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朧月
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おぼろづき
ふりがな文庫
“
朧月
(
おぼろづき
)” の例文
朧月
(
おぼろづき
)
に透して見るまでもなく、
磁石
(
じしやく
)
と鐵片のやうに、兩方から駈け寄つた二人が、往來の人足の
疎
(
まば
)
らなのを幸ひ、
犇
(
ひし
)
と抱き合つた時
銭形平次捕物控:218 心中崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とにかく驚いて顔を上げると、自分の
身体
(
からだ
)
のある処よりも
遥
(
はるか
)
に低く、
雨気
(
あまけ
)
を帯びた雲の間をば一輪の
朧月
(
おぼろづき
)
が矢の如くに走っているのを見た。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「思わせぶりをしないでもいいじゃないか。このごろは
朧月
(
おぼろづき
)
があるからね、そっと行ってみよう。君も
家
(
うち
)
へ
退
(
さが
)
っていてくれ」
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
落花を踏み
朧月
(
おぼろづき
)
に乗じて所々を巡礼したが、
春日
(
かすが
)
山の風景、三笠の
杜
(
もり
)
の夜色、感慨に堪えざるものがあったといっている。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
惜し気もなく散る
彼岸桜
(
ひがんざくら
)
を誘うて、
颯
(
さっ
)
と吹き込む風に驚ろいて眼を
覚
(
さ
)
ますと、
朧月
(
おぼろづき
)
さえいつの
間
(
ま
)
に差してか、
竈
(
へっつい
)
の影は斜めに
揚板
(
あげいた
)
の上にかかる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
そうして空の
朧月
(
おぼろづき
)
は、橇が進もうが走ろうがそんなことには頓着せず、高い所から
茫々
(
ぼうぼう
)
と橇と人とを照らしている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
が
更
(
ふ
)
けている。——夜はまだ明けず、雲も地上も、どことなく薄明るかった。庭前を見れば、
海棠
(
かいどう
)
は夜露をふくみ、
茶蘼
(
やまぶき
)
は
夜靄
(
よもや
)
にうな
垂
(
だ
)
れている。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それはもう四つ(午後十時)過ぎで、半分ほど咲きかかった軒の桜が
朧月
(
おぼろづき
)
の下にうす白い影を作っていた。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
横
(
よこ
)
へ
切
(
き
)
れて
田畝道
(
たんぼみち
)
を、
向
(
むか
)
ふへ、
一方
(
いつぱう
)
が
山
(
やま
)
の
裙
(
すそ
)
、
片傍
(
かたはら
)
を
一叢
(
ひとむら
)
の
森
(
もり
)
で
仕切
(
しき
)
つた
真中
(
まんなか
)
が、
茫
(
ぼう
)
と
展
(
ひら
)
けて、
草
(
くさ
)
の
生
(
はへ
)
が
朧月
(
おぼろづき
)
に、
雲
(
くも
)
の
簇
(
むら
)
がるやうな
奥
(
おく
)
に、
祠
(
ほこら
)
の
狐格子
(
きつねがうし
)
を
洩
(
も
)
れる
灯
(
ひ
)
が
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
の夜、葛城家の使者と
偽
(
いつわ
)
る彼は、
房総線
(
ぼうそうせん
)
の一駅で下りて、車に乗ってお馨さんの家に往った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
腰には
厳
(
いか
)
めしき刀を差し、時々は
扇子
(
せんす
)
の
要
(
かなめ
)
を
柄頭
(
つかがしら
)
のあたりに立てて、思い出したように
町並
(
まちなみ
)
や、道筋、それから仰いで
朧月
(
おぼろづき
)
の夜をながめているのは、いつのまにこの地へ来たか
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しばしやどかせ春のゆく
衛
(
ゑ
)
と舞ひくるもみゆ、かすむ夕べの
朧月
(
おぼろづき
)
よに人顔ほのぼのと暗く成りて、風少しそふ寺内の花をば
去歳
(
こぞ
)
も
一昨年
(
おととし
)
もそのまへの年も、桂次此処に
大方
(
おほかた
)
は宿を定めて
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
東風から類推し得るもの——春風、春雨、
霞
(
かすみ
)
、
朧月
(
おぼろづき
)
など。……天文上の現象
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
黙礼の跡見かへるや
朧月
(
おぼろづき
)
柳之
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
さしぬきを足で
脱
(
ぬ
)
ぐ夜や
朧月
(
おぼろづき
)
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
伽羅
(
きゃら
)
くさき人の
仮寐
(
かりね
)
や
朧月
(
おぼろづき
)
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
もう
子刻
(
ここのつ
)
(十二時)近いでしょう。街は灰を
撒
(
ま
)
いたように鎮まって、
朧月
(
おぼろづき
)
の精のように、ヒラヒラと飛んで来る
花片
(
はなびら
)
。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
の深夜で、
往来
(
ゆきき
)
の人はなく、犬の吠え声がずっと遠くの、露路の方から聞こえて来た。お筒持ちの小身の武士達の長屋町なので、道幅なども狭かった。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その夜は
朧月
(
おぼろづき
)
が麗しかった。五台山の半身をぼかした夜霞が野にかけ銀を
刷
(
は
)
いたような朧をひいていた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わし
)
は
没分暁漢
(
わからずや
)
の一巡査であるが、生理学教室に雛を祭ることにおいて、一石橋の
朧月
(
おぼろづき
)
一片の情趣を会得した甲斐に、
緋緘
(
ひおどし
)
の鎧の袖に山桜の意気の
羨
(
うらやま
)
しさに堪えんで。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし何でも構わない、気が落ちついて
呑気
(
のんき
)
になればいい。それから「
正一位
(
しやういちゐ
)
、女に
化
(
ば
)
けて
朧月
(
おぼろづき
)
」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しばしやどかせ
春
(
はる
)
のゆく
衞
(
ゑ
)
と
舞
(
ま
)
ひくるもみゆ、かすむ
夕
(
ゆふ
)
べの
朧月
(
おぼろづき
)
よに
人顏
(
ひとがほ
)
ほの/″\と
暗
(
くら
)
く
成
(
な
)
りて、
風
(
かぜ
)
少
(
すこ
)
しそふ
寺内
(
じない
)
の
花
(
はな
)
をば
去歳
(
こぞ
)
も
一昨年
(
おとゝし
)
も
其
(
その
)
まへの
年
(
とし
)
も、
桂次
(
けいじ
)
此處
(
こゝ
)
に
大方
(
おほかた
)
は
宿
(
やど
)
を
定
(
さだ
)
めて
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
逢ひ見しは女の
賊
(
すり
)
や
朧月
(
おぼろづき
)
太祇
(
たいぎ
)
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
伽羅
(
きゃら
)
くさき人の仮寝や
朧月
(
おぼろづき
)
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
女
倶
(
ぐ
)
して
内裏
(
だいり
)
拝まん
朧月
(
おぼろづき
)
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
高貴の美女と高貴の美男は、こうして誰にも
累
(
わずら
)
わされず、心ゆくまでその
媾曳
(
あいびき
)
を、
朧月
(
おぼろづき
)
の下辺に続けて行く。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もう
子刻
(
こゝのつ
)
近いでせう。街は灰を
撒
(
ま
)
いたやうに鎭まつて、
朧月
(
おぼろづき
)
の精のやうに、ヒラヒラと飛んで來る花片。
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夢中でぽかんとしているから、もう、とっぷり日が暮れて塀越の花の
梢
(
こずえ
)
に、
朧月
(
おぼろづき
)
のやや
斜
(
ななめ
)
なのが、湯上りのように、薄くほんのりとして
覗
(
のぞ
)
くのも、そいつは知らないらしい。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その間に一刻の余も費やしたと見えて、ぼやっとした
朧月
(
おぼろづき
)
も、いつか江戸城の西の方——
紅葉山
(
もみじやま
)
の襟筋へ隠れかかって、どこともない有明の色が、四林の梢に仰がれて来ました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おやとまた
吃驚
(
びっくり
)
する。次を見ると「花の影、女の影の
朧
(
おぼろ
)
かな」の下に「花の影女の影を
重
(
かさ
)
ねけり」とつけてある。「
正一位
(
しやういちゐ
)
女に化けて
朧月
(
おぼろづき
)
」の下には「
御曹子
(
おんざうし
)
女に化けて朧月」とある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
くもりたる古鏡の如し
朧月
(
おぼろづき
)
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
よき人を宿す小家や
朧月
(
おぼろづき
)
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
引掛
(
ひっかか
)
りそうに
便
(
たより
)
なく
響
(
ひびき
)
が切れて
行
(
ゆ
)
く
光景
(
ありさま
)
なれば、のべの
蝴蝶
(
ちょうちょう
)
が飛びそうな
媚
(
なまめ
)
かしさは無く、荒廃したる不夜城の壁の崩れから、菜畠になった部屋が
露出
(
むきだ
)
しで、怪しげな
朧月
(
おぼろづき
)
めく。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
が空にかかっていた。
四辺
(
あたり
)
が白絹でも張ったように、微妙な色に
暈
(
ぼ
)
かされていた。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
門番は恐ろしく
権柄
(
けんぺい
)
ずくに案内します。千二百石取りの屋敷というにしては場所柄決して広くはありませんが、庭にはもう桜が咲いて、夢見るような
朧月
(
おぼろづき
)
が照らしている風情でした。
銭形平次捕物控:131 駕籠の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
満山
(
まんざん
)
を鳴らして、ゴーッという一
陣
(
じん
)
の松風が、
朧月
(
おぼろづき
)
へ
墨
(
すみ
)
をなすッてすぎさった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何故
(
なぜ
)
ぼうっとしているかというと、あなたの筆が充分に
冴
(
さ
)
えているに
拘
(
かか
)
わらず、あなたの描く景色なり、小道具なりが、
朧月
(
おぼろづき
)
の
暈
(
かさ
)
のように何等か詩的な
聯想
(
れんそう
)
をフリンジに帯びて、其本体と共に
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
船の出るまで
花隈
(
はなくま
)
の
朧月
(
おぼろづき
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
以前
(
いぜん
)
、
牛込
(
うしごめ
)
の
矢來
(
やらい
)
の
奧
(
おく
)
に
居
(
ゐ
)
た
頃
(
ころ
)
は、
彼處等
(
あすこいら
)
も
高臺
(
たかだい
)
で、
蛙
(
かへる
)
が
鳴
(
な
)
いても、たまに
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つに
過
(
す
)
ぎないのが、もの
足
(
た
)
りなくつて、
御苦勞千萬
(
ごくらうせんばん
)
、
向島
(
むかうじま
)
の
三
(
み
)
めぐりあたり、
小梅
(
こうめ
)
の
朧月
(
おぼろづき
)
と
言
(
い
)
ふのを
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
思わず挙げた母の顔、
朧月
(
おぼろづき
)
の中に、倅のそれとピタリと合ったのです。
銭形平次捕物控:078 十手の道
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
修道士
(
イルマン
)
すがたの黒いかたちが、
朧月
(
おぼろづき
)
の大地へほそながく
影
(
かげ
)
をひいた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思はず擧げた母の顏、
朧月
(
おぼろづき
)
の中に、伜のそれとピタリと合つたのです。
銭形平次捕物控:078 十手の道
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
朧月
(
おぼろづき
)
で、生暖かい晩、あんな声を聞かされちゃ全くたまりません」
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人は
毬
(
まり
)
の如く、
朧月
(
おぼろづき
)
の街に飛び出したのです。
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
の影を
砕
(
くだ
)
いて浮きつ沈みつする喜三郎。
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朧月
(
おぼろづき
)
が影を
碎
(
くだ
)
いて浮きつ沈みつする喜三郎。
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
朧月
(
おぼろづき
)
であったよ」
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
朧月
(
おぼろづき
)
であつたよ」
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“朧月”の意味
《名詞》
霞などで霞んでみえる月。
(出典:Wiktionary)
朧
漢検1級
部首:⽉
20画
月
常用漢字
小1
部首:⽉
4画
“朧月”で始まる語句
朧月夜
朧月堂
朧月夜尚侍