トップ
>
眦
>
まなじり
ふりがな文庫
“
眦
(
まなじり
)” の例文
眦
(
まなじり
)
が釣り、目が鋭く、血の筋が走って、そのヘルメット帽の深い下には、すべての形容について、角が生えていそうで不気味に見えた。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
戸川志摩は雨龍の眼力にはッとしたが、見現わされた上はかねての覚悟、早くも
臍
(
ほぞ
)
を決めて、
眦
(
まなじり
)
を釣り上げ、きっと睨み返して云った。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、眼には
眦
(
まなじり
)
が鋭く切れて、それには絶えず、同じことのみ眺め考えているからであろうか、瞳のなかが泉のように澄み切っていた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
眼瞼
(
まぶた
)
重げに、
眦
(
まなじり
)
長く、ふくよかな匂わしき
頬
(
ほほ
)
、鼻は大きからず高すぎもせぬ柔らか味を持ち、いかにものどやかに品位がある。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
『えい、
殘念
(
ざんねん
)
だ/\、
此樣
(
こん
)
な
時
(
とき
)
、
本艦
(
ほんかん
)
の
水兵
(
すいへい
)
が
羨
(
うらや
)
ましい。』と
叫
(
さけ
)
んだまゝ、
空拳
(
くうけん
)
を
振
(
ふ
)
つて
本艦々頭
(
ほんかんかんとう
)
に
仁王立
(
にわうだち
)
、
轟大尉
(
とゞろきたいゐ
)
は
虎髯
(
こぜん
)
逆立
(
さかだ
)
ち
眦
(
まなじり
)
裂
(
さ
)
けて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
帆綱を握つて身を支へ、
眦
(
まなじり
)
を決して
顧睥
(
こへい
)
するに、万畳の
波丘
(
はきう
)
突如として
無間
(
むげん
)
の
淵谷
(
えんこく
)
と成り、船
幽界
(
いうかい
)
に入らむとして又
忽
(
たちま
)
ちに
雲濤
(
うんたう
)
に乗ぜんとす。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
冷やかな右衛門の様子を見ると、お吉はその眼を見張ったが、
眦
(
まなじり
)
に溜まった一杯の涙が一度に頬に降りかかったので思わず両袖で眼を蔽うた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
引きしまって、ぼやついたところのない音声と、南方風なきれの大きい
眦
(
まなじり
)
。話につれて閃く白眼。その顔のすべての曲線が
勁
(
つよ
)
く、緊張していた。
風知草
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
眦
(
まなじり
)
を蒼ずませ、なにか叫びだしそうな憤怒の形相をしていたが、さすがに環境をわきまえ、無言のまま、受話器を置いた。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その像を髪に籠められて
眦
(
まなじり
)
を決して睨み立たれた美しく若き
皇子
(
みこ
)
の御勇姿は、真に絵のようであったろうと拝察されます。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これは恐らく、京都の妻女へ送る消息でも、
認
(
したた
)
めていたものであろう。——内蔵助も、
眦
(
まなじり
)
の
皺
(
しわ
)
を深くして、笑いながら
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
眦
(
まなじり
)
が、裂けると云つたらいゝのだらう。美しい顔に、凄じい殺気が迸つた。父も、子の烈しい気性に、気圧されたやうに、黙々として聴いてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
われは
眦
(
まなじり
)
を決して東のかたヱネチアを望みたるに、一群の飛鳥ありて、列を成してかなたへ飛び行くさま、一片の
帛
(
きぬ
)
の風に翻弄せらるゝに似たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
白雲が
眦
(
まなじり
)
を決してその黒船を
睨
(
にら
)
んだ瞬間、ただいま決闘——と認定せる二つの人影のことは全く忘れ去りました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お秀の方が
取做
(
とりな
)
し顔に声をかけたが、与一はジロリと横目で睨んだまま動かなかった。のみならず頬の色を見る見る白くして、
眦
(
まなじり
)
をキリキリと釣り上げた。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は襲撃者らを
球突台
(
たまつきだい
)
で隔て、
室
(
へや
)
の片すみに退き、そこで
眦
(
まなじり
)
を決し、
昂然
(
こうぜん
)
と頭を上げ、筒先ばかりの銃を手にして立っていたが、その姿はなお敵に不安を与え
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
無念の
眦
(
まなじり
)
こそ裂けてをりますが、
彫
(
きざ
)
んだやうな眼鼻立ちが恐怖に
歪
(
ゆが
)
められて、物凄さもまた
一入
(
ひとしほ
)
です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あの自信のない
臆病
(
おくびょう
)
な男に自分はさっき
媚
(
こ
)
びを見せようとしたのだ。そして彼は自分がこれほどまで誇りを捨てて与えようとした特別の好意を
眦
(
まなじり
)
を
反
(
かえ
)
して退けたのだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
背
(
せ
)
は
左
(
さ
)
まで
高
(
たか
)
くはないが、
骨太
(
ほねぶと
)
の
肉附
(
にくづき
)
の
良
(
い
)
い、
丸顏
(
まるがほ
)
の
頭
(
あたま
)
の
大
(
おほ
)
きな
人
(
ひと
)
で
眦
(
まなじり
)
が
長
(
なが
)
く
切
(
き
)
れ、
鼻
(
はな
)
高
(
たか
)
く
口
(
くち
)
緘
(
しま
)
り、
柔和
(
にうわ
)
の
中
(
なか
)
に
威嚴
(
ゐげん
)
のある
容貌
(
かほつき
)
で、
生徒
(
せいと
)
は
皆
(
み
)
な
能
(
よ
)
く
馴
(
な
)
れ
親
(
した
)
しんで
居
(
ゐ
)
ました。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
都下の学生にして苟くも野球の趣味を解する者は、尽く
眦
(
まなじり
)
を決して戸塚グラウンドに急いだ。
野球界奇怪事 早慶紛争回顧録
(新字旧仮名)
/
吉岡信敬
(著)
目尻の刳りの美しい、謂はゞ芸術女と言ふよりも自然女と謂つた印象を与へる
眦
(
まなじり
)
である。
自然女人とかぶき女:――新歌右衛門に寄する希望――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
金五郎は、きっと
眦
(
まなじり
)
をあげて、藤本の顔を見た。浅黒い、眉の太い、精悍な長顔である。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
切れ長で
眦
(
まなじり
)
のあがった特徴のある眼で、テーブルに坐っているとき、心もち頤をひいて、その目がどこか遠くの高いところを眺めている。女は声をあげて笑うこともない感じだった。
その一年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
美
(
うつ
)
くしい
眦
(
まなじり
)
に
良人
(
をつと
)
が
立
(
た
)
つ
腹
(
はら
)
をも
柔
(
やはら
)
げれば、
可愛
(
かあい
)
らしい
口元
(
くちもと
)
からお
客樣
(
きやくさま
)
への
世辭
(
せじ
)
も
出
(
で
)
る、
年
(
とし
)
もねつから
行
(
ゆ
)
きなさらぬにお
怜悧
(
りこう
)
なお
内儀
(
かみ
)
さまと
見
(
み
)
るほどの
人
(
ひと
)
褒
(
ほ
)
め
物
(
もの
)
の、
此人
(
このひと
)
此身
(
このみ
)
が
裏道
(
うらみち
)
の
働
(
はたら
)
き
うらむらさき
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
というと、神原四郎治がキリヽと
眦
(
まなじり
)
を
吊
(
つる
)
し上げて膝を進めました。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
梳
(
す
)
きぞめや
眦
(
まなじり
)
をつと引きゆがめ
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
彼は
眦
(
まなじり
)
を
決
(
さ
)
きて
寒慄
(
かんりつ
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
石女
(
うまずめ
)
らしいあなたの
眦
(
まなじり
)
を
癲狂院外景
(新字旧仮名)
/
富永太郎
(著)
胆太
(
きもぶと
)
の
眦
(
まなじり
)
裂くと
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と
眦
(
まなじり
)
の切れたのを伏目になって、お蔦は襟に
頤
(
おとがい
)
をつけたが、慎ましく、しおらしく、且つ
湿
(
しめ
)
やかに見えたので、め組もおとなしく
頷
(
うなず
)
いた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
他
(
ほか
)
の者も、総て
抜刀
(
ぬきみ
)
を引っ
提
(
さ
)
げているのだ。どの顔も皆、
眦
(
まなじり
)
をつりあげ、
革襷
(
かわだすき
)
をかけ、
股立
(
ももだち
)
を
括
(
くく
)
って、尋常な血相ではなかった。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眦
(
まなじり
)
が、裂けると
云
(
い
)
ったらいゝのだろう。美しい顔に、凄じい殺気が
迸
(
ほとばし
)
った。父も、子の
烈
(
はげ
)
しい気性に、
気圧
(
けお
)
されたように、黙々として聴いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
見ているうちに、顔の色が、次第に
蝋
(
ろう
)
のごとく青ざめて、しわだらけの
眦
(
まなじり
)
に、涙が玉になりながら、たまって来る。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頼正を始め家臣一同、歯を喰いしばり
眦
(
まなじり
)
を裂き、じっと水面に見入ったがしばらくは何んの変ったこともない。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その次席が、ヴィオラ奏者のオリガ・クリヴォフ夫人であって、眉弓が高く
眦
(
まなじり
)
が鋭く切れ、細い鉤形の鼻をしているところは、いかにも峻厳な相貌であった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と云う
女将
(
おかみ
)
らしい声がして、コック部屋兼帳場の入口の浅黄色の垂幕の蔭から、色の青黒い、
眦
(
まなじり
)
の釣上った、ヒステリの
妖怪
(
おばけ
)
じみた年増女の顔が覗いたと思うと
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
無念の
眦
(
まなじり
)
こそ裂けておりますが、
彫
(
きぎ
)
んだような眼鼻立ちが恐怖に
歪
(
ゆが
)
められて、物凄さもまた
一入
(
ひとしお
)
です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
数負は、こちらの言うことがまるきり耳へとどかないようすで、
眦
(
まなじり
)
も張りさけるかと思うばかりにクヮッと眼を押しひらき、ただ、脇差、脇差、と言うばかり。アコ長は歎息して
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
合い乗りらしい人力車のわだちの音も威勢よく響いて来た。葉子はもう一度これは屈強な避難所に来たものだと思った。この
界隈
(
かいわい
)
では葉子は
眦
(
まなじり
)
を
反
(
かえ
)
して人から見られる事はあるまい。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
何しろ、此二つの天部が、互に敵視するような目つきで、
睨
(
にら
)
みあって居る。噂を気にした
住侶
(
じゅうりょ
)
たちが、色々に置き替えて見たが、どの隅からでも、互に相手の姿を、
眦
(
まなじり
)
を裂いて見つめて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
意気地
(
いきじ
)
と張りを命にして、張詰めた
溜涙
(
ためなみだ
)
をぼろぼろこぼすのと違って、細い、きれの長い、情のある
眦
(
まなじり
)
をうるませ、
几帳
(
きちょう
)
のかげにしとしとと、春雨の降るように泣きぬれ、
打
(
うち
)
かこちた姿である。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
桃色傘の女は、狐のように、
眦
(
まなじり
)
をつりあげて、軽侮のいろを浮かべた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
膽太
(
きもぶと
)
の
眦
(
まなじり
)
裂くと
新頌
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と、
凜
(
りん
)
とした
眦
(
まなじり
)
の目もきっぱりと言った。簪の白菊も冷いばかり、清く澄んだ頬が白い。心中にも女郎にも驚いた
容子
(
ようす
)
が見えぬ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紅をさいて吊りあがった
眦
(
まなじり
)
、
髷
(
まげ
)
も
笄
(
こうがい
)
もどこかへ落ちて、ありあまるお綱の黒髪、妖艶といおうか
凄美
(
せいび
)
といおうか、バラリと肩へ流れている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
新三郎は血を吐く思い、次第に力の抜ける
掌
(
て
)
に、わずかに身体を支えて悲憤の
眦
(
まなじり
)
を裂きます。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
扉が開くと、後向きになった二十三、四がらみの婦人を前に、捜査局長の
熊城
(
くましろ
)
が苦りきって鉛筆の
護謨
(
ゴム
)
を噛んでいた。二人の顔を見ると、遅着を
咎
(
とが
)
めるように、
眦
(
まなじり
)
を尖らせたが
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
睫
(
まつげ
)
が又西洋人のように房々と濃い。眼が
仏蘭西
(
フランス
)
人形のように大きくて、
眦
(
まなじり
)
がグッと切れ上っている上に、瞳がスゴイ程真黒くて、白眼が、又、気味の悪いくらい
青澄
(
あおず
)
んで冴え渡っている。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
眦
(
まなじり
)
も張り裂けんばかりにその窓を見上げながら、固く喰いしばった歯の間で
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
扮装
(
みなり
)
は堅気の商人風、年の頃は三十前後、しかし商人ではなさそうだ。赫黒い顔色、釣上がった
眦
(
まなじり
)
、巨大な段鼻、薄い唇、身長五尺七八寸、両方の鬢に面摺れがある。変装した武士に相違ない。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眦
漢検1級
部首:⽬
10画
“眦”を含む語句
外眦
眼眦
睚眦
目眦
内眦
御眦
怒眦流都美邇
眦裂
鳳眦