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抓
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つま
ふりがな文庫
“
抓
(
つま
)” の例文
辰男はインキに汚れた骨太い指で
抓
(
つま
)
んで大口に食べた。そして、冷たくなつてゐる手を内懷に入れて温めながら暫らく息休めをした。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「
宅
(
うち
)
の狗か。」判事はだしぬけに
途
(
みち
)
の真中で鼻を
抓
(
つま
)
まれたやうな顔をした。「それぢや仕方がない、盗まれた肉代は幾らだつたね。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
……とうとう鼻を
抓
(
つま
)
まれても解らない真の闇になると、そのうちに重たい靴底がフンワリと、海底の泥の上に落付いたようである。
怪夢
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
手でズボンを
抓
(
つま
)
み上げて折目も拵え終ったが、それでもまだ迎えに来ず、ええクソ帰ってしまおうか今帰ろうかといらいらしていたが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『まだ、空は暗い。浅右衛門様のお駕が見えてから、
抓
(
つま
)
み出しゃあいいだろう。一両の宿賃だ。もうちっと、寝かしておいてやれ』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
そこで彼等は同時に箸を著け、同時に
一塊
(
いっかい
)
の蛇肉を
抓
(
つま
)
む。——いやいや。どうも蛇肉ではグロだ。やっぱり鰻という方がいい。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
が、やがて、指の先で、自分の皿の底からパンのかけらを
抓
(
つま
)
み上げ、
真面目
(
まじめ
)
に、無愛想に、そいつをルピック夫人めがけて
抛
(
ほう
)
ったものである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
と言って山崎譲が、七兵衛の手に
抓
(
つま
)
み上げたものを見ると、それは径一寸ばかりの
真鍮
(
しんちゅう
)
の輪にとおした、
五箇
(
いつつ
)
ほどの小さな合鍵でありました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
踏んづけたものを、斜酣は右の手で
抓
(
つま
)
みあげた。蛇だ蛇だ。蛇は鎌首に楕円の波を打たせて持ちあげるが、なかなか斜酣の手まで鎌首が到達しない。
採峰徘菌愚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
さうすると
婆
(
ばあ
)
さん
等
(
ら
)
は
思案
(
しあん
)
しつゝ
然
(
しか
)
も
速
(
すみや
)
かに
綱
(
つな
)
の
一
(
ひと
)
つを
抓
(
つま
)
んでは
放
(
はな
)
したり
又
(
また
)
抓
(
つま
)
んだり
極
(
きは
)
めて
忙
(
いそが
)
しげに
其
(
そ
)
の
手
(
て
)
を
動
(
うご
)
かす。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そう言って夫人はわたくしの
袂
(
たもと
)
の八ツ口の根元を指先で
抓
(
つま
)
み、指先の早業で下着の裏や
襦袢
(
じゅばん
)
の地質を
検
(
あらた
)
め見ました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
優しく
背
(
せな
)
を押したのだけれども、小僧には襟首を
抓
(
つま
)
んで引立てられる気がして、手足をすくめて、宙を
歩行
(
ある
)
いた。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時の私の驚きようったら、
狐
(
きつね
)
に
抓
(
つま
)
まれたということがあるが、ほんとにそうでないかしらとさえ思いました。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
小さい時分にはよく
抓
(
つま
)
み出してやった大人たちは、
意固地
(
いこじ
)
に逃込むのを憎がって、この頃は手をだすのを見つけるたんびにざまあみやがれと言って笑った。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
わたしは外からかえるとすぐ赤児の顔を、その柔らかい頬を
抓
(
つま
)
んでみなければ、書斎へはいらなかった。その抓み方が痛そうだと、女はよく抗議を言った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
余
(
よ
)
の
發見
(
はつけん
)
したのは
此
(
この
)
三
種
(
しゆ
)
の
例外
(
れいぐわい
)
で、
突起
(
つまみ
)
の
無
(
な
)
いのである。
其代
(
そのかは
)
り、
兩端
(
りやうたん
)
に
二箇宛
(
ふたつづゞ
)
の
小孔
(
せうこう
)
が
穿
(
うが
)
つてある。
紐
(
ひも
)
に
類
(
るゐ
)
した
物
(
もの
)
を
通
(
とほ
)
して、それを
抓
(
つま
)
む
樣
(
やう
)
にしたのかも
知
(
し
)
れぬ。
探検実記 地中の秘密:04 馬籠と根方
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
また隠さない明けッ放しの内臓を見せても世間で別段鼻を
抓
(
つま
)
んで
苦
(
にが
)
い顔をするものがないからでもありましょうが、私の所へ時々若い人などが初めて訪問に来て
文芸と道徳
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ひょいと
抓
(
つま
)
んで見せました、(水銀は表面張力が強いですから抓んだことには愕きませんでしたが)
宇宙爆撃
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
書生は主翁の
衣服
(
きもの
)
を
抓
(
つま
)
んで引っぱった。主翁は云うとおりになって書生の方へ寄った。そこには書生が開けたままの
障子
(
しょうじ
)
が
開
(
あ
)
いていた。主翁は障子の方へ注意していた。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
抓
(
つま
)
み上げられたように、北方の天に
捏
(
こ
)
ねられている、まるで
麦酒
(
ビール
)
の瓶を押し立てたようだと、高頭君は半ば恐怖を抱いて言った、その壮容は、殉教者や迷信者を作って
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
男は
然程
(
さほど
)
注意を惹かないが、
行
(
ゆき
)
交
(
か
)
ふ女が
老
(
おい
)
も若きも引
擦
(
ず
)
る様な広い
裳
(
ジユツプ
)
を
穿
(
は
)
いて、腰の下迄ある長い黒の肩掛を
一寸
(
ちよつと
)
中から片手で胸の所の
合目
(
あはせめ
)
を
抓
(
つま
)
んで歩くのが目に附く。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
などすこし異様のことさえ
口走
(
くちばし
)
り、それでも母の如きお慈悲の笑顔わすれず、きゅっと
抓
(
つま
)
んだしんこ細工のような小さい鼻の尖端、涙からまって
唐辛子
(
とうがらし
)
のように真赤に燃え
創生記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
『まさか!
這麽
(
こんな
)
小さいの着られやしないわ。』と、笑ひ乍ら縫掛けのそれを
抓
(
つま
)
んで見せる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
試に武甲信の三州界に
兀立
(
ごつりつ
)
する
甲武信
(
こぶし
)
岳の頂上に立って俯瞰すると、千曲、笛吹、荒川の三川が三本の糸を
抓
(
つま
)
み上げたように直ぐ脚の下まで上って来ているのを見るであろう。
奥秩父
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
神棚の
燈明
(
とうみょう
)
をつけるために使う
燧金
(
ひうちがね
)
には大きな木の板片が
把手
(
とって
)
についているし、ほくちも多量にあるから点火しやすいが、喫煙用のは小さい鉄片の頭を指先で
抓
(
つま
)
んで打ちつけ
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蝶蜂は形を問わず、
己
(
おの
)
が好む花の色したよい加減な作り物に付き纏う事あり。南米産の
猴
(
さる
)
に蠅の絵を示すと巧拙構わず
抓
(
つま
)
みに来るを親しく見た。画が巧みなるにあらず、猴の察しがよいのだ。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
感じ早い氏の頭に驚くべき速力を以て僅少の時間内に
弥
(
いや
)
が
上
(
うへ
)
畳み込んだ日本の百千の印象が今其の一端を
抓
(
つま
)
んで引越して見ると、ぞろ/\と釣し柿のやうに
連
(
つな
)
がつて際限なくめくれて来るから
露都雑記
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
むっくり起きあがると大あぐらをかき、長い顎のさきを
抓
(
つま
)
み抓み
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夜
(
よ
)
は
森々
(
しん/\
)
と致して鼻を
抓
(
つま
)
まれるのも知れません。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
抓
(
つま
)
みの厚い
土耳古
(
トルコ
)
煙草に火をつける。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
たらちねの
抓
(
つま
)
までありや
雛
(
ひな
)
の鼻 蕪村
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
辰男はインキに汚れた骨太い指で
抓
(
つま
)
んで大口に食べた。そして、冷くなっている手を内懐に入れて温めながらしばらく息休めをした。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
と、赤地錦の——といっても余りに古びて
金襴
(
きんらん
)
の光よりは、
垢光
(
あかびか
)
りの方がよけいにする巾着の耳を
抓
(
つま
)
んで、武蔵の顔の前へ出した。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吾輩が
昨夜
(
ゆんべ
)
焼いてしまった心理遺伝論のおしまいに、附録にして載せようと思っていた腹案の骨組みだけを
掻
(
か
)
い
抓
(
つま
)
んで話すと、こうだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
検校はだしぬけに鼻でも
抓
(
つま
)
まれたやうに、顔中をくしやくしやさせた。そして富尾木氏の
側
(
わき
)
に坐つた相客の方へ首を
捻
(
ね
)
ぢ向けた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
イクラのひと
抓
(
つま
)
みを、口にふくんでそれを唾液でよくぬらし、それをぱっぱっと渓流の落ち込みへ吐いた。つまり、寄せ餌にするつもりであったのである。
鱒の卵
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
と当って見ると、いや
抓
(
つま
)
んだ
爪
(
つめ
)
の方が黄色いくらいでござったに、
正
(
しょう
)
のものとて争われぬ、七
両
(
りょう
)
ならば
引替
(
ひきか
)
えにと言うのを、もッと
気張
(
きば
)
ってくれさっせえで
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
桶屋の小僧の平太郎が蝙蝠の一ぴきを
竿
(
さお
)
でうち落して、
両翅
(
りょうばね
)
を
抓
(
つま
)
み拡げ、友達のなかで得意顔をしている。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
自分が案内をして傍についていて、どうのこうのと言うよりは、道庵そのものを一かたまり
抓
(
つま
)
み込んで置きさえすれば、それで病人に対しての万事は足りている。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
下駄
(
げた
)
を
遠
(
とほ
)
くへ
跳
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばされたり、
轉
(
ころが
)
つたり、
紙包
(
かみづゝみ
)
の
餅
(
もち
)
を
落
(
おと
)
したりして
泣
(
な
)
く
聲
(
こゑ
)
が
相
(
あひ
)
交
(
まじ
)
つた。
彼等
(
かれら
)
は
庭
(
には
)
へおりてから
徐
(
おもむ
)
ろに
其
(
そ
)
の
紙
(
かみ
)
を
開
(
ひら
)
いて
小豆飯
(
あづきめし
)
を
手
(
て
)
で
抓
(
つま
)
んで
喫
(
た
)
べた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その代り
膏気
(
あぶらっけ
)
もなかった。彼はぱさぱさした手で、汚れた風呂敷の隅を
抓
(
つま
)
んで、それを
鄭寧
(
ていねい
)
に折った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこで二万銭の賞金を懸けて二人の自衛団が危険を冒してやっとこさと垣根を越えて、内外相応じて一斉に
闖入
(
ちんにゅう
)
し、阿Qを
抓
(
つま
)
み出して
廟
(
おみや
)
の外の機関銃の左側に引据えた。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
と誰かいうと、このお旗本は、
杯口
(
ちょく
)
を下の
膳
(
ぜん
)
の上において、
痩身
(
そうしん
)
の男が、猫のように丸めた背中をくねらし、
木乃伊
(
みいら
)
みたいに黒い長い顔から、
抓
(
つま
)
みよせた小さな眼を光らせて
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
喜村は、オーバーのポケットから小猫のような犬を
抓
(
つま
)
み出した。ポケットテリヤだった。
睡魔
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
其の洋服代も美奈子が
某
(
ばう
)
新聞社へ売つた小説の稿料の中から支払つたので妻が
夜
(
よ
)
の目も眠らずに働いた労力の報酬の片端である。又一枚しか無い保雄の大島の羽織が
抓
(
つま
)
み出された。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
『
正可
(
まさか
)
!
這麽
(
こんな
)
小いの着られやしないわ。』と、笑ひ乍ら縫掛のそれを
抓
(
つま
)
んで見せる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
可なり急いだけれども
山葵
(
わさび
)
谷の三角点まで行かぬ
中
(
うち
)
にとっぷりと日は暮れて、鼻を
抓
(
つま
)
まれてもわからない真の闇となってしまった。肝心な提灯は山の上に置き忘れて来たことに気が付く。
初旅の大菩薩連嶺
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それを隷官に
喫
(
く
)
わし、また往って大市橋のある処へ出たが、その橋の袂にいる乞児を見つけると、隷官を曳きとどめるようにして、突然その乞児の肩に
跳
(
おど
)
りあがり、頬を打ち
面
(
おもて
)
を
抓
(
つま
)
みだした。
義猴記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と医者は大笑して、ようやく手の皮を
抓
(
つま
)
み上げるのを止めた。そして
葛根湯
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あるいは岩石の節理が
膨
(
ふ
)
くれ立ちて、木輪が、磨滅した木の肉から浮ぶように、
抓
(
つま
)
み上がって見えたりするが、雪の動作は、それとは反対に岩石を擦り円め、滑らかにさせ、磨き上げるのである。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
抓
漢検1級
部首:⼿
7画
“抓”を含む語句
引抓
一抓
掻抓
鼻抓
一抓一攫
一攫一抓
抓取
抓投
押抓
鷲抓