トップ
>
噛
>
かじ
ふりがな文庫
“
噛
(
かじ
)” の例文
しかし、今になって他の道に走ったって恵まれるものでは無い! 石に
噛
(
かじ
)
りついてもやって見せるという気が私の心の中に起こった。
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
女の好きな国文の素養があって、歌や韻文も
上手
(
じょうず
)
なら芝居や音楽をも
噛
(
かじ
)
っていて、初対面のものを煙に巻く博覧の才弁を持っていた。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「そらよ、こっちが
旦
(
だん
)
の分。こりゃお源坊のだ。
奥様
(
おくさん
)
はあらが可い、煮るとも
潮
(
うしお
)
にするともして、
天窓
(
あたま
)
を
噛
(
かじ
)
りの、
目球
(
めだま
)
をつるりだ。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
するとロッセ氏は、とつぜん吾れにかえったらしく、ふーっと、
鯨
(
くじら
)
のようにふかい
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして私に
噛
(
かじ
)
りついたものである。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こうだ、本にばかり
噛
(
かじ
)
り付いて、運動とか趣味とかいうものを考えないと、勢い現代の若い婦人方には受が悪い、とこういうのだ。
判官三郎の正体
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
海竜王寺を出ると、村で大きな柿を二つほど買って、それを皮ごと
噛
(
かじ
)
りながら、こんどは
佐紀山
(
さきやま
)
らしい林のある方に向って歩き出した。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「さっき、
白夷
(
シヤン
)
人の召使が聴き
噛
(
かじ
)
ってきたんだがね。ここへ何でも、『天母生上の雲湖』ゆきの新隊がのり込んできたというのだ」
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「
鷺
(
さぎ
)
と
鴉
(
からす
)
ぐらいの見分けは誰にだってつくさ、これでも念流と小野派を少しばかり
噛
(
かじ
)
っているからね、名を聞かせてもらえないか」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
美味
(
うま
)
そうなのを二本買って、母と二人で
噛
(
かじ
)
る。塩があればもっと美味いだろう。二人で、手分けして、両側を軒並みに声をかけて行く。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
山羊の夫婦はそのなかで、とんぼ返りをうったり、金網に体をすりよせたり、鋭い歯で板や、針金をガリガリ
噛
(
かじ
)
ったりして、暮している。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
そしてテオドラ夫人の手料理は、とりわけその点によく気を
注
(
つ
)
けてあるやうに、猫のやうな口もとをして勢ひよくビフテキに
噛
(
かじ
)
りついた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それならば
生物
(
なまもの
)
ばかり
噛
(
かじ
)
っているに限る。野蛮人種のように煮もせず焼きもせず、肉でも野菜でも
生
(
なま
)
で食べるのが一番無造作だ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
二人が海から帰つて来て、
朝餉
(
あさげ
)
の膳に向つた時、素戔嗚は苦い顔をして、鹿の
片腿
(
かたもも
)
を
噛
(
かじ
)
りながら、彼と向ひ合つた葦原醜男に
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
塩鮭
(
しゃけ
)
は骨だけ別に焼いてかじった。干物は頭からみんな
噛
(
かじ
)
ってしまうし、いなごや
蝸牛
(
まいまいつぶろ
)
を食べるのを教えたのもこの人だ。それが怒鳴った。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
放課後寄宿舎に帰ると、室から室に油を売つて歩いてゐた以前とは打つて変り、小倉服を脱ぐ分秒を惜んで
卓子
(
テエブル
)
に
噛
(
かじ
)
りついた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
鼠
(
ねずみ
)
が何か
噛
(
かじ
)
っているんだ、安心しろと云うと、妻はそうですかとありがたそうな返事をした。それからは二人とも落ちついて寝てしまった。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは米友でなくても、山路を旅して腹の減った時分に、握飯を
噛
(
かじ
)
るほどおいしいものはおそらくこの世になかろうはずのものであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一口
噛
(
かじ
)
ってから、私は気持が悪いことを表示し、無言劇の要領で胃のあたりを撫でて見せたら、彼等はその意味をすぐ悟った。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
スマックなぞ
噛
(
かじ
)
りに立寄るくらいでしたが、KOの柴山や上原などは、よくかよっていて行けばいつも顔を合せるほどでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
快
(
こゝろ
)
よくおつぎに
命
(
めい
)
じた。おつぎは
古
(
ふる
)
い
醤油樽
(
しやうゆだる
)
から
白漬
(
しろづけ
)
の
薤
(
らつきやう
)
を
片口
(
かたくち
)
へ
出
(
だ
)
しておつたの
側
(
そば
)
へ
侑
(
すゝ
)
めた。
勘次
(
かんじ
)
は一つ
撮
(
つま
)
んでかり/\と
噛
(
かじ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
鰹節
(
かつおぶし
)
や生米を
噛
(
かじ
)
って露命を
繋
(
つな
)
ぎ、
岩窟
(
いわや
)
や樹の下で、雨露を
凌
(
しの
)
いでいた幾日と云う長い間、彼等は一言も不平を
滾
(
こぼ
)
さなかった。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あれは何か木片かなんかを
噛
(
かじ
)
らせるがいい——それを見てもわかるが、大切にも育てられたがあんまり手入れはとどかなかったね、あの鳥は。
オカアサン
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
主人と妻と
女児
(
むすめ
)
と、田の
畔
(
くろ
)
の
鬼芝
(
おにしば
)
に腰を下ろして、
持参
(
じさん
)
の
林檎
(
りんご
)
を
噛
(
かじ
)
った。
背後
(
うしろ
)
には
生温
(
なまぬる
)
い
田川
(
たがわ
)
の水がちょろ/\流れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
誰が先にその求人の事務所に乗りつけるか、まるで自転車競走です。そして一々すげなく断られて帰って来ます。そして朝飯のパンを
噛
(
かじ
)
ります。
褐色の求道
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仏さまの頭へ笊を植えるなどは甚だ
滑稽
(
こっけい
)
でありますが、これならば漆喰の
噛
(
かじ
)
り附きもよく、案としては名案でありました。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その他の智識としては
馬琴
(
ばきん
)
、
為永
(
ためなが
)
の小説や経国美談、
浮城
(
うきしろ
)
物語を愛読し、ルッソーの民約篇とかを多少
噛
(
かじ
)
っただけである。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お庄は体の大きい叔母と膝を突き合わして、湯島の
稽古屋
(
けいこや
)
で
噛
(
かじ
)
ったことのある夕立の雨や春景色などを時々一緒に
謳
(
うた
)
った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
武佐寺での尊氏は、油幕を引いた大庭に床几をおき、朝も
昼糧
(
ひるがて
)
も、
粳
(
うるち
)
に味噌をつけたような物を床几のままで
噛
(
かじ
)
っていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は雪をつかんで
噛
(
かじ
)
りだした。身心の疲労をしずめるため、しばらく彼は、やわらかい雪に背を
凭
(
もた
)
せてながくなっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
政界勢力関係についての内幕を聞いて来たり、ファッシズムの進行状態、戦争や満洲の問題のニュースを
噛
(
かじ
)
つて来て、大声で自分たちに披露する。
現代詩
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
と云って、羽田の悪酒を詰めるでもありませんから、船中では
有
(
あり
)
の
実
(
み
)
でも
噛
(
かじ
)
りましょう。食いさしを川の中へ捨てると、
蝕歯
(
むしば
)
の痛みが
留
(
とま
)
る
呪法
(
まじない
)
でね
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
この事をどこかで高橋が聞き
噛
(
かじ
)
り、例のごとくアーノルド男邸の地下室へ食いに往って
悪戯
(
いたずら
)
をするうち猴の真似をした。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼らは常にその良人に見捨てられては、
忽
(
たちま
)
ち路頭に迷わんとの
鬼胎
(
おそれ
)
を
懐
(
いだ
)
き、何でも
噛
(
かじ
)
り付きて離れまじとは
勉
(
つと
)
むるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私は野村の首つたまに
噛
(
かじ
)
りついてやらずにゐられなかつた。彼はハッキリ覚悟をきめてゐた。男の覚悟といふものが、こんなに可愛いゝものだとは。
続戦争と一人の女
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
己はまだこの世の土に
噛
(
かじ
)
り付いていたいのだ。お前に逢うての
怖
(
おそろ
)
しさに、己の
縛
(
ばく
)
が解けてしまった。どうやらこれからは本当に生きて見られそうな。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
あるいは親の足を
噛
(
かじ
)
りながら、親の足を噛る事も当節はなかなか素人の考える位い容易な仕事でもないそうだが、様々の苦労を尽している次第である。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
彼
(
か
)
の殿様然たる剛力どのには、水を汲みに行こうとはいわねば、天幕を張る手伝いをするでもなく、ただ焚火に
噛
(
かじ
)
り着いてはや居眠りを始めてござる。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
御茶がわりにコンニャックと雪を
噛
(
かじ
)
って、一息いれた後、いよいよここを発って、急な鋭い氷の山稜にとっついた。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
私は公園の山のベンチに腰をかけて、上野の山を眼界にして左右にひろびろと広がった白い焼野原を見ながら、花屋敷の前で買って来た梨の実を
噛
(
かじ
)
った。
死体の匂い
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
第一、
今時
(
いまどき
)
は大抵の奴あ英語の少し位
噛
(
かじ
)
つてるから、中学生だか何だか、知れたもんぢやないぢやありませんか。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
自主自由のなま
噛
(
かじ
)
りにて無政無法の騒動なるべし。名分と職分とは文字こそ相似たれ、その趣意はまったく別物なり。学者これを誤り認むることなかれ。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼は
慌
(
あわ
)
てて、今
噛
(
かじ
)
りかけていたベビーゴルフのボールほど大きい梅漬を、めんつの中へ投げ込んで、
股引
(
ももひき
)
でちょっとこすった手を彼の女の前へ差し出した。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
その内で、こう言やア
可笑
(
おか
)
しい様だけれども、若手でサ、原書も
些
(
ちっ
)
たア
噛
(
かじ
)
っていてサ、そうして事務を取らせて
捗
(
はか
)
の
往
(
い
)
く者と言ったら、マア我輩二三人だ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そこで彼は石を投げ捨て、歩きながら大根を
噛
(
かじ
)
って、この村もいよいよ駄目だ、城内に
行
(
ゆ
)
く方がいいと想った。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
何處
(
どこ
)
からか
斯
(
か
)
うお
前
(
まへ
)
のやうな
人
(
ひと
)
が
己
(
お
)
れの
眞身
(
しんみ
)
の
姉
(
あね
)
さんだとか
言
(
い
)
つて
出
(
で
)
て
來
(
き
)
たらどんなに
嬉
(
うれ
)
しいか、
首
(
くび
)
つ
玉
(
たま
)
へ
噛
(
かじ
)
り
着
(
つ
)
いて
己
(
お
)
れはそれぎり
往生
(
わうじやう
)
しても
喜
(
よろこ
)
ぶのだが
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
背中から下された孫は、母の顔を見ても、大叔父の顔を見ても、直ぐベソをかいて、祖母の懐に
噛
(
かじ
)
り付いた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
太股をはじけ出した参右衛門は、糖黍の青茎を
噛
(
かじ
)
ってみてはふッふ、ふッふと笑っている。少し鍋が煮えて来ると、蓋を取ってみて、汁を一寸指につけては
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
据
(
す
)
えて精限り根限り弾いた「
黒髪
(
くろかみ
)
」のようなやさしいものや「茶音頭」のような難曲や
素
(
もと
)
より何の順序もなく聞き
噛
(
かじ
)
りで習ったのであるからいろいろのものを
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私
(
わたくし
)
は
全
(
まった
)
く
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れ、
泣
(
な
)
くにも
泣
(
な
)
かれないような
気持
(
きもち
)
で、ひしと
枕
(
まくら
)
に
噛
(
かじ
)
りつくより
外
(
ほか
)
に
詮術
(
せんすべ
)
もないのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
が、彼が天窓を閉めて捕えにかかると、
戯談
(
じょうだん
)
にちょっと逃げ廻って、すぐラム・ダスの首に
噛
(
かじ
)
りつきました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
噛
漢検準1級
部首:⼝
15画
“噛”を含む語句
獅噛
噛切
噛締
生噛
獅噛面
噛付
噛附
歯噛
噛合
米噛
噛着
獅噛火鉢
丸噛
獅噛附
一噛
齒噛
獅子噛
相噛
綿噛
噛煙草
...