先年せんねん)” の例文
先年せんねん自分じぶんに下されしなり大切の品なれども其方そのはうねがひ點止もだし難ければつかはすなりと御墨付おんすみつきを添てくだんの短刀をぞたまはりける其お墨付すみつきには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは先年せんねん西海せいかいはて崩御ほうぎょあらせられた貴人きじん御霊みたまであったが、それを拝すると共に眼前めさきくらんで馬から落ちたのだと云う噂であった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
B また俳句はいくだらう。先年せんねん電車でんしやのストライキのあつたとき、あれはなんとかつたつけな、めう俳句はいくやうなものをいてよこしたぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
このはもと根株ねかぶからなゝつのみきわかれてゐましたが、うち五本ごほん先年せんねん暴風ぼうふうれていま二本にほんみきだけとなつてしまひました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
此所こゝ先年せんねん幻翁げんおうが、香爐形こうろがた其他そのた大珍品だいちんぴんした遺跡ゐせきつゞきなので、如何いかにも有望ゆうぼうらしくかんがへられたのである。
人間に対する用意は、まず畳を上げて、ふすま障子しょうじ諸財一切しょざいいっさいの始末を、先年せんねん大水おおみずの標準によって、処理し終った。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
先年せんねん麹町かうぢまち土手三番町どてさんばんちやう堀端寄ほりばたよりんだ借家しやくやは、ひど濕氣しけで、遁出にげだすやうに引越ひつこしたことがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
◎櫻木豫備海軍大佐の行衞==讀者どくしや記臆きおくせらるし、先年せんねんしゆ強力きやうりよくなる爆發藥ばくはつやく發明はつめいし、つゞいて浮標水雷ふへうすゐらい花環榴彈等くわくわんりうだんとう二三の軍器ぐんき有功いうこうなる改良かいりようほどこしたるをもつ
小六ころく其時そのとき不圖ふとあに先年せんねんちゝ葬式さうしきとき出京しゆつきやうして、萬事ばんじ片付かたづけたあと廣島ひろしまかへるとき、小六ころくに、御前おまへ學資がくし叔父をぢさんにあづけてあるからとつたことがあるのをおもして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先年せんねんあなたのおくに太子たいしあおりゅうくるまって、五百にん家来けらいしたがえて、はるばるひがしほうからくもの上をはしっておいでになって、ふる法華経ほけきょうの一かんっておいでになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それにまアわたしどもの小牛等こうしなどはらをむしられて、八重縦やへたて文字もんじきずけられて、種疱瘡うゑばうさうをされぬのかれて、かゆい事は一とほりではありません、れに私共わたしども先年せんねん戦争せんさうの時などは
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは先年せんねん、ついウカウカと高利貸こうりがし証文しょうもん連帯れんたいの判を押したところ、その借主がポックリ死んでしまって、そのために気の毒にも明日が期限の一千円の調達ちょうたつおいの身を細らせているのだった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一寸ちよつとにくところである。遺跡ゐせきひろいが、先年せんねん、チヤンバーレン大發掘だいはつくつこゝろみたとかで、畑地はたちはう斷念だんねんして、臺地北側だいちきたかは荒地あれち緩斜面くわんしやめんなかに四にんはいつた。
もすべきに御不運にて御早世ごさうせいなりしは返す/″\も殘念ざんねんなりとひと泣悲なきかなしむもことわりとこそきこえけれ扨も八代將軍には或時御側御用おそばごよう取次に御尋おんたづね有やうは先年せんねん勢州せいしう山田奉行を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
列座れつざ方々かた/″\、いづれもかね御存ごぞんじのごとく、それがし勝手かつて不如意ふによいにて、すで先年せんねん公義こうぎより多分たぶん拜借はいしやくいたしたれど、なか/\それにて取續とりつゞかず、此際このさい家政かせい改革かいかくして勝手かつてとゝのまをさでは、一家いつかつひあやふさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝに又和歌山の城下じやうかより五十町みち一里半ほどざいに平澤村といふ小村こむらあり此處へ先年せんねん信州者にて夫婦にむすめ一人ひとりつれし千ヶまゐりの平左衞門と申者來りぬ名主なぬし甚兵衞は至て世話好せわずきにて遂に此三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)