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凄
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すご
ふりがな文庫
“
凄
(
すご
)” の例文
不気味に
凄
(
すご
)
い、魔の小路だというのに、
婦
(
おんな
)
が一人で、湯帰りの
捷径
(
ちかみち
)
を
怪
(
あやし
)
んでは
不可
(
いけな
)
い。……実はこの小母さんだから通ったのである。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ですが地上にどんな墳墓があろうとも、私たちは琉球の玉陵においてより、鬼気迫るもの
凄
(
すご
)
いばかりの墳墓を見たことがありませぬ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし権兵衛さんは、
頬髯
(
ほおひげ
)
に
埋
(
うず
)
まった青白い顔に、陰性の
凄
(
すご
)
い眼を光らせて
睨
(
にら
)
みつけるばかりで、微笑を浮かべた事さえなかった。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
かれらが女を避けるのは、彼女の立ち居があまりに乱暴で、
棘
(
とげ
)
とげしくって、また仮借のない
凄
(
すご
)
いような毒口をきくからであった。
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
眼の
凄
(
すご
)
い、口がお
腹
(
なか
)
の辺についた、途方もない大きな
鱶
(
ふか
)
が、矢のように追いかけてきて、そこいらの水を
大風
(
おおかぜ
)
のように動かします。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
▼ もっと見る
この女は、腹をぐるりと一巻きにして、
臍
(
へそ
)
のところに朱い舌を出した蛇の
文身
(
いれずみ
)
をしていた。私は九州で初めてこんな
凄
(
すご
)
い女を見た。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
このもの
凄
(
すご
)
い
虞
(
おそ
)
れが昼も夜も私を悩ました。昼はそのもの思いの
呵責
(
かしゃく
)
がひどいものであったし——夜となればこのうえもなかった。
早すぎる埋葬
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
三十九 七日—六日—五日—日数が残り少なくなるに連れ、空に輝く眼の光が益々
凄
(
すご
)
くなって来る。復讐に渇している怪物の眼なんだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
袂
(
たもと
)
を振り切って行こうとする時に、金蔵の
面
(
かお
)
が
凄
(
すご
)
いほど
険
(
けわ
)
しくなっていたのに、お豊はぞっとして声を立てようとしたくらいでしたが
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呆
(
あき
)
れるほど自信のないおどおどした表情と、若い年で女を知りつくしている
凄
(
すご
)
みをたたえた
睫毛
(
まつげ
)
の長い眼で、じっと
見据
(
みす
)
えていた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
『オヤそう、
如何
(
どん
)
な顔をして居て? 私も見たいものだ。』と里子は
何処
(
どこ
)
までも冷かしてかゝった。すると母は
凄
(
すご
)
いほど顔色を変えて
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ホラシオは
間
(
ま
)
がぬけた。オフィリャの
狂態
(
きょうたい
)
になっての出は
凄
(
すご
)
く好かった。
墓場
(
はかば
)
で
墓掘
(
はかほり
)
の歌う声が実に好く、仕ぐさも軽妙であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
へんに
凄
(
すご
)
んだり力んだりしたところのない勤労者のこころもちで、小さい町工場での若い勤労者の生活と、そこにいる気のよい
小説と現実:小沢清の「軍服」について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
凄
(
すご
)
いものが手元から、すうすうと逃げて行くように思われる。そうして、ことごとく
切先
(
きっさき
)
へ集まって、
殺気
(
さっき
)
を一点に
籠
(
こ
)
めている。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
凄
(
すご
)
さに女がおびえてもいるように見えるのを、源氏はあの小さい家におおぜい住んでいた人なのだから道理であると思っておかしかった。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ビレラフォンが聞いて来たことが本当なら、おそろしいカイミアラが
住処
(
すみか
)
としているのは、それらの
凄
(
すご
)
いような谷の一つでした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
劇場
(
しばい
)
で女が切殺される時、きゃアとかあれイとか云うが、そんな事を云ったってお
前
(
めえ
)
には分らねえが、
凄
(
すご
)
いものだ、己も怖かった
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
トあせるばかりで
凄
(
すご
)
み文句は以上見附からず、そしてお勢を視れば、
尚
(
な
)
お文三の顔を凝視めている……文三は
周章狼狽
(
どぎまぎ
)
とした……
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
実
(
げ
)
に顔の色は
躬
(
みづから
)
も
凄
(
すご
)
しと見るまでに変れるを、庭の内をば
幾周
(
いくめぐり
)
して我はこの色を隠さんと
為
(
す
)
らんと、彼は
心陰
(
こころひそか
)
に
己
(
おのれ
)
を
嘲
(
あざけ
)
るなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その輪廓の正しい顔は
凄
(
すご
)
いほど澄みわたって、
神々
(
こうごう
)
しいと云ってもいゝような美しさが、勝平の不純な心持ちをさえ、
浄
(
きよ
)
めるようだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その夜は、
凄
(
すご
)
い月夜でした。夜ふけてから私はひとりで外へ出て見ました。このあたりも、まず、あらかた焼かれていました。
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこで庭球部から
凄
(
すご
)
い苦情が出て、さあ誰が昨日最後にラケットを握つたかを
虱
(
しらみ
)
つぶしに突きつめられた果、私の不注意といふことになり
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
主翁はもう奇怪な書生に対する恐れもなくなっていた。書生は
凄
(
すご
)
い笑顔を見せた
後
(
のち
)
に右の手をあげて何も云うなと云うようにそれを
揮
(
ふ
)
った。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それと違って、スカンクスの奥さんは
凄
(
すご
)
いような美人で、鼻は高過ぎる程高く、切目の長い
黒目勝
(
くろめがち
)
の目に、有り余る
媚
(
こび
)
がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
黄金色
(
わうごんいろ
)
の
金盞花
(
きんせんくわ
)
、男の夢に
通
(
かよ
)
つてこれと
契
(
ちぎ
)
る
魑魅
(
すだま
)
のもの
凄
(
すご
)
い
艶
(
あで
)
やかさ、これはまた
惑星
(
わくせい
)
にもみえる、或は悲しい「夢」の愁の髮に燃える火。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
『あれ、
向
(
むか
)
うの
峰
(
みね
)
を
掠
(
かす
)
めて、
白
(
しろ
)
い、
大
(
おお
)
きな
竜神
(
りゅうじん
)
さんが、
眼
(
め
)
にもとまらぬ
迅
(
はや
)
さで
横
(
よこ
)
に
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
かれる……あの
凄
(
すご
)
い
眼
(
め
)
の
色
(
いろ
)
……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
喪
(
も
)
の国へ帰り
行
(
ゆ
)
く船と申す如き心地も
此夜頃
(
このよごろ
)
に深く身に沁み
候
(
さふら
)
ひしか。ピアノの音、蓄音器の声もせず、波の
響
(
ひゞき
)
のみ
凄
(
すご
)
げに立ち
居
(
を
)
り申し
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「でもろくろ首のお鳥の方が美人といふんでせうね。あれは
凄
(
すご
)
いが、これは可愛い方で、あつしは誰が何んと言つても
此方
(
こつち
)
へ札を入れますよ」
銭形平次捕物控:167 毒酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
千恵ひとりで、もの
凄
(
すご
)
いほど明るい月夜でした。芝生がいちめんまるで砂浜みたいに白く浮いて、遠くの松原が黒ぐろと影を描いてゐました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そのうち、家中の人達の眼に、当の若殿頼正が、日に日に
凄
(
すご
)
いように衰弱するのが、不思議な事実として映るようになった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ね、向うと此方に立ってね、剣を持って互に真中に進み寄ると、突き合い切り合いをやったんだよ、
凄
(
すご
)
かったんだろうな。
決闘場
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
眼も何かを見た瞬間、そのまま
硬
(
こ
)
わばったように動かない。——その情景は、漁夫達の胸を、
眼
(
ま
)
のあたり見ていられない
凄
(
すご
)
さで、えぐり刻んだ。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「そうやった。眼が
凄
(
すご
)
いように
釣
(
つ
)
り上がって、お園さんのあの細い首が抜け出たように長うなって、
怖
(
こわ
)
いこわい顔をして」
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
これもやはり『奥の細道』に在る句で、
折節
(
おりふし
)
五月雨の降る頃であったので、最上川の水勢を増してもの
凄
(
すご
)
い勢で流れているのを咏じたのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
一見してぞっとするような
凄
(
すご
)
みのある人でありますけれど、その行なうところを見るとそういう凄い殺伐の方でなくって
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
板倉の心臓が、えらい
凄
(
すご
)
さで波を打って、胸がぐうッと盛り上ったりぐうッと
凹
(
へこ
)
んだりしてたけど、全身麻酔云うたらあないなるもんか知らん。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこで私が精々ぱり・ごろめかして独りで
凄
(
すご
)
がっているところへ、突然この「港のわたり」をつけたやつがあるんだが
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
内心
如夜叉
(
にょやしゃ
)
の
譬
(
たとえ
)
通りです。第一あなたがたの涙の前には、誰でも
意気地
(
いくじ
)
がなくなってしまう。(小野の小町に)あなたの涙などは
凄
(
すご
)
いものですよ。
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
凄
(
すご
)
いといって、生れてから、こんな凄い気がしたことはない——と、お綱は後で、万吉にもしみじみ話したことである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と検事が云ったが、
凄
(
すご
)
い当りをみせた大江山も
至極
(
しごく
)
同感
(
どうかん
)
だった。しかしジュリア達の出演時刻のこともあるので、時間が足りないから
止
(
や
)
めにした。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これらは深海の底にできた火山であって、噴火の時は、もの
凄
(
すご
)
い景観を呈したことであろう。ハワイの付近は、現在は約二万フィートの深海である。
黒い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「山里は冬ぞさみしさまさりける、人目も草もかれぬと思へば」秋の山里とてその通り、宵ながら
凄
(
すご
)
いほどに淋しい。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
畜生もう逃さんぞ。逃すものか。
火炙
(
あぶ
)
りだ。捕まえろ。捕まえろ。入り乱れて聞こえて来るのだ。どすどすと
凄
(
すご
)
い足音が地鳴りのように響いて来る。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
鮨桶を抱へ、花道にて反身になりての見えの極めて
凄
(
すご
)
かりしため、幸四郎はいつもわつと受けさせしよしなるが、菊五郎もなかなかの大舞台なりき。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
これもまた凄さを具象化したものとは言えるであろうが、しかし人の
凄
(
すご
)
さの表情を類型化したものとは言えない。総じてそれは人の顔の類型ではない。
面とペルソナ
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そうして、彼女のひどくやつれた、
凄
(
すご
)
いほど美しい顔を眺めて、なんとなくぞっとするような感じを起こしました。
メデューサの首
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
以上
(
いじやう
)
を
概括
(
がいくわつ
)
して
其
(
その
)
特質
(
とくしつ
)
を
擧
(
あ
)
げると、
神佛
(
しんぶつ
)
は
尊
(
たうと
)
いもの、
幽靈
(
ゆうれい
)
は
凄
(
すご
)
いもの、
化物
(
ばけもの
)
は
可笑
(
おか
)
しなもの、
精靈
(
せいれう
)
は
寧
(
むし
)
ろ
美
(
うつく
)
しいもの、
怪動物
(
くわいどうぶつ
)
は
面白
(
おもしろ
)
いものと
言
(
い
)
ひ
得
(
う
)
る。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
道々、もの
凄
(
すご
)
い火傷者を見るにつけ、甥はすっかり気分が悪くなってしまい、それ以来元気がなくなったのである。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ところが、その頃、船の前端にある彼の部屋に、夜遊びに行ってみると、何かのきっかけで、Kさんが、「女子選手ッて、みんな、
凄
(
すご
)
いのばかりだね」
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
自然界の何か異様な物
凄
(
すご
)
いものが今にも現われて来はしないかと、クリストフはたえずびくびくしていた。彼は駆け出した。胸がひどく
動悸
(
どうき
)
していた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
凄
常用漢字
中学
部首:⼎
10画
“凄”を含む語句
物凄
凄然
凄惨
凄愴
凄気
凄婉
凄寥
凄々
凄味
凄艶
凄腕
凄文句
凄涼
凄壮
幽凄
凄絶
凄烈
凄慘
凄風
凄美
...