こや)” の例文
阿仙おせんは一子の名なかすなの一語之が養育に心を用いん事を望むの意至れり、うまこやせの一句造次顛沛ぞうじてんぱいにも武を忘れざる勇士の志操こゝろづけ十分に見ゆ
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
正しい藝術を、みんなのこゝろかてのたしに——こゝろかてといふほどにならずとも、せめてこやしぐらゐにでもなるやうに——それが望ましいのだ。
むぐらの吐息 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
地方の政治は名状し難いまでに紊乱びんらんしてしまった! 悪辣あくらつな国司どもは官権を濫用らんようして、不正を働き、私腹をこやして、人民を酷使こくししている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「こういう奴が油断がならねえんです。いずれ今日明日のうちにゃあ、例の所でなぶり殺し、岩屋のこけこやしになるんでさあ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これけだし、すでに腹の畑はこやしができ、掘り起こされて土壤どじょうが柔かになり、下種かしゅの時おそしと待っているところに、空飛ぶ鳥が偶然ぐうぜんりゅうおとしたり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「年々や桜をこやす花の塵」美しい花が落ちて親木おやきの肥料になるのみならず、邪魔の醜草しこぐさがまた死んで土の肥料になる。
草とり (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
その日その日の暮しを立てる食物の、量を削っておのれをこやそうとするような者には往生はできぬ、心を改めて出直しなさい、今日はお札は上げられぬ
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「年々や桜をこやす花の塵」美しい花が落ちて親木おやきの肥料になるのみならず、邪魔の醜草しこぐさがまた死んで土の肥料になる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は「おれは銅貨一つだって親戚などにやりはしない。死んだあとで親戚のふところをこやすなんて馬鹿なことは厭だから、そっくりお前にれてやる」
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
うたがうて立戻たちもどり、わし所行しょぎゃううかゝひなどいたさうなら、てん照覽せうらんあれ、おのれが四たい寸々すん/″\切裂きりさき、くことをらぬこのはかこやすべくらさうぞよ。
そのほか自分の寺へ帰れば、自分がその役を持って居る間は寺で出来得るだけ賄賂わいろむさぼり、他の僧侶をしいたげて自分の一家をこやすことをつとめて居るのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
老躯と僅少なる資金と本より全成効をべからざるも、責めては資金を希望地に費消し、一身たるや骨肉を以て草木を養い、牛馬をこやすを方針とするのみ。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
びつくりするほどよくこやした上、今は兄のものになつて居る井筒屋の田地のうち、小作をさせない分の土地を本當にめるやうに大事にたがやしてゐたのです。
假令たとひせさせないまでもこやしてくことをしないはたけつち茄子なす干稻ひねびてそれで處々ところ/″\ひとづゝはなつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
聖アントニオは(贋造まがへ貨幣かねを拂ひつゝ)これによりて、その豚と、豚よりけがれし者とをこやす 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私は親にさからふのぢやない、阿父さんと一処に居るのをきらふのぢやないが、私は金貸などと云ふいやしい家業が大嫌だいきらひなのです。人をなやめておのれこやす——浅ましい家業です!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
第二、人にはおのおの智恵あり。智恵はもって物の道理を発明し、事を成すの目途を誤ることなし。譬えば米を作るにこやしの法を考え、木綿を織るにはたの工夫をするがごとし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とても取締りのつくものじゃない。結局悪い酒を高く飲ませて密輸入者の腹をこやす丈けのことですよ。下等社会になると怪しげな代用品を調合して飲むから事故が多い。能く死にます。
社長秘書 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いかなる海鳥糞かいちょうふんも、その肥沃ひよくさにおいては都市の残滓ざんさいに比すべくもない。大都市は排泄物はいせつぶつを作るに最も偉大なものである。都市を用いて平野をこやすならば、確かに成功をもたらすだろう。
「ハヽヽヽ、君の様に悲観ばかりするものぢや無いサ、天下の富を集めて剛造はいの腹をこやすと思へばこそしやくさはるが、之を梅子と云ふ女神めがみ御前おんまへに献げるともや、何も怒るに足らんぢや無いか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なかんずく摂政が貨幣を改悪して懐をこやしたはなし、あるいは人民が、必らずや外人は間もなく武装してとって返し、自分たちをこの虐政から救い出してくれるものと信じているといったはなし!
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
始のほどは高利かうりの金を貸し付けて暴利ぼうりむさぼり、作事こしらへごとかまへて他をおとしいれ、出ては訴訟沙汰そしようさたツては俗事談判ぞくじだんはんゆる間も無き中に立ツて、ぐわんとして、たゞ其の懐中くわいちうこやすことのみ汲々きふ/\としてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
トヾの結局つまり博物館はくぶつくわん乾物ひもの標本へうほんのこすかなくば路頭ろとういぬはらこやすが学者がくしやとしての功名こうみやう手柄てがらなりと愚痴ぐちこぼ似而非えせナツシユは勿論もちろん白痴こけのドンづまりなれど、さるにても笑止せうしなるはこれ沙汰さた
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
こやおけを肩に掛けて、威勢よく向うの畠道を急ぐ壮年わかものも有った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
野に放ちこやせし馬ぞこれ見よと汝兄なえが青駒ほこらくは今ぞ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
照付くる日の光自然をこや
「あ、ありがとうございました……ありがとう存じます。旦那方がこなけりゃこの万吉は、もうっくにしいの木のこやしになっているところでした」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
惡い番頭が勝手にそんなものをこしらへて、自分の懷ろをこやして居たのを、何にも知らない俺達の親父とお袋が罪を背負しよはされ、いかさまますは罪が深いと言ふので
蓋原文は言語ことばに近く訳文は言語ことばに遠ければなり、又本多作左が旅中家に送りし文に曰く「一ぴつもうす火の用心ようじん阿仙おせんなかすな、うまこやせ」と火をいましむるは家をまもる第一緊要的きんようてきの事
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
裏面においてはこれによりてひそかに私腹をこやすことがあったからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「然うさ。目をこやして置けば宜いんだ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おれちも壮健がんぢやうで、うんとこや
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「もう今頃は、枝垂れ桜のこやしになって、桜の根方に斬り殺されているだろうさ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お隣の屋敷の庭男が、今朝薄明るくなってから、波岡家の不浄門のあたりに、野菜物を積んだこやし車が一台、く人も無く捨ててあったが、間もなく何処かへ行ってしまったということが解りました。
にわとりを盗んできて、この阿女あまめ一人で腹をこやしてくさる」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)