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零
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こぼ
ふりがな文庫
“
零
(
こぼ
)” の例文
別な
言
(
ことば
)
でいふと
零
(
こぼ
)
れ
種
(
たね
)
だ。だから母夫人の腹に、腹の違ツた
兄
(
あに
)
か弟が出来てゐたならば勝見家に取ツて彼は
無用
(
むよう
)
の
長物
(
ちやうぶつ
)
であツたのだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
給仕
(
ボーイ
)
頭くらいの者に入れ知恵されて持って来た話というのは、たかだか気位の高い妻の
讒訴
(
ざんそ
)
をして愚痴を
零
(
こぼ
)
すくらいのものだろうと
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この
悪戯者
(
いたづらもの
)
の考へでは女に対する仕打は笑ふか、忘れるかしてさへゐればそれでいいので、涙を
零
(
こぼ
)
すなどは贅沢な沙汰に過ぎなかつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
遠い亭座敷から笛の声がゆるく流れて来て、吹くともない春風にほろほろと
零
(
こぼ
)
れて落ちる桜の花びらが、女の
鬢
(
びん
)
の上に白く宿った。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
植源の忙しい働き仕事や、絶え間のないそこの
家
(
うち
)
のなかの
紛紜
(
いざこざ
)
に飽はてて来たお島は、息をぬきに家へやって来ると父親に
零
(
こぼ
)
した。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
彼処
(
かしこ
)
にて恋人の
文
(
ふみ
)
得
(
う
)
る人もあるべしなど、あやにくなることの思はれ
候
(
さふら
)
て、ふと涙
零
(
こぼ
)
し
候
(
さふらふ
)
など、いかにもいかにも不覚なる
私
(
わたくし
)
に
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
おつたは
稍
(
やゝ
)
褐色
(
ちやいろ
)
に
腿
(
さ
)
めた
毛繻子
(
けじゆす
)
の
洋傘
(
かうもり
)
を
肩
(
かた
)
に
打
(
ぶ
)
つ
掛
(
か
)
けた
儘
(
まゝ
)
其處
(
そこ
)
らに
零
(
こぼ
)
れた
蕎麥
(
そば
)
の
種子
(
み
)
を
蹂
(
ふ
)
まぬ
樣
(
やう
)
に
注意
(
ちうい
)
しつゝ
勘次
(
かんじ
)
の
横手
(
よこて
)
へ
立
(
た
)
ち
止
(
どま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「あ、
拙
(
まづ
)
い
手付
(
てつき
)
……ああ
零
(
こぼ
)
れる、零れる! これは恐入つた。これだからつい
余所
(
よそ
)
で飲む気にもなりますと
謂
(
い
)
つて可い位のものだ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
熱さへ降れば直ぐに出社するからとあれだけ哀願して置いたものを、さう思ふと他人の心の情なさに思はず不覺の涙が
零
(
こぼ
)
れるのであつた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その
草染
(
くさぞめ
)
の左の袖に、はらはらと
五片三片
(
いつひらみひら
)
紅
(
くれない
)
を点じたのは、
山鳥
(
やまどり
)
の
抜羽
(
ぬけは
)
か、
非
(
あら
)
ず、
蝶
(
ちょう
)
か、
非
(
あら
)
ず、
蜘蛛
(
くも
)
か、
非
(
あら
)
ず、桜の花の
零
(
こぼ
)
れたのである。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無人となった境地には、月光ばかりが
零
(
こぼ
)
れていた。しかるにこのころ一人の武士が、
下谷
(
したや
)
の町の一所に、腕を組みながらたたずんでいた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「せっかく
親爺
(
おやじ
)
の
記念
(
かたみ
)
だと思って、取って来たようなものの、しようがないねこれじゃ、
場塞
(
ばふさ
)
げで」と
零
(
こぼ
)
した事も一二度あった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの何の感覚もない氷魚のような娘のおきみさえ、粥の道具のあくのを待つ間、あの唄声を聞いて、俯向いて涙をぽろ/\と
零
(
こぼ
)
していた。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
斯うして日毎に私達は一時間に
零
(
こぼ
)
す語数が無に近い程減少して、私達の肉体も無になるのではないかと疑はねばならなかつた。
母
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
足
許
(
もと
)
の砂にも、
小砂利
(
こじゃり
)
にも、
南豆
(
ナンキン
)
玉の青いのか、色
硝子
(
ガラス
)
の欠けらの緑色のが
零
(
こぼ
)
れているように、光っているものが交っている。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「かうなつちや經費が溜らん。」と、父は
零
(
こぼ
)
してゐたが、避病院を島へ建てたことを、祖母などに向つて
内々
(
ないない
)
で後悔してゐた。
避病院
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
それに子供が多いから女中や婆やは手一杯で頻に愚痴を
零
(
こぼ
)
す。
他所
(
よそ
)
の家では主人は少くとも日中は勤めに出るから主婦はその間息がつける。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
両親も其は同じ事で、散々私に悩まされながら、
矢張
(
やっぱり
)
何とも思っていない。唯影でお
祖母
(
ばあ
)
さんにも困ると、お
祖母
(
ばあ
)
さんの愚痴を
零
(
こぼ
)
すばかり。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
すると
阿兄
(
あにき
)
は其が
嬉
(
うれ
)
しかつたと見え、につこり笑つて、
軈
(
やが
)
て私の顔を眺め乍らボロ/\と涙を
零
(
こぼ
)
した。それぎりもう阿兄は口を利かなかつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
利章も成長してから、筑前守には
不便
(
ふびん
)
を加へられてゐる。それがどうして此訴を起したかと云つて、内藏允は涙を
零
(
こぼ
)
した。
栗山大膳
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
仕事やら、台所やら、掃除やら、こんな広い家を兄の気に入るとおりに出来ない、と、よく康子は清二に
零
(
こぼ
)
すのであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
瑞木と花木が朝の涙などは
跡方
(
あとかた
)
もない顔して帰つて来た。滿と健も帰つて来た。何と思つたか健が手紙を涙を
零
(
こぼ
)
しながら書いて居る母の傍へ来て
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
お話二つに分れまして、丈助は
空涙
(
そらなみだ
)
を
零
(
こぼ
)
しながら根本の宅へ帰って参りますと、おみゑは案じて居りまする。門口から
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何故私の手は
戰
(
をのゝ
)
いたか、何故私は知らぬ間に手にした珈琲茶碗の中味を半分ばかりも、
敷皿
(
しきざら
)
の中に
零
(
こぼ
)
してしまつたか、そんなことを考へなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それは十分の一にも相当しないと
零
(
こぼ
)
した位で、かなりあった土地もおおかた抵当に入ってしまい、あまつさえ医師への払いなどはそのままの状態で。
瘤
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
今日もカスタニアンと云う黄いろい
薔薇
(
ばら
)
がざくりと床の間の
花瓶
(
かびん
)
に差されている。
銀杏
(
いちょう
)
の葉、すこし
零
(
こぼ
)
れてなつかしき、薔薇の
園生
(
そのう
)
の霜じめりかな。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
玉章先生少しく持て余してある人を訪い「どんなに絵具を使っても描きようがない」と
零
(
こぼ
)
す、「いや、それはあなたの手腕に対する相当の報酬です」
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
常磐線
(
じょうばんせん
)
の暗い車窓を眺めながら、静かに語り出される御話を伺っている
中
(
うち
)
に、段々切迫した気持がほぐれて来て、今にも涙が
零
(
こぼ
)
れそうになって困った。
指導者としての寺田先生
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
幸子はこれを読んで行くうちに、先日道玄坂の家の門前で、自動車の窓を隔てて別れの
挨拶
(
あいさつ
)
を交した姉の、涙をぽろぽろ
零
(
こぼ
)
していた顔を思い浮かべた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夏の暁、潮風涼しく、松の林の下道
零
(
こぼ
)
るる露の
滋
(
おほ
)
きとき、三々また五々、老幼を問はず、男女を択ばず、町に住める人々の争て、浜辺に下りゆくを見る。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
彼は古本屋らしくない、きゃしゃな、若い男だったが、細君の死骸を見ると、気の弱い
性質
(
たち
)
と見えて、声こそ出さないけれど、涙をぼろぼろ
零
(
こぼ
)
していた。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
母は獨り言のやうにかう言つて、あちらの
市
(
まち
)
のはづれの片側町に比較した。母はこの度の出來事についてはもう
何
(
なん
)
にも
零
(
こぼ
)
したりするやうな事はなかつた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
鶏
(
とり
)
の足痕みたいに
斑々
(
はんはん
)
と、血が
零
(
こぼ
)
れて行く。——右往左往する人々が、それを踏みつけるので殿中は赤く汚れた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうぞ手伝って下さい。あまり沢山あって運び切れないので困っているのです。砂糖は向うの広場に落ちております。
大方
(
おおかた
)
砂糖車から
零
(
こぼ
)
れたのでしょう」
猿小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
萠円山人
(著)
処々に
零
(
こぼ
)
したやうに立つてゐる赭ちやけた砂山と、ひらみつくやうに生えてゐる
樟
(
くす
)
や樫の森などの続いてゐる果てなる空、南の方は
天
(
そら
)
が
鶏卵
(
たまご
)
色に光を帯びて
伊良湖の旅
(新字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
吉里ははらはらと涙を
零
(
こぼ
)
して、「これから頼りになッておくんなさいよ」と、善吉を見つめた時、平田のことがいろいろな方から電光のごとく心に
閃
(
ひら
)
めいた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
それだのに何としたか意久地なしの
霊魂
(
たましひ
)
がまたトスカ的に
滅入
(
めい
)
り込む、気が
悄気
(
しよげ
)
る。ポロポロと涙が
零
(
こぼ
)
れる。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
もうその頃は物事に感じ易く、何かというと涙を
零
(
こぼ
)
すようになって、すっかり人間が変ってしまいました。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
井戸一帯に燐の粉が
零
(
こぼ
)
れて、それに
鬱気
(
うつき
)
を生じ、井戸の中、
覆
(
ふた
)
の石、周りの土までが夜眼にも
皓然
(
こうぜん
)
と輝き渡っていたその理を、彼は不幸にも
弁
(
わきま
)
えなかったのだ。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
はしゃぎたくて堪らない小娘のように上衣を引張り、スカートのくぼへ飲みかけたコーヒーを
零
(
こぼ
)
した。
歩む
(新字新仮名)
/
戸田豊子
(著)
梢一杯に
撓
(
たわ
)
み
零
(
こぼ
)
れるほど実ったり、美しい真赤なぐみの玉が塀のそとへ枝垂れ出したのや、青いけれど甘みのある林檎、杏、雪国特有のすもも、毛桃などが実った。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
洗い髪のハラハラ
零
(
こぼ
)
れるのを掻き揚げながら、「お上さんと言や、金さん、今日私の来たのはね」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
かなり真面目に「なりますとも」と答えていたあの頃の己に残っていた初心さは実に涙が
零
(
こぼ
)
れる。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
……で、二人で湯を沸して、飯を喰ひ乍ら、僕は今から乞食をして
郷國
(
くに
)
へ歸る所だツて、何から何まで話したのですが、天野君は大きい涙を幾度も/\
零
(
こぼ
)
して呉れました。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
精根つきるまで喚きつづけていたが、やがてしまいには熱い涙をぼろぼろ
零
(
こぼ
)
しながら、それまで喚き立てていた言葉とは何の脈絡もない文句を、小さな声で唱えるのだった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
お前は言った、「おれは塩をひとつまみ
後
(
うしろ
)
へ投げる……
冗談
(
じょうだん
)
に」と。「おれは
零
(
こぼ
)
れたぶどう酒で頭をこする……冗談に」と。「おれは司祭を見て剣を鳴らす……冗談に」と。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
『
下
(
くだ
)
らんことを
貴方
(
あなた
)
は
零
(
こぼ
)
していなさる。
医者
(
いしゃ
)
がいやなら
大臣
(
だいじん
)
にでもなったらいいでしょう。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
活東子
(
くわつとうし
)
がゴホン/\
咳
(
せき
)
をしながら、
赤土
(
あかつち
)
の
下
(
した
)
まで
掘入
(
ほりい
)
つて、
何
(
なに
)
も
出
(
で
)
ないと
零
(
こぼ
)
したのも
其頃
(
そのごろ
)
。
探検実記 地中の秘密:02 権現台の懐古
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
周囲は広い余地を残し、
鈴懸
(
すずかけ
)
の木立から思い出した様に枯葉が
零
(
こぼ
)
れて居た。垣根と云うのは石の柱と、其を結び付けて垂れ下った鉄鎖がある丈けで、人の出入も自由であった。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
先年歿したDという小説家は、自分には
訪問
(
ヴィジット
)
の能力がないと
零
(
こぼ
)
していたが、僕などもそのお仲間らしい。第一に他人の家の門口の戸をわが手であけるということが既に億劫だ。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
零
常用漢字
中学
部首:⾬
13画
“零”を含む語句
零落
零余子
零点
飄零
零敗
零砕
零細
断簡零墨
零陵
御零落
零下
零々落々
零露
凋零
零落果
零落末裔
零餘子
霜零而
飄零風泊
零羊
...