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渇
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かわ
ふりがな文庫
“
渇
(
かわ
)” の例文
夜来の烈しい血しおのうごきが、自然、
口腔
(
こうこう
)
を
渇
(
かわ
)
かせて来るのであろう。彼はさっきから頻りに一杯の水を欲しがっていたのである。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、その
酒
(
さけ
)
と
水
(
みず
)
には、ことごとく
毒
(
どく
)
を
入
(
い
)
れておきました。
大将
(
たいしょう
)
は、
敵
(
てき
)
がきっと
腹
(
はら
)
を
減
(
へ
)
らして、のどを
渇
(
かわ
)
かしてくるにちがいない。
酒倉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
吾々
(
われ/\
)
は
覺醒
(
かくせい
)
せりと
叫
(
さけ
)
ぶひまに、私達はなほ暗の中をわが
生命
(
いのち
)
の
渇
(
かわ
)
きのために、
泉
(
いづみ
)
に
近
(
ちか
)
い
濕
(
しめ
)
りをさぐる
愚
(
おろ
)
かさを
繰
(
く
)
りかへすのでした。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
彼等は、幽霊船の出てくる前には、
飢
(
う
)
えと
渇
(
かわ
)
きとで、病人のようにへたばっていたのに、いまは戦士のように元気にふるい立っている。
幽霊船の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私はもう、何もかもそうと自分の心で
定
(
き
)
めてしまった。そうすると、胸が無性にもやもやして、口が
厭
(
いや
)
な
渇
(
かわ
)
きを覚えてたまらない。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
『人はパンのみにて生くる者に非ず、唯神の凡の
言
(
ことば
)
による』といふ主の御
戒
(
いまし
)
め、或は『若し
爾曹
(
なんぢら
)
我が爲に飢ゑ
渇
(
かわ
)
く事あらば
爾曹
(
なんぢら
)
幸なり』
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
渇
(
かわ
)
いた時水を飲むのは病毒を
嚥下
(
のみくだ
)
すという危険があるばかりでなく、胃中へ水が
溜
(
た
)
まって吸収されませんから非常に消化器を害します。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
遠方で打つ大砲の響きを聞くような、
路
(
みち
)
のない森に迷い込んだような心地がして、
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いて来て、それで涙が出そうで出ない。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
いた人たちがいないというわけでもなかったが、その渇きは
水甕
(
みずがめ
)
よりもむしろ酒びんをほしがるような
類
(
たぐ
)
いのものだった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
苦悩がなければ
倦怠
(
けんたい
)
するかもしれないのであったが、それにしても彼はここいらで、どうか青い空に息づきたいという思いに
渇
(
かわ
)
いていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかし救うべからざる
怠惰者
(
なまけもの
)
で、その凡庸な域を脱するために努力をするよりもむしろ、飢え死にか
渇
(
かわ
)
き死にかする方を好むほどだった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ゆえに
神経質
(
しんけいしつ
)
なる僕のごとき者は、(僕と同感の青年が何万とあったろう)すがりよって、教えを求めようと
飢
(
う
)
え
渇
(
かわ
)
いていたものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「それなんです。近頃頭痛がして、無暗に
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いて、胸騷ぎがして叶はねえからその有難い藥でも頂いて見ようかと、
斯
(
か
)
う思ふんですが」
銭形平次捕物控:322 死の秘薬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこで杉の木の下に寝たがのう、
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いて
仕方
(
しかた
)
ないから、
猿
(
さる
)
めに水がほしいと言うとな、猿めがいきなりそこを掘り始めた。
キンショキショキ
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
夕方の
行水
(
ぎょうずい
)
にも湯ざめを恐れ、
咽喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
きも冷きものは口に入るること
能
(
あた
)
はざれば、これのみにても人並の交りは出来ぬなり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ここへ来て立っている竜之助は、血に
渇
(
かわ
)
いていました。たった今は両国橋の上で、斬って捨つべかりし人を斬り損ないました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
好いものでありさえすれば
仮令
(
たとえ
)
いかなる人の有っているものでも、それを
受納
(
うけい
)
れるに
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しなかったほど、それほど心の
渇
(
かわ
)
いていた捨吉は
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
詩人蕪村の心が求め、孤独の人生に
渇
(
かわ
)
きあこがれて歌ったものは、実にこのスイートホームの家郷であり、「
炉辺
(
ろへん
)
の
団欒
(
だんらん
)
」のイメージだった。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
もし相手がお嬢さんでなかったならば、私はどんなに彼に都合のいい返事を、その
渇
(
かわ
)
き切った顔の上に
慈雨
(
じう
)
の如く
注
(
そそ
)
いでやったか分りません。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかしそのタラーの水も無駄にはならん。それを飲むと
喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
きを止めるにはごく都合がよい。少し酸味はあるがなかなか味のよいものです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
慾張
(
よくばり
)
抜いて大急ぎで歩いたから
咽
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いてしようがあるまい、
早速
(
さっそく
)
茶を飲もうと思うたが、まだ湯が
沸
(
わ
)
いておらぬという。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
このままいったらどうなることか、通りすがりにただ見ただけでも、カサカサと
咽喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いてゆくような感じだった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼は何となく男の本能から
悸乎
(
ぎょつ
)
とした。美しい人びとの往来する
朱雀大路
(
すざくおおじ
)
を思うだけでも、永い間田舎に住んだ
渇
(
かわ
)
きがそこで充たされそうであった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
坊
(
ぼう
)
さんは一
日
(
にち
)
寂
(
さび
)
しい
道
(
みち
)
を
歩
(
ある
)
きつづけに
歩
(
ある
)
いて、おなかはすくし、のどは
渇
(
かわ
)
くし、
何
(
なに
)
よりも
足
(
あし
)
がくたびれきって、この
先
(
さき
)
歩
(
ある
)
きたくも
歩
(
ある
)
かれなくなりました。
安達が原
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
誰でも飢えた時
渇
(
かわ
)
いた時には食物や水がうまいものであろうが、その時の朝風は実にその食物や水よりもはるかに心持よく、自分は気が
清々
(
せいせい
)
として来た。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
政治界でも実業界でも爺さんでなければ夜も日も明けない老人万能で、眼前の安楽や一日の
苟安
(
こうあん
)
を貪る
事無
(
ことな
)
かれ主義に腰を叩いて
死慾
(
しによく
)
ばかり
渇
(
かわ
)
いている。
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
兄弟よ、愛の徳われらの
意
(
こゝろ
)
を
鎭
(
しづ
)
め、我等をしてわれらの
有
(
も
)
つ物をのみ望みて他の物に
渇
(
かわ
)
くなからしむ 七〇—七二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
旅の
渇
(
かわ
)
きを
癒
(
いや
)
すため、ステファアヌ・マラルメが
愛
(
め
)
でた果実、「理想の
苦
(
にが
)
みに味つけられた
黄金色
(
こがねいろ
)
のシトロン」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
この僧は気を吸うことを習っていたので、別に飢えも
渇
(
かわ
)
きも感じなかったが、連れの僧はひどく飢えて来た。
中国怪奇小説集:08 録異記(五代)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三越の七階、ジャアマンベーカリー、コロンバン等々、方々で一と休みしては
渇
(
かわ
)
きを
癒
(
いや
)
さねばならなかった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
肉体的とも精神的とも分野をつき止めにくいあこがれが、低気圧の
渦
(
うず
)
のように、自分の
喉頭
(
のど
)
のうしろの
辺
(
あたり
)
に
鬱
(
うっ
)
して来て、しっきりなしに自分に
渇
(
かわ
)
きを
覚
(
おぼ
)
えさせた。
桃のある風景
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「この頃ちょっとも腹は立てなかったのに」と妻は
真面目
(
まじめ
)
そうに
応
(
こた
)
えた。そのうちに、妻は口の
渇
(
かわ
)
きを訴えて、氷を欲しがった。隣室で母親は彼に小声で云った。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
縁から見ると、七分目に
減
(
へ
)
った甕の水がまだ
揺々
(
ゆらゆら
)
して居る。其れは夕蔭に、
乾
(
かわ
)
き
渇
(
かわ
)
いた鉢の草木にやるのである。稀には彼が出たあとで、
妻児
(
さいじ
)
が入ることもある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
相変らずの
油照
(
あぶらでり
)
、手も顔も
既
(
も
)
うひりひりする。残少なの水も一滴残さず飲干して了った。
渇
(
かわ
)
いて渇いて耐えられぬので、
一滴
(
ひとしずく
)
甞める
積
(
つもり
)
で、おもわずガブリと皆飲んだのだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
ところが、それから二時間ばかり経った後に、左枝は、灼きつくような
渇
(
かわ
)
きにふと目を醒した。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
従って年よりのように欲にも
渇
(
かわ
)
かず、若いもののように色にもおぼれない。とにかくわたしの生涯はたといしあわせではないにもしろ、安らかだったのには違いあるまい。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それからずっとのちまで、長い間、疲れた人や、おなかのへった人や、喉の
渇
(
かわ
)
いた人などがそこへ来て、いつも休んでは、不思議の壺から、
堪能
(
たんのう
)
するほど牛乳を飲みました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
自分は
酷
(
ひど
)
い熱で
床
(
とこ
)
の上に
寐
(
ね
)
ているらしい。傍には妻の心配そうな顔が覗いている。その
後
(
うしろ
)
には、まだ誰やら老人らしいのや子供らしいのがいる様子である。ひどく
咽喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
く。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
また慾に
渇
(
かわ
)
いて
因業
(
いんごふ
)
な
世渡
(
よわたり
)
をした老婆もあツたらう、それからまた
尚
(
ま
)
だ赤子に乳房を
啣
(
ふく
)
ませたことの無い
少婦
(
をとめ
)
や胸に
瞋恚
(
しんい
)
のほむらを燃やしながら
斃
(
たふ
)
れた醜婦もあツたであらう。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「大げさなこと云うんじゃないよ」とあさ子が云った、「眼がさめたら汗ぐっしょりで
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いてたから、氷でも取ろうじゃないのって、ちょっと突いてみただけじゃないか」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
毎日二三回ずつの
下痢
(
げり
)
、胃はつねに激しき
渇
(
かわ
)
きを覚えた。動かずにじっとしていれば、健康の人といくらも変わらぬほどに気分がよいが、労働すれば、すぐ疲れて力がなくなる。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
彼女の血液の
衷
(
うち
)
の若さは、近頃ひどく
涸
(
か
)
れて来ていた。この血液の衷から
渇
(
かわ
)
いて行くものを補うために、彼女はいろいろなものを試みた。例えば「精壮」とか「トツカピン」とか。
指
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
一度も見たことのない、いつも待っていた、ほんとうの
渇
(
かわ
)
きをもって待っていた、正当な思慮で自分の手には入らないものといつでも思っていた陳情人が、そこに坐っているのです。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
佐「荒尾、あの
葡萄酒
(
ぶどうしゆ
)
を抜かんか、
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いた。これからが佳境に
入
(
い
)
るのだからね」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
愛の
渇
(
かわ
)
きによって自然に築き上げられて来た彼のこうした意地強さは、まだ決してなくなってはいなかったのである。彼は、新賀と大沢とを等分に見くらべながら、ずけずけと言った。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
その家の傍には
釣瓶井戸
(
つるべいど
)
があったので、のどが
渇
(
かわ
)
いていた私たちは水を無心した。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
喰い飢えた東京人、女に
渇
(
かわ
)
いた
東
(
あずま
)
の男は、滅多無性に安い食物と安い女を求めた。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
其中
(
そのうち
)
に乃公は喉が
渇
(
かわ
)
いた。水を持って来いといえば係りの男が持って来るだろうけれど、人を呼んだりしては
他所
(
ひと
)
の安眠の妨害になると思って、乃公はそっと起きて水を飲みに行った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼らは、人間の「愛」には、うそにもほんとにも、
沙漠
(
さばく
)
のように
渇
(
かわ
)
き飢えていたのだ。沙漠にオアシスの
蜃気楼
(
しんきろう
)
を旅人が見るように、彼らは「愛」の蜃気楼さえをもさがし求めたので。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
その頃はもう夏だったので、夕日がかんかんと頭から
照
(
て
)
りつけるので、体じゅう汗と
埃
(
ほこり
)
とに汚れるし、その上ひっきりなしにどならなければならないので、
咽
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
いてたまらなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
渇
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“渇”を含む語句
渇仰
饑渇
渇望
随喜渇仰
渇仰者
飢渇
枯渇
渇水
渇驥
涸渇
久渇
渇情
渇者
渇虎
渇命
満都渇仰
而生渇仰心
渇仰随喜
大飢渇
信心渇仰