外道げどう)” の例文
これはみな、宋朝そうちょう腐爛ふらんの悪世相が、下天げてんに描きだしつつある必然な外道げどうの図絵だ——。これを人心のすさびと嘆くも、おろかであろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このときも芋ねりをまいたが、外道げどうがあたるのでやめた。釣果は二十一尾。初めてのふかし釣りをやって、大あたりでおもしろかった。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
「世の中には外道げどうさか恨みと云って、自分の悪いのを棚にあげて、人を恨む者もありますからね。何かそんな心あたりでもありますかえ」
犯そうとするのではない、自分はお前たちがけ者だ、外道げどうだ、と言っている者の友となり、これらの者を救おうとしているのだ
あるいは外国の書を飜訳ほんやくして大言を吐散はきちらし、あまつさえ儒流を軽蔑けいべつしてはばかる所を知らずとえば、れは所謂いわゆる異端いたん外道げどうちがいない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
京の人に言わせると、我々こそ芭蕉の正統を継いだ者であって、江戸の俳諧は外道げどうである、というような事を言うて威張る。
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
十三外道げどう(仏教外の哲学、真理外の邪法)とか三十種外道とかいう中に入れて、その説伏ときふせに釈尊は非常に骨を折られました。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
内典ないてん外典げてんというが如く、げほうは外法げほうで、外道げどうというが如く仏法でない法の義であろうか。何にせよ大変なことで、外法は魔法たること分明だ。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
して聞かせた言葉のうちに、こんなにまで巧妙な暗示が含まれていようとは、今の今まで気が付かなかった。エエッ……この悪魔……外道げどうッ……
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すなわちわれらの思索を彼岸に通ずる本道より誘うて、まことしやかにそれを輪廻りんねに「迷行する外道げどうに」導くものがある。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
スレザークのレコードを集むる者に取っては、まず論点のほかに置くべき外道げどうの趣味と言って差支えのないものであろう。
世間ではかえってその人を非常に罵倒ばとうし「彼は外道げどうである。大罪悪人である。ラマに対して悪口をいうとは不届ふとどきである」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
私は、ときどき失敗をやってはぎゅうぎゅうな目に逢わされ、それが久しく外道げどう的な快楽となっているのです。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
もしその形態に至っては、犬神や外道げどうと同じく判明せぬけれども、普通、人狐の正体と定められおるものはいたちの一種である。あるいは鼬という説もある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
仏祖の保任する即心是仏は、外道げどうの哲学のゆめにもみるところでない。ただ仏祖と仏祖とのみ即心是仏しきたり、究尽しきたった聞著もんじゃ行取あんしゅ証著しょうじゃがある。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
鳶口とびぐち、木製の竜吐水りゅうどすい、強がりは清正のかぶと、銀紙の名刀、神楽の面は木彫の上物もあって、外道げどうひょっとこ、天狗、狐乃至は素盞嗚尊すさのおのみことなどすばらしい出来
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
仏蘭西フランスの写実派には興味を持っても、人生本位の露西亜の小説はジメジメして陰気だとくさし、その頃からツルゲネフやトルストイを推奨した私を外道げどうと呼び
それは意気地いくじなしの考える生き方なんだもの。それは私たちが、こんな恥ずかしい商売をするよりも、もっともっと恥ずかしい、堕落した、外道げどうのやり口よ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
中には自分の感じをうたおうとして手っとり早く作者の主観を述べた句、しくは作者の主観にって事実をこしらえ上げた句等は、私等から見ると外道げどうである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
突入しないことがむしろ外道げどうであり、怠慢であるという理窟になるのですから、その点から考慮しても、道庵の胆吹入りは、脱線でもなければ無軌道でもなく
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狐狸こり妖異よういや、鳥のつらをした異形の鬼魅きみ、そのほか外道げどう頭とか、青女あおおんなとか、そういった怪物あやしものが横行濶歩する天狗魔道界の全盛時代で、極端に冥罰めいばつ恠異かいいを恐れたので
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「親御様へお心遣い……あまつさえ外道げどうのような老人へ御気扱おきあつかいぜんお見上げ申したより、玉を削って、お顔にやつれが見えます。のう……これは何をお泣きなさる。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第九願、もろもろの有情をして天魔外道げどう纏縛てんばく、邪思悪見の稠林ちょうりん解脱げだつせしめ、正見に引摂いんじょうせしむるの願。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あれは霊界交通の外道げどうに過ぎないのだ。そんな子供だましのトリックが、トリックの専門家である探偵小説家を——コナン・ドイルをあざむき得たとは考えられないではないか。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
須利耶さまは童子を十二のとき、少しはなれた首都しゅとのある外道げどうじゅくにお入れなさいました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
入口いりぐちには注連縄しめなわってあるので、悪魔あくま外道げどうたぐい絶対ぜったいはいることはできぬ。またたとえ何事なにごとおこっても、かみまなこはいつも見張みはっているから、すこしも不安ふあんかんずるにはおよばぬ……。
枝折戸しおりどそとに、外道げどうつらのようなかおをして、ずんぐりってっていた藤吉とうきちは、駕籠かごなかからこぼれたおせんのすそみだれに、いましもきょろりと、団栗どんぐりまなこを見張みはったところだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
文科大学を卒業するときには、外道げどう哲学と Sokrates 前の希臘ギリシャ哲学との比較的研究とかいう題で、余程へんなものを書いたそうだ。それからというものは、なんにも書かない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして目的の魚を、あじなら鰺、カイヅならカイヅと定めて、外の魚は「外道げどう」と称して、目的の魚以外には狙はない。何でも釣るといふ事は計画的に釣りに出る人には面白くないのである。
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
こうやって、煦々くくたる春日しゅんじつ背中せなかをあぶって、椽側えんがわに花の影と共に寝ころんでいるのが、天下の至楽しらくである。考えれば外道げどうちる。動くと危ない。出来るならば鼻から呼吸いきもしたくない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのザマは! ……アレいけねえあっちにもいやがる! ……×ッ子の首っ玉アひっ抱え、グーグー眠っていやがる! ……起きろ、外道げどうめ、起きろ起きろ! ……おいらの身にもなってくれ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「うそをついたがどうしたのじゃ。阿呆あほう外道げどう。畜生。さあ来い。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの人を貰えさえすれば、株屋は悪魔でも外道げどうでも宜いんだ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
義太郎 (外道げどうが近寄るのを恐れる仏徒のように)
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
煩悩ぼんのうは人を外道げどうる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
(この外道げどう)と肉の破れるほど、肉体がいまわしい空想や欲望をいだく知覚を失ってしまうほど、打ちすえてくれる人はないものかと思う。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
采女という邪魔じゃま外道げどうをなんとか片付けてしまわなければ、姫と山名との縁談がなめらかに進行しないのは判り切っているので
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ほかの魚、ハゼ、メゴチ、カレイの外道げどうが釣れても、青ギスの釣れるまでは、ビクは決しておろしてはいけない」
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
いわんや我がシューベルトをけなしつけるにおいては、彼実に救うべからざる外道げどうに堕するものと言っていい。
外道げどう常見じょうけんとらわれ、すなわちいわく、『過去、未来、現在、ただこれ一識にして遷謝せんしゃあることなし』と。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
お銀様自身は事毎ことごとに弁信に向って、自分の形相の、悪鬼外道げどうよりも怖ろしいことを説いて、それをえんずる度毎に、例の瞋恚しんいのほむらというものに油が加わることを
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
釈尊、阿難、目連、呪術師じゅじゅつしの老女、老女の娘、外道げどうの論師、市の人々、諸天、神将達、大勢の尼僧。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
俊寛 (ののしるように)われわれはもはや神を捨てて外道げどうを祭ったほうがいいかもしれない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
殊に私はあなたが国事探偵でもなければ、また我が国の仏教を盗むために来られた外道げどうの人でもない事は、これまで種々の方面から観察して確かに知って居ります。たとい
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おばさんと手をひかれるのとどっち?」「……」と呆れた顔して、「おばさんに聞いてごらん。」「じゃあ、私と、どっち。」どうも、そういう外道げどうは、すみやかに疎遠して
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ヘエ。そげな事は一向存じまっせんでしたが、ただこの外道げどうと思うて待ち構えておりますところへ、遣って参りましたので思い切り引っ掴んでしまいましたが……ヘヘヘ……」
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
逃虚子はぶつを奉じて、しか順世じゅんせい外道げどうの如く、遜志斎は儒を尊んで、しか浄行者じょうぎょうしゃの如し。嗚呼ああ、何ぞ其の奇なるや。しかも遜志斎も飲を解せざるにあらず。其の上巳じょうし南楼なんろうに登るの詩に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どの経史の義をしって、知らぬふうをして折々漢学の急処のような所を押えて、話にもかいたものにも無遠慮に攻撃するから、れぞ所謂いわゆる獅子身中しんちゅうの虫で、漢学のめには私は実に悪い外道げどうである。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さればその方は先ず己を恥じて、匇々そうそうこの宝前を退散す可き分際ながら、推して神通じんずうを較べようなどは、近頃以て奇怪至極きっかいしごくじゃ。思うにその方は何処いずこかにて金剛邪禅こんごうじゃぜんの法を修した外道げどうの沙門と心得る。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ怒りのめない董卓は、火のような感情のまま、呂布が、この病室で、自分の寵姫に戯れようとした罪を、外道げどうを憎むようにつばして語った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)