水面すいめん)” の例文
名を琵琶池といって神代ながらの青々とした水は声なく静かに神秘の色をたたえて、木影は水面すいめんの暗きまでに繁りに繁り合うている。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何万年のながい間には処々ところどころ水面すいめんから顔を出したりまた引っんだり、火山灰や粘土が上につもったりまたそれがけずられたりしていたのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
月は野の向こうにのぼって、まるくかがやいていた。銀色ぎんいろもやが、地面じめんとすれすれに、またかがみのような水面すいめんただよっていた。かえるが語りあっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
よほどふかいものとえまして、たたえたみずあいながしたように蒼味あおみび、水面すいめんには対岸たいがん鬱蒼うっそうたる森林しんりんかげが、くろぐろとうつってました。
岸べは沼地ぬまちのようにどろどろしていますし、みずうみの中には、どろの小島があっちにもこっちにも水面すいめんに顔を出しています。
まず画面の下部に長き橋梁きょうりょうななめよこたはらしめよ、しかして淋しき夜駕籠よかご頬冠ほおかむりの人の往来ゆききを見せ、見晴らす水面すいめんの右のかたには夜の佃島を雲の如く浮ばせ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
印度洋のかの不可思議ふかしぎな色をして千劫せんごう万劫まんごうむ時もなくゆらめくなぞの様な水面すいめん熟々つくづくと見て居れば、引き入れられる様で、吾れ知らず飛び込みたくなる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それで、ふなべりから手をのばして、水面すいめんに白くいているすいれんの花をむしってはすて、むしってはすてて、きそうになるのをがまんしていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
えんじゅの下の大きな水鉢みずばちには、すいれんが水面すいめんにすきまもないくらい、まるけて花が一りんいてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こうおもったのです。そこで、子家鴨こあひるきゅう水面すいめんり、うつくしい白鳥はくちょうほうに、およいできました。
實際じつさい地震ぢしんは、地球ちきゆう表面ひようめんちかところ發生はつせいするものであるが、ちようどかぜ水面すいめんなみおこすように、また發音體はつおんたい空氣中くうきちゆう音波おんぱおこすように、地震ぢしん地震波ぢしんぱおこすのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「隅田川へ敷くのについて、非常に幸運だったというのは、今夜十二時頃から、次第に、上げ潮になって来るそうで、水面すいめんほうりこんだ藁が、流出せずに、済むそうだ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ときは、わたくしは、屹度きつと軍艦ぐんかん」の艦尾かんびかた、八インチ速射砲そくしやほうよこたはるへんもしくば水面すいめんたか舷門げんもんのほとりにつて——うや/\しく——右手めてたか兜形ヘルメツトがた帽子ぼうしげて、いま一度いちど
小文治こぶんじは足もとをすかすように、ほの明るくえている外濠そとぼり水面すいめんをながめだす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀、銀、銀、銀の水面すいめん、水面——水面。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そのも、ここへやってくると、かわみずはゆるくながれて、そらをゆく、しろくもかげを、ゆったりとした水面すいめんにうつしていました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
何處いづく押流おしながされたかかげかたちもなく、秘密造船所ひみつざうせんじよ一時いちじまつた海水かいすいひたされたとえて、水面すいめんから餘程よほどたか屏風岩べうぶいわ尖頭せんとうにも、みにく海草かいさうのこされて、その海草かいさうからしたゝつる水玉みづたま
ええ、もうこのへんから下りです。なんせこんどは一ぺんにあの水面すいめんまでおりて行くんですから容易よういじゃありません。この傾斜けいしゃがあるもんですから汽車はけっしてこうからこっちへは来ないんです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうち、やまうえにわく白雲しらくもが、うみのほうへながれていったとき、その姿すがたを、いくたび、この水面すいめんにうつしたかしれません。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
年寄としよりのいうことですが、なんでもしずかな真昼まひるごろ、足音あしおとをたてずに、いけちかよると、金銀きんぎんの二ひきのへびが、たわむれながら、水面すいめんおよいで、おやしろのほうへ
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、途中とちゅうみずのたまったところにて、自分じぶん姿すがたを、その水面すいめんうつしてたときにびっくりしたのです。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つきらすしたで、水面すいめんにさざなみをたてて、こいのおどおときました。それから四、五にちもたつと、三びきの金魚きんぎょは、みんなこいのために、つつかれてころされてしまいました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、とおい、人間にんげんんでいるもりや、はやしかげなどをながめました。そして、おかあさんにつれられて、さざなみのつ、かわ水面すいめんを、あちら、こちらとおよぎまわったのでありました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源吉げんきち龍夫たつお二人ふたりが、豪雨ごううあとのこと、いまにもギイギイとって、水勢すいせいのためにながされそうなはしのたもとで、水面すいめんつめていると、いくつもあかいトマトがきつしずみつしてきました。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)