった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と云って前へ出るとみた
刹那
(
せつな
)
、男の右手にぎらりと
刃
(
やいば
)
が光り、体ごとだっと通胤へ突っかけて来た。みんな思わずあっと云った。まさに
虚
(
きょ
)
をつく一刀である。
城を守る者
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
法師二『言葉も知らぬ
下司
(
げす
)
なおやじ
奴
(
め
)
。その上に
刃
(
やいば
)
なぞ抜身で
携
(
さ
)
げ、そもそも
此処
(
ここ
)
は
何
(
いず
)
れと心得居る。智証大師伝法
灌頂
(
かんじょう
)
の道場。天下に名だたる霊域なるぞ』
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
子貢は、その明敏な頭脳に、研ぎすました
刃
(
やいば
)
を刺しこまれたような気がした。孔子はたたみかけて云った。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それをそんなり
真
(
ま
)
に受けるような綿貫と違いますよって、うわべは「そうですか、そらその方がええでしょう」いいながら心の中では
嫉妬
(
しっと
)
の
刃
(
やいば
)
研
(
と
)
ぎすましてて
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何人の女が、自分に迷って死んだであろう……あまつさえ、旧い朋友を、
刃
(
やいば
)
にかけた事さえあるのです。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
⦅ああ
息苦
(
くる
)
しい、
息苦
(
くる
)
しい!⦆さう、彼は人間らしくない奇怪な声で呻いた。その声は
刃
(
やいば
)
のやうに人の胸を貫いた。が、不意に死人は地の下へ消え失せてしまつた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
徒刑場よりもむしろ死刑台のほうが、地獄よりもむしろ虚無のほうが、徒刑囚の首枷へよりもむしろギヨタン氏の
刃
(
やいば
)
へこの首をわたしたほうが! 徒刑とは、おお!
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ねずの三武が、やッと
斬
(
き
)
りかけてきたが、
刃
(
やいば
)
の立てかたも知らぬ
出鱈目
(
でたらめ
)
さで、笑止なばかりであった。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
倉地が旅に出た留守に倉地の下宿に行って「急用ありすぐ帰れ」という電報をその行く先に打ってやる。そして自分は心静かに倉地の寝床の上で
刃
(
やいば
)
に伏していよう。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
アルトヴェル氏は、窓掛をあげて、真暗な
庭園
(
にわ
)
の方を覗いてみると、濡れた樹々の枝は
刃
(
やいば
)
のように光り、秋の木の葉が風に吹きまくられて、ばらばらっと壁を打った。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「親は
刃
(
やいば
)
をにぎらせて、人を殺せと教えしや、人を殺して死ねよとて、二十四までも育てしや。」
婦人作家
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
鋼鉄
(
はがね
)
の如く真剣に、
刃
(
やいば
)
の如く剛直な妻」と、或る戯詩の中で、彼はファニイの前に
兜
(
かぶと
)
を脱いだ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そしてそのあらそいは、ついに
刃
(
やいば
)
に血を塗るところまで突き詰められなければならなかったのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かゝれ/\と
刀柄
(
つか
)
をたゝけば、応と意気込む覚えの面々、
人甲斐
(
ひとがい
)
も無き
旅僧
(
たびそう
)
一人。何程の事やあらむと
侮
(
あなど
)
りつゝ、雪影うつらふ氷の
刃
(
やいば
)
を、抜き
連
(
つ
)
れ抜き連れ
競
(
きそ
)
ひかゝる。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
反対に全国の武士は、ほとんどすべてが、天皇を見すて、天皇にむかって、弓をひき、
刃
(
やいば
)
をむけていたことはたしかであった。この史実は、それを抹殺しえないのである。
天皇:誰が日本民族の主人であるか
(新字新仮名)
/
蜷川新
(著)
刃
(
やいば
)
へ此の毒を塗って置けば遣り損じた所で其の人が働きを失って追っ掛けて来る事が出来ません、其れだから仕損じる恐れの有る場合に、此の様な毒を塗って置くのです
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そこには、肉迫して来る
刃
(
やいば
)
の潮の後方に、紅の一点が
静々
(
しずしず
)
と赤い帆のように彼の方へ進んでいた。長羅はひらりと馬首を敵軍の方へ振り向けた。馬の腹をひと蹴り蹴った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
行きついた
果
(
はて
)
に
僅
(
わず
)
かなはずみに
刃
(
やいば
)
を合わすようになることも、もう、眼に見えて迫っていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
“刃”の解説
刃(は、やいば、en: blade)とは、対象を切断あるいは切削する機械要素または構造のことである。
(出典:Wikipedia)
刃
常用漢字
中学
部首:⼑
3画
“刃”を含む語句
刃物
両刃
白刃
刃傷
刃向
刃傷沙汰
焼刃
自刃
直刃
出刃庖丁
薄刃
利刃
刃交
氷刃
刃渡
刃尖
鋭刃
刃影
円刃刀
刃鳴
...