うゑ)” の例文
けれども、かうして犬どもにせがまれて、この常にうゑに襲はれて居る者どもの空腹を想像して見た時、彼は飯を炊かずには居られなかつた。
詩経しきやうには男子だんししやうとし、或は六雄将軍りくゆうしやうぐんの名をたるも義獣ぎじうなればなるべし。なつしよくをもとむるのほか山蟻やまあり掌中てのひら擦着すりつけふゆ蔵蟄あなごもりにはこれをなめうゑしのぐ。
しばしものを求め得ずとも、なぞもあさましく魚の餌を飲むべきとてそこを去る。しばしありてうゑますますはなはだしければ、かさねて思ふに、今はへがたし。
いと不審いぶかし如何なる者の住家すみかならんと思ひながらうゑたるまゝに獨り食事しよくじし終り再び圍爐裡ゐろりはたへ來りてかの男にあつく禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
更にまた一夜に百金を散じた昔の榮華を思出してうゑやまひとにをのゝきながら斃れた放蕩息子のらむすこはてもあツたらうし
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
シルレル、若うして一友と共にひそかに郷関を脱走するや、途中一片の銅銭もなく一ヶのパンもなくうゑつかれに如何いかんともすることなく人里遠き林中に倒れむとしたり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かはきまるとともつぎにはうゑくるしみ、あゝ此樣こんことつたら、昨夜さくや海中かいちう飛込とびこときに、「ビスケツト」の一鑵ひとかんぐらいは衣袋ポツケツトにしてるのだつたにと、今更いまさらくやんでも仕方しかたがない
かしこまりぬと答へばかりよくして中々なか/\持ち來らずうゑもしかはきもしたるなり先づひやにてよし酒だけを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
又餅をあぶりてくらふ、もちほとんど尽きて毎人唯二小片あるのみ、到底とうていうゑするにらざるを以て、衆談話の勇気いうきもなく、天をあほいただちにづ、其状恰も愁然しうぜん天にうつとふるにたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かれは寂然じやくねんとして唯ひとりそのへやにゐた。小さな机、古い硯箱すゞりばこ、二三冊の経文、それより他はかれの周囲に何物もなかつた。かれはうゑを感ずるのを時として、出て来ては七輪をあふいだ。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ロミオ 其樣そのやうまづしうあさましうくらしてゐても、おぬしぬるのがおそろしいか? うゑほゝに、逼迫ひっぱくに、侮辱ぶじょく貧窮ひんきうかゝってある。無情つれなこの浮世うきよ法度はっとはあっても、つゆおぬしためにはならぬ。
こゝろざしは行ふものとや、おろかしき君よ、そはうゑはしるに過ぎず。志はたゞ卓をたゝいて、なるべく高声かうせいに語るにとゞむべし。生半なまなかなる志を存せんは、存せざるに如かず、志は飯を食はす事なければなり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
うゑかつゑたうへどくあたつて、足腰あしこしたないものをうしませう?……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うゑにや狂ふ、おどろしき深海底ふかうみぞこのわたりうを
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ちぎるるがごとひたわめく、呪詛のろひうゑ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
死とうゑとに追はれて歩くわたしは
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
出すにぞ友次郎は大いに悦び是は/\かたじけなし然らば遠慮なく戴き申さんとてうゑたる腹へ五六椀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
又もとのあなへはいりしゆゑわしあなの口に雪車哥そりうたのこゑやすらんとみゝすまして聞居きゝゐたりしが、滝の音のみにて鳥のもきかず、その日もむなしくくれて又穴に一夜をあかし、熊のうゑをしのぎ
じつは、少年せうねんともに、たゞ一口ひとくちに、堪難たえがた空腹くうふく滿みたしたきは山々やま/\だが、てよ、いまこのちいさいうをを、周章あはてゝたいらげたとてなにになる、農夫のうふ如何いかうゑても、一合いちごうむぎはずにいて一年いちねんはかりごとをする
せいなるうゑ正法しやうぼふながくつゞける殺生業せつしやうごふ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
常に不眠とうゑ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
云るゝものかと我が身親子がうゑもせず今日迄くらしけるは皆此方のかげなり今更老たる叔母此梅諸共もろとも置去おきざりにせんとならば勿々なか/\とめはせじ夫ならば其樣そのやう白地あからさまに申給はれと云けるにぞ傳吉大いに迷惑めいわくし是は/\叔母や女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聖なるうゑ正法しようほうの永くつゞける殺生業せつしようごう
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
うゑに惱む王女わうぢよの思
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)