毛頭もうとう)” の例文
「いや、ルーブル紙幣の名を聞いただけで、寒気さむけがしてぶるぶるとふるえが出る。そんなものを紙幣でいただこうなど毛頭もうとう思っとらん」
が、このとしてはそうした方便ほうべん必要ひつよう毛頭もうとうなく、もともと純潔じゅんけつ小供こども修行しゅぎょうには、最初さいしょから幽界ゆうかい現実げんじつ目覚めざめさせるにかぎるのじゃ。
反間苦肉はんかんくにくの密告が図星に当ったものであるが、むろん、これは卑怯とも何とも云いようのない所業しわざで、Wに対して弁解の余地は毛頭もうとうない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かういふふうにしてわが地球ちきゆう知識ちしきはだん/\すゝんでたけれども、其内部そのないぶ成立なりたちに立入たちいつた知識ちしき毛頭もうとうすゝんでゐないといつてよろしかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
締殺し候覺え毛頭もうとう御座なく元私し事はいやしき者の娘にて津國屋がまだ神田に住居ぢうきよ致せし節同人店に居候中兩親も死にはて候ひしを不便に思ひ私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども私は断言します。兄さんは真面目まじめです。けっして私をごまかそうとしてはいません。私も忠実です。あなたをあざむく気は毛頭もうとうないのです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしその人が行ってしまうとお経の声はまた変じてたちまち鼻唄となるので、祈祷きとうなどという考えは毛頭もうとう壮士坊主の心の中にはないようです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この書を写すに幾日かゝったかく覚えないが、何でも二十日以上三十日足らずのあいだに写して仕舞しまうて、原書の主人に毛頭もうとう疑うような顔色がんしょくもなく
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
反抗の精神にかりたてるつもりは毛頭もうとうない。私たちが大衆青年に求めているのは、まず何よりも愛情だよ。愛情に出発した創造と調和の精神だよ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
家庭のことを振りかえって見ても、不愉快や、不満に思うふしは毛頭もうとうあるはずがないと思います。随分我儘わがままな女です。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
自分の心にたずねて人に無礼を加うる念が毛頭もうとうなければ、動作の調ととのわぬことなどは、人もゆるすであろう、また自分の良心も必ずこれをゆるすものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は弥助やすけという日本名までもらっていたが、日本の武将と武将の変乱に殉じる理由は毛頭もうとうないし、当人には何が何だか分らない出来事にちがいない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご承知の通り、手前は当今、ほうぼうの役割部屋で養われている名もない権八、これで功名しようの、あなたをやっつけようの、そんな娑婆しゃばッけは毛頭もうとうない。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
今さら、彼は家のことに口を出すつもりは毛頭もうとうなかった。ただ、半蔵の仕事部屋を見回るだけに満足した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つま芳之助よしのすけおもふかよしや芳之助よしのすけつといふともれある以上いじやうよめにすること毛頭もうとうならぬけがらはしゝ運平うんぺいおもしてもむねくなりましてやそれがむすめ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いかにも、貴殿がまことの和田静馬殿であることは、恵林寺の先触さきぶれでも毛頭もうとう疑いのないところ、若松屋の若者こそ、甚だ怪しい、とくと吟味を致さねばならぬ」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
学校も一緒、商売も一緒、何方か病気をしない限り、毎日顔を合せて来ている。同業のものは僕達のことを御両人と呼ぶ。僕も菊太郎君もそれに異存は毛頭もうとうない。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こうなってみると毛のあたいもなかなか馬鹿ばかにできぬもので、毛頭もうとうその事実にいつわりはない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
自分からいい出すつもりは毛頭もうとうなかった。私は、彼が自分の耳で、それがもはや聞こえてはこないのを聞くべきだと考え、その瞬間の彼の反応をつぶさに観察してやるつもりだった。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
佐渡は、修理に刃傷されるような覚えは、毛頭もうとうない。まして、あの乱心者のした事じゃ。大方おおかた、何と云う事もなく、肥後侯を斬ったのであろう。人違などとは、迷惑至極な臆測じゃ。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仏国公使の答は徳川政府に対しては陸軍の編制へんせいその他の事に関し少なからざる債権さいけんあり、新政府にてこれを引受けらるることなれば、毛頭もうとう差支さしつかえなしとてその挨拶あいさつはなは淡泊たんぱくなりしという。
市井しせいの女等を相手にして痴愚の恋にふける気持は今更毛頭もうとう無かったけれど、そうしたことから段々縁遠い容貌に私がなって行きつつあるということは、何となく厭であった。私はまだ若いのだ。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
だが、肝腎かんじんの叔父はもう、以前のような熱情を千代さんに持っていなかった。無論、千代さんと結婚なんかする気は毛頭もうとうなかった。結婚するには千代さんはもう、余りにも新鮮味がなかったのだ。
左樣さやう心配しんぱい毛頭もうとうないとふことを確信かくしんした次第しだいである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
……たといドンナ事があろうとも、僕は品夫を殺さない決心ですから……品夫を見棄てる気は毛頭もうとう無いのですから、何でもハッキリ云って下さい。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから当日は、ふらふらするからだを豊岡まではこんだようなわけで、特殊飛行をする意志は毛頭もうとうなかったのであった。
三重宙返りの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
毛頭もうとう、さような意志はない。……だが、親御たるあなた様にも、なんらの情愛はおぼえぬと仰せあれば——」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猫よりはいつのにか人間の方へ接近して来たような心持になって、同族を糾合きゅうごうして二本足の先生と雌雄しゆうを決しようなどとう量見は昨今のところ毛頭もうとうない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恭一からしかえして、また何か言って来るのを期待するのは、おかしなことだし、むろん、返事を書くときに、それを予期していたわけでは毛頭もうとうなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
僕がかくのごとき言を述べたならば、あるいはいたずらに人を責むるように聞こゆるであろうが、わが輩はそれがし何某なにがしなる個人を攻撃こうげきする考えは毛頭もうとうない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
申出ば此方へ役人をつかはすべし屹度きつと申渡すべきすぢあり其方共も落度おちどには毛頭もうとう相成あひなら氣遣きづかひ無用なり何分無禮ぶれいなきやうに致すべしと云渡いひわたしければ兩人は是をきゝきも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
行蔵こうぞうは我に存す、毀誉きよは他人の主張、我にあずからず我に関せずとぞんじそうろう各人かくじん御示おしめし御座ござそうろうとも毛頭もうとう異存いぞん無之これなくそうろうおん差越之さしこしの御草稿ごそうこう拝受はいじゅいたしたく御許容ごきょよう可被下くださるべく候也そうろう
あなたの鼻をあかそうの、あたしがこれで功名をしようの、そんな気は毛頭もうとうないんだから
しかし、こう云ったからと云って、何も平吉が損得の勘定ずくで嘘をついていると云う訳では毛頭もうとうない。第一彼は、ほとんど、嘘をついていると云う事を意識せずに、嘘をついている。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それには申年さるどしの三月に赤心報国のともがらが井伊大老を殺害に及んだことは毛頭もうとうも幕府に対し異心をはさんだのではないということから書き初めて、彼らの態度を明らかにしてあったという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吹替ふきかえのありまするたびに、員数を改めて差出しまする古金新金、それを隠し置きまするような覚えは毛頭もうとうござりませぬ、御念の上ならば、もう一応、家屋敷をおさがし下されまするように
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は屍体にい込んだ弾丸の入射角にゅうしゃかくを正確に測ろうなどとは毛頭もうとう考えたことがなかった。「それは面白い方法ですね」
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むろんその時も私は、谷山家を出る考えなんか毛頭もうとうありませんでした。ハイ。世の中の事はすべて運命ですからね。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けれどもその面白味はあの初菊という女の胴や手がへびのように三味線につれて、ひなひなするから面白かったんで、人情の発現として泣く了簡りょうけん毛頭もうとうなかったんです。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何者にか聞れし一向蹤跡あとかたなき事なり拙者毛頭もうとう左樣さやうの事存じ申さずと虚嘯そらうそぶにも不束ふつつかなる挨拶なるにぞ六郎右衞門はむつとし彼奴きやつ多分の金子を掘り出しながらすこしの配分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「——ああ、誤らした。自分の踏んで来た道には、毛頭もうとう悔いはないが、妹には、女の道を」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてわずかに発芽する蔬菜そさいのたぐいを順次に生に忠実な虫に供養するまでである。勿論もちろん厨房ちゅうぼうの助に成ろうはずはない。こんな有様であるから田園生活なんどは毛頭もうとう思いも寄らぬことである。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ましてや道楽のために学問をするなどという考は毛頭もうとう起る理由がない。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かつつそのにぎった珠を竜宮へえそうなんと云う念は毛頭もうとうない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかしそんな非礼な言葉を、この福の神に告白して、その御機嫌を損ずる気は毛頭もうとうなかったのである。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
……さもあれば毛頭もうとういなむすじはない。むしろ大きな歓びでござる。宗治として歓びでござる
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヤアどうも、君に議論を吹っかけるつもりじゃ毛頭もうとうなかったのですがネ、つい面白い原稿だねのない言訳いいわけに一寸議論のはしが飛び出して来たという次第なのですよ。——
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
仕掛けんなどという考えは毛頭もうとうござらぬ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛頭もうとう
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)