赤子あかご)” の例文
公爵夫人こうしやくふじんそのだいせつうたも、えず赤子あかごひどゆすげたりゆすおろしたりしたものですから、可哀相かあいさうちひさなのがさけぶので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その次に太郎兵衛が娘をよめに出す覚悟で、平野町の女房の里方さとかたから、赤子あかごのうちにもらい受けた、長太郎ちょうたろうという十二歳の男子がある。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
現在伝わっているのは乳の不足な赤子あかごなどに、布で包んでしゃぶらせるくらいなもので、是にも地方的にいろいろの名がある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうして泣き入る葉子を大事そうにかかえたまま、倉地は上体を前後に揺すぶって、赤子あかごでも寝かしつけるようにした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まだ乳房ちぶさにすがってる赤子あかごを「きょうよりは手放して以後親子の縁はなきものにせい」という厳敷きびしき掛合かけあいがあって涙ながらにお請をなさってからは今の通り
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
雪吹ふゞき其日のくれやみ次日つぎのひ晴天せいてんなりければ近村きんそんの者四五人此所をとほりかゝりしに、かの死骸しがい雪吹ふゞきうづめられて見えざれども赤子あかご啼声なくこゑを雪の中にきゝければ
九州の麒麟児きりんじとよばれるこの天才少年にかかっては、城代も家老もさながら赤子あかごにもひとしい存在です。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
……弁当の包みを膝にのせながら、微妙な季節の移り変わりに驚歎している赤子あかごのような無心な表情。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その日、武行者ぶぎょうじゃは一軒の山里の小酒屋にとびこんで、思わず、赤子あかごが乳を求めるように呼んでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ワハハハ……、おかしいですよ。名探偵明智小五郎、ざまはないですね。まるで赤子あかごの手を
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
病院では腹膜炎で患者が虫の気息いきを引き取ろうとしている。露西亜ロシアでは虚無党きょむとうが爆裂弾を投げている。停車場ステーションでは掏摸すりつらまっている。火事がある。赤子あかごが生れかかっている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(指輪の外に、腕時計、ブローチ、コムパクト、頸飾くびかざり等々があったことは勿論もちろんである)兎に角、何十年も奥畑家に奉公して、奥畑を赤子あかごの時から育てている婆やのことであるから
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
赤子あかご兒童じどう死體したいは、おほきい土器どきつぼれて特別とくべつはうむつてある場合ばあひおほいのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
えさ好えさ、赤子あかごじゃあるまいし。」そういうと男は「どっこいしょ。」と背後へかえった。母は子の頭を膝から起して「待っておい。」といって笑いながら縁側の方へ立った。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
君、怒リたもウコトなかレ。コノ失礼ヲ許シ給エ。我輩ハアワレナ男デアル。ナゼナラバ、我輩ハ英語ニイテ、聞キトルコトモ、言ウコトモ、ソノホカノコトモ、スベテ赤子あかごごとキデアル。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
五月の末にだれひとり待つ者もないのにやすやすと赤子あかごは生まれた。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼女はまた無心の赤子あかごに對して自分が堪へがたい愛情を覺えれば覺えるほど、彼女は堪へがたい悲しみに心をうばはれた。そして彼女はその悲しみのうちに、子供に云ひきかせてゐる自分自身を見た。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
すなわち大人にして赤子あかごの心を失わない者のいいに外ならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
赤子あかごらののなやみ、わら黒奴くろんぼ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
知ろしめされ賜うて後水尾帝ごみづをてい御製ぎよせいに「あはれさよ夜半よは捨子すてごなきやむは母にそへゆめや見つらん」とは夜更よふけ外面そともの方に赤子あかご泣聲なくこゑの聞えしは捨子にやあらんと最とあはれに聞えたりしが兎角するうちに彼泣聲なきごゑの止たりしかば如何せしやらんと思ひぬるうち又もや泣出しけるほどさていましば泣止なきやみしは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ありましたれど赤子あかごせるものがないとかきませば平常つねこゝろ承知しようちがならずとほして針仕事はりしごとるものふたつかはしましたと得意顏とくいがほ物語ものがたとくかげなるこそよけれとかきゝしがあやしのことよとうたがむね相談さうだんせばやのこゝろえぬ花子はなこさま/″\の患者くわんじやはなし昨日きのふ往診みまひ同朋町どうぼうちやうとやらしやとけばつゆたがはぬ樣子やうすなりそれほどまでには
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなわちウブメ鳥と名づくる一種の怪禽かいきんの話を別にして考えると、ウブメは必ず深夜に道のあぜに出現し赤子あかごを抱いてくれといって通行人を呼び留める。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まがかたなく其處そこには、普通あたりまへはなよりも獅子しゝぱな酷似そつくりの、ひどくそッくりかへつたはながありました、また其眼そのめ赤子あかごにしては非常ひじようちひさすぎました、まつたあいちやんは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかも平生へいぜい自分じぶんよりはるかに無力むりよく無能むのう赤子あかごであると、さら自分じぶんみとめざるをなくなつた。かれつてはあたらしい發見はつけんであつた。同時どうじ自尊心じそんしん根絶こんぜつするほど發見はつけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其次に、太郎兵衞が娘をよめに出す覺悟で、平野町の女房の里方さとかたから、赤子あかごのうちに貰ひ受けた、長太郎と云ふ十二歳の男子がある。其次に又生れた太郎兵衞の娘は、とくと云つて八歳になる。
最後の一句 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
夜の一時ごろにしかも軽く分娩ぶんべんして、赤子あかごは普通より達者である。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
赤子あかご
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
医術が大分進んで赤子あかごが死ななくなったかも知らぬが、永く生きない人が多くなった。急性の飢餓はなくなった代りに、慢性の凶作は常にあるようになった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
赤子あかごうなつたので、うかしたのではないかと、あいちやんは氣遣きづかはしげに其顏そのかほのぞみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かくすべての人に十の九まで見放された真中まなかに、何事も知らぬ余は、曠野こうやに捨てられた赤子あかごのごとく、ぽかんとしていた。苦痛なき生は余に向って何らの煩悶はんもんをも与えなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
神さまは赤子あかご初宮参はつみやまいりの日から、もう氏子をごぞんじであって、それが心に何を願っているかもよく知っていられるものと、昔からわたしたちは教えられていたのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
聞達ぶんたつほど彼の心に遠いものはなかった。彼はただありのままの彼として、宜道の前に立ったのである。しかも平生の自分よりはるかに無力無能な赤子あかごであると、さらに自分を認めざるを得なくなった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たった一人の村民をかせておきたい、またはたった一人の赤子あかごを増加したいというような小さな願望にも加担して、その一軒の家を助けて、というよりもむしろそれに代って
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
は間もなく明けた。赤子あかごの泣く声が家の中の寒い空気をふるわせた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)