おもひ)” の例文
盛りにて仙境のおもひあり聞く熱川にえがはには温泉のいづる所ありと此等こゝらに暑を避けて其の湯に塵をそゝぐならば即身即仙とんだ樂しき事なるべきに
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
娘が居たからつて、格別嬉しいおもひをさせられた訳ではなかつたが、居なくなつて見ると、しきりに淋しい。また一人法師ひとりぼつちになつて了つた。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
また若し諸〻の空しきおもひ汝の心の周邊まはりにてエルザの水とならず、この想より起る樂しみ桑を染めしピラーモとならざりせば 六七—六九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私は宵の中から机の前に坐つて、この間から書かうと思つてゐるものを、今晩こそは書き出さうと、一所懸命におもひを凝らして居りました。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
余はこれに未来の望を繋ぐことには、神も知るらむ、絶えておもひ到らざりき。されど今こゝに心づきて、我心は猶ほ冷然たりし
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ですけれど、茶屋女を相手にるとか、妾狂ひを為るとか言へば、またそこにも有る。あのお志保におもひを懸けるなんて——私はあきれて物も言へない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勘次かんじ什麽どんな八釜敷やかましくおつぎをおさへてもおつぎがそれでせいせられても、勘次かんじむら若者わかものがおつぎにおもひけることに掣肘せいちうくはへるちからをもいうしてらぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それで一時一寸ちよつと之が評判になつて、逢ふ人が皆其の事を言ひ出すので、僕はお蔭でうるさいおもひをさせられた。
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
夫を玄関に送りでし宮は、やがて氷のあなぐらなどにるらんおもひしつつ、是非無きあゆみを運びて居間にかへりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「貴女に対して、何とお詑びしていゝか分らないのです。貴女の心に萌んだ美しいおもひの芽をわたしが蹂躙してゐようとは、わたしが! 貴女を何物よりも愛してゐるわたしが。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
打つて流れてゐる。祖先がおもひに堪へずして吐露した詞語が、祖先の分身たる吾等に親しくないとは吾等にとつて虚偽である。おもふに汝にとつても虚偽であるに相違ない
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ながく水流中に在りし冷気れいき露営ろえい寒気かんきあはせ来るにひ、此好温泉塲をはじめて蘇生そせいするのおもひあり、一行の内終夜温泉に浴してねむりし者多し、しんに山中の楽園らくえんと謂ふべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かゝる時、人は往々無念無想のうちに入るものである。利害の念もなければ越方こしかた行末のおもひもなく、恩愛の情もなく憎悪の悩もなく、失望もなく希望もなく、たゞ空然として眼を開き耳を開いて居る。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
日出雄少年ひでをせうねんは、そのいづみながれ美麗びれいなる小魚こざかな見出みいだしたとて、うをふに餘念よねんなきあひだわたくしある大樹たいじゆかげよこたはつたが、いつか睡魔すいまおそはれて、ゆめとなくうつゝとなく、いろ/\のおもひつゝまれてとき
あはれなほS組合の薄白痴うすばかのらちもなきおもひはつづく……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
をののけるおもひの奧に「我」ありて伏して沈めば
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
おもひはこれに養はれ、心はためにゆうをえむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
人におもひをいたましむ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
稚日ちじつおもひをなやみぬ
秋の日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
人その願ひを飜し、新なるおもひによりて志を變へ、いまだ始めにあたりてそのなすところをすべて抛つことあり 三七—三九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
綱宗の夢寐むびの間におもひせた亀千代は、万治三年から寛文八年二月まで浜屋敷にゐた。此年の二月の火事に、浜屋敷は愛宕下あたごしたの上屋敷と共に焼けた。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
出稼ぎして諸方を彷徨うろついてゐた方が、ひもじいおもひをしない、寝泊ねどまりする処にも困らない。生れた村には食物くひもの欠乏たりなくてみんな難渋なんじふしてゐるけれど、余処よそ其程それほどでもない。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
この人はなんでも十三四のころから読売新聞よみうりしんぶん寄書きしよしてたので、文章ぶんしやうを見た目でこの人をると、まるうそのやうなおもひがしました、のち巌谷いはや初対面しよたいめんの時の事を言出いひだして
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分が、心ひそかにおもひを寄せてゐた青年から、邪魔物扱ひされてゐたことは、彼女の魂をにじつてしまふのに、十分だつた。もう一刻も、止まつてゐることは出来なかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
一行驚喜けうきして曰く之れ即ち会津街道なりと、人影を見ざるもすでに村里にるのおもひをなせり、歓呼くわんこして一行の無事ぶじしゆくす、昨暮遠望えんばうしたる一小板屋は尚之より岩代の方角にむかつて一里余のとほきに在り
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
靜かなるわがいもと、君見れば、おもひすゞろぐ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ひと日、わがおもひむろの日もゆふべ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いかにすぐれしおもひをか
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あゝわがおもひくらぶればことばの足らず弱きこといかばかりぞや、而してこの想すらわが見しものに此ぶればこれをすこしといふにも當らじ 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
に彼も家の内に居て、遺骸なきがらの前に限知られず思ひ乱れんより、ここには亡き人のそばにも近く、遺言に似たる或る消息をも得るらんおもひして、立てたる杖に重きかしらを支へて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おもひはこれに養はれ、心はためにゆうをえむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ざうの色まろらかにおもひしぬれ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おもひも薄く身も暗く
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
是故にその見ること新しき物にはばまれじ、是故にまたそのおもひの分れたる爲、記憶に訴ふることを要せじ 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ところで、はからずも貸主が君と云ふので、轍鮒てつぷの水を得たるおもひで我々が中へ入つたのは、営業者の鰐淵として話を為るのではなくて、旧友のはざまとして、実は無理な頼も聴いてもらひたいのさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
静かなるわがいもと、君見れば、おもひすゞろぐ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
燃えのこるおもひのうるみひえびえと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おもひも薄く身も暗く
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
我わがおもひしるをなほも漏れなくしぼらんものを、我に是なきによりて語るに臨み心後る 四—六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
山田やまだが四きふに入つて来たのです、実に這麼こんな意外なおもひをした事が無い、第二中学にた時はわたしより二きふうへ山田やまだが、予備門よびもんでは二きふしたくみに入つて来たのでせう、わたし何為どうした事かと思ひました、しか
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あかおもひぞうらとりどりに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あらはれ浮ぶわが「おもひ」。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あらはれ浮ぶわが「おもひ」。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)