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轟
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とどろ
ふりがな文庫
“
轟
(
とどろ
)” の例文
電信柱のごうごうと云う
唸
(
うな
)
りも蓮沼のカサカサと云う音も聞えなくなって、ただ海の
轟
(
とどろ
)
きばかりが
未
(
いま
)
だに地響きをさせて鳴っている。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
またあのせかせかした歩みの
拍節
(
タクト
)
から生みだされて、たえず彼につき
纏
(
まと
)
って離れなかった
轟
(
とどろ
)
くような
楽旨
(
モチーフ
)
も、彼の耳から消え失せた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
満廷粛として水を打ちたるごとくなれば、その
靴音
(
くつおと
)
は四壁に響き、天井に
※
(
こた
)
えて、一種の恐ろしき音を
生
(
な
)
して、傍聴人の胸に
轟
(
とどろ
)
きぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょうど二時頃銃声が
轟
(
とどろ
)
いたので、館中がすくむような恐怖に鎖されてしまって、誰一人現場に
馳
(
は
)
せつけようとするものはなかった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そして、馬車や自動車が、あの橋板をとゞろかす
毎
(
ごと
)
に、静子も自分が来たのではないかと、彼女の小さい胸を
轟
(
とどろ
)
かしているに違いない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
私は、私の胸はどんなにか
轟
(
とどろ
)
いた事でしょう。ふつつかもの花子に愛するというお言葉……何だかもったいないような気が致しますの。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
さっきから、もう、何度彼女の手に触れようとして、
背
(
せな
)
へ手を回そうとして、そのたんびに胸を
轟
(
とどろ
)
かせていたか、知れないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
昔、南海に武名を
轟
(
とどろ
)
かしたサモア戦士の典型と思われる
体躯
(
たいく
)
と容貌だ。しかも、之が、
箸
(
はし
)
にも棒にもかからない山師であろうとは!
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
城は、慶長八年の十一月十五日に
陥
(
お
)
ちた。その落城の際の彼の働きこそ、当時しばらく中国の武人たちに
鳴
(
な
)
り
轟
(
とどろ
)
いたものであった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと
轟
(
とどろ
)
いたお政の声に、
怖気
(
おじけ
)
の附いた文三ゆえ、
吃驚
(
びっくり
)
して首を
矯
(
あ
)
げてみて、安心した※お勢が誤まッて茶を
膝
(
ひざ
)
に
滴
(
こぼ
)
したので有ッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夜陰に
轟
(
とどろ
)
く車ありて、一散に
飛
(
とば
)
し
来
(
きた
)
りけるが、
焼場
(
やけば
)
の
際
(
きは
)
に
止
(
とどま
)
りて、
翩
(
ひらり
)
と
下立
(
おりた
)
ちし人は、
直
(
ただ
)
ちに鰐淵が跡の前に尋ね行きて
歩
(
あゆみ
)
を
住
(
とど
)
めたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ですが
轟
(
とどろ
)
く雷鳴に神の威光を感じたり、吹きすさぶ嵐にその怒りを
畏
(
おそ
)
れたりする気持ちは、素朴な人たちの感情とも見られます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一首の意は、天皇は
現人神
(
あらひとがみ
)
にましますから、今、天に
轟
(
とどろ
)
く
雷
(
いかずち
)
の名を持っている山のうえに
行宮
(
あんぐう
)
を御造りになりたもうた、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
綱手は、一寸、胸を、
轟
(
とどろ
)
かしたが、もう、袋持も、邸も、女中頭も、兵太夫も——それから、世の中さえ、怖ろしくはなかった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
阿波の
海部川
(
かいふがわ
)
の水源には、
轟
(
とどろ
)
きの滝、一名を
王余魚
(
かれい
)
の滝という大きな滝があって、山の中に王余魚明神という社がありました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
折から撃ッて来た拍子木は
二時
(
おおびけ
)
である。
本見世
(
ほんみせ
)
と
補見世
(
すけみせ
)
の
籠
(
かご
)
の鳥がおのおの
棲
(
とや
)
に帰るので、一時に上草履の音が
轟
(
とどろ
)
き始めた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
かくの如く長崎の港門は、むしろ外舶に対して
狭窄
(
きょうさく
)
となりたるに
係
(
かかわ
)
らず、我が辺海の波濤は、
頻年
(
ひんねん
)
何となく
咆哮
(
ほうこう
)
して、我が
四境
(
しきょう
)
の内に
轟
(
とどろ
)
けり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
銃声が
轟
(
とどろ
)
く。
硝子
(
ガラス
)
の
壊
(
こわ
)
れる音。
悲鳴
(
ひめい
)
。
途端
(
とたん
)
に又もや腰掛がぶうんと
呻
(
うな
)
りを生じて美女の顔を
目懸
(
めが
)
けて飛ぶ。これは美貌の男の防禦手段だった。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
全山に
轟
(
とどろ
)
くばかりの
大音声
(
だいおんじょう
)
は、山々の峰にこだまして、なみいる大衆の心をゆさぶった。前座主は、東塔の
南谷
(
みなみだに
)
、妙光坊に入られる事になった。
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
滝の
轟
(
とどろ
)
きが
幽
(
かす
)
かに感じられた。ずっと頭の上でそれを感じたのである。からだがその響きにつれてゆらゆら動いて、みうちが骨まで冷たかった。
魚服記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
我輩の友人にアーヴィンという文士として相当に名を
轟
(
とどろ
)
かした米人がある。この人が昨年の夏頃作った詩がある。これを読んで我輩は
大
(
おおい
)
に感服した。
真の愛国心
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼は自分の奥底に、暴風雨の
轟
(
とどろ
)
きをまだもっているし、荒立った海が示してくれたある
深淵
(
しんえん
)
の轟きをまだもっている。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
知っている人は知っている、知らない人は知らない、これぞ十八文の名声天下に
轟
(
とどろ
)
く(?)道庵先生の
謦咳
(
けいがい
)
の破裂であることは間違いがありません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遠く戦陣の
轟
(
とどろ
)
きをもたらす片すみの人なき広い野原、昼間の
寂寞
(
せきばく
)
、夜間の犯罪、風に回ってる揺らめく風車、石坑の採掘車輪、墓地のすみの居酒屋
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
天才少女の名を
轟
(
とどろ
)
かした頃はシューマンとの間に美しい愛情が芽生え、それが
退引
(
のっぴき
)
ならぬ状態にまで生長していった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
偖
(
さて
)
はと梅子の胸
轟
(
とどろ
)
くを、松島は
先
(
ま
)
づ口を開きつ「我輩が松島と云ふ
無骨漢
(
ぶこつもの
)
です——御芳名は兼ねて承知致し居ります」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そうした様子がから
駄々
(
だだ
)
っ子で、あの西洋にまで貞奴の名を
轟
(
とどろ
)
かして来た人とは思われないまで
他
(
た
)
あいがなかった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
芳子はこれを認めて胸を
轟
(
とどろ
)
かした。父親は不快な感を抱いた。けれど、空想に
耽
(
ふけ
)
って立尽した時雄は、その後にその男が居るのを夢にも知らなかった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
鉄道馬車は今より
轟
(
とどろ
)
き
初
(
そ
)
めて、
朝詣
(
あさまいり
)
の美人を乗せたる人力車が斜めに線路を横ぎるも危うく、
活
(
い
)
きたる
小鰺
(
こあじ
)
うる
魚商
(
さかなや
)
が
盤台
(
はんだい
)
おもげに威勢よく走り来れば
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると
偶々
(
たまたま
)
その場にいた祖父が、「馬鹿野郎。子供のくせに、いまから金をためることなんか覚えて、どうするんだ。」と百雷の
轟
(
とどろ
)
くような声を出した。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
足元から
崩
(
くず
)
れ落ちる真黒な山路も、物の
怪
(
け
)
のような岩の間を
轟
(
とどろ
)
き流れる
渓川
(
たにがわ
)
も、慣れない身ながら恐れもなく、このような死人の息さえきこえぬ山奥で
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
「車にお乗り。」そして彼は胸を
轟
(
とどろ
)
かしながら彼女の肩に手をかけた。彼女はもう一度鋭く彼を見詰め、それから不意に彼の胸を押し
除
(
の
)
けて駈けだした。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
轟
(
とどろ
)
く音、枝の裂ける音、そうして光りが十ヤードばかり——松や
藪
(
やぶ
)
や、ありとあらゆる物が坂の下へ崩れ落ちて来て、われわれの道をふさいでしまった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
世を
轟
(
とどろ
)
かす事業を
遂
(
と
)
げて見せばやと、ある時は
髪結
(
かみゆい
)
となり、ある時は洗濯屋、またある時は仕立物屋ともなりぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
烏の
足掻
(
あしが
)
きの雪の
飛沫
(
ひまつ
)
から小さな虹が輪になって出滅する。太鼓の音が
殷々
(
いんいん
)
と
轟
(
とどろ
)
く。向う岸の
稲荷
(
いなり
)
の物音である。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
同時に尻大いに開いて五十サンチの巨砲を
轟
(
とどろ
)
かしたが、さすがのしたたかもので、客の怪しみ問うに対してツイ豆をたべたものですからといったとある。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
が、しかし見よ、その瞬間に、すさまじい音が
轟
(
とどろ
)
いて露路が火の海に一変したことを! 右手に並んでいた家並みが、焼けて崩れて落ちたからであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すると彼女の想像通り、五六間離れた処を歩くその男の姿が見えたので、はッと胸
轟
(
とどろ
)
かせながら、いそいで向き直って今までより歩度を速めて歩きだした。
凍るアラベスク
(新字新仮名)
/
妹尾アキ夫
(著)
いよいよ飛び込んだ! 折から
二竜山
(
にりゅうざん
)
の方面より打ち出した大砲が五六発、大空に鳴る烈風を
劈
(
つんざ
)
いて一度に山腹に
中
(
あた
)
って山の根を吹き切るばかり
轟
(
とどろ
)
き渡る。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから後は秀吉の旗の下に就いて段々と武功を積んだが、
特
(
こと
)
に九州攻めには、堀秀政の攻めあぐんだ
巌石
(
がんじゃく
)
の城に熊井越中守を攻め伏せて勇名を
轟
(
とどろ
)
かした。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
山がかりの巌から、滝が
轟
(
とどろ
)
き流れおち、
孟宗竹
(
もうそうちく
)
の植込みのあいだから、夏は
燈籠
(
とうろう
)
の
灯
(
ひ
)
が水の
飛沫
(
しぶき
)
をあびて、涼しい風にゆらぐ寒竹や
萩
(
はぎ
)
のなかに沈んでいた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
やがて時計の長短針が一つになって十二時を指すと、音楽堂の上から一発の砲声が
轟
(
とどろ
)
いた。と思うと
大鷲
(
おおわし
)
のごとく両翼を拡げた飛行船は徐々に上昇し初める。
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
海は、動いて、
轟
(
とどろ
)
いて、騒々しくて、人間の叫ぶ声が聞えませんが、この広い沙漠の裡にあっては、沈黙が人間の声を吸い取ってしまうのです。怖しい沈黙!
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さて展覧会の当日、恐らく全校数百の生徒中
尤
(
もっと
)
も胸を
轟
(
とどろ
)
かして、展覧室に入った者は自分であろう。図画室は既に生徒及び生徒の父兄姉妹で
充満
(
いっぱい
)
になっている。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と、突然、まったく突然、その家の洗面所と思われる方にすさまじい水道の
奔
(
ほとばし
)
る音が、あたりの静けさと、欹てた耳とに、数十倍に拡大されて、
轟
(
とどろ
)
きわたった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
胸を
轟
(
とどろ
)
かして待つた其人では無くて訪ねて来たのは信吾であつた。智恵子は何がなしにバツが悪く思つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それまで死に身になって稼いだので、女と聞いて胸の
轟
(
とどろ
)
く時は
徒
(
いたず
)
らに過ぎ去って、心が落ち着いていた。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
サクセフォンは呻吟し、酒樽型の太鼓は転がるように
轟
(
とどろ
)
き、それにフィドルが
縋
(
すが
)
り、金属性の合の手が絡み——ピアニストは
疾
(
と
)
うに
洋襟
(
カラア
)
を外して
空
(
クウ
)
へ
抛
(
なげう
)
っていた。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
西洋の婦人と自在に会話を取かわしている得意なありさまに胸を
轟
(
とどろ
)
かせたりしていたずらに時を過した。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
暫くはさすがの
峨眉山
(
がびさん
)
も、
覆
(
くつがへ
)
るかと思ふ位でしたが、その内に耳をもつんざく程、大きな雷鳴が
轟
(
とどろ
)
いたと思ふと、空に渦巻いた黒雲の中から、まつ赤な一本の火柱が
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
轟
漢検準1級
部首:⾞
21画
“轟”を含む語句
轟々
轟然
轟音
轟沈
踏轟
轟雷雄
喧轟
轟炸音
喧騒轟々
轟鐵夫君
轟郷右衛門
轟轟
轟落轟落
轟煙
胸轟
轟渡
轟家
轟天雷
轟大尉
轟四郎
...