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三四郎の筋向にすはつてゐた色の白い品のい学生が、しばらく肉刀ナイフの手をめて、与次郎の連中を眺めてゐたが、やがて笑ひながら
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ああ——」とお房は返事をしたが、やがて急に力を入れて、幼い頭脳あたま内部なかが破壊し尽されるまではめないかのように叫び出した。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、その勢では附近の山林を焼き尽さねばまないように思われた山火事は、案外僅かばかりの焼けかたでこともなく消えてしまった。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
印判屋の亭主が小さい刀の手をめて顏をあげると、わかい男が尋ねた。「あのこの邊に土屋さんて家がありませうか。」
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「我をして、天下の人にそむかしむるとも、天下の人をして、我に反かしむるをめよ——だ。さあ行こう。先へ急ごう!」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとて三八男だつ者もつれざるぞいと三九はしたなるわざかなと思ひつつ、すこし身退しりぞきて、ここに入らせ給へ。雨もやがてぞみなんといふ。
この言葉のうち、神楽かぐらの面々、おどりの手をめ、従って囃子はやし静まる。一連皆素朴そぼくなる山家人やまがびと装束しょうぞくをつけず、めんのみなり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姫は我歌を遮り留めて、止めよ、われは悲傷の詞を聞かんことを願はず、汝が心まことに樂しからずば、しばらく我が爲めに歌ふことをめよと宣給ひぬ。
ダ風流/ギル時ハ感ズルヲメヨ白河ノ暮/到ル日ハすべからルベシ松島ノ秋/語ヲ寄セヨ厳冬大雪多カラン/一領ノ白狐ノ裘無カル可ケンヤ〕となすものを
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
独立どくりつとなふるはし、しかれども如何いかにして之を実行じつかうすべき、言ふをめよ「汝我と共に独立どくりつする時は我も独立どくりつせん」と 独立とは「独り立つ」といふことなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
かつ今年の冬のごとき、いまだ関西の卒をめず。県官急に租をもとむるも、租税いずれよりか出でん。まことに知る男を生めば悪しきを。かえってこれ女を生むは好し。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
のみならず現にその知識みずからが、まだこの上幾らでも難解の疑問を提出してまない。自己というその内容は何と何とだ。自己の生を追うた行止りはどうなるのだ。
パタリと話がんだ。雪江さんも黙って了う、松も黙って了う。何処でか遠方で犬の啼声が聞える。所謂いわゆる天使が通ったのだ。雪江さんはあくびをしながら、ついでのびもして
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
既に如此かくのごとくなれば、怪はいよいよ怪に、あるひは夢中に見たりしあとなほ着々ちやくちやく活現しきたりて、飽くまで我をおびやかさざればまざらんと為るにあらずや、と彼は胸安からずも足にまかせて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
老僕ろうぼくひたいしかめ、り有り、大変たいへんが有りたりという。先生手をげて、そはしばらくくをめよ、我まずこれを言わん、浮浪ふろう壮士そうし御老中ごろうじゅうにても暗殺あんさつせしにはあらざると。
かくのごときは律に罪を問うをめよ、まさにみな笞杖徒流すべし、更に一等を加えて強論せば、殺し来りて我がために下酒とせん〉とは、さすがに詩の本場だけあってよく詠んだ。
昼は近傍きんりん頑童等わらべらこゝに来りて、松下の細流に小魚をあみする事もあれど、夜に入りては蛙のみ雨を誘ひて鳴き騒げども、その濁れる音調を驚ろきます足音とては、稀に聞くのみなり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
家の人誰も彼も、殆ど残らずと云っても好いほどに秀子を疑って居るのだから何うも陪審員なども秀子を疑うであろう、殊に高輪田長三などは秀子を捕縛せしむるまではまぬであろう。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
交通の女王たる鉄道はいづれの津々浦々にも、幾千の旅客を負ふて、ほとんど昼夜をめざる也、日本の文明は真個に世界を驚殺せりと云べし、三十年前、亜米利加アメリカのペルリが、数発の砲声を以て
私は余りに傍径わきみちをしましたからめませう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
終に大詰の大破裂若くは大圓滿に至りてむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
野老やろう 声をんで こくしていままず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ああんぬかな。歴史の文字は皆
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
降ったりんだりした雪は、やがてみぞれに変って来た。あの粛々しとしと降りそそぐ音を聞きながら、私達は飯山行の便船が出るのを待っていた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
現に真専門の x2+y2=r2氏のごときに至っては、ほとんど文学をめて、理学の方で月給を貰わなければ立行かん姿であります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふと、武蔵の寝息がむと、人影はぺたっと、布団より薄べたくなり、じっと寝息の深度を測りながら、根気よく大事をとって機を待っている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と出血まざる小指の血にて、我掌わがてのひらけがれたるにぞ、かっぷと唾を吐き懸けて、下枝の袖にて押拭い、高田と連立ち急がわしく、人形室に赴きぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
売る者があっても買うものがなければ事はむわけである。図書出版の殷盛いんせいは購求者の多きをしょうするもの。これ今の世において見る不可思議中の不可思議ではないか。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
余は普通基督教徒がもくして論ずるに足らざるものと見做す小教派の中にも靄然あいぜんたる君子、貞淑の貴婦人を目撃したり、悪魔よ汝の説教をめよ、もし余にして善悪を区別し
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ここより遠からねば、此の小休をやみに出で侍らんといふを、五六あながちに此のかさもていき給へ。五七いつ便たよりにも求めなん。雨は五八更にみたりともなきを。さて御住ひはいづぞ。
人その擬する所とならざるや、彼は全幅の憤怒を挙て、これに加えずんばまず。試みに彼が当時の文稿をけみせよ、その交友中、何人なんぴとか彼の怒鋒どほう罵刃ばじんに触れざるものあるか。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼方あなたもその幺微かすかなる声に語り語りてまざるは、思のたけ短夜たんやに余らんとするなるか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されど汝が姫に對する情果して戀に非ずば、今より後彼に對して面をあかめ、火の如きなざしゝて彼に向ふことをめよ。そは彼君のためにあしかりなん。傍より見ん人の心のおもはれて。
手套てぶくろぐ手ふと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
辛苦を辞するを
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たとえば、英国にて凶作打ち続き食物に困り候えば、豊かなる国より商売をめその食物を運びつかわし候ようの風儀に御座候。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もうめるかと思ったら最後にぽんとうしろへげてその上へっさりと尻餅を突いた。「君大丈夫かい」と主人さえ懸念けねんらしい顔をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兵糧は戦いのかて。運輸の役も戦いである。だのに、戦いを見て戦いをめるというのは、すでに大なる怠りだ。しかも汝の言い訳は虚言きょげんに過ぎない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綾子は少しく乗出だし、「ほかに渡世の道が無いでもあるまい。ちっとじゃが資本もとでにして、そういうけがらわしい商売はめたがい。お前はどこの者だえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我の社会に負う処、我の他人に負う所、我はこれを返却するの目的一つとしてあるなし、我は死してのみこの借財より脱するを得るにあらずや、言をめよ汝美食美服に飽くものよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
此の家あやしけれど、おのれが親の五〇目かくる男なり。五一心ゆりて雨め給へ。そもいづ旅の御宿やどりとはし給ふ。御見送りせんもかへりて無礼なめげなれば、此のかさもて出で給へといふ。
親につかへて、此上無こよなう優かりしを、柏井かしわいすずとて美き娘をも見立てて、この秋にはめあはすべかりしを、又この歳暮くれにはかた有りて、新に興るべき鉄道会社に好地位を得んと頼めしを、事は皆みぬ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
暫時しばらく準教員も写生の筆をめて眺めた。尋常一年の教師は又、丑松の背後うしろへ廻つて、眼を細くして、そつ臭気にほひいで見るやうな真似をした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いたずらッぽい気長さで我慢づよくて、下から一つや二つ頬を打たれたぐらいでは怒りもしなければめもしない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「原則通り二割五分増さないでも仕方があるまい。められた人も、元給のままでいる人もたくさんあるんだから」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれ恐懼おそれて日光を見ず、もし強いて戸を開きて光明そのはだえに一注せば、渠は立処たちどころに絶して万事まむ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓮太郎の右側に腰掛けて居た、背の高い、すこし顔色の蒼い女は、丁度読みさしの新聞をめて、丑松の方を眺めた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
武蔵の無口を知りぬいているので、いくら武蔵が黙然と聞いていても、城太郎は独りで勝手にお饒舌しゃべりをめない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、紅茶をんでしまって、いつもの通り読書に取りかかった。約二時間ばかりは故障なく進行したが、あるページの中頃まで来て急にめて頬杖ほおづえを突いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さればたまの絶えしにあらねば、うつゝ号泣がうきふする糸より細き婦人をんなの声は、終日ひねもすひまなかりしとぞ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)