なんじ)” の例文
金眸もななめならず喜びて、「そはおおいなる功名てがらなりし。さばれなんじ何とてかれを伴はざる、他に褒美ほうびを取らせんものを」ト、いへば聴水は
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
「ああ、大神はわれの手に触れた。われは大空に昇るであろう。地上の王よ。我れを見よ。我はなんじらの上に日輪の如く輝くであろう。」
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
顔淵季路きろ侍す。子曰く、なんぞ各なんじの志を言わざると。子路曰く、願わくは車馬衣軽裘けいきゅう、朋友と共にし、之をやぶりてうらみ無からんと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かのシェークスピアの句に Woman, Frailty is thy name.(女よ心弱きとはなんじの名なり)といい
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なんじの父と母とを尊敬せよ……これは日本人に深く浸み込んだ特性である。子供達は赤坊時代を過ごすと共に、見た所素直げに働き始める。
悪魔また彼を最高いとたかき山に携えゆき世界の諸国とその栄華えいがとを見せてなんじもし俯伏ひれふして我を拝せばこれらをことごとくなんじに与うべしと曰う
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さらばなんじは神を見ざりしか? 神は十字の木の上に居たまいぬ、足をたれ手をけられ、白き荊棘いばらの小さき冠を頭にかぶりて居たまいぬ。
なおしからざるを申せば、帝ふるき事を語りたまいて、なんじ亮にあらずというや、とおおす。亮胸ふさがりて答うるあたわず、こくして地に伏す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なんじ我言に背いて禁菓を食ひたれば、土は爾の為にのろはる。土は爾の為に荊棘いばらあざみを生ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンをくらはん」
草とり (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
その時かれは「なんじ、幼き第二の国民よ、国家の将来はかかってなんじらの双肩そうけんにあるのである。健在なれ、汝ら幼き第二の国民よ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
なんじ我言に背いて禁菓きんかいたれば、土は爾の為にのろわる。土は爾の為に荊棘いばらあざみしょうずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンをくらわん」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なんじをして、欧洲立憲各国に至り、其の政府又は碩学せきがくの士と相接して、其の組織及び実際の情形に至るまで観察して、余蘊ようんなからしめんとす。
われなんじが冷かにもあらず熱くもあらざることを爾の行為わざに由りて知れり我なんじが冷かなるか或は熱からんことを願う
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
本はバイブルで、その人物の右手の指は「なんじの墓を用意せよ。爾は死すべければなり」と云う章を指さして居ります。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
渤海奇毒きどくの書、唐朝官家に達す。なんじ高麗こうらいを占領せしより、吾国の近辺に迫り、兵しばしばさかいを犯す。おもうに官家の意に出でむ。われ如今じょこんうべからず。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さすれば、証すべからざることを証せんと求めたなんじのごときは、これを至極しごくの増上慢といわずしてなんといおうぞ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
(二) 顔淵がんえん季路きろ侍る。子曰く、なんぞ各なんじの志を言わざる。子路曰く、願わくは(己れの)車馬衣裘いきゅうを、朋友とともにして之をやぶるもうらみなからん。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ああ、胸よ裂けよ、血よほとばしれ、身体よ冷えよ、吾はなんじのために血を流した、爾は吾に顔をも見せぬのか。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
都合よく御開帳に出っくわせなかったろう、とこしなえにこのままの姿で置きたいものだ、とかくに浮世の仮飾かしょくこうむってない無垢むくなんじを、自分は絶愛する。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
しゅに呼ばわれたるなんじら、爾らのいかなるものなるやを考えみよ。肉よりすれば、爾らのうち多くの賢き者なく、多くの強き者なく、多くのたかき者あるなし。
たまたま活動写真弁士試験の一項を目にして以為おもえらく警察の弱い者をいじめる事も亦至れり尽せる哉と。試験の科目に曰くなんじに出るものは爾に反るとは何か。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われなんじひややかにもあらず熱くもあらざることを爾のわざによりて知れりわれ爾が冷かなるかあるいは熱からんことを願う——弟はゆうべ床で読んだ聖書の句を
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
地は皆なんじの前にあるにあらずや。爾もし左にゆかば我右にゆかん。また爾もし右にゆかば我左にゆかん1
しゅねがわくはおんてんよりたまえ、なんじ右手めてもてたまえるこの葡萄園ぶどうぞの見守みまもらせたまえ、おとなたまえ。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
媾和の交渉は色々曲折があるが、明使、「なんじほうじて日本国王と為す」の国書をもたらした為、秀吉を怒らしむることになり、媾和も全く破れて再度の朝鮮出兵が起る。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「貧しき者はつねになんじらとともにあり」とか、「父たちきブドウを食いたれば子等の歯うく」
子曰く百日の蜡一日の沢、なんじが知るところにあらざるなり、百日稼穡かしょくの労に対しこの一日やすんで君の恩沢を楽しむ、その休息日に農夫のみか有益禽獣までも饗をけたので
いわゆる我のひくきに非ずなんじの高きなり、筑波山の低く見ゆるは、畢竟ひっきょう富士山の高きなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それにはなんじ婚姻を問う、只香勾こうこうを看よ、破鏡重ねてまどかなり、悽惶好仇せいこうこうきゅうと書いてあった。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あるいはいわくなんじこの編をのぶる、何ぞ平仮名をもってせざる。曰、唯々否々いいひひ、わが平仮名の説のごとき、ただ後進の人に便するのみ。この編のごとき、ひとえに学者に謀るものなり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
霊界居住者の主張——なんじはわれ等の伝達する教訓が、在来の所謂正統派の教条と、相反する箇所の多きを認め、これに反対の態度を執ろうとするが、これは極めて重大事であるから
なんじみずからの信仰、爾をいやせり」というキリストのお言葉は、即ち自業自得を意味して居るのでありますけれども、今はこの自業自得の理は教会的キリスト教の為に甚だ範囲をせばめられて
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もし鬼ありて僕に保証するに、なんじの妻を与えよ我これをかんせん爾の子を与えよ我これをくらわんしからば我は爾に爾の願をかなわしめんと言えば僕は雀躍じゃくやくして妻あらば妻、子あらば子を鬼に与えます
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なんじみくにを来らせ給へ、御心の天に成る如く地にも成らせ給へ。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
鉄棒てつのぼうたまい、なんじこれもっ桃奴ももめが腰骨微塵みじんに砕けよと
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
故に神は爾らの妻をなんじらの実の母となすことなし。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
なんじらもろもろの臣、ちんたすけて、政事に忠良なれ
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「神なんじとともに在れ!」
スモーリヌイに翻る赤旗 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
守れ、ああなんじら忠良なる不弥の宮の臣民よ、二人を守れ、不弥の宮は、爾らの守護の下に、明日の日輪のごとく栄えるであろう。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
げにや悪に強きものは、また善にも強しといふ。なんじ今前非を悔いて、吾がために討入りの、計策はかりごとを教ふることまめなり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
わが救主すくいぬしよ、なんじはこの危険より余を救いたまいたり、人聖書を以て余を責むる時これが防禦に足るの武器は聖書なり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
子、顔淵にかたって曰く、用いらるれば則ちすすみ、てらるれば則ちかくるとは、唯我となんじとのみこれあるかな。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
燕王ついまた師をひきいてづ。諸将士をさとして曰く、たたかいの道、死をおそるゝ者は必ず死し、せいつる者は必ず生く、なんじ努力せよと。三月、盛庸せいよう來河きょうがう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
陽貨ようか、孔子を見んと欲す。孔子まみえず。孔子にいのこおくる。孔子其の亡きを時として、往きて之を拝す。これみちに遇う。孔子に謂いて曰く、来れ、われなんじと言わんと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
幸徳らは政治上に謀叛して死んだ。死んでもはや復活した。墓は空虚だ。いつまでも墓にすがりついてはならぬ。「もしなんじの右眼爾をつまずかさば抽出ぬきだしてこれをすてよ」
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なんじはかの流動の枢軸の動く音をきかざるか。人生と宇宙との廻転して行く凄じき響を耳にせざるか。
墓の上に墓 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
天竜てんりゅう夜叉やしゃ乾闥婆けんだつばより、阿脩羅あしゅら迦楼羅かるら緊那羅きんなら摩睺羅伽まごらか・人・非人に至るまで等しくあわれみを垂れさせたもうわが師父には、このたび、なんじ、悟浄が苦悩くるしみをみそなわして
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ここにおいて蛇来ってノアに、われ穴を塞いで水を止めたら何をくれるかと問うた。さいうなんじは何を欲するかと問い返すと、蛇洪水んで後、われと子孫の餌として毎日一人ずつくれと答う。
元来やせてはいるし、顔色は青白いし、冷たいし、こわばってるし、変なにおいがするし、死んだところで大した変わりはないだろう。そこで僕はこう言ってやろう。——なんじ地を裁く者よ思い知れ。
なんじの無限大を以てして一滴いってきの露に宿るを厭わぬ爾朝日!
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)