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取縋
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とりすが
ふりがな文庫
“
取縋
(
とりすが
)” の例文
取縋
(
とりすが
)
る松の枝の、海を分けて、
種々
(
いろいろ
)
の波の調べの
懸
(
かか
)
るのも、人が縋れば根が揺れて、
攀上
(
よじのぼ
)
った
喘
(
あえ
)
ぎも
留
(
や
)
まぬに、汗を
冷
(
つめと
)
うする風が絶えぬ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木片に
取縋
(
とりすが
)
りながら少女が一人、川の中ほどを浮き沈みして流されて来る。私は大きな材木を選ぶとそれを押すようにして泳いで行った。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
おげんは意外な結果に
呆
(
あき
)
れて、皆なの居るところへ急いで行って見た。そこには母親に
取縋
(
とりすが
)
って泣顔を
埋
(
うず
)
めているおさだを見た。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
たった一人だけを支えることの出来る板子に
取縋
(
とりすが
)
って、その一人が他の一人を突き落したがために、一人は助かり、他の一人は溺死したときに
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
その時に彼に
取縋
(
とりすが
)
っているオドロオドロしい姿が、泥だらけの左手をあげて、初枝の顔を指した。勝誇るように笑った。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
ただ子供の死骸に
取縋
(
とりすが
)
って泣入っている母親に
鄭重
(
ていちょう
)
な悔みの言葉を残して、その場を立去りさえすればよいのでした。
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いきなり伝吉に
取縋
(
とりすが
)
った娘——お澪の純情な姿を、平次の十手も引分け兼ねました。
幇間
(
たいこ
)
医者の石沢閑斎に、どうしてこんな娘が生れたことでしょう。
銭形平次捕物控:095 南蛮仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
例えられぬほど
怨
(
うらめ
)
しく思われるに反して、蘿月の伯父さんの事が
何
(
なん
)
となく
取縋
(
とりすが
)
って見たいように
懐
(
なつか
)
しく思返された。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
眼が
眩
(
くら
)
んで来て星のようなものが左右へ散る。心臓は破れそうだ。泣いて
取縋
(
とりすが
)
って哀訴したい気持ちが一ぱいだ。
娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
足下には紫矢飛白の乙子が、芝草に
取縋
(
とりすが
)
った形で、
真蒼
(
まっさお
)
な顔をしてうずくまっていた。三人の方を見るには見たが、地面から顔を上げる気力はなかった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
はつと思つておせきが身をよけると、犬はそれを追ふやうに駈けあるいて、かれの影を踏みながら狂つてゐる。おせきは身をふるはせて要次郎に
取縋
(
とりすが
)
つた。
影を踏まれた女:近代異妖編
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
過
(
あやま
)
ちて野中の
古井
(
ふるゐ
)
に落ちたる人の、沈みも果てず、
上
(
あが
)
りも
得為
(
えせ
)
ず、命の綱と
危
(
あやふ
)
くも
取縋
(
とりすが
)
りたる草の根を、
鼠
(
ねずみ
)
の
来
(
きた
)
りて
噛
(
か
)
むに
遭
(
あ
)
ふと云へる
比喩
(
たとへ
)
に
最能
(
いとよ
)
く似たり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
取縋
(
とりすが
)
る女房子供を蹴飛ばし張りとばし、家中の最後の一物まで持ち込んで来たという感じでありました。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
取縋
(
とりすが
)
ってみたところで、お雪ちゃんの力では、米友の地力を
如何
(
いかん
)
ともすることができません——だが、目に見えないあの暴君タイプのお嬢様の圧力が、この時も
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると阿闍利さまは童子の死骸に
取縋
(
とりすが
)
って泣いておられます。その泣きごえは人間の声と思われないくらいです。陰々として寺の中をひびきわたるのでございます。
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と山之助に
取縋
(
とりすが
)
って泣きまするから、
堪
(
こら
)
え
兼
(
かね
)
てお照も泣伏します。水島太一も膝の上に手を置くと、はら/\/\と膝へ涙が落ちる。すると台所の方から大きな声で
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「二郎や、僕もそれと同じい夢を見た。母さんは初め遇うた時に
知
(
しら
)
なかったが、なんでもよく似ている人だと思って、
取縋
(
とりすが
)
って見ると母さんであったのだろう……。」
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
海馬や、海象なら、こうして僕に、いくたびか
取縋
(
とりすが
)
られると、うるさくなって、海へもぐり込むにちがいない。だのに、一向気にもとめず、僕の
為
(
な
)
すままに任している。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
カツチリと四つの手で母の腹に
取縋
(
とりすが
)
つて、その小い五本の指を堅く/\握つてゐるのです。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
今は
是
(
これ
)
までと瀬兵衛敵中に馳せ入り斬り死しようとするのを、中川九郎次郎
鎧
(
よろい
)
の袖に
取縋
(
とりすが
)
り、名もない者の手にかからんことは口惜しい次第
故
(
ゆえ
)
本丸へ退き自害されよと説いた。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分の意気地なさ、だらしなさ、情けなさが身にしみ、自分の
影法師
(
かげぼうし
)
まで、いやになって、なんにも
取縋
(
とりすが
)
るものがないのです。星影あわき太平洋、意地のわるい黒い海だった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
占領させなかつたこの自己がわるいのか。それとも又それを嘆いて子を抱いて死んだ女がわるいのであらうか。かれは其時は唯、「自己」に
取縋
(
とりすが
)
つて
強
(
し
)
ひてその苦痛を処分した。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
貞盛の妻もこゝでは憂き艱難しても夫にめぐり
遇
(
あ
)
ひたいところだ。やうやくめぐり遇つたとするとハッとばかりに
取縋
(
とりすが
)
る、
流石
(
さすが
)
の常平太も女房の肩へ手をかけてホロリとするところだ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は、鞭など怖ろしいもののように目も呉れずに愛馬の首に
取縋
(
とりすが
)
った。「お前に鞭が必要だなんてどうして信じられよう。お前を打つくらいならば、僕は自分が打たれた方がましだよ。」
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
彼
(
かれ
)
は
泳
(
およ
)
がんと
爲
(
す
)
るものゝやうに
兩手
(
りやうて
)
を
動
(
うご
)
かして、
誰
(
たれ
)
やらの
寐臺
(
ねだい
)
にやう/\
取縋
(
とりすが
)
つた。と
又
(
また
)
も
此時
(
このとき
)
振下
(
ふりおろ
)
したニキタの
第
(
だい
)
二の
鐵拳
(
てつけん
)
、
背骨
(
せぼね
)
も
歪
(
ゆが
)
むかと
悶
(
もだ
)
ゆる
暇
(
ひま
)
もなく
打續
(
うちつゞい
)
て、
又々
(
また/\
)
三
度目
(
どめ
)
の
鐵拳
(
てつけん
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
外し
素湯
(
さゆ
)
を呑
良
(
やゝ
)
あつて十兵衞は
膝
(
ひざ
)
立直
(
たてなほ
)
し
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も我さへ居ずば
妻
(
つま
)
や子に然まで難儀は
掛
(
かゝ
)
るまじ思ひ定めし事成ば何樣あつても己は居られぬ
留守
(
るす
)
を
其方達
(
そちたち
)
守
(
まも
)
つて
呉
(
くれ
)
といふ
袖袂
(
そでたもと
)
へ
取縋
(
とりすが
)
り此身を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
呉羽之介の真面目な怒にお春はようやく気がついて、気も狂わしく
取縋
(
とりすが
)
り
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「まあまあ待ってくだされ」と、おしおは立って小平太の
袖
(
そで
)
に
取縋
(
とりすが
)
った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
盲目の二人は驚愕して一度に右左から孫に
取縋
(
とりすが
)
った。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
お千代は走寄り、
取縋
(
とりすが
)
るようにして訊いた。
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
我に返って、良人の姿を一目見た時、ひしと
取縋
(
とりすが
)
って、わなわなと震えたが、余り力強く抱いたせいか、お浜は
冷
(
つめた
)
くなっていた。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三吉は姉の肉声を通して、暗い座敷
牢
(
ろう
)
の格子に
取縋
(
とりすが
)
った父の狂姿を想像し得るように思った。彼はお種の顔を
熟
(
じっ
)
と眺めて、黙って了った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
五人の男に取り囲まれた中に、鞠子さんは黒川夫人の胸に顔を埋める様にして、
取縋
(
とりすが
)
っている。その足下に、霊媒の龍ちゃんが長々と横わっていた。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
例
(
たと
)
へられぬほど
怨
(
うらめ
)
しく思はれるに反して、
蘿月
(
らげつ
)
の
伯父
(
をぢ
)
さんの事が
何
(
なん
)
となく
取縋
(
とりすが
)
つて見たいやうに
懐
(
なつか
)
しく
思返
(
おもひかへ
)
された。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
お駒は一生懸命でした、ツイぞ側へ寄ったことも無い三之丞の膝に
取縋
(
とりすが
)
って、それをグイグイと動かし
乍
(
なが
)
ら、あらゆる媚と我儘と、魅惑と香気を撒き散らします。
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
千歳が思わず
取縋
(
とりすが
)
った慶四郎の手から、
却
(
かえ
)
ってぴりぴりするような厳しい震えを千歳は感じた。
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
旦那様をお力に親の亡い
後
(
のち
)
には
唯
(
た
)
だ
此方様
(
こなたさま
)
ばかりを命の綱と
取縋
(
とりすが
)
って、御無理を願いましたことで、思い掛けなくお母様が嫁にと御意遊ばして、冥加に余ったことなれど
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お危のうございますという口の下から、自分が危なく打倒れようとして橋の欄干に
取縋
(
とりすが
)
った、ついその隣は、例のしがみついた屍骸でしたから、
慄
(
ふる
)
え上って飛び退きました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分は唯一心にその男の手に
取縋
(
とりすが
)
っていればいいのである。もう何にも思うまい。とやかくと迷うのは自分の浅墓であると、お菊は努めて自分の疑いを払い退けようとした。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
宮は彼の
背後
(
うしろ
)
より
取縋
(
とりすが
)
り、
抱緊
(
いだきし
)
め、
撼動
(
ゆりうごか
)
して、
戦
(
をのの
)
く声を励せば、励す声は更に戦きぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と感慨交りに厳しくことわられ、
取縋
(
とりすが
)
ろうすべも無く
没義道
(
もぎどう
)
に振放された。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼
(
かれ
)
は
泳
(
およ
)
がんとするもののように
両手
(
りょうて
)
を
動
(
うご
)
かして、
誰
(
たれ
)
やらの
寐台
(
ねだい
)
にようよう
取縋
(
とりすが
)
った。とまたもこの
時
(
とき
)
振下
(
ふりおろ
)
したニキタの
第
(
だい
)
二の
鉄拳
(
てっけん
)
、
背骨
(
せぼね
)
も
歪
(
ゆが
)
むかと
悶
(
もだ
)
ゆる
暇
(
ひま
)
もなく
打続
(
うちつづい
)
て、またまた三
度目
(
どめ
)
の
鉄拳
(
てっけん
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
何の
遺恨
(
ゐこん
)
で殺しませう是は全く
人違
(
ひとちが
)
ひにて候と云に女房お峰も役人に
取縋
(
とりすが
)
り
夫
(
をつと
)
富右衞門は
勿々
(
なか/\
)
人殺しなど仕つる者には御座なく是は
必定
(
かならず
)
人違ひ
何卒
(
どうぞ
)
御
宥
(
ゆる
)
し成れて下さりませと
涙
(
なみだ
)
と共に手を合せ
詫
(
わび
)
るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
弁護士、大日向、音作、銀之助、其他生徒の群はいづれも三台の
橇
(
そり
)
の
周囲
(
まはり
)
に集つた。お志保は
蒼
(
あを
)
ざめて、省吾の肩に
取縋
(
とりすが
)
り乍ら見送つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
はっと
裳
(
もすそ
)
を
摺
(
す
)
らして、
取縋
(
とりすが
)
るように、女中の膝を
竊
(
そっ
)
と抱き、袖を引き、三味線を引留めた。お三重の姿は崩るるごとく、
芍薬
(
しゃくやく
)
の花の散るに似て
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
植木屋の松五郎は後ろから胸のあたりを一と突きにされて、土手の上にこと切れ、血だらけの死骸に
取縋
(
とりすが
)
って、十三になる倅の丑松は泣いているではありませんか。
銭形平次捕物控:149 遺言状
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その時に、狂人の刃の下に
取縋
(
とりすが
)
ったものがあります。それは八歳になる女の子でありました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして最後に会ったとき却って何だかわたくしの生命に
取縋
(
とりすが
)
るような妙な言葉だけわたくしの胸に残されては、わたくしはいくら好きだった父でもあんまり勝手だと思いながら
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
役人耳にも入ず
白睨
(
にらみ
)
付てぞ引立ける富右衞門は女房お
峰
(
みね
)
に向ひ此
儀
(
ぎ
)
素
(
もと
)
より我が身に
覺
(
おぼ
)
えなき
事
(
こと
)
なれば御
郡代樣
(
ぐんだいさま
)
の御前にて申譯は致すなり必ず
心配
(
しんぱい
)
すること
勿
(
なかれ
)
と云ども
流石
(
さすが
)
女氣
(
をんなぎ
)
のお峰は又も
取縋
(
とりすが
)
り涙と共に
泣詫
(
なきわび
)
るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
(太吉は
俄
(
にわか
)
に
立上
(
たちあが
)
りて、再び父に
取縋
(
とりすが
)
る。)
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
取
常用漢字
小3
部首:⼜
8画
縋
漢検1級
部首:⽷
16画
“取”で始まる語句
取
取出
取柄
取除
取次
取敢
取交
取做
取付
取着