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冷酒
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ひやざけ
ふりがな文庫
“
冷酒
(
ひやざけ
)” の例文
その淋しさを消すために、
冷酒
(
ひやざけ
)
を
煽
(
あお
)
るようなこともあり、ついには毎夜、冷酒を煽らなければ寝つかれないようになってしまいました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さればこそ、嬢
様
(
さん
)
と聞くと
斉
(
ひと
)
しく、朝から台所で
冷酒
(
ひやざけ
)
のぐい
煽
(
あお
)
り、魚屋と茶碗を合わせた、その
挙動
(
ふるまい
)
魔のごときが、
立処
(
たちどころ
)
に影を潜めた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
併し、嘉三郎は、そのまま何も言わずに、残っている
冷酒
(
ひやざけ
)
を一息にあおると、
忙
(
せわ
)
しく勘定をして、
梅雨
(
ばいう
)
の暗い往来へ出て行った。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
一匹の小蝦が
咽喉
(
のど
)
を通らないのを無理に
冷酒
(
ひやざけ
)
で流し込んで『これが土産だ』と云ってその時の僕の全財産、二十銭を置いて来た
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
おもて
華
(
はな
)
やかに、うらの貧しいこんな文明人はついそこいらの牛店にもすわり込んで、肉鍋と
冷酒
(
ひやざけ
)
とを前に、
気焔
(
きえん
)
をあげているという時だ。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
蘿月は稽古のすむまで
縁近
(
えんぢか
)
くに坐って、
扇子
(
せんす
)
をぱちくりさせながら、まだ
冷酒
(
ひやざけ
)
のすっかり
醒
(
さ
)
めきらぬ処から、時々は我知らず口の中で稽古の男と一しょに
唄
(
うた
)
ったが
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼等の楽しみは、なにより、「
角打
(
かくう
)
ち」だ。
桝
(
ます
)
の
角
(
かど
)
から、キュウッと、
冷酒
(
ひやざけ
)
を
一息
(
ひといき
)
に飲むことである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
秋子は見届けしからば御免と
山水
(
やまみず
)
と申す長者のもとへ一応の照会もなく引き取られしより俊雄は
瓦斯
(
がす
)
を離れた風船乗り天を仰いで吹っかける
冷酒
(
ひやざけ
)
五臓六腑へ浸み渡りたり
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
「俺は酒じゃ、
冷酒
(
ひやざけ
)
じゃ。こいつをキューッとあおらんことには、腹の虫めがおさまらぬげに」
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時柴野は隊から帰って来た身体を大きくして、
長火鉢
(
ながひばち
)
の
猫板
(
ねこいた
)
の上にある
洋盃
(
コップ
)
から
冷酒
(
ひやざけ
)
をぐいぐい飲んだ。御縫さんは白い肌をあらわに、鏡台の前で
鬢
(
びん
)
を
撫
(
な
)
でつけていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
式が終って
冷酒
(
ひやざけ
)
とスルメが出て、百人に近い列席者は故人の追懐談に移ったので、山田はやっと伊沢と
詞
(
ことば
)
を交える機会を得たが、それでも最初に
逢
(
あ
)
った時のような打ちとけた
雨夜続志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二人は
冷酒
(
ひやざけ
)
の盃を
換
(
か
)
わしてから、今日までの勘定をすませた後、勢いよく
旅籠
(
はたご
)
の
門
(
かど
)
を出た。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
白鹿
(
はくしか
)
」と銘のある大樽の呑口から茶漬茶碗に一杯注いだ
冷酒
(
ひやざけ
)
をグツと
呷
(
あふ
)
ることもある。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
その
剰銭
(
つりせん
)
で、どこかで
冷酒
(
ひやざけ
)
の盗み飲みをした宅助は、やっと虫が納まって、ふらつくのを、無理に口を結んで帰ってきたが、周馬や一角や孫兵衛は、まだ湯どうふ屋の見晴らしに
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喰
(
くひ
)
勘定をする
機
(
をり
)
から表の方より雲助ども五六人どや/\と
這入
(
はひり
)
來り
最
(
もう
)
仕舞れしかモシ
面倒
(
めんだう
)
ながら一
杯
(
ぱい
)
飮ませて下せいと云つゝ
鉢
(
はち
)
にありし
鹽漬
(
しほづけ
)
の
唐辛子
(
たうがらし
)
を
肴
(
さかな
)
に何れも五郎八
茶碗
(
ぢやわん
)
にて
冷酒
(
ひやざけ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
男に逢ふ前は、かならずかうした玄人つぽい地味なつくりかたをして、鏡の前で、
冷酒
(
ひやざけ
)
を五勺ほどきゆうとあふる。そのあとは歯みがきで歯を磨き、酒臭い息を殺しておく事もぬかりはない。
晩菊
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
村
(
むら
)
の
酒屋
(
さかや
)
の
店前
(
みせさき
)
までくると、
馬方
(
うまかた
)
は
馬
(
うま
)
をとめました。いつものやうに、そしてにこにことそこに
入
(
はい
)
り、どつかりと
腰
(
こし
)
を
下
(
をろ
)
して
冷酒
(
ひやざけ
)
の
大
(
おほ
)
きな
杯
(
こつぷ
)
を
甘味
(
うま
)
さうに
傾
(
かたむ
)
けはじめました。一
杯
(
ぱい
)
一
杯
(
ぱい
)
また一
杯
(
ぱい
)
。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
どこかやんばらなようなところのある内儀さんは、
継子
(
ままこ
)
がいなくなってからは、時々劇しくお爺さんに喰ってかかった。
喧嘩
(
けんか
)
をすると、じきに
菰冠
(
こもかぶ
)
りの呑み口を抜いて、コップで
冷酒
(
ひやざけ
)
をも
呷
(
あお
)
った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
蘿月
(
らげつ
)
は
稽古
(
けいこ
)
のすむまで
縁近
(
えんぢか
)
くに坐つて、
扇子
(
せんす
)
をぱちくりさせながら、まだ
冷酒
(
ひやざけ
)
のすつかり
醒
(
さ
)
めきらぬ
処
(
ところ
)
から、時々は
我知
(
われし
)
らず口の中で
稽古
(
けいこ
)
の男と一しよに
唄
(
うた
)
つたが
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
どれも皆——ろくなものではありませんが、私のかいたのが入っていたのを、後姿と一所に、半ば起きに、
密
(
そっ
)
と見た時、なぜか、
冷酒
(
ひやざけ
)
が氷になって、目から、しかも
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
冷酒
(
ひやざけ
)
の勢いに乗じて別荘に押しかけた時分には、若旦那夫婦と女中二人を乗せたモーターボートが、
大凪
(
おおなぎ
)
の沖合はるかに、音も聞こえない処に
辷
(
すべ
)
っていたのであった。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
男に
逢
(
あ
)
う前は、かならずこうした
玄人
(
くろうと
)
っぽい地味なつくりかたをして、鏡の前で、
冷酒
(
ひやざけ
)
を五
勺
(
しゃく
)
ほどきゅうとあおる。そのあとは歯みがきで歯を
磨
(
みが
)
き、酒臭い息を殺しておく事もぬかりはない。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
血の匂いを
嗅
(
か
)
いだ後の酒は、一種の
湿気
(
しっけ
)
ばらい、自分も
冷酒
(
ひやざけ
)
の
杯
(
さかずき
)
を取って
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地主は
煙管
(
きせる
)
を炬燵板の間に差込み、
冷酒
(
ひやざけ
)
を
舐
(
な
)
め舐め隠居の顔を眺めて
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
只
(
たゞ
)
無々
(
ない/\
)
とばかり云ひをつて
汝
(
おのれ
)
今に
誤
(
あや
)
まるか
辛目
(
からきめ
)
見せて呉んと云ながら一升
桝
(
ます
)
へ
波々
(
なみ/\
)
と一ぱい
酌
(
つぎ
)
酒代
(
さかだい
)
は
幾干
(
いくら
)
でも勘定するぞよく見てをれと
冷酒
(
ひやざけ
)
の
桝
(
ます
)
の
角
(
すみ
)
より一
息
(
いき
)
にのみ
干
(
ほし
)
最
(
もう
)
一
杯
(
ぱい
)
といひつゝ又々
呑口
(
のみくち
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
確か三人づれで、若い
衆
(
しゅ
)
が見えました。やっぱり酒を御持参で。大分お支度があったと見えて、するめの足を
噛
(
かじ
)
りながら、
冷酒
(
ひやざけ
)
を茶碗で
煽
(
あお
)
るようなんじゃありません。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
湯呑茶碗を一つずつ持って、人々は、歯に
沁
(
し
)
むような
冷酒
(
ひやざけ
)
に喉を鳴らした。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
休茶屋
(
やすみぢやゝ
)
の
女房
(
にようぼ
)
が
縁
(
ふち
)
の厚い底の
上
(
あが
)
つたコツプについで出す
冷酒
(
ひやざけ
)
を、
蘿月
(
らげつ
)
はぐいと
飲干
(
のみほ
)
して
其
(
そ
)
のまゝ
竹屋
(
たけや
)
の
渡船
(
わたしぶね
)
に乗つた。
丁度
(
ちやうど
)
河
(
かは
)
の
中程
(
なかほど
)
へ来た
頃
(
ころ
)
から舟のゆれるにつれて
冷酒
(
ひやざけ
)
がおひ/\にきいて来る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
冷酒
(
れいしゆ
)
と
茘枝
(
れいし
)
と
間違
(
まちが
)
へたんですが……そんなら
始
(
はじ
)
めから
冷酒
(
ひやざけ
)
なら
冷酒
(
ひやざけ
)
と
言
(
い
)
つてくれれば
可
(
い
)
いのにと
家内中
(
うちぢう
)
の
者
(
もの
)
は
皆
(
みな
)
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
又
(
また
)
その
女中
(
ぢよちう
)
が「けいらん五、」と
或時
(
あるとき
)
言
(
い
)
つた。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
休茶屋の
女房
(
にょうぼ
)
が
縁
(
ふち
)
の厚い底の上ったコップについで出す
冷酒
(
ひやざけ
)
を、蘿月はぐいと
飲干
(
のみほ
)
してそのまま
竹屋
(
たけや
)
の
渡船
(
わたしぶね
)
に乗った。丁度河の中ほどへ来た頃から舟のゆれるにつれて冷酒がおいおいにきいて来る。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
次郎左衛門が、それへ
冷酒
(
ひやざけ
)
と
朱杯
(
さかずき
)
を運んできたので
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
言
(
い
)
つたと
言
(
い
)
ふ——
眞個
(
ほんたう
)
か
知
(
し
)
らん、いや、
嘘
(
うそ
)
でない。
此
(
これ
)
は
私
(
わたし
)
の
内
(
うち
)
へ
來
(
き
)
て(
久保勘
(
くぼかん
)
)と
染
(
そ
)
めた
印半纏
(
しるしばんてん
)
で、
脚絆
(
きやはん
)
の
片
(
かた
)
あしを
擧
(
あ
)
げながら、
冷酒
(
ひやざけ
)
のいきづきで
御當人
(
ごたうにん
)
の
直話
(
ぢきわ
)
なのである。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
どうだね、殊に親も兄弟も叔父叔母もない。ただ手足と、顔と、
綾羅錦繍
(
りょうらきんしゅう
)
と、三味線と
冷酒
(
ひやざけ
)
と踊とのみあって存する、あわれな
孤児
(
みなしご
)
をどうするんです、ねえ君、そこは
男子
(
おとこ
)
の意地だ。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……肉は取って、村一同
冷酒
(
ひやざけ
)
を飲んで
啖
(
くら
)
えば、一天たちまち墨を流して、三日の雨が
降灌
(
ふりそそ
)
ぐ。田も
畠
(
はた
)
も
蘇生
(
よみがえ
)
るとあるわい。昔から一度もその
験
(
しるし
)
のない事はない。お百合、それだけの事じゃ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実家
(
さと
)
の父が酒飲みですから、ほどのいい
燗
(
かん
)
がついているのに、暑さに
咽喉
(
のど
)
の乾いた処、息つぎとはいっても、生意気な、
冷酒
(
ひやざけ
)
を茶碗で
煽
(
あお
)
って、たちまちふらふらものになって、あてられ気味
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「生意気な事を言やがる。」お婆さんの
御新姐
(
ごしんぞ
)
が持って来た
冷酒
(
ひやざけ
)
を
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
冷酒
(
ひやざけ
)
の
事
(
こと
)
ですよ。」
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
冷
常用漢字
小4
部首:⼎
7画
酒
常用漢字
小3
部首:⾣
10画
“冷”で始まる語句
冷
冷笑
冷々
冷水
冷汗
冷淡
冷評
冷飯
冷泉
冷酷