感激かんげき)” の例文
連盟の危機ききをうれい、富士男を鼓舞こぶするゴルドンの言々句々げんげんくくは、せつせつとして胸にせまる、富士男は感激かんげきにぬれた眼をあげた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
が、日頃ひごろいかつい軍曹ぐんそう感激かんげきなみださへかすかににぢんでゐるのをてとると、それになんとないあはれつぽさをかんじてつぎからつぎへと俯向うつむいてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
女神めがみこえは、えない、不思議ふしぎいずみのように、若者わかものたましいに、ささやくと、かれは、なみだぐましい感激かんげきにむせびました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
まつろうひざもとから、黒髪くろかみたばりあげた春重はるしげは、たちまちそれをかおてると、次第しだいつの感激かんげきをふるわせながら、異様いようこえわらはじめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
特務曹長「閣下の勲章はみな実に立派であります。私共は閣下の勲章をあおぎますごとに実に感激かんげきしてなみだがでたりのどが鳴ったりするのであります。」
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
無尽蔵むじんぞうともいうべき詩句に、彼女への讃美さんびの情をたくしては、それを、どこかしら不自然でもあれば真剣しんけんでもある感激かんげきをもって、彼女に朗読して聞かせる。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それが追放令をうけとった直後ちょくご、自分の出てくるニュース映画を見ようというのであるから感激かんげきは一層ふかい。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
そうして、人びとは、またも泣き、むせび、悲しみました。法師は深い感激かんげきにうたれて、寺へ帰って来ました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それは、おそらく、君だけじゃないだろう。入塾式の日には、たいていの塾生が田沼先生や朝倉先生の話よりも、平木中佐の元気な話に感激かんげきしたんだからね。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
郁治は低い声で、得意の詩吟しぎんを始めた。心の感激かんげきの余波がそれにも残って聞かれる。別れの道のかどに来ても、かれらはなんだかこのまま別れるのが物足らなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
おもひいつてこういはれた言葉ことばに、かつておもひもしらぬ感激かんげきをおぼえて、私はしみ/″\とよそのおばさんをみました。くろくそめてまゆあほひとで、そのにはなみだがあつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
その言葉を待っていた咲耶予のほおは、思わずしらず、感激かんげきのなみだがたまとなってまろばった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地主さんは、すっかり、感激かんげきしてしまいました。あのときの強盗ごうとうが、銅像どうぞうていたことから思いついて、地主さんはぜひ、忠犬ナハトのために、銅像をたてたいと思いました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ところが意外いがいにもこの墓参ぼさんたいへんに里人さとびと感激かんげき種子たねとなったのでございます。
彼は無上の光栄に感激かんげきしながらいつも春琴の小さなてのひらおのれの掌の中に収めて十丁の道のりを春松検校の家に行き稽古の済むのを待って再び連れてもどるのであったが途中春琴はめったに口を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この男は物事を深く感じもしましたし、感激かんげきをもって芸術を愛しもしました。けれども、芸術のほうではこの男を愛してくれませんでした。——舞台監督かんとくの鳴らすベルが鳴りひびきました。
仕事は綺麗きれいに出していただいたのであるから、あとも綺麗にしますと、彼は感激かんげきしていい、きゅうにうしろをり返って例の若い男を彼に引き合せた。若い男はまたていねいに彼に挨拶あいさつをした。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
新しい感激かんげきの涙が、四人のほおを伝わった。太陽が森のはしにあがった、光のが少年連盟を祝福するかのように、河畔かはんの少年を照らした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ただ一人例外はマイダーノフで、彼は感激かんげきする機会がなくなると、たちまち気落ちがして、悄気返しょげかえってしまった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
しょうちゃんは、また、いつもやさしいおとうさんのことばに感激かんげきして、これから勉強べんきょうするようにちかったのでした。
おさらい帳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
拍手は天幕テントもひるがえるばかり、この間デビスはただよろよろと感激かんげきして頭をふるばかりでありました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
朝倉先生の開塾式における言葉もまた、次郎にとって新しい感激かんげきの種だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「いや、まったく、ばかげきったはなしですが、なか善良ぜんりょう人間にんげんほど、相手あいて感激かんげきさせるものは、ありません。」と、あには、いうのでした。すると、あにともだちは
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
めくらぶどうは感激かんげきして、すきとおったふかいきをつき、からしずくをぽたぽたこぼしました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれはめでたく妻帯して、役所に勤めていたが、わたしの目には少しの変化も見当らなかった。相変らず、りもせぬのに感激かんげきしたり、例によって、いきなり悄気しょげかえったりした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
一同がもっとも感激かんげきしたのはゴルドンの態度たいどであった、かれは大統領の任を富士男にわたすとともに率先そっせんして他の少年とともに富士男の号令に服従して、もっとも美しき例をしめした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
こう、叔父おじさんは、おっしゃったのでした。なんでぼくはこの言葉ことばふか感激かんげきせずにいられましょう。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
伯父は牢獄ろうごくにあり、わが身はどろにあえぐふなのごときいまの場合に、ただひとり万斛ばんこくの同情と親愛をよせてくれる人があると思うと、千三の胸に感激かんげきの血が高波のごとくおどらざるを得ない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「そんなご心配しんぱいなら、してくださらなくていいのです。」と、少年しょうねんには、なみだひかったのでした。ほかの子供こどもたいしてもわらざるやさしい母親ははおやあい感激かんげきしたからです。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなひとは、おじさんが、損得そんとくをわすれて、いってくれるこころがわかったので、おもわず感激かんげきして
ひすいの玉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おれは、どうすればいいのか?」さっと感激かんげきせた刹那せつな自分じぶんのすることがわからなくなり、こころがぐらつくとあし感覚かんかくまでなくなって、からだがずるずるとしたすべりはじめた。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらいろも、くも姿すがたも、また、この紫色むらさきいろはなも、むしこえまでが、かつてこれほどぼく感激かんげきさせたことはない。いまここにカンバスがあるなら、どんないろでもるようなさえする。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たつ一は、むねそこからこみげてくる感激かんげきを、どうすることもできなくてさけびました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
二、三日前にちまえのこと、ぼくは、おなじとおりで、古本店ふるほんみせしている、おばさんから、童話どうわほんりてきて、ばんをしながらみました。そして、それにいてあるはなしに、ふかい感激かんげきをもちました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このことは、みんなを感激かんげきさせました。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)