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滴
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た
ふりがな文庫
“
滴
(
た
)” の例文
彼女
(
かのじょ
)
は、
小指
(
こゆび
)
を
切
(
き
)
りました。そして、
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
を、サフラン
酒
(
しゅ
)
のびんの
中
(
なか
)
に
滴
(
た
)
らしました。ちょうど、
窓
(
まど
)
の
外
(
そと
)
は、いい
月夜
(
つきよ
)
でありました。
砂漠の町とサフラン酒
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その
夜更
(
よふ
)
け。ここは東京の月島という埋立地の海岸に、太った男が、水のボトボト
滴
(
た
)
れる大きな潜水服を両手に抱えて立っていた。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
神職 (彼が
言
(
ことば
)
のままに、手、足、胴
腹
(
はら
)
を打返して藁人形を
翳
(
かざ
)
し見る)血も
滴
(
た
)
りょう。…藁も肉のように裂けてある。これ、寄るまい。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
或る日、分けても寒さの厳しい朝のことであったが、伯父の大納言の鼻先から
水洟
(
みずはな
)
が
滴
(
た
)
れているのを見ると、彼はそっと寄って行って
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
アンドレイ、エヒミチは
此
(
こ
)
の
切
(
せつ
)
なる
同情
(
どうじやう
)
の
言
(
ことば
)
と、
其上
(
そのうへ
)
涙
(
なみだ
)
をさへ
頬
(
ほゝ
)
に
滴
(
た
)
らしてゐる
郵便局長
(
いうびんきよくちやう
)
の
顏
(
かほ
)
とを
見
(
み
)
て、
酷
(
ひど
)
く
感動
(
かんどう
)
して
徐
(
しづか
)
に
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
飢餓は数滴の油を不承不承に
滴
(
た
)
らして揚げた皮ばかりの馬鈴薯の薄片の入っているどの一文皿の中にも粉々に切り刻まれていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
生汗
(
なまあせ
)
をポタポタと
滴
(
た
)
らしながら鼻眼鏡をかけて出て来た……と思うと、目礼をするように眼を伏せて、力なくニッと笑いつつ消え失せた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
大三は早くその薬をのんでからだがピンとなることばかり一生けん命考へながら、汗をポタポタ
滴
(
た
)
らし息をはあはあついて待ってゐました。
よく利く薬とえらい薬
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
滴
(
た
)
れそうな
愛嬌
(
あいきょう
)
と、どんな仕事にも向きそうな良い身体と、そして少しばかりお目出たい性格を持っているらしい年増でした。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
犬が一定の音をきいて、ゴム管の先から
滴
(
た
)
らす唾液の露を数えることは、鯉坂君にとって此上もない深い興味を与えました。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
犬芥
(
いぬがらし
)
、「
約百
(
ヨブ
)
の
涙
(
なみだ
)
」、
紫苑
(
しをん
)
、どんなに血の
滴
(
た
)
れる心よりも、おまへたちの
方
(
はう
)
がわたしは
好
(
すき
)
だ。
滅
(
ほろ
)
んだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
袷
(
あわせ
)
では少し
冷
(
ひや
)
つくので、
羅紗
(
らしゃ
)
の
道行
(
みちゆき
)
を引かけて、出て見る。門外の路には
水溜
(
みずたま
)
りが出来、
熟
(
う
)
れた麦は
俯
(
うつむ
)
き、
櫟
(
くぬぎ
)
や
楢
(
なら
)
はまだ緑の
雫
(
しずく
)
を
滴
(
た
)
らして居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それを火から
卸
(
おろ
)
して玉子の白身二つ
振
(
ぶり
)
よく泡立たせて混てレモン油でも少し
滴
(
た
)
らして型へ入れますが型がなければブリキの鉢でも何でも出来ます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
少年のとき荒仕事ばかりして、冬になると
瘃
(
あかぎれ
)
が切れて血が出る、スルと木綿糸で瘃の
切口
(
きれくち
)
を
縫
(
ぬっ
)
て
熱油
(
にえあぶら
)
を
滴
(
た
)
らして
手療治
(
てりょうじ
)
をして居た事を覚えて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
母親は、
寛
(
ひろ
)
い胸から乳房を掴み出し、柔らかいぽとぽと音を立てて陶物に
滴
(
た
)
れる乳を見ながら、
口惜
(
くや
)
しそうに云った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
見物が前を通ると仕掛けで首を上げる、
怨
(
うら
)
めしそうな顔をして、片手には短刀を
以
(
も
)
って
咽喉
(
のど
)
を突いてる、血がポタポタ
滴
(
た
)
れそうな仕掛になっている。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
滴
(
た
)
らした。……里春は象の腹の窪みの中で死んでいたというから、血が滲み出すなら胸からなどではなく腹から
滴
(
したた
)
るはずだ。このわけが、お前にわかるか
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
何心なく自分がかう言ひ放つと、お駒の圓い顏は、手水鉢へ赤インキを
滴
(
た
)
らしたやうに、ぼうとなつて
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
肱で女の体をしっかと押えつけ、その口を手で塞いで、硫酸をたらたらと額に、眼に、頬に
滴
(
た
)
らした。
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
紋羽二重
(
もんはぶたへ
)
の
肉色鹿子
(
にくいろがのこ
)
を掛けたる
大円髷
(
おほまるわげ
)
より水は
滴
(
た
)
るばかりに、玉の如き
喉
(
のど
)
を白絹のハンカチイフに巻きて、
風邪気
(
かぜけ
)
などにや、
連
(
しきり
)
に
打咳
(
うちしはぶ
)
きつつ、宮は奥より出迎に見えぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
較々
(
やや
)
霎時
(
しばし
)
して、自分は
徐
(
おもむ
)
ろに其
一片
(
ひとひら
)
の公孫樹の葉を、水の上から摘み上げた。そして、
一滴
(
ひとつ
)
二滴
(
ふたつ
)
の
銀
(
しろがね
)
の雫を口の中に
滴
(
た
)
らした。そして、いと丁寧に塵なき井桁の端に載せた。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
きしむ雨戸をこじあけて覗くと、闇のなかには竹の子笠をかぶって
蓑
(
みの
)
を着た人が突っ立っていた。人はしずくの
滴
(
た
)
れる笠をぬぐと、行燈を持って出たお時がまず驚かされた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
実は
御願
(
おんねがい
)
に
只今
(
ただいま
)
上りましたので
御座
(
ござ
)
いますと、涙片手の哀訴に、私は
直
(
ただ
)
ちに
起
(
た
)
って、
剃刀
(
かみそり
)
を
持来
(
もちきた
)
って、
立処
(
たちどころ
)
に、その娘の水の
滴
(
た
)
るような緑の黒髪を、根元から、ブツリ切ると
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
孝「はいお庭でお手打になりますか、
※
(
ござ
)
をこれへ敷きましょうか、血が
滴
(
た
)
れますから」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
多分焼く時に出来損ねたのであろう。この蝦蟇出の急須に絹糸の
切屑
(
きりくず
)
のように細かくよじれた、暗緑色の宇治茶を入れて、それに冷ました湯を
注
(
つ
)
いで、
暫
(
しばら
)
く待っていて、
茶碗
(
ちゃわん
)
に
滴
(
た
)
らす。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
染めたのは灰色な自分の頭ではなくて、白い
毛鞠
(
けまり
)
のやうな皇后の愛犬だつた。犬は黒い雫をぽたぽた
滴
(
た
)
らしながら、皇后の居間に飛び込んで往つた。皇后はびつくりして悲鳴をあげた。
茶話:08 大正十五(一九二六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
刃物の下からは
雫
(
しずく
)
がぽとぽとと
滴
(
た
)
れる。生木の柔らかさに快い音を立てて
刳
(
く
)
ってゆく。中途では止めない。そのまま一気に仕上げてしまう。乾燥にやかましい吾々の仕事とはいたく違う。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そのまわりの落葉へ
生
(
なま
)
なました血が
滴
(
た
)
れていたがね、それから二三年して、大旦那が死んだとき、人に聞くと、どうもそのあたりらしかったよ、どうも、乃公は、あの血が怪しいと思ってる
赤い花
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
夢のように
彷徨
(
さまよ
)
い、また消えようとするとき、二、三分の間、雪の高嶺に、鮮やかな光が
這
(
は
)
って、山の三角的
天辺
(
てっぺん
)
が火で洗うように
耀
(
かがや
)
く、山は自然の心臓から
滴
(
た
)
れたかと思う純鮮血色で一杯に染まる
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その部屋の隅にはアルコオルを満した、大きい
硝子
(
ガラス
)
の壺の中に脳髄が幾つも
漬
(
つか
)
つてゐた。彼は或脳髄の上にかすかに白いものを発見した。それは丁度卵の白味をちよつと
滴
(
た
)
らしたのに近いものだつた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「おうおうおう、涎を
滴
(
た
)
らして木へしがみついて居たのは誰だい」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
早やゆふべ水
滴
(
た
)
り落つる網の目に赤き蟹が一つひつかかりてゐる
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして
此
(
こ
)
の人間の
蛙
(
かへる
)
からは血が
滴
(
た
)
れる。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
彼の頸筋は、いまだに香油でも塗られたような気持だったし、口のあたりはまるで薄荷水でも
滴
(
た
)
らしたようにすうすうしていた。
接吻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
お前さん、いま
結立
(
ゆいた
)
てと見える高島田の水の
滴
(
た
)
りそうなのに、対に照った
鼈甲
(
べっこう
)
の
花笄
(
はなこうがい
)
、
花櫛
(
はなぐし
)
——この
拵
(
こしらえ
)
じゃあ、白襟に相違ねえ。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天気の好い時は何でもないが、風が吹いて、雨が降る時はこの下を通ると
雫
(
しずく
)
が
滴
(
た
)
れる、杉の枝がざわざわと動いて、
襟元
(
えりもと
)
の寒いのを感じた。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
滴
(
た
)
れさうな愛嬌と、どんな仕事にも向きさうな良い身體と、そして少しばかりお目出度い性格を持つて居るらしい年増でした。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
たった今海から上ったらしく、
濡
(
ぬ
)
れた海水着がべったりと胸に吸い着き、その毛むくじゃらな
脛
(
はぎ
)
を伝わって、ぼたぼた潮水が
滴
(
た
)
れていました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その時この白い
女人柱
(
カリヤチイド
)
の張切つた
背
(
せ
)
の上に、
神々
(
かみ/″\
)
の涙が
墮
(
お
)
ちて、突き刺された
怪獸
(
シメエル
)
の
痍口
(
きずぐち
)
から、血の
滴
(
た
)
れるのがみえる。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
今にも気絶しそうに生汗を
滴
(
た
)
らしながら唖女の瞳を一心に凝視していた澄夫は、この時やっと気を取直したらしく、伝六郎の顔を見て真赤になった。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
マスクの上から大量に
滴
(
た
)
らしますと、患者は間もなく深い麻酔に陥ったので、看護婦に命じて隣室の教諭を呼ばせ
痴人の復讐
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を頭にのせたまゝ、四体は水の
滴
(
た
)
るゝまゝに下駄をはいて、今母の胎内を出た様に真裸で、天上天下唯我独尊と云う様な
大踏歩
(
だいとうほ
)
して庭を歩いて帰る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
チョコレートのホンザーはチョコレート一斤に砂糖を九十目水を大匙五杯入れて四十分間弱い火で煮ますが水の中へ
滴
(
た
)
らしてみて餡のように固まるのが
度合
(
どあい
)
です。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
……
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
を
翳
(
さ
)
してるのに、拭いても拭いても顔から雫が
滴
(
た
)
るのですものなあ。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
涎
(
よだれ
)
をたら/\
滴
(
た
)
らし這入ってまいり、
只
(
と
)
見れば
先程
(
さっき
)
の奴が自分の
形装
(
みなり
)
で居りますから、八右衞門は
突然
(
いきなり
)
此の野郎と云いながら、一生懸命に這上がって、小平の胸ぐらを掴んで放しません。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
娘は
蒼白
(
あおじろ
)
い顔をして、
鬢
(
びん
)
に
雫
(
しずく
)
を
滴
(
た
)
らしているのが
一入
(
ひとしお
)
あわれに見えた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう春だな赤い漆をたらたら
滴
(
た
)
らせ掻きまぜてまた
篦
(
へら
)
をあげてる
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そうして徐々と薬液を
滴
(
た
)
らしているうちに、突然
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
傷より
滴
(
た
)
るゝ血の如し
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
アンドレイ、エヒミチはこの
切
(
せつ
)
なる
同情
(
どうじょう
)
の
言
(
ことば
)
と、その
上
(
うえ
)
涙
(
なみだ
)
をさえ
頬
(
ほお
)
に
滴
(
た
)
らしている
郵便局長
(
ゆうびんきょくちょう
)
の
顔
(
かお
)
とを
見
(
み
)
て、
酷
(
ひど
)
く
感動
(
かんどう
)
して
徐
(
しずか
)
に
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
“滴”の意味
《名詞》
(しずく)空中や物の表面にある球状となった少量の液体。
(出典:Wiktionary)
滴
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“滴”を含む語句
点滴
一滴
雨滴
滴々
涓滴
水滴
滴水
墨汁一滴
余滴
點滴
滴点
滴垂
二滴
下滴
散滴
油滴
滴水和尚
滴血
滴雫
血一滴
...