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狭
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せば
ふりがな文庫
“
狭
(
せば
)” の例文
旧字:
狹
わしはあの
吉助
(
きちすけ
)
が心からきらいなのだ。腹の悪いくせにお
追従
(
ついしょう
)
を使って。この春だってそ知らぬ顔で
宅
(
うち
)
の田地の境界を
狭
(
せば
)
めていたのだ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
けれども封建時代にのみ通用すべき教育の範囲を
狭
(
せば
)
める事なしに、現代の生活慾を時々刻々に
充
(
み
)
たして行ける訳がないと代助は考へた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
珊瑚樹垣
(
さんごじゅがき
)
の根には
蕗
(
ふき
)
の
薹
(
とう
)
が無邪気に伸びて花を咲きかけている。外の小川にはところどころ
隈取
(
くまど
)
りを作って
芹生
(
せりふ
)
が水の流れを
狭
(
せば
)
めている。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
後には
頭
(
かしら
)
もいたく、何となう心地悪しければ、しばし休まむとするに、いと
狭
(
せば
)
き所に人多くゐれば、足踏みのばさむやうもなし。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ちょうど、もう
撥条
(
ばね
)
を巻かれなくなった振り子が、しだいに振動を
狭
(
せば
)
めてついに止まってしまおうとしてるのによく似ていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
いつもの馬の目隠しのやうなものが、又自分の限界を
狭
(
せば
)
めてくれた。それでセルギウスは強ひて自ら安んずる事が出来た。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
しかしそれよりもその瞬間に葉子の胸を押しひしぐように
狭
(
せば
)
めたものは、底のない物すごい不安だった。木村とはどうしても連れ添う心はない。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
即ち近代絵画の画面の容積は
狭
(
せば
)
まって来ている事は確かである。そして小さい画面へ人間の神経をなるべく簡単にして深く鋭く表現しようとする。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
浅草観音堂裏手の境内が
狭
(
せば
)
められ、広い道路が開かれるに際して、むかしから其辺に
櫛比
(
しっぴ
)
していた
楊弓場
(
ようきゅうば
)
銘酒屋のたぐいが
悉
(
ことごと
)
く取払いを命ぜられ
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
逸りきったる若き男の間違いし出して
可憫
(
あわれ
)
や清吉は
自己
(
おのれ
)
の世を
狭
(
せば
)
め、わが身は
大切
(
だいじ
)
の
所天
(
おっと
)
をまで憎うてならぬのっそりに謝罪らするようなり行きしは
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ちがった信仰をもつ
為政者
(
いせいしゃ
)
が、単なる殖産政策の立場から、
勧
(
すす
)
め
諭
(
さと
)
して神山の樹を
伐
(
き
)
らせ、それを開墾して
砂糖黍
(
さとうきび
)
などを
栽
(
う
)
えさせ、鼠の居処を
狭
(
せば
)
めて
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
木は新しいが、陰々と、奈落に一足ずつ踏込むような、段階子を
辿
(
たど
)
る辿る、一段ごとに底の方は、深く、細く、次第に
狭
(
せば
)
んで、足も心も引入れられそう。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地が高くなるにつれて
狭
(
せば
)
まった両岸の平野はそこではもうほとんどなかった。静かな澄んだ藍色の大空の下に、河流は深い淵をつくって緩かに流れていた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
いかに
窶
(
やつ
)
れたことであろう! 高い鼻は尖って
棘
(
とげ
)
のようになり
顳顬
(
こめかみ
)
は槌で叩かれたかのように、痩せてくぼんでへっこんで、広がった額が
狭
(
せば
)
まって見える。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
虎
(
とら
)
の描く円周は、だんだん
狭
(
せば
)
められていった。そして、時々立ち止まると、ちょっかいを出すように、その前脚を上げて、女人のからだにさわろうとする。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
工場から電車路に出るところは、片方が省線の堤で他方が商店の屋並に
狭
(
せば
)
められて、細い道だった。その二本目の電柱に、背広が立って、こっちを見ていた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
次には「またその強き
歩履
(
あゆみ
)
は
狭
(
せば
)
まり、その計るところは自分を陥しいる、すなわちその足に
逐
(
お
)
われて網に到り、また
陥阱
(
おとしあな
)
の上を歩むに
索
(
なわ
)
その
踵
(
くびす
)
に
纏
(
まつわ
)
り
罠
(
わな
)
これを
執
(
とら
)
う」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
私をぐるりと取り巻いて眺めている人々の気配が、だんだん輪を
狭
(
せば
)
めて、終には私の肩の辺ではっはっと呼吸をするのが聞え出した。生ぬるい人間の呼吸が気味悪い。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
楽堂の片隅に身を
狭
(
せば
)
めながら自分相応の小さな楽器を執って有名無名の多数の楽手が人生を
奏
(
かな
)
でる大管絃楽の
複音律
(
シンフォニイ
)
に
微
(
かす
)
かな一音を添えようとするのが私の
志
(
こころざし
)
である。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
江戸時代になってだんだんに
狭
(
せば
)
められたのだそうで、わたくしどもの知っている時分には、岸の方はもう浅い泥沼のようになって、夏になると葦などが生えていました。
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
殻片
(
かくへん
)
が開いたその際は、その種子があたかも舟に乗ったように並んでいるのだが、その
殻片
(
かくへん
)
がだんだん
乾
(
かわ
)
くと、その両縁が内方に向こうて
収縮
(
しゅうしゅく
)
、すなわち押し
狭
(
せば
)
められ
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
何気なき
体
(
てい
)
で遊戯に誘い入れ、普通本邦婦人が洗濯する体に
蹲
(
うずく
)
まらしめ、急に球を
抛
(
な
)
げると両手で受け留むる
刹那
(
せつな
)
、
股
(
また
)
を開けば女子、股を
狭
(
せば
)
むれば男子とは恐れ入ったろう。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
淀を右塁とし、勝龍寺の城を左塁とし、
能勢
(
のせ
)
、亀山の諸峰と、小倉之池に
狭
(
せば
)
められたこの京口の
隘路
(
あいろ
)
を取って、羽柴軍を
撃摧
(
げきさい
)
せんとなす準備行動のそれは第一歩とみられた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そんな事を言って振り返ると、妙子は僅かにうなずき乍ら、細そりした身体を尚おも
狭
(
せば
)
めて、運命に導かれて行く
偶人
(
にんぎょう
)
のように、真にトボトボと私の後を跟いて来るのでした。
新奇談クラブ:02 第二夜 匂う踊り子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
順作はうっとりと何か考え込んだが、気が
注
(
つ
)
いて近くの瓶の傍へ往って、
狭
(
せば
)
まっている底のほうに力を入れて押してみた。
瓶
(
かめ
)
はなかなか重かったがそれでも
斜
(
なな
)
めに傾きかけた。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ことばは
圧
(
お
)
し
狭
(
せば
)
められた胸の中から、ただの叫びとなってほとばしり出るのであった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
前には俄かに急になつた路面がいつのまにか
狭
(
せば
)
まつて来た山合ひにぐつととつついてゐるのが見えた。房一はうつすらと汗ばんでゐた。だが、彼の見たものは路や山肌ではなかつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
此秋山の
道
(
みち
)
はすべて所の人のかよふべきためにのみひらきたる道にて、牛馬はさらにつかはざる所なれば、ことさらに
道
(
みち
)
狭
(
せば
)
く
小笹
(
をざゝ
)
など
深
(
ふか
)
くしてやう/\道をもとむる所しば/\なり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
家に置いて来た娘お粂のことも心にかかりながら、半蔵はその足で木曾の
桟
(
かけはし
)
近くまで行った。そこは妻籠あたりのような
河原
(
かわら
)
の広い地勢から見ると、ずっと谷の
狭
(
せば
)
まったところである。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
地形が
狭
(
せば
)
まって田原町になる右の角に蕎麦屋があって、
息子
(
むすこ
)
が
大纏
(
おおまとい
)
といった
相撲
(
すもう
)
取りで、小結か関脇位まで取り、土地ッ児で人気がありました。この向うに名代の紅梅焼きがありました。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
なぜでしょうか、自力に立つ故、道が
難行
(
なんぎょう
)
なためであります。個人に
止
(
とど
)
まるため、世界が
狭
(
せば
)
められてしまうからであります。まして偉大な個性を、そうざらに予期することは出来ません。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
私たちはやがて村の中途から街道を
外
(
はず
)
れて対岸へ渡った。この辺で
渓
(
たに
)
はようやく
狭
(
せば
)
まって、岸が
嶮
(
けわ
)
しい断崖になり、激した水が川床の巨岩に
打
(
ぶ
)
つかり、あるいは真っ青な
淵
(
ふち
)
を
湛
(
たた
)
えている。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「
爾
(
なんじ
)
自
(
みずか
)
らの信仰、爾を
癒
(
いや
)
せり」というキリストのお言葉は、即ち自業自得を意味して居るのでありますけれども、今はこの自業自得の理は教会的キリスト教の為に甚だ範囲を
狭
(
せば
)
められて
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
父はその芒の
生
(
は
)
えていた空地の一部を借りて、そこへ細工場を建て増すことになった。それは私がいつもこっそりと一人でさまざまな事を夢みていた隠れ場所を早くも
狭
(
せば
)
めることになった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼はフランス語の会話を聞き取るの疲れ以外に、文学——俳優、作者、出版者、文学上の楽屋や寝所——の詩ばかりなのにも、聞き疲れていた。世界がそれだけの範囲に
狭
(
せば
)
まったかのようだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
吾人は東洋の一端に棲居するが故に欧洲の大勢を
顧眄
(
こべん
)
するの要なしと信ずる一種の攘夷論者の愚を、笑はんとす、世界は日に
狭
(
せば
)
まり行きて、今日の英国は往日の英国の距離にあらざる事を思ふべし
一種の攘夷思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
おくみはそこに膝を突いた儘、お向ひのお家の二階屋根の片面に、黄ろい色に
狭
(
せば
)
まつた夕日の影を見るとしもなく見入つてゐた。今度はもう平河さんのお家へもさう長く御厄介になつてゐたくない。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
幅の
狭
(
せば
)
い帯を締めて
姉様
(
あねさま
)
を荷
厄介
(
やっかい
)
にしていたなれど、こましゃくれた心から、「あの人はお前の御亭主さんに
貰
(
もら
)
ッたのだヨ」ト坐興に言ッた言葉の露を
実
(
まこと
)
と
汲
(
くん
)
だか、初の内ははにかんでばかりいたが
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夏堀
(
なつぼり
)
と
狭
(
せば
)
む
水曲
(
みわた
)
の葦むらはたださわさわし小舟
棹
(
さ
)
しつつ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
小さい焦点へ絞り
狭
(
せば
)
めるだけでも人一倍骨が折れた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
遡つても遡つても川幅は、
狭
(
せば
)
まらなかつた。
繰舟で往く家
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
Kは、眼を
狭
(
せば
)
めながら女を見つめた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
三間半の南向の椽側に冬の日脚が早く傾いて
木枯
(
こがらし
)
の吹かない日はほとんど
稀
(
まれ
)
になってから吾輩の昼寝の時間も
狭
(
せば
)
められたような気がする。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
村についた共有の萱野というものは、広くなる場合などはひとつもなく、
狭
(
せば
)
められる原因はいくつもあった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いくら騒いでも、怪物が微動さえしないので、人々は段々大胆になって、一歩一歩円陣が
狭
(
せば
)
められて行った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
両側とも
菜飯田楽
(
なめしでんがく
)
の
行燈
(
あんどう
)
を出した二階
立
(
だて
)
の料理屋と、
往来
(
おうらい
)
を
狭
(
せば
)
むるほどに
立連
(
たちつらな
)
った
葭簀張
(
よしずばり
)
の
掛茶屋
(
かけぢゃや
)
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山と山とに
狭
(
せば
)
められた地形の中の決戦なので、馬のいななきも、槍太刀のひびきも、吠えあい、名のりあう武者声も、
木魂
(
こだま
)
にひびいて、天地の鳴るような、無気味さだった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
塀と
母屋
(
おもや
)
に押し
狭
(
せば
)
められて、あまり陽の目をみない中庭は、ひどくジメジメして居りますが、平次と八五郎が念入りに調べたところでは、足跡らしいものは一つもありません。
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わづかに畳三
枚
(
ひら
)
ばかり鋪ける、ささやかなる所に、九人押し合ひてゐたり。あかしさへ置きたれば、いよゝ
狭
(
せば
)
きに、をさなきものねむたしとて、並みゐる
正中
(
たゞなか
)
に足踏み伸して臥す。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
無い時もあった。此のような生活をしながらも、目に見えぬ何物かが次第に輪を
狭
(
せば
)
めて身体を
緊
(
し
)
めつけて来るのを、私は痛いほど感じ始めた。歯ぎしりするような気持で、私は連日遊び
呆
(
ほう
)
けた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
狭
常用漢字
中学
部首:⽝
9画
“狭”を含む語句
狭隘
狭間
狭田
広狭
身狭乳母
手狭
桶狭間
狭苦
狭斜
矢狭間
偏狭
所狭
狭量
幅狭
長狭
身狭刀自
狭屋
狭穂姫
狭過
狭野
...