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俥
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くるま
ふりがな文庫
“
俥
(
くるま
)” の例文
馬鹿野郎
(
ばかやらう
)
、
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
る。まるで
文句
(
もんく
)
が
分
(
わか
)
らないから、
巖谷
(
いはや
)
が
俥
(
くるま
)
で
駈
(
か
)
けつけて、もう
内
(
うち
)
へ
來
(
き
)
てゐるんだ。うつそりめ、
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私たちは時間に
俥
(
くるま
)
で牛込の家を出た。暑い日であった。メリンスの風呂敷包みの骨壺入りの箱を膝に載せて弟の俥は先きに立った。
父の葬式
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
何の
前触
(
まえぶ
)
れもしてなかったことだし、停車場には
勿論
(
もちろん
)
誰も出迎えに来てはいなかったので、私達は
直
(
すぐ
)
駅前の
俥
(
くるま
)
に乗ってホテルに向った。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
前の晩に
悉皆
(
すつかり
)
荷造りして置いた
見窄
(
みすぼ
)
らしい持物を一臺の
俥
(
くるま
)
に積み、夜逃げするやうにこつそりと濃い朝霧に包まれて濕つた裏街を
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
白い毛糸の、ボヤボヤした温かい
襟巻
(
えりまき
)
に包まれながら、姉に抱かれながら、この、本郷の通りを
俥
(
くるま
)
に乗つて走つてゐたことがある。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
▼ もっと見る
いやそれよりも僕が思はず自分の眼を疑つたのは、その前の
俥
(
くるま
)
に乗つてゐるのが、ほとんど紛れもなくあの支那婦人だつたことだ。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そうして、やっと
笄橋
(
こうがいばし
)
の
袂
(
たもと
)
まで来ると、不意に左手の坂から
俥
(
くるま
)
が駈け降りて来て私とすれ違った。私はその拍子にチラリとふり向いた。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
歌の頭字の五文字を胸に思い
泛
(
うか
)
べただけで急いで帰宅の
俥
(
くるま
)
に乗り込んだだけを記して、早くこの苦渋で
憂鬱
(
ゆううつ
)
な場面の記述を切上げよう。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その頃月が瀬には、
俥
(
くるま
)
に
狗
(
いぬ
)
の
先曳
(
さきびき
)
がついて、
阪路
(
さかみち
)
にかゝると
襷
(
たすき
)
に
首環
(
くびわ
)
をかけた狗が、汗みどろになつてせつせと俥の先を曳いたものだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
顔を洗っているとき、彼は下女に
俥
(
くるま
)
を二台云いつけるお延の声を、あたかも自分が
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てられでもするように
世話
(
せわ
)
しなく聞いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俥
(
くるま
)
から降りる婦人のすがたを見ると、女中はエプロンを顔に押し当てて泣き出した。そして、自分が犯罪者でもあるかのように
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「岸本様——
只今
(
ただいま
)
ここに参り居り候。久しぶりにて御話承りたく候。御都合よろしく候わば、この
俥
(
くるま
)
にて
御出
(
おいで
)
を御待ち申上げ候」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
薬師寺の裏門から六条村へ出て、それからまっすぐに東へ、佐保川の流域である泥田の原のなかの道を、
俥
(
くるま
)
にゆられながら帰る。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
私の通つた時には、その崖には
俥
(
くるま
)
すら登る事が出來なかつた。
九十九折
(
つづらをり
)
の急坂を登つて行くと、路に山茶花の花が散つてゐた。
樹木とその葉:36 自然の息自然の声
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
市ヶ谷の奥様が驚いて
俥
(
くるま
)
で来られた。わたしの報告と青木家の報告とがお
邸
(
やしき
)
でカチ合つたのだから、驚かれるのも無理はない。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
私はただ、私の
俥
(
くるま
)
が
両国橋
(
りょうごくばし
)
の上を通る時も、絶えず口の中で
呟
(
つぶや
)
いていたのは、「ダリラ」と云う名だった事を記憶しているばかりなのです。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
津村はその期待に胸を
躍
(
おど
)
らせつつ、晴れた十二月のある日の朝、
上市
(
かみいち
)
から
俥
(
くるま
)
を
雇
(
やと
)
って、今日私たちが歩いて来たこの街道を国栖へ急がせた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「じゃア君、頼むよ、一時間でも早く届くように。」と待たして置いた
俥
(
くるま
)
に乗移って、「
片脚
(
かたあし
)
棺桶
(
かんおけ
)
に掛ってるんだから気が短かくなった。」
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
道々も
故意
(
わざ
)
と平気な顔をして、往来を眺めながら、
勉
(
つとめ
)
て心を紛らしている
中
(
うち
)
に、馴染の町を幾つも過ぎて
俥
(
くるま
)
が
停車場
(
ステーション
)
へ着いた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
旦那を
鉱山
(
やま
)
へ還してから、女が一里半程の道を
俥
(
くるま
)
に乗って、壮太郎のところへ
遣
(
や
)
って来るのは、大抵月曜日の午前であった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夜の道を
俥
(
くるま
)
を連ねて停車場へ行った。私は母の膝に抱かれて俥に乗っていたのだろうが、前をゆく俥の後姿が眼に残った。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ようよう電車賃が片道あったばかりだから
俥
(
くるま
)
にも乗らず、幸い夏の夜で歩くのによかったから、須田町から喜久井町までてくてく歩いて戻った。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
僕は
係員
(
かかりいん
)
の先生やお医者さんにもことさら注意を頼んで、その教場を去って再び
玄関
(
げんかん
)
に来たときは、母なる人の姿も
俥
(
くるま
)
の影も跡が見えなかった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
どうしても
俥
(
くるま
)
が得られなく、自分は重い体を汗みじくに急いだ。電車道まで来てもまだ電車もない。往来の人はいずれも足早に右往左往している。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
その為め構内車夫等は私の家の前にいつぱい
俥
(
くるま
)
を
列
(
なら
)
べて客の寄り勝手を悪くしたり、
他所
(
よそ
)
から客を乗せて来る場合は他の宿屋へ送り込んだりした。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
車夫の音松はそう言ったが、
俥
(
くるま
)
の上で振り返って見てもそれらしい光は見えず、雨もよいの風はひいやりと涼しく、夜空がいたずらに赤茶けていた。
円朝花火
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「じゃ、金さんの弟分にでもなるさ」と言い捨てて、お光はつと火鉢を離れて二階へ行こうとすると、この時ちょうど店先へガラガラと
俥
(
くるま
)
が留った。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
俥
(
くるま
)
が一間ばかりの前へ来たときに、俥の上の美しい人が
鄭寧
(
ていねい
)
な
会釈
(
えしゃく
)
をして通りすぎたので、楠緒さんだったということに気がおつきなされたのでした。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それが
瓢形
(
ひさごがた
)
に
駒岡
(
こまをか
)
と
記入
(
きにふ
)
したる
銀鍍金
(
ぎんめつき
)
の
徽章
(
きしやう
)
を一
樣
(
やう
)
に
着
(
つ
)
け、
同
(
おな
)
じ
表
(
しるし
)
の
小旗
(
こはた
)
を
立
(
た
)
てた
俥
(
くるま
)
に
乘揃
(
のりそろ
)
つて、
瓢簟山
(
ひようたんやま
)
へと
進軍
(
しんぐん
)
?したのは、なか/\のお
祭
(
まつ
)
り
騷
(
さは
)
ぎ※
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
やがて式は
了
(
おわ
)
った。会葬者に対する
挨拶
(
あいさつ
)
があると、会葬者達は、我先にと帰途を急いだ。式場の前には
俥
(
くるま
)
と自動車とが
暫
(
しばら
)
くは右往左往に、入り
擾
(
みだ
)
れた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
俥
(
くるま
)
で波止場へ馳けつけるとその人はいま出帆したところであった。なぜ今日にかぎって汽車が延着してその人に逢えなかったであろうかと歎き悲しむ。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
秋の夕日に清の乗つた
俥
(
くるま
)
の輪がきら/\と輝いて、希望に充ちた清の眼には確かに
美
(
うる
)
はしいものゝ一つであつた。
若芽
(新字旧仮名)
/
島田清次郎
(著)
それから、改札口を跳び越えんばかりにして、駅の出口に出たが、なにしろ物凄い土砂降りの最中で、声をかぎりに呼べど、
俥
(
くるま
)
もなにも近づいて来ない。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
醫者
(
いしや
)
は
特別
(
とくべつ
)
の
出來事
(
できごと
)
がなければ
俥
(
くるま
)
には
乘
(
の
)
らないので、いつも
朴齒
(
ほうば
)
の
日和下駄
(
ひよりげた
)
で
短
(
みじか
)
い
體躯
(
からだ
)
をぽく/\と
運
(
はこ
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
やがて彼は
鉄鞭
(
てつべん
)
を
曳鳴
(
ひきなら
)
して大路を右に出でしが、二町ばかりも行きて、
乾
(
いぬゐ
)
の
方
(
かた
)
より狭き坂道の開きたる
角
(
かど
)
に来にける
途端
(
とたん
)
に、風を帯びて
馳下
(
はせくだ
)
りたる
俥
(
くるま
)
は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
暗い外で客と話している
俥夫
(
しゃふ
)
の大きな声がした。間もなく、
門口
(
かどぐち
)
の
八
(
や
)
つ
手
(
で
)
の葉が
俥
(
くるま
)
の
幌
(
ほろ
)
で揺り動かされた。俥夫の持った
舵棒
(
かじぼう
)
が玄関の石の上へ降ろされた。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
夕方遅くなったりなんぞすると、母は
吾妻橋
(
あずまばし
)
の
袂
(
たもと
)
から
俥
(
くるま
)
をやとって、大川を渡って帰った。そんなとき、私は母の
膝
(
ひざ
)
の上に乗せられるのが好きだった。……
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼らは桜木町から
俥
(
くるま
)
に乗った。乱暴な港の俥夫は胸をのめらせ、支那の
苦力
(
クーリー
)
のように叫びながら駆け出した。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
否
(
いや
)
寧
(
むし
)
ろ
嚇
(
おど
)
し付けて
俥
(
くるま
)
に乗って此処まで来たが車夫の密告が怖くなった処から、車夫を殺して着物を剥ぎ、そいつを着て車夫に化け、俥を
曳
(
ひ
)
いて逃亡したのだろう。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
歩いて行くというわけにも行きませんからね。
俥
(
くるま
)
賃と、診察料とを払ってくださいまし。それに、……
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
『だつて私のちひさい時分に、よくAの叔母さんつて人が
俥
(
くるま
)
に乗つて来た事を覚えてゐますもの』
嫁泥棒譚
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
俥
(
くるま
)
の幌を
外
(
は
)
ずさせ夫人は
紫陽花
(
あじさい
)
色に澄みわたった初夏の空に、パラソルをぬっとかざしていた。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
その街道にはいろいろなものが通る。熊谷行田間の
乗合馬車
(
のりあいばしゃ
)
、青縞屋の
機回
(
はたまわ
)
りの荷車、そのころ
流行
(
はや
)
った豪家の旦那の自転車、それに
俥
(
くるま
)
にはさまざまの人が乗って通った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「おい、こら——」と彼は守衛がかりの男をいきなり呼びつけて云った、きいきい
軋
(
きし
)
むような声であった、「わからんか、
俥
(
くるま
)
を呼べえ——禄ぬすッとめが、走らんか——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
三木善八の三代にわたってその
俥
(
くるま
)
をひいた爺さんの女房が飼い殺しになっていて、山県公の遊び振りや三谷の贅沢振り、今戸の寮に住む人々の風流振りを話したものである。
みやこ鳥
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
或時一人の老車夫の
俥
(
くるま
)
に乗って、道々その身の上話を聞きながら行ったことを記憶している。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
俥
(
くるま
)
に乘る人と
曳
(
ひ
)
く人と
教會
(
ミツシヨン
)
に行く人と
賭場
(
とば
)
に行く人とが出來るのであらうか——際限も無く此様なことを考へ出して、何んとか解決を得やうと
踠
(
あが
)
いて見た。雖然解らなかった。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
その日の夕刻、江崎満吉の使いといって、一人の
俥
(
くるま
)
ひきが、新仲町の玉井組を訪れて来た。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
夕餐
(
ゆふめし
)
の仕度を下女に任せて、大急ぎで
俥
(
くるま
)
に乘つて、牛込から芝の西久保まで驅け付けた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
まもなく寒い外に
俥
(
くるま
)
の
鈴
(
べる
)
がなりひゞいて、背の小さな青い顔の、黒い服を着た男が入って来た。すると産婆が急に席をうごいて、口をゆがめて笑ひながら医者に長い挨拶をした。
かなしみの日より
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
“俥”の意味
《名詞》
(くるま)人力車。明治中期から戦前までの用法。戦後は、「くるま」は自動車を意味するようになり、この文字を使うこともまれになった。
(出典:Wiktionary)
“俥(
人力車
)”の解説
人力車(じんりきしゃ、人力俥)とは、人の力で人を輸送するために設計された車。
日本では、主に明治・大正期に移動手段とし用いられた。現在では「観光人力車」が観光地などで使われている。
(出典:Wikipedia)
俥
漢検1級
部首:⼈
9画
“俥”を含む語句
俥夫
空俥
俥引
俥曳
俥屋
辻俥
俥代
俥賃
合乗俥
相乗俥
幌俥
俥宿
宿俥
待俥
朦朧俥夫
人力俥夫
自用俥
俥上