)” の例文
旧字:
自分のおすわった師匠がその電気を取りいで、自分に掛けてくれて、そのおかげで自分が生涯ぴりぴりと動いているように思っている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「何ですか、その西洋料理へ行って午飯ひるめしを食うのについて趣向があるというのですか」と主人は茶をぎ足して客の前へ押しやる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
源氏の手紙に衝動を受けた御息所はあとへあとへと書きいで、白い支那しなの紙四、五枚を巻き続けてあった。書風も美しかった。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かれこれする中に、午飯ひるめしの膳が出た。芳子は自分の室に戻った。食事を終って、茶を飲みながら、時雄は前からのその問題を語りいだ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
みちに一騎の驕将をらすといふ一段を五行或は四行の大字にものしぬるに字行じのかたちもシドロモドロにてかつ墨のかぬ処ありて読み難しと云へば
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
宮はかたはらに人無しと思へば、限知られぬ涙に掻昏かきくれて、熱海の浜に打俯うちふしたりし悲歎なげきの足らざるをここにがんとすなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
丁度彼はインフルエンザの気味で、神戸を去る前に多少なりとも書いて置いて行きたいと思う自伝の一節も稿をげないでいるところであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
仲がよくなくなったといわれた亡夫の意志を、何処どこまでもいで名声を持してゆこうとするのには、どれ位人知れぬ苦労があったか知れはしない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そこで宣長翁の弟子である石塚龍麿がその研究をいで、先ず清濁に関する研究を行って、その結果を集めて『古言清濁考』を作ったのでありますが
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
即ち単に「突く衝石つくし」という以外に、更に第二の系統に属する「ぐ」という趣旨が添加していたからだと信ずる。
松島を旗艦として千代田ちよだ厳島いつくしま橋立はしだて比叡ひえい扶桑ふそうの本隊これにぎ、砲艦赤城あかぎ及びいくさ見物と称する軍令部長を載せし西京丸さいきょうまるまたその後ろにしたがいつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さまさせまゐらせんといへるを、赤穴又かしらりてとどめつも、さらに物をもいはでぞある。左門云ふ。既に九〇夜をぎてし給ふに、心もみ足もつかれ給ふべし。
青年は不安がないでもなかったが、仙妃の態度が未だおわらざる宿縁をぐ以外に何もないように見えるので、注がれるままに酒を飲み、すすめらるるままに肴を口にした。
賈后と小吏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
当時世に有志の徒なるものありて、実に維新前慷慨志士〔すなわち当時の当路者〕の気風をぐ。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
再びいたく驚きて、物いはんとするに声は出でず、まなこを見はりてもだゆるのみ。犬はなほ語をぎて
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ト言懸ける折しも、官員風の男がとおばかりになる女の子の手を引いて来蒐きかかッて、両人ふたりの容子を不思議そうにジロジロ視ながら行過ぎてしまッた。昇は再び言葉をいで
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うらむらくは其の叙するところ、けだいまだ十の三四をおわるに及ばずして、筆硯ひっけん空しく曲亭の浄几じょうきのこりて、主人既にきて白玉楼はくぎょくろうとなり、鹿鳴草舎はぎのやおきなこれをげるも
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お前より外に鹽原のいえき者はない、其の大事ないえを捨てゝ、若気の至りとは云いながら女に溺れて金子をつかい果し、うちに居られなくなって家出をしたのだろうが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
米国でも硝子蛇ちょっと触れば数片にけ散りまた合して全身となるといい、それより転じて真の蛇断れた時よもぎのような草で自らぎ合すという(オエン『老兎および巫蠱篇オールド・ラビット・ゼ・ヴーズー』)
彼は出でて吉田氏をぐ、吉田氏は、世々よよ山鹿流の兵家にして、韜鈐とうけんは則ち彼の家学なり。蛇は一寸にして人を呑むの気象あり。如何に当今の時勢は、この英発秀鋭なる小童の眼孔に影じたるよ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この聖職、漸く本義を忘れられて、大嘗の時のほかは、低い女官の平凡な務めになっていった。「御湯殿のウヘの日記」は、その書きがれた年代の長さだけでも、為事の大事であったことがわかる。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
いもいえギテ見マシヲ、大和ナル大島ノニ、家モアラマシヲ。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
すすり上げて泣きながら、ふたたび言葉をいだ
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
なおいいがんとして苦しげに息す。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
雪枝ゆきえかたこゑよわつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぎやしやんせ
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ぎて
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その熟練と器用なやり口にもちょっと感心した。それから細君の帯上げとしごきとをぎ合わせてこの包みをくくって片手にさげる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細君はなお語りいだ。「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みたいなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
三郎は驚いて声のぬしを見た。父の山椒大夫に見まごうような親爺おやじで、この寺の鐘楼守しゅろうもりである。親爺は詞をいで言った。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
縁談の儀は旧好をぎ、しんを厚うし候ことにて、双方よかれと存じ候事に候えども、当人種々娘ごころを案じめぐらせし上にもこれあり候か、了簡りょうけん違いつかまつり
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、どうもその長足のちやうはてう(貂)足らず、ぐにフロックを以つて為るのぢやないかい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
分家をすれば平民となるのが辛さに、縁もゆかりもない絶家ぜっけぐ風習がはなはださかんである。
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
是れ則ち朝廷激して之を変ぜしめたるなりとし、ことわざいわく、親者しんしゃ之をけども断たず、疎者そしゃ之をげどもかたからずと、これことに理有る也となし、燕の兵を挙ぐるに及びて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
重二郎殿が所有たるべきものでござる、諸方へ貸付けてある金子の書類は此の箪笥たんす引出ひきだしにあって、娘いさが残らず心得て居ります、かたき同志の此のうちの跡をぐのはおいやであろうが重二郎殿
一、およそ皇国に生れては、よろしく吾が宇内うだいに尊き所以ゆえんを知るべし。けだし皇朝は万世ばんせい一統いっとうにして、邦国の士夫は禄位を世襲し、人君は民を養い以て祖業をぎ、臣民は君に忠にして以て父志を継ぐ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
別の長老とねめいた者が、説明をいだ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
聴水はなほ語をぎて
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
人を馬鹿ばかにしていらあ、こんな所に我慢がまんが出来るものかと思ったが仕方がない。威勢いせいよく一番に飛び込んだ。づいて五六人は乗ったろう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
笠原は人を頼んで、そこへるんを目見めみえに遣った。氏養と云うのは、六年前に氏之の跡をいだ戸田家の当主である。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「もう、止むを得んです」と時雄は言葉をいで、「僕はこの恋に関係することが出来ません。いや、もういやです。芳子を父親の監督に移したです」
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
養子して名倉の家をいだ一番年長うえの姉、※という店を持って分れて出た次の姉、こういう人達の写真も出て来るたびに、お雪は妹と生家さとうわさをした。お福の下にまだ妹が二人あった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御介抱もうしたる甲斐かいありて今日の御床上とこあげ芽出度めでたい芽出度めでたけれど又もや此儘このまま御立おたちかと先刻さっきも台所で思い屈して居たるに、吉兵衛様御内儀が、珠運様との縁たくば其人様の髪一筋知れぬようにぬい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あるひは時に断ゆれども、又ぎ、又続ぎて、彼等の物語はかひこの糸を吐きてまざらんやうに、限も知らず長くわたりぬ。げにこの積る話を聞きも聞せもせんが為に、彼等はここに来つるにやあらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吉田松陰は、関原せきがはらの役において、西軍の殿将として、大坂を守り、徳川氏に向って弓をける、毛利家の世臣せいしんなり。彼は杉氏の子、出でて叔父吉田氏をぎ、禄五十七石をむ。彼はもとより微禄の士。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
別の長老めいた者が、説明をいだ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
後の方をばうたともっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
子爵は息子がまだ何か云うだろうと思って、しばらく黙っていたが、それきりなんとも云わないので、ことばいだ。「書物を沢山持って帰ったそうだね。」
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
杉の葉の青きをえらんで、丸柱の太きをよそおい、かしらの上一丈にて二本を左右よりたいらに曲げてぎ合せたるをアーチと云う。杉の葉の青きはあまりにおごそかに過ぐ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうにでもれば釈れるようなことを岡は言出した。岡は更に言葉をいで
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)