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覆
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くつが
ふりがな文庫
“
覆
(
くつが
)” の例文
とりわけこの岬のあたりは、暗礁の多いのと、潮流の急なのとで、海は
湧立
(
わきた
)
ちかえり、
狂瀾怒濤
(
きょうらんどとう
)
がいまにも燈台を
覆
(
くつが
)
えすかと思われた。
おさなき灯台守
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
今さらその原因を
覆
(
くつが
)
えすことはできない、しかもそれに由る心苦しさは、兄のことに触れるたびに頼胤の胸をつよく圧迫するのであった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
国境方面から次々と入る注進やら、にわかに兵糧軍馬の動員で、洛中の騒動たるや、いまにも天地が
覆
(
くつが
)
えるような混雑だった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地所や家作や、現金を持たぬ者は、燒け出された日から、全生活を
覆
(
くつが
)
へされて、ドン底に顛落したのは、間々あつた例です。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この騒ぎに少女が前なりし酒は
覆
(
くつが
)
へりて、
裳
(
もすそ
)
を
浸
(
ひた
)
し、卓の上にこぼれたるは、蛇の如く
這
(
は
)
ひて、人々の前へ流れよらむとす。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
我邦
(
わがくに
)
古来の貞淑の美徳が、女の学問のためにただちに
覆
(
くつが
)
えされるもののごとく、もし憂える者があったらそれは誤りである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
不意に飛び出したこの六尺豊かの壮漢が、痛快というよりは乱暴極まる
荒
(
あ
)
れ方をして、あっというまもなく、
賭場
(
とば
)
を根柢から
覆
(
くつが
)
えしてしまいました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平安朝の貴族主義は今やその根柢において
覆
(
くつが
)
えされていながら、なお伝統として力を保っている。武士階級も表面においてはこの伝統に逆らわない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
母の不誠意な、薄情な態度を悲しむ心も交っていた。どの一つの感情でも、彼女の心を底から
覆
(
くつが
)
えすのに十分だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
(一三)労働は疑いもなく種類を異にするけれども、かかる種類の相違はまもなく調整され引続き永久的なものとなるから、前掲の法則は
覆
(
くつが
)
えされない
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
尤
(
もっと
)
も
護謨
(
ごむ
)
同様に
紳縮
(
のびちゞ
)
みする
樹皮
(
きのかわ
)
なれば其穴は
自
(
おのずか
)
ら
塞
(
ふさ
)
がりて
唯
(
た
)
だ其傷だけ残れるを見るのみなれば更に
覆
(
くつが
)
えして
下
(
しも
)
の端を眺れば
茲
(
こゝ
)
には異様なる
切創
(
きりきず
)
あり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
たとい三女史の博詞宏弁を以てしても私の意見の自信を
覆
(
くつが
)
えさない限り、私はその十字火を
凌
(
しの
)
いで三女史の前にこの細小の自己を主張せねばなりません。
平塚・山川・山田三女史に答う
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
さきに荷風の「
濹東綺譚
(
ぼくとうきたん
)
」あり、秋声の「縮図」あり、近くは潤一郎の「少将
滋幹
(
しげもと
)
の母」あり、しかしこの例は、何も計算器選択説を
覆
(
くつが
)
へすものではない。
百万人のそして唯一人の文学
(新字旧仮名)
/
青野季吉
(著)
殷
(
いん
)
鑑
(
かん
)
遠からず、支那第一次の革命はその形式に於て共和政治を獲得することが出来た。満州朝廷は
覆
(
くつが
)
えされて、支那は中華民国という名を見るようになった。
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
殊
(
こと
)
に、この
知
(
し
)
らせを
受
(
う
)
けて、
天地
(
てんち
)
が
覆
(
くつが
)
えった
程
(
ほど
)
の
驚愕
(
きょうがく
)
を
覚
(
おぼ
)
えたのは、
南町奉行
(
みなみまちぶぎょう
)
本多信濃守
(
ほんだしなののかみ
)
の
妹
(
いもうと
)
お
蓮
(
れん
)
であろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
無名の青年 ——僕の愛は死や無常では
覆
(
くつが
)
えされない積りです。僕の愛は永遠にあなたを活かし切ります。
ある日の蓮月尼
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
デカルト哲学はカントのコペルニクス的転回によって
覆
(
くつが
)
えされた。しかし今日カント哲学の立場そのものが、再び批判せられなければならぬのではなかろうか。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
端艇
(
たんてい
)
を
覆
(
くつが
)
へす
懼
(
おそれ
)
があるので
今
(
いま
)
しも
右舷
(
うげん
)
間近
(
まぢか
)
に
泳
(
およ
)
いで
來
(
き
)
た三四
尺
(
しやく
)
の
沙魚
(
ふか
)
、『
此奴
(
こいつ
)
を。』と
投込
(
なげこ
)
む
餌
(
え
)
の
浪
(
なみ
)
に
沈
(
しづ
)
むか
沈
(
しづ
)
まぬに、
私
(
わたくし
)
は『やツ。しまつた。』と
絶叫
(
ぜつけう
)
したよ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
一切の唯物文化は根柢から
覆
(
くつが
)
えされ、アラユル精神病学は
悉
(
ことごと
)
く机上の空論となってしまったではないか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
激しい
水瀬
(
みづせ
)
の石の間を乗つて行つた時は私達の
身体
(
からだ
)
が
跳
(
をど
)
つて、船は
覆
(
くつが
)
へるかと思ふほどの騒ぎをした。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
盆を
覆
(
くつが
)
えしたような白い雨脚がさながら槍の穂先きと光って折れよとばかり庭の木立を叩いていた。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
趣味を
崩
(
くず
)
すものは社会そのものを
覆
(
くつが
)
えす点において刑法の罪人よりもはなはだしき罪人である。音楽はなくとも吾人は生きている、学問がなくても吾人はいきている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大暴風! 大船
覆
(
くつが
)
えすでございましょう! 人間の意志、今は無益! 意志の力で押さえられるなら、さあさあ抑えてごらんなされ! 颶風を止どめ、波浪を平らげ
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
最初は頬を冷す為に玄関に出ていたなどと申立てたけれど、それは結城家の書生の証言で、
忽
(
たちま
)
ち
覆
(
くつが
)
えされてしまった。あの晩一人の書生はずっと玄関脇の部屋にいたのだ。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わが身はすぐ後にひたと寄添ってすすみ
渦巻
(
うずま
)
く激流を乗り切って、難儀の末にようやく岸ちかくなり少しく
安堵
(
あんど
)
せし折も折、丹三郎いささかの横浪をかぶって馬の
鞍
(
くら
)
覆
(
くつが
)
えり
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
で、美女の評価が
覆
(
くつが
)
えされた感があるが、今日のモダンガールぶりは、まだすこしも洗練を経ていない。強烈な
刺戟
(
しげき
)
は要するにまだ未熟で、芸術的であり得ないきらいがある。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は細君の立脚地を
覆
(
くつが
)
えしてることには気づかなかった。残酷なまでに細君を落胆さしていた。それに感づくと彼女以上に苦しんだ。しかしもうやったことでしかたなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私の今日の惨めな生活、
瘠我慢
(
やせがまん
)
、生の執着——それが彼の一滴の涙によって、たとえ一瞬間であろうと、私の存在が根柢から
覆
(
くつが
)
えされる絶望と自棄を感じないわけに行かなかった。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
まず毎度ながら圓朝の教養は、このまくらにおいては断見の論という一種の唯物論を見事に
覆
(
くつが
)
えした釈迦の話から神経病の存在、ひいては幽霊の存在肯定説を簡単に披瀝している。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
然し、それがもし真実だとすれば、感動の伝導法則が根本から
覆
(
くつが
)
えされてしまわねばなりません。勿論、痛みをその部分以外にも覚えると云う事は、日常
屡
(
しばしば
)
経験される事でしょう。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかるに古今内乱の歴史を見れば、人民の力はつねに政府よりも弱きものなり。また内乱を起こせば、従来その国に行なわれたる政治の仕組みをひとたび
覆
(
くつが
)
えすはもとより論を
俟
(
ま
)
たず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
も見ずして
迯行
(
にげゆき
)
けり然ば
松葉屋
(
まつばや
)
の二
階
(
かい
)
は
天地
(
てんち
)
も
覆
(
くつが
)
へるばかりの
騷
(
さわ
)
ぎになり
主
(
あるじ
)
半左衞門
(
はんざゑもん
)
を始として
皆々
(
みな/\
)
二
階
(
かい
)
へ
駈
(
かけ
)
來り見るに
平
(
へい
)
四郎は
朱
(
あけ
)
に
染
(
そみ
)
苦痛
(
くつう
)
の
有樣
(
ありさま
)
にのた
打廻
(
うちまは
)
り
居
(
ゐ
)
る
傍
(
かたは
)
らに
瀬川
(
せがは
)
は
懷劔
(
くわいけん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
その一脚を懸けられてもたちまち船が
覆
(
くつが
)
える、がこの怪物鶏を怖れるからとて
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
アジヤ大陸の東北部における遊牧民族の活動によってその地方のシナ人の政治的勢力が
覆
(
くつが
)
えされ、半島におけるそれもまた失われたので、ヤマト(邪馬台)の君主はその頼るところがなくなった。
建国の事情と万世一系の思想
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
そうすれば当然成立すべき資格をもっていない組合が成立していることになって、谷中派の立場を
覆
(
くつが
)
えさないまでも、
根柢
(
こんてい
)
のぐらついたものであることを世間に知らせることも出来ますし、また
幕末維新懐古談:47 彫工会の成り立ちについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
前車の
覆
(
くつが
)
えるを見て私の進んで行く道の
戒
(
いまし
)
めとした訳でございました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
北斎はここにおいて支那画の典型に遠ざかると同時に浮世絵在来の形式を超越し、しかしてまた自己の芸術の基礎を
覆
(
くつが
)
へさざる範囲において甚だ適度に西洋画の新感化を応用したるものといふべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と内藤夫人はお茶の残りを飲もうとして覚えずお茶碗を
覆
(
くつが
)
えした。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
いわゆるビネー・シモン氏法によって
覆
(
くつが
)
えしてしまいたいのだ。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
もはやそんな
生暖
(
なまぬる
)
い想像は
覆
(
くつが
)
えされるべきことであろう。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
このゆふべ、
覆
(
くつが
)
へしぬる
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ここに、また
根
(
ね
)
は
覆
(
くつが
)
へり
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
一指
(
いつし
)
に
天
(
そら
)
を
覆
(
くつが
)
へす
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ただ引きずり廻されるのみならず、それがために、ほとんど船が
覆
(
くつが
)
えるか、または引裂けるように、帆柱のみがいきり立って動いているとしか思われません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然し、たった今、
熱魂
(
ねっこん
)
の一声に、柳営を
覆
(
くつが
)
えすような大騒動を起したその人とは思えぬような沈着な態度で
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ロマンティックではあったが、少しの甘美さもなく、当時においては想像を絶する大規模の管弦楽の創作を企て、古典の形式主義を根底から
覆
(
くつが
)
えそうとしたのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
かく観ぜんと思い詰めたる今頃を、わが乗れる足台は
覆
(
くつが
)
えされて、
踵
(
くびす
)
を
支
(
ささ
)
うるに
一塵
(
いちじん
)
だになし。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
フランスに関する彼の考えは、そのために
覆
(
くつが
)
えされた。彼は一般に伝えられてる意見どおりに、フランス人とは円満な社交的な寛大な自由好きな民衆だと、これまで信じていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
なほ我地位を
覆
(
くつが
)
へすに足らざりけんを、
日比
(
ひごろ
)
伯林
(
ベルリン
)
の留学生の
中
(
うち
)
にて、或る勢力ある
一群
(
ひとむれ
)
と余との間に、面白からぬ関係ありて、彼人々は余を
猜疑
(
さいぎ
)
し、又
遂
(
つひ
)
に余を
讒誣
(
ざんぶ
)
するに至りぬ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
……アッハッハッハッそれは当然で、かりにも天下を
覆
(
くつが
)
えそう、徳川幕府を傾けようという、明暦義党の方々が、まだ少年の萩丸様などを、誘拐しようなどとは思いませぬからな。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“覆”の解説
覆(ふく)(sa: mrakṣa、ムラクシャ)は、仏教が教える煩悩のひとつ。
自己の誤ちの隠蔽。利益を失う・不利益を蒙ることを恐れて、自分が為した罪を隠すこと。
しかし、自分の為した罪を隠す人は、後に、必ず悔い悲しむ。
説一切有部の五位七十五法のうち、小煩悩地法の一つ。唯識派の『大乗百法明門論』によれば随煩悩位に分類され、そのうち小随煩悩である。
(出典:Wikipedia)
覆
常用漢字
中学
部首:⾑
18画
“覆”を含む語句
顛覆
転覆
日覆
反覆
修覆
覆面
雨覆
轉覆
覆布
傾覆
打覆
覆被
押覆
引覆
覆奏
覆水
鞍覆
被覆
上覆
覆羽
...