トップ
>
素知
>
そし
ふりがな文庫
“
素知
(
そし
)” の例文
と屏風を開けて入り、其の人を見ると、秋月喜一郎という重役ゆえ、源兵衞は
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、胸にぎっくりと
応
(
こた
)
えたが、
素知
(
そし
)
らぬ
体
(
てい
)
にて。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
およそ父の弱点が喜びさうなところを
衝
(
つ
)
いて、
素知
(
そし
)
らぬ顔で父の気分を持ち直させることに、
気敏
(
けざと
)
い
幇間
(
ほうかん
)
のやうな妙を得てゐた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし、それと同時に、彼はつねに
素知
(
そし
)
らぬ顔で正義に味方し、自らそれと名乗らずして、誠実な革命主義に加担していた。
「にんじん」とルナアルについて
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
彼は感嘆の言葉を呑みこむと、また元の通り口を
噤
(
つぐ
)
んでしまった。が、さすがに若者は
素知
(
そし
)
らぬ顔も出来ないと見えて
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仔羊たちが、ごくごく乳を吸っている間、おっ
母
(
か
)
さん連は、
脇腹
(
わきばら
)
を鼻の頭で激しく
小突
(
こづ
)
かれながら、安らかに、
素知
(
そし
)
らぬ顔で、口を動かしている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
自分はお兼さんの
愛嬌
(
あいきょう
)
のうちに、どことなく
黒人
(
くろうと
)
らしい
媚
(
こび
)
を認めて、急に返事の調子を狂わせた。お兼さんは
素知
(
そし
)
らぬ風をして岡田に話しかけた。——
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
造麻呂、黙ってうなずき、
素知
(
そし
)
らぬ顔で
竹籠
(
たけかご
)
を編み続ける。なよたけ、
竹簾
(
たけすだれ
)
を下して、右手奥の部屋に消える。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
声に驚き、
且
(
か
)
つ
活
(
い
)
ける
玩具
(
おもちゃ
)
の、
手許
(
てもと
)
に近づきたるを見て、糸を手繰りたる
小児
(
こども
)
、
衝
(
つ
)
と
開
(
ひら
)
いて
素知
(
そし
)
らぬ顔す。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其中で私一人
其様
(
そん
)
な事を思うのは何だか
薄気味悪
(
うすきびわる
)
かったから、
狼狽
(
あわ
)
てて、いや、馬鹿気ているようでも、
矢張
(
やっぱり
)
必要の事なんだろうと
思直
(
おもいなお
)
して、
素知
(
そし
)
らん顔して
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「いずれ帰国した上で、ゆるゆるいたすが、船の中では一切
素知
(
そし
)
らぬふうを
粧
(
よそお
)
っているようにな。よいか」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そーっとはいり込んで、
陳列棚
(
ちんれつだな
)
の上に飛び上がって、ひょいと
帽子
(
ぼうし
)
に
化
(
ば
)
けて
素知
(
そし
)
らぬ顔をしていました。
不思議な帽子
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その彼の凝視の中には
不作法
(
ぶさはふ
)
なまでの直情徑行と、詮索的な
斷乎
(
だんこ
)
たる頑固さが動き、それは今迄この未知の客に對して
素知
(
そし
)
らぬ顏をしてゐたのも遠慮からではなく
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
すぐ新聞を目八
分
(
ぶ
)
にさし上げて、それに読み入って
素知
(
そし
)
らぬふりをしたのに葉子は気がついていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私達
(
わたくしたち
)
は三
尺
(
じゃく
)
ほど
隔
(
へだ
)
てて、
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
に
並
(
なら
)
んでいる、
木
(
き
)
の
切株
(
きりかぶ
)
に
腰
(
こし
)
をおろしました。そこは
監督
(
かんとく
)
の
神様達
(
かみさまたち
)
もお
気
(
き
)
をきかせて、あちらを
向
(
む
)
いて、
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かお
)
をして
居
(
お
)
られました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
見合せ居たりしがマア
誰
(
たれ
)
ならんと申すに傳吉
然
(
され
)
ば私し
隣
(
となり
)
に
住
(
すむ
)
彌太八と云ふ者の
由
(
よし
)
申し僞り金子を
騙
(
かた
)
り取りたるはと云ひながら昌次郎の
面
(
かほ
)
を見ればぎよつとせしが
素知
(
そし
)
らぬ體に
面
(
かほ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
白井はバスの来るのを待つて、それに乗り、やがて
素知
(
そし
)
らぬ振りで自分の家の格子戸を明けた。上り口の障子に火影がうつつてゐて、話声もしてゐながら誰一人出迎るものがない。
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
三四日前に橋の上で逢つた
限
(
きり
)
、名も知り顔も知れど、口一つ
利
(
き
)
いたではなし、さればと言つて、乗客と言つては自分と其男と唯二人、隠るべき
様
(
やう
)
もないので、
素知
(
そし
)
らぬ振も
為難
(
しにく
)
い。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
父が丹精して置いた畑を荒らして
廻
(
まわ
)
り、甘蔗と間違えて西洋
箒黍
(
ほうききび
)
を
噛
(
か
)
んで吐き出したり、未熟の水瓜を
窃
(
そっ
)
と拳固で打破って川に投げ込んで
素知
(
そし
)
らぬ顔して居たり、
悪戯
(
いたずら
)
ばかりして居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
何處
(
どこ
)
へお
客樣
(
きやくさま
)
にあるいて
居
(
ゐ
)
たのと
不審
(
ふしん
)
を
立
(
た
)
てられて、
取越
(
とりこ
)
しの
御年始
(
ごねんし
)
さと
素知
(
そし
)
らぬ
顏
(
かほ
)
をすれば、
嘘
(
うそ
)
を
言
(
い
)
つてるぜ
三十日
(
みそか
)
の
年始
(
ねんし
)
を
受
(
う
)
ける
家
(
うち
)
は
無
(
な
)
いやな、
親類
(
しんるゐ
)
へでも
行
(
ゆ
)
きなすつたかと
問
(
と
)
へば
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それに自分は今度の
劇
(
しばゐ
)
では作者であり、伊藤公は
普通
(
たゞ
)
の
観客
(
けんぶつ
)
に過ぎない。作者が
観客
(
けんぶつ
)
に座を譲るやうな気弱い事では作者
冥加
(
みやうが
)
に尽きるかも知れないからと、その
儘
(
まゝ
)
素知
(
そし
)
らぬ顔で
凝
(
じつ
)
と尻を
落
(
おち
)
つけてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
常
(
つね
)
は
素知
(
そし
)
らぬ
振
(
ふり
)
ながら
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
二人とも、そこに突っ立ったまま、両手をポケットに入れ、
素知
(
そし
)
らぬ顔で、
踏段
(
ふみだん
)
のほうに気を
配
(
くば
)
っている。と、やがて、にんじんは、レミイを
肱
(
ひじ
)
で
小突
(
こづ
)
く。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
素知
(
そし
)
らぬ顔で仰有ったものでございますから、大殿様もとうとう
我
(
が
)
を御折りになったと見えて、
苦
(
にが
)
い顔をなすったまま、何事もなく御立ちになってしまいました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
傍
(
はた
)
から注意するとなお面白がって使いたがる癖をよく知っているので、叔母は
素知
(
そし
)
らぬ顔をして取り合わなかった。すると
目標
(
あて
)
が
外
(
はず
)
れた人のように叔父はまたお延に向った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あんな
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かお
)
をして
居
(
お
)
られても、一から十まで
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
を
洞察
(
みぬ
)
かるる
神様
(
かみさま
)
、『この
女
(
おんな
)
はまだ
大分
(
だいぶ
)
娑婆
(
しゃば
)
の
臭
(
くさ
)
みが
残
(
のこ
)
っているナ……。』そう
思
(
おも
)
っていられはせぬかと
考
(
かんが
)
えると
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
なしけるが新道の
玄柳
(
げんりう
)
方にて
調合
(
てうがふ
)
なし
貰
(
もら
)
はんと
出行
(
いでゆく
)
體
(
てい
)
故
(
ゆゑ
)
素知
(
そし
)
らぬ
面
(
かほ
)
に
臺所
(
だいところ
)
へ
立戻
(
たちもど
)
りたり又彼の
玄柳
(
げんりう
)
は毒藥のことを
請合
(
うけあひ
)
けれども
針醫
(
はりい
)
の事なれば
毒藥
(
どくやく
)
を
求
(
もと
)
めんこと
難
(
かた
)
しと思へば
風藥
(
かぜぐすり
)
二
服
(
ふく
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼は
素知
(
そし
)
らぬ顔をして隣りの者の杯を引ったくっていた。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
願
(
ねが
)
へど、
姫
(
ひめ
)
は
事
(
こと
)
なしび、
素知
(
そし
)
らぬけはひ
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
代助は
固
(
もと
)
よりそれより先へ進んでも、
猶
(
なお
)
素知
(
そし
)
らぬ顔で引返し得る、会話の方を心得ていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
せんとて日野家へ承まはる
可
(
べき
)
儀有之候間安田
平馬
(
へいま
)
佐々木
靱負
(
ゆきへ
)
の兩人當役所へ差出さるべしと達しられしかば日野家に於ては何ごとならんと怪しまれしが安田佐々木の兩人は
豫
(
かね
)
て
覺
(
おぼ
)
えのあることなれば
素知
(
そし
)
らぬ面は爲すものゝ心中に南無三
寶
(
ばう
)
と思ひ其夜
竊
(
ひそか
)
に兩人并びに願山とも申合せ跡を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
代助は固より
夫
(
それ
)
より
先
(
さき
)
へ
進
(
すゝ
)
んでも、猶
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
で
引返
(
ひきかへ
)
し
得
(
う
)
る、会話の方を
心得
(
こゝろえ
)
てゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども自分は話しの面倒になるのを恐れたから、
素知
(
そし
)
らぬ顔をしてわざと
緩々
(
ゆるゆる
)
歩いた。そうしてなるべく
呑
(
の
)
ん
気
(
き
)
そうに見せるつもりで母を笑わせるような
剽軽
(
ひょうきん
)
な事ばかり
饒舌
(
しゃべ
)
った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
津田は
素知
(
そし
)
らぬ風をした。お秀は遠慮なくその証拠というのを
挙
(
あ
)
げた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
知
常用漢字
小2
部首:⽮
8画
“素”で始まる語句
素人
素
素直
素性
素振
素気
素朴
素足
素姓
素破