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紺碧
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こんぺき
ふりがな文庫
“
紺碧
(
こんぺき
)” の例文
西の屋根
瓦
(
がわら
)
の並びの上に、ひと幅日没後の青みを置き残しただけで、満天は、
紗
(
しゃ
)
のやうな黒味の奥に浅い
紺碧
(
こんぺき
)
のいろを
湛
(
たた
)
へ、夏の星が
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
更にその
末
(
すえ
)
が裾野となって、
緩
(
ゆる
)
やかな傾斜で海岸に延びており、そこに
千々岩
(
ちぢわ
)
灘とは反対の側の
有明
(
ありあけ
)
海が
紺碧
(
こんぺき
)
の色をたたえて展開する。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
飛行将校が
指示
(
しめ
)
す海上を見下せば、なる程、
紺碧
(
こんぺき
)
の海水の下に、黒い鯨のような物が、南へ南へと、恐るべき速力で進行している。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「毒風肌を切る」
葱嶺
(
パミール
)
をこえるに当って、玄奘は「竜王の
潜
(
ひそ
)
む大竜池」のほとりを通っている。それは、
紺碧
(
こんぺき
)
の「無限の
深淵
(
しんえん
)
」なのである。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
太陽が高くのぼって、おそろしいいきおいを占め、海がしだいに
紺碧
(
こんぺき
)
をふかめ、そしてかれがタッジオを見ることを許される時なのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
▼ もっと見る
まっさおな空と、
紺碧
(
こんぺき
)
の海——
轟々
(
ごうごう
)
と未だに振動が伝わって来る大事件がおこっていようとは思われないような海が、はるばると見渡される。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
深淵を逆さに刷くような、
紺碧
(
こんぺき
)
のふかい雲形——きょう一日の小春日を約束して、
早暁
(
あかつき
)
の微風は羽毛のごとくかぐわしい。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
脚下には新緑に掩われた幾つ何十かの山々の背が波のうねりのような起伏を見せて、その向うには一望
涯
(
はて
)
しもない青海原が
渺々
(
びょうびょう
)
たる
紺碧
(
こんぺき
)
を拡げていた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そのとき、暮れなんとする春の夕空は、ひがし一面を
紺碧
(
こんぺき
)
に
染
(
そ
)
め、西半面の空は夕やけに赤く、
琵琶
(
びわ
)
の湖水を境にして染めわけられたころあいである。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐々
(
こわごわ
)
ながら
巌頭
(
がんとう
)
に四つん
這
(
ば
)
いになると、数十丈遥か下の滝壺は
紺碧
(
こんぺき
)
を
湛
(
たた
)
えて、白泡
物凄
(
ものすご
)
く
涌
(
わ
)
き返るさま、とてもチラチラして長く見ていることが出来ぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
千束町
(
せんぞくまち
)
の
溝
(
とぶ
)
の前から自転車に乗って、
紺碧
(
こんぺき
)
の空の下に
霞
(
かす
)
んでいる上野の森を目標に、
坦々
(
たん/\
)
たる一本路を一直線に走って行く己は、
何
(
なん
)
だか体に羽根が生えて
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
天気晴朗で雲影なく、
紺碧
(
こんぺき
)
の湖は古鏡のように澄みわたり、そのおもてに箱根三国の
翠巒
(
すいらん
)
が倒影している。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして、それが、いつ移るともなく、水色から濃紺に変じていって、一点の雲もない
紺碧
(
こんぺき
)
の空となった。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
また、
紺碧
(
こんぺき
)
の
海
(
うみ
)
は、
黒
(
くろ
)
みを
含
(
ふく
)
んでいます。そして
高
(
たか
)
い
波
(
なみ
)
が
絶
(
た
)
えず
岸
(
きし
)
に
打
(
う
)
ち
寄
(
よ
)
せているのでありました。
宝石商
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
川は
紺碧
(
こんぺき
)
になつて川原をつくつて流れてゐる。谿間を隔てて向うは二たび一つの高原を形成してゐる。高原は一めんに紅葉し、静かな家がそこここに散在してゐる。
イーサル川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
かなぐり脱いだ
法衣
(
ころも
)
を投げると、素裸の坊主が、馬に、ひたと添い、
紺碧
(
こんぺき
)
なる
巌
(
いわお
)
の
聳
(
そばだ
)
つ
崕
(
がけ
)
を、
翡翠
(
ひすい
)
の
階子
(
はしご
)
を乗るように、
貴女
(
きじょ
)
は馬上にひらりと飛ぶと、天か、地か
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たとえまた、兄さんの百年の後においても、この美しい
景色
(
けしき
)
をもった
故郷
(
こきょう
)
をどうして見すてることができましょう。
翠緑
(
すいりょく
)
の
樹
(
き
)
につつまれた山、
紺碧
(
こんぺき
)
の水をたたえた谷。
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
の空は高く澄み渡って、
一昨日
(
おととい
)
の豪雨に洗い清められた四囲の景色が、暑くも寒くもない初秋の太陽の光を一杯浴びているのが、
平常
(
いつも
)
でさえ美しいその
街
(
まち
)
の
眺
(
なが
)
めを
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そこからはそよ/\と風に
漣
(
さゞなみ
)
をうつてゐる広い青田が一と目に見わたされ、松原の
藁屋
(
わらや
)
の上から、
紺碧
(
こんぺき
)
の色をたゝへた静かな海が、地平線を
淡青黄色
(
うすあをぎいろ
)
の空との限界として
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
雪はすつかり
霽
(
は
)
れて、一天の
紺碧
(
こんぺき
)
、少し高くなつた冬の朝陽が、眞つ白な屋根の波をキラキラと照らす風情は、寒さを氣にしなければ、全く飛出さずにはゐられない朝でした。
銭形平次捕物控:117 雪の夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
太陽とともに彩っている。色彩の音楽。すべてが音楽であり、すべてが歌っている。金色の
亀裂
(
きれつ
)
のある
真赤
(
まっか
)
な往来の壁面、上方には縮れっ毛の二本の糸杉、周囲には
紺碧
(
こんぺき
)
の空。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この池はいったいどんな仲間をもっているというのだろう? しかもそれはその
紺碧
(
こんぺき
)
の水の色のうちに、青い憂鬱魔ではなく青衣の天使をもっているのだ。太陽は
孤
(
ひと
)
りである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
然
(
しか
)
しながらその
為
(
ため
)
にまた水は
紺碧
(
こんぺき
)
を加え、容量は豊富に
深沈
(
しんちん
)
たる山中の幽寂境を現出した。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
今日は
紺碧
(
こんぺき
)
の空に女の脇腹のやうな線を一しほくつきりと浮き出させて、美しい雲が、丘の高い部分に小さく
聳
(
そび
)
えて末広に茂つた木の梢のところから、いとも軽々と浮いて出る。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
鳥の歌、小川のささやき、
息吹
(
いぶ
)
いている春の香り、やわらかい夏の官能、黄金色の秋の盛観、さわやかな緑の衣をつけた大地、
爽快
(
そうかい
)
な
紺碧
(
こんぺき
)
の大空、そしてまた豪華な雲が群がる空。
クリスマス
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
そうして宅へ帰ったら瓦が二、三枚落ちて壁土が少しこぼれていたが、庭の
葉鶏頭
(
はげいとう
)
はおよそ天下に何事もなかったように
真紅
(
しんく
)
の葉を
紺碧
(
こんぺき
)
の空の光の下に
耀
(
かがや
)
かしていたことであった。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
女房たちは尽きぬ思いに血涙を止め得ず、昔の美しい面影は跡さえも止めていなかった。そして、浜に立って
紺碧
(
こんぺき
)
の海を見つめる人の数がふえ、その眼には望郷の涙が溢れていた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
十分昇り切った朝の太陽のもとに、
紺碧
(
こんぺき
)
の潮が後から後から湧くように躍っていた。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その輝かしい
光明
(
こうみょう
)
と
紺碧
(
こんぺき
)
の色を、あけひろげた
魂
(
たましい
)
の底まで深く吸い込んだりした。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
碧色——三尺の春の
野川
(
のがわ
)
の
面
(
おも
)
に宿るあるか無きかの
浅碧
(
あさみどり
)
から、深山の
谿
(
たに
)
に
黙
(
もだ
)
す日蔭の淵の
紺碧
(
こんぺき
)
に到るまで、あらゆる階級の碧色——其碧色の中でも
殊
(
こと
)
に
鮮
(
あざ
)
やかに煮え返える様な濃碧は
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
明るい
紺碧
(
こんぺき
)
の海上に、密林の島が浮いてゐるといふだけでも、自然の不思議さである。船ははしけを離してしまふと、また、エンヂンの音を
忙
(
せ
)
はしくたて始めた。海上は相当波が荒い。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
蒼
(
あお
)
く
霞
(
かす
)
んだ春の空と緑のしたたるような東山とを背負って名桜は小高いところに静かに落ちついて壮麗な姿を見せている。夜には更に美しい。空は
紺碧
(
こんぺき
)
に深まり、山は紫緑に黒ずんでいる。
祇園の枝垂桜
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
あのとき、底の浅い流れの上に
紺碧
(
こんぺき
)
の空にうかぶ白い雲のかげが映っていた。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
まだすっかり陽はおちていずに、水平線のうえにうずくまりかさなりあった
鰯雲
(
いわしぐも
)
はまっ赤に染まり、雲と雲とのすきまから、金色の放射線が
紺碧
(
こんぺき
)
の中天へつきささるようにのびだしています。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
女たちの泳いでいるその
辺
(
あた
)
りは、岩組が開らけ水がたたなわり、広い渕をなしていたが、蒼空を一片だけ切り取って来て、さながらそこへはめ込んだかのように、水は凄いまでに
紺碧
(
こんぺき
)
であった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
の空に、真赤なアカグマ国の旗がひるがえっている鉄筋コンクリート建の、背はそう高くないけれど、思い思いの形をしたビルディングが、倉庫の中に、いろいろな形の
函
(
はこ
)
を置き並べたように
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
は、
紺碧
(
こんぺき
)
の
空
(
そら
)
の
幕
(
まく
)
からくり
拔
(
ぬ
)
いたやうに
鮮
(
あざ
)
やかだつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
爺さんはそう言って、今度は
紺碧
(
こんぺき
)
の大空に向けて煙を
吐
(
は
)
きあげた。
喫煙癖
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
空は
紺碧
(
こんぺき
)
に晴れ渡っている。どこかで
山蝉
(
やまぜみ
)
が鳴きはじめた。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
その下には
紺碧
(
こんぺき
)
にまさる青き流れ
犯人
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
の空の
下
(
した
)
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
西の
屋根瓦
(
やねがわら
)
の並びの上に、ひと幅日没後の青みを置き残しただけで、満天は、
紗
(
しゃ
)
のような黒味の奥に浅い
紺碧
(
こんぺき
)
のいろを
湛
(
たた
)
え、夏の星が
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
の海に対し、渚にはまるで
毒茸
(
どくたけ
)
の
園生
(
そのう
)
のように、強烈な色彩をもったシーショアパラソル、そして、テントが
処
(
ところ
)
せまきまでにぶちまかれる。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そしてうっとりと
紺碧
(
こんぺき
)
のいろを見つめている。同時に、打ちよせる小さな波がかれの足の指をひたしているのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
に
暮
(
く
)
れていく
空
(
そら
)
の
下
(
もと
)
の
祭壇
(
さいだん
)
に、ろうそくをともして、
祈
(
いの
)
りを
捧
(
ささ
)
げているようにも
見
(
み
)
られたのです。
手風琴
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
深山を下ること二里余り、
紺碧
(
こんぺき
)
の水を
湛
(
たた
)
えたる湖の
畔
(
ほとり
)
へ出た。ここで渇したる
咽
(
のど
)
を清水に
濡
(
うる
)
おし、物凄き山中を行くと、深林の中に人が歩るいたらしい
小径
(
しょうけい
)
がある。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
かなぐり脱いだ
法衣
(
ころも
)
を投げると、
素裸
(
すはだか
)
の坊主が、馬に、ひたと添ひ、
紺碧
(
こんぺき
)
なる
巌
(
いわお
)
の
聳
(
そばだ
)
つ
崕
(
がけ
)
を、
翡翠
(
ひすい
)
の
階子
(
はしご
)
を乗るやうに、
貴女
(
きじょ
)
は馬上にひらりと飛ぶと、天か、地か
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
西の
甲武
(
こうぶ
)
連山は
茜
(
あかね
)
にそまり、東
相豆
(
そうず
)
の海は無限の
紺碧
(
こんぺき
)
をなして、天地は
紅
(
くれない
)
と
紺
(
こん
)
と、光明とうす
闇
(
やみ
)
の二色に分けられ、そのさかいに
巍然
(
ぎぜん
)
とそびえているのは、
富士
(
ふじ
)
の
白妙
(
しろたえ
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪はすっかり
霽
(
は
)
れて、一天の
紺碧
(
こんぺき
)
、少し高くなった冬の朝陽が、真っ白な屋根の波をキラキラと照らす風情は、寒さを気にしなければ、全く飛出さずにはいられない朝でした。
銭形平次捕物控:117 雪の夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
紺碧
(
こんぺき
)
の空が、ドス黒く曇ってきた。そこに現われた一点の深紅の色が、みるみる広がっていった。広がるとともに、それは雄大なひだを作って、カーテンのようにさがってきた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“紺碧”の意味
《名詞》
やや黒みがかった青。晴天快晴の空の色を形容するのにしばしば用いられる。
(出典:Wiktionary)
紺
常用漢字
中学
部首:⽷
11画
碧
漢検準1級
部首:⽯
14画
“紺”で始まる語句
紺
紺青
紺屋
紺絣
紺飛白
紺暖簾
紺足袋
紺青色
紺羅紗
紺地