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邸
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やしき
ふりがな文庫
“
邸
(
やしき
)” の例文
「ほら、ざっと
絞
(
しぼ
)
って乾かしておいてくんな、——心配するなってことよ、そんな腐った単衣なんざ、お
邸
(
やしき
)
へ帰りゃ何枚でもあらア」
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お嬢さんはすぐお
邸
(
やしき
)
へ帰って下さい、そして僕が電話をかけたら、すぐに警官をつれて駈けつけてこられるようにしておいて下さい。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まあ今夜は、
邸
(
やしき
)
へお泊んなさい。そして何だな、明日、わしが紹介して進ぜるから、
王晋卿
(
おうしんけい
)
さまのお
館
(
やかた
)
へでも一つ伺ってみるんだな。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はじめは存じませんでした。はじめての晩、内へ泊りに見えました時は、どこのかお
邸
(
やしき
)
の、若様だとそう思っていたんですって。」
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そんなことは、皆んな、大きなお
邸
(
やしき
)
に一人ぽつちで雇はれて、暮してゐることが判つてゐる人には、大方誰にでも云ふのでせう。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
▼ もっと見る
私はいつものように
楽
(
たの
)
し
気
(
げ
)
に「ええこんなに、そう、何千株と
躑躅
(
つつじ
)
の植っているお
邸
(
やしき
)
のようなところです」と、私は両手を
拡
(
ひろ
)
げて
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
この
邸
(
やしき
)
は
女三
(
にょさん
)
の
尼宮
(
あまみや
)
の三条のお邸に近かったから、源侍従は何かの時にはよくここの子息たちに誘われて遊びにも来るのであった。
源氏物語:46 竹河
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それは近ごろ不思議な事を承わる、御存知の通り、拙者は当
邸
(
やしき
)
に生れて已に二十余年に相成るが、左様な事は見もせず聞も及ばぬ
お住の霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私はその美術家の苦しい骨の折れた時代をよく知っているが、いつのまにか人もうらやむような大きな
邸
(
やしき
)
を構え住むようになった。
分配
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ヘルンが妻を連れ出す所はたいてい多くは寂しい
静閑
(
せいかん
)
の所であり、寺院の墓地や、
邸
(
やしき
)
の空庭や、小高い見晴らしの
丘
(
おか
)
などであった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
平山はきのふ
暁
(
あけ
)
七つ
時
(
どき
)
に、
小者
(
こもの
)
多助
(
たすけ
)
、
雇人
(
やとひにん
)
弥助
(
やすけ
)
を連れて大阪を立つた。そして
後
(
のち
)
十二日目の二月二十九日に、江戸の矢部が
邸
(
やしき
)
に着いた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
公爵家の紋章で
美々
(
びび
)
しく装われた三十三頭の牛が、羅馬の街上に、その尨大な石材を
牽
(
ひ
)
いて、ノメンタナ街の
邸
(
やしき
)
へ練り込みました。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
表も麻にするとしたら、先のお
邸
(
やしき
)
でお子さま方のにお拵へになつたやうな
更紗
(
さらさ
)
型のもよかつた。それなら裏の麻も白いのがよくうつる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
「へん、ここをどこだ」声をおとして、「ここは
鮫洲
(
さめず
)
のお
大尽
(
だいじん
)
のお
邸
(
やしき
)
さ、お邸と知って、奥さまをもらいに来てるのだが、
汝
(
てめえ
)
はなんだ」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それから二月ばかりして、新右衛門はまた
某
(
なにがし
)
の
邸
(
やしき
)
へ来た。そして座敷に飾りつけてあつた
先日
(
こなひだ
)
の屏風を不思議さうに
擬
(
じつ
)
と見てゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
さあ、お
邸
(
やしき
)
へ飛んで帰って、それから医者を呼ぶやら、
灌腸
(
かんちょう
)
をするやら、大騒ぎになりましたが、本当に神様も無慈悲な方でございまス。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
長イスが
邸
(
やしき
)
をはこびだされたのも、それからトラックにつまれて、どこかへ走りだしたのも、小林君にはよくわかっていました。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
とある
大家
(
たいけ
)
の別荘のような
邸
(
やしき
)
のまえを通りましたら琴や三味線や
胡弓
(
こきゅう
)
のおとが奥ぶかい木々のあいだから
洩
(
も
)
れてまいるのでござりました
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
して見るとこの
邸
(
やしき
)
で仕事をしようと云う連中は、かねて彼の家、マチニヨン町とシャートーブリヤン町の家へ忍び込んだやつらと同一だ。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「では、
邸
(
やしき
)
から
芸娘
(
ウンロウ
)
にわしのこれを届けさせて貰おう。シンガポールから届いた極上のがあるんだ。あれをやったら、ここのは吸えんよ」
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
また木目が馬鹿に奇麗だと云って、
茶室
(
ちゃしつ
)
の
床柱
(
とこばしら
)
なンかになったのもある。根こぎにされて、都の
邸
(
やしき
)
の眼かくしにされたのもある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
藤井や岡本の
住居
(
すまい
)
と違って、郊外に遠い彼の
邸
(
やしき
)
には、ほとんど庭というものがなかった。車廻し、馬車廻しは無論の事であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その翌日旅行免状を受けるために司令長官の
邸
(
やしき
)
へ行き、朝から待って居りましてようやく午後五時頃に国王代理に遇うことが出来ました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
早速出かけて來て見ると、
分
(
ぶん
)
に過ぎた大きな
邸
(
やしき
)
であつた。荒れ古びてこそをれ、櫻の木に圍まれて七百坪からの廣さがあつた。
樹木とその葉:04 木槿の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
主人は父の
邸
(
やしき
)
へ出入りする唯一の青年といってよかった。他に父が交際している人も無いことはなかったが、みな中年以上か老人であった。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
わたくしがお
邸
(
やしき
)
にゐられなくなつたわけは、あなたにはおわかりでございませう。たゞ、それは、わたくしの胸にだけ納めて、奇麗に御暇を
秘密の代償
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
彼女がそうして
朝田
(
あさだ
)
社長の
邸
(
やしき
)
に通いだしてから五日目の朝、彼女の赤ん坊は急に母乳を離れてミルクについたためか、熱を出したのだった。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
市ヶ谷の奥様が驚いて
俥
(
くるま
)
で来られた。わたしの報告と青木家の報告とがお
邸
(
やしき
)
でカチ合つたのだから、驚かれるのも無理はない。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
わたしの部屋は
邸
(
やしき
)
の古いほうの棟にあり、どっしりした家具は、巨人がこの世に住んでいた時代につくられたものかもしれないと思われた。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
人の子を瓦の
片
(
はし
)
のやうに思つて居るそんな人間を養つて置く広い
邸
(
やしき
)
や無用な塀の多い街を私は我子を置いて死に
得
(
う
)
る
処
(
ところ
)
とはよう思ひません。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
高見権右衛門が
討手
(
うって
)
の総勢を率いて引き上げて来て、松野右京の
邸
(
やしき
)
の書院の庭で主君の
光尚
(
みつひさ
)
に
謁
(
えっ
)
して討手の状況を
言上
(
ごんじょう
)
する一段のところで
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
邸
(
やしき
)
の焼け跡では、
淋
(
さび
)
しく花をつけた
蔓薔薇
(
つるばら
)
の二、三枝を折りとった。あとで、石橋氏の墓前に、供えたいと思ったからである。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
林が私のために、
邸
(
やしき
)
の奥さんに
詫
(
わ
)
びてくれてから、私は林が好きになった。そして林が奥さんに言ったように、私達はほんとに友達になった。
こんにゃく売り
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
と云い放し、孝助ばかり残る事になりましたから、源次郎も当てが
外
(
はず
)
れ、挨拶も出来ない位な始末で、
何
(
なん
)
ともいう事が出来ず
邸
(
やしき
)
へ帰りました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「あの文房具屋から四軒目のところに、そうだ、お前の学校の物理学教室の真ん向かいにあたるところだ、あそこに大きなお
邸
(
やしき
)
があるだろう?」
少年探偵呉田博士と与一
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
老爺さんの二女——総領娘はある大名
邸
(
やしき
)
に御殿奉公をしていた——私の母は九歳だったが、
男髷
(
おとこまげ
)
にしていたので小刀を差して連れられて逃げた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「ははあさようか、いや解ったぞ。察するところそのほうは
邸
(
やしき
)
近くの町人であろう。それで事情を知っているのであろう」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
清盛は西八条の
邸
(
やしき
)
で父を地べたにけり落としたそうです。その時父が
冠
(
かんむり
)
をたたき落とされて、あわてて拾おうとしたことまで彼らは語りました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ギンヤ——というのは、銀やと書くべきか
銀弥
(
ぎんや
)
と書くべきか、よくわからないが、ともかくもこれがこの
邸
(
やしき
)
における風間光枝の
源氏名
(
げんじな
)
であった。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
宝字五年、光明太后の五周忌に当っていたので、八月に、上皇は天皇をつれて薬師寺に礼拝、押勝の婿の藤原御楯の
邸
(
やしき
)
に廻って、酒宴があった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
厳しい宗教的雰囲気の中に育てられた白面病弱の坊ちゃんが、急に、自らの純潔を恥じ、半夜、父の
邸
(
やしき
)
を抜け出して紅灯の
巷
(
ちまた
)
をさまよい歩いた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
……
誰
(
た
)
れぞ
早
(
はや
)
う
御領主樣
(
ごりゃうしゅさま
)
へ。カピューレットどのゝ
邸
(
やしき
)
へも
走
(
はし
)
った。モンタギューどのを
起
(
おこ
)
して
來
(
こ
)
い。
他
(
あと
)
の
者
(
もの
)
は、
探
(
さが
)
せ/\。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
翠色
(
すゐしよく
)
したヽる
松
(
まつ
)
にまじりて
紅葉
(
もみぢ
)
のあるお
邸
(
やしき
)
と
問
(
と
)
へば、
中
(
なか
)
の
橋
(
はし
)
のはし
板
(
いた
)
とヾろくばかり、
扨
(
さて
)
も
人
(
ひと
)
の
知
(
し
)
るは
夫
(
それ
)
のみならで、
一重
(
ひとへ
)
と
呼
(
よ
)
ばるヽ
令孃
(
ひめ
)
の
美色
(
びしよく
)
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
奪
(
うば
)
ひ取られし事
他聞
(
たぶん
)
も宜しからず當家の
恥辱
(
ちじよく
)
なりとて
改易
(
かいえき
)
申付られ尤も
憐愍
(
れんみん
)
を以て家財は家内へ與へられたれば通仙が
後家
(
ごけ
)
お竹并びに娘お高は
邸
(
やしき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ソログーブは
幼
(
おさな
)
い
時
(
とき
)
から
母
(
はは
)
の
奉公先
(
ほうこうさき
)
の
邸
(
やしき
)
で、
音楽
(
おんがく
)
や
演劇
(
えんげき
)
などに
親
(
した
)
しむ
機会
(
きかい
)
を
持
(
も
)
ち、
読書
(
どくしょ
)
に
対
(
たい
)
する
深
(
ふか
)
い
趣味
(
しゅみ
)
を
養
(
やしな
)
われた。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
それから、何の、走って、走って、とうとう向うの青くかすんだ野原のはてに、オツベルの
邸
(
やしき
)
の黄いろな屋根を
見附
(
みつ
)
けると、象はいちどに
噴火
(
ふんか
)
した。
オツベルと象
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
この
邸
(
やしき
)
で奇怪な出来事が連発してきたので、すくなくとも仏露両国のスパイは、とうからこのベルリン・ドロテイン街の大邸宅とその美しい女主人
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
或る悩ましく花の
蒸
(
む
)
れるような夕方、姉弟が来て筒井に告げた。それはこの一と
週
(
まわ
)
りのあいだ、毎日のように
邸
(
やしき
)
をうかがう男がいるとのことだった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
前
(
ぜん
)
に奉公していた
邸
(
やしき
)
で、ことのほか惜しまれたということ、
稚
(
ちいさ
)
い時分から、親や兄に、口答え一つしたことのない素直な性質だということも話した。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「其様な勝手なことを
有仰
(
おつしや
)
ツたツて可けないわ。そりや何うせお
邸
(
やしき
)
にゐらツしやるやうなことは無いんですからね。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
邸
常用漢字
中学
部首:⾢
8画
“邸”を含む語句
此邸
邸宅
邸内
邸第
藩邸
控邸
帰邸
邸中
下邸
古邸
家邸
當邸
邸址
居邸
自邸
其邸
隣邸
歸邸
細工邸
邸町
...