夥多あまた)” の例文
血だらけ、白粉おしろいだらけ、手足、顔だらけ。刺戟の強い色を競った、夥多あまたの看板の中にも、そのくらい目を引いたのは無かったと思う。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
という様なことが分ったばかりで、如何いかなる名探偵といえども、園内の夥多あまたの人々の内から、真犯人を探し出すことは、殆ど不可能な仕事であった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かろ服裝ふくさうせる船丁等ボーイらちうになつてけめぐり、たくましき骨格こつかくせる夥多あまた船員等せんゐんら自己おの持塲もちば/\にれつつくりて、後部こうぶ舷梯げんていすで引揚ひきあげられたり。
心思しんしを磨き信仰に進み、愛と善とのわざを為し、霊の王国に来る時は夥多あまたの勝利の分捕物ぶんどりものを以てわが主と我とを悦ばせよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
二種ふたいろくはゆるゆゑ如何程おも癲癇てんかんなりともたゞ一二服を服用すれば忽地たちまち全快なさんことしも沸湯にえゆを注ぐに等き世にも怪有けうなる奇劑きざいなるは是迄夥多あまたの人に用ゐ屡々しば/\功驗こうけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、風にゆらぐ繁葉の間から、隱れた月の光がぽろり/\と夥多あまたの蛇の目の樣にひかつてこぼれるのを見ると、どうしても、おぞ氣がついてそこへ這入る氣になれない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
当時とうじ習慣しゅうかんでございますから、むろんみこと御身辺ごしんぺんには夥多あまた妃達きさきたちがとりまいてられました。
たとえばここに一軒の家あらん。楼下はいやしき一室にして、楼上には夥多あまたの美室あり。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
目出度めでたいものはいもの種」と申す文句でございます。「目出度いものは芋の種葉広く茎長く子供夥多あまたにエヽ」と詰らん唄で、それを婆アさんが二人並んで大きな声で唄い、目出度めでたくしゅくして帰る。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
石鏃 石鏃せきぞく通例つうれい長さ六七分にして其形状一定せざれど、何れも一端するどとがり、左右常に均整きんせいなり。此種の石器夥多あまたの中には石質美麗せきしつびれい製作緻密せいさくちみつ、實用に供するは惜ししと思はるる物無きに非ず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ヰンクルの心に夥多あまたの記念を喚起しました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
そのむかし我に従ひし夥多あまたの蛮民
雲の峰は崩れて遠山のふもともや薄く、見ゆる限りの野も山も海も夕陽のあかねみて、遠近おちこちの森のこずえに並ぶ夥多あまた寺院のいらかまばゆく輝きぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このほかほ、もしきゝもしたきこと澤山たくさんあつたが、時刻じこくすでに八ちかく、ていへんにはすで夥多あまた水兵すいへいあつまつてて、最早もはや工作こうさくはじまる模樣もやうつは、海岸かいがんいへには
そして、夥多あまたの肉団に取囲まれたまま、二羽の白鳥は静に目ざす石階いしだんの下へと着きました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おひしと露知つゆしらぬお光が嫁入よめいりの支度の好惡よしあし父親とも又お金とも相談して調とゝのへければ衣類いるゐ諸道具しよだうぐ今は殘らずそろひたるに大家の事故先方にては夥多あまたの支度ある事にて未だ調とゝのはぬか婚姻こんいんの日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
未来を論じつつ矢鳩答毒しきゅうとうどくを飲みしソクラット、異郷ラベナに放逐されしダンテ、その他夥多あまたの英霊は今は余の親友となり、詩人リヒテルとともに天の使に導びかれつつ、球より球まで、星より星まで
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さるにても暢気のんき沙汰さたかな。我にへつらい我にぶる夥多あまたの男女を客として、とうとき身をたわむれへりくだり、商業を玩弄もてあそびて、気随きままに一日を遊び暮らす。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花卉かき、石材、ガラス板、セメント、鉄材、などの註文書が、或は註文の使者が、遠くは南洋の方までも送られ、夥多あまたの土方、大工、植木職などが続々として各地から召集されました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
立退たちの夥多あまたの年をすごしたれば我幼顏わがをさながほも變りはて見知る者無るべしさらば兩三年の内には是非々々大望たいまうくはだてに取掛とりかゝるべし夫に付ては金子きんすなくては事成就じやうじゆがたし率や是よりは金子の調達てうだつに掛らん物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ては無聊ぶれうねてしきりにうでをさすつてたが、其内そのうち夕刻ゆふこくにもなると、この時刻じこく航海中かうかいちう軍艦乘組員ぐんかんのりくみゐんもつとたのしきとき公務こうむ餘暇よかある夥多あまた士官しくわん水兵すいへいは、そらたかく、なみあを後部甲板こうぶかんぱんあつまつて
島には鎌倉殿の定紋じょうもんついた帷幕まんまく引繞ひきめぐらして、威儀を正した夥多あまたの神官が詰めた。紫玉は、さきほどからここに控えたのである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
島には鎌倉殿の定紋じょうもんついた帷幕まんまく引繞ひきめぐらして、威儀を正した夥多あまたの神官が詰めた。紫玉は、さきほどからこゝに控へたのである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
稲荷堂の、背裏うしろから、もぞもぞと這出して、落ちた長襦袢に掛って、両手につかんだ、葛木を仰ぎ見て、夥多あまたたび押頂いたのは赤熊である。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは能登のと越中ゑつちう加賀かがよりして、本願寺ほんぐわんじまゐりの夥多あまた信徒しんとたちが、ころほとん色絲いろいとるがごとく、越前ゑちぜん——上街道かみかいだう往來ゆききしたおもむきである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この住居すまいは狭かりけれど、奥と店との間にひとつの池ありて、金魚、緋鯉ひごいなど夥多あまた養いぬ。が飼いはじめしともなく古くより持ち伝えたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広岡の庭には実のなる樹ども夥多あまたありし、中にも何とかいう一種李の実の、またなくうまかりしを今も忘れず。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ清国しんこくの富豪柳氏りゅうしの家なる、奥まりたる一室に夥多あまた人数にんずに取囲まれつつ、椅子いすに懸りてつくえに向へり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれ清国しんこくの富豪りゅう氏の家なる、奥まりたる一室に夥多あまた人数にんずに取囲まれつつ、椅子にかかりてつくえに向えり。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天守の千畳敷へ打込んだ、関東勢の大砲おおづつが炎を吐いて転がる中に、淀君をはじめ、夥多あまたの美人の、練衣ねりぎぬくれないはかま寸断々々ずたずたに、城と一所に滅ぶる景色が、目に見える。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、貴女を船に送出す時、いそに倒れて悲しもうが、新しい白壁、つやあるいらかを、山際の月に照らさして、夥多あまた奴婢ぬひに取巻かせて、近頃呼入れた、若いめかけに介抱されていたではないのか。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ななめに甲羅を、板に添って、手を掛けながら、するすると泳ぐ。これが、さおで操るがごとくになって、夥多あまたいい心持に乾いた亀の子を、カラカラとせたままで、水をゆらゆらと流れて辷った。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
椿 そのほか、夥多あまた道陸神どうろくじんたち、こだますだま、魑魅ちみ魍魎もうりょう
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)