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暇
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いとま
ふりがな文庫
“
暇
(
いとま
)” の例文
さて官事の
暇
(
いとま
)
あるごとに、かねておおやけの許しをば得たりければ、ところの大学に入りて政治学を修めんと、名を
簿冊
(
ぼさつ
)
に
記
(
き
)
させつ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「それが、親分さんの信用でございます。あまり遅くなると店の方が面倒になりますから、これでお
暇
(
いとま
)
いたします。それではどうぞ」
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかも、これが動物となると一層吾々人間の注意を惹き易いので、その最も顕著な実例だけでも殆んど枚挙に
暇
(
いとま
)
がないくらいである。
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
美沢が、明朝八時から練習があるので、七時前に起きなければならぬのを思い出して、急に
暇
(
いとま
)
を告げた時は、九時を少し廻っていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
車が迎えに来て、夫妻は
暇
(
いとま
)
を告げた。鼈四郎はこれからどちらへと
訊
(
き
)
くと、夫妻は
壬生寺
(
みぶでら
)
へお
詣
(
まい
)
りして、壬生狂言の見物にと答えた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
それからかれこれ一時間も引き留められたが、
暇
(
いとま
)
を告げる時、お作は
低声
(
こごえ
)
で、「お産の時、きっと来て下さいよ。」と幾度も頼んだ。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
併し、千代子はその上白鳥の正体を見極める
暇
(
いとま
)
もなく、更らに奇怪な、若しくは艶麗なある光景に目をみはらねばなりませんでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「沢庵どの。……今お
暇
(
いとま
)
した丹左でござるが、この先の林の中に、若い者がふたり、樹から落ちて気を失ったまま仆れておりますが」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家事をかえり見る
暇
(
いとま
)
のすけなかった人や、それほどまでに栄達して、世の重き人となろうとは思わなかった人の、軽率な、というより
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
余は某の好意に対して深く感謝の意を表する者なれども、
奈何
(
いかん
)
せん余が現在の苦痛余り劇しくしていまだ永遠の幸福を謀るに
暇
(
いとま
)
あらず。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
今はこれまで、
暇
(
いとま
)
をくれよう、どんな夫を持とうとも、そうなれば
仔細
(
しさい
)
はないと、
穏厚人
(
おんとじん
)
、出方がまことにおとなしい。……もっとも
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ロセスはそれを読むと、たちまち顔色を変え、「暴動がある。」と叫びながらそこそこに
暇
(
いとま
)
を告げて、単騎で智恩院へ駆けつけた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこで、冷かしも、
交
(
ま
)
ぜっ返しも気に掛ける
暇
(
いとま
)
なく、
見栄
(
みえ
)
も
糸瓜
(
へちま
)
も棒に振って、いきなり、お
櫃
(
はち
)
からしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何故かといえば、その度ごとに、私たちは十分の
暇
(
いとま
)
を得た。眺望し観察し散策し撮影もしたのであった。だが、もうこれきりであろう。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
青差
(
あおざし
)
拾貫文
(
じっかんもん
)
御褒美下し置かるゝ有難く心得ませい、
且
(
かつ
)
半右衞門の跡目相続の上、手代萬助は其の方において永の
暇
(
いとま
)
申付けて宜かろう
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鼻に
懸
(
かけ
)
て我々を見下し不孝の事のみ多く其上下女などに
不義
(
ふぎ
)
を
仕懸
(
しかけ
)
何一ツ是ぞと云
取處
(
とりどころ
)
なく
斯樣
(
かやう
)
の者に家を渡す事は
勿論
(
もちろん
)
忠八に
暇
(
いとま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
事柄の内容のみならずその文章の字句までも、古典や雑書にその典拠を求むれば一行一行に枚挙に
暇
(
いとま
)
がないであろうと思われる。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
最後に居残ったランジェも
暇
(
いとま
)
をつげて、
仄
(
ほの
)
暗くなった廊下へ出ると、マダム・ヴァンクールがそっと追かけて来て早口にいった。
ふみたば
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
午後私は車に乗つて本郷へ行つた。
生田
(
いくた
)
さんへ最初に行つたが生田さんはお留守であつた。奥様とお話して一時間程でお
暇
(
いとま
)
した。
六日間:(日記)
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
自分が今催促されて参入する
気忙
(
きぜわ
)
しさに、思慮分別の
暇
(
いとま
)
も無く、よしよし、さらば此の石帯を貸さんほどに
疾
(
と
)
く疾く
主人
(
あるじ
)
が
方
(
かた
)
にもて行け
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうして二、三時間も、無駄話を、していたでしょうか? さ、随分長話をしてしまった、ソロソロお
暇
(
いとま
)
しようかねと、坐り直した途端
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「髪や着物などはかまいませぬ、あのお君が帰って来さえすれば、直ぐにお
暇
(
いとま
)
をして屋敷へ帰りたい、早くあの子へ沙汰をして」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
多くの子どもや長年添うた夫を明るい世にのこし、両親が会いにくるにも間に合わないで永久の暗に沈まんとする、最後を嘆く
暇
(
いとま
)
もない。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
山百合
(
やまゆり
)
は花終らば根を掘りて乾ける砂の
中
(
なか
)
に入れ置けかし。あれはかくせよ。これはかうせよと
終日
(
ひねもす
)
襷
(
たすき
)
はづす
暇
(
いとま
)
だになかりけり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
あたりはいつか薄暗くなって、もう晩の支度にも取りかかる時刻であるから、お光はお仙の帰ったのを
機
(
しお
)
に
暇
(
いとま
)
を告げたのである。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それは一時間も、一秒間も待たずに、自分でこの世の
暇
(
いとま
)
を取る事である。それなら、病気で死ぬるのを待つより、少しは男らしいだろう。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「はいはい有難うございますが、いえそうしてもおられません、そろそろお
暇
(
いとま
)
を致さねば……痛、痛、痛! また差し込みが!」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これ
等
(
ら
)
の件々は
逐一
(
ちくいち
)
計
(
かぞ
)
うるに
暇
(
いとま
)
あらず。
到底
(
とうてい
)
上下両等の士族は
各
(
おのおの
)
その等類の内に
些少
(
さしょう
)
の
分別
(
ぶんべつ
)
ありといえども、動かすべからざるものに非ず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかもそはそはしたB達はそれ以上言葉を交す
暇
(
いとま
)
を持つてゐなかつた。その行くべき
方
(
はう
)
へと各自に行かなければならなかつた。
犬
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
それから四時過ぎやや日蔭の出来るのを待って、九州ホテルに
暇
(
いとま
)
を告げ、
園
(
その
)
さんと共に島原に
下
(
くだ
)
った。
然
(
しか
)
しそれは雲仙と別れたのではない。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
「あなたが頭がわるい頭がわるいとおっしゃるなら、僕はもうお
暇
(
いとま
)
いたします。それではお相手をしてもなんにもなりません」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
畑
(
はたけ
)
の
作主
(
さくぬし
)
が
其
(
その
)
損失
(
そんしつ
)
以外
(
いぐわい
)
にそれを
惜
(
をし
)
む
心
(
こゝろ
)
から
蔭
(
かげ
)
で
勢
(
いきほ
)
ひ
激
(
はげ
)
しく
怒
(
おこ
)
らうともそれは
顧
(
かへり
)
みる
暇
(
いとま
)
を
有
(
も
)
たない。
勘次
(
かんじ
)
の
痩
(
や
)
せた
茄子畑
(
なすばたけ
)
もさうして
襲
(
おそ
)
はれた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
われも
暇
(
いとま
)
あらば共にこそ往かまほしけれ。ヱズヰオに登らんは
煩
(
わづら
)
はしけれど、ポムペイの發掘の近状を見んこと面白かるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
突然
暇
(
いとま
)
を告げて、そしてぼんやり
自宅
(
いえ
)
に帰った。かれは
眩暈
(
めまい
)
のするような高いところに立っていて、深い谷底を見
下
(
お
)
ろすような
心地
(
ここち
)
を感じた。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
御機嫌
(
ごきげん
)
に
違
(
ちが
)
ひたらば
夫
(
そ
)
れまでとして
遊
(
あそ
)
びの
代
(
かは
)
りのお
暇
(
いとま
)
を
願
(
ねが
)
ひしに
流石
(
さすが
)
は
日頃
(
ひごろ
)
の
勤
(
つと
)
めぶりもあり、一日すぎての
次
(
つぎ
)
の
日
(
ひ
)
、
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
きて
早
(
はや
)
く
歸
(
かへ
)
れと
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
伝蔵も
長
(
なが
)
の
暇
(
いとま
)
となるべきであったが、六年も勤め通した者でもあり、小才覚もあって何かの役にも立つので、これはそのままに残して置いた。
半七捕物帳:61 吉良の脇指
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
では、アイス・クリームの溶けぬうちに、そろそろお
暇
(
いとま
)
いたします。はなはだ勝手でございますが、これで失礼させていただきとう存じます。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
好機
逸
(
いっ
)
すべからずとて、
遂
(
つい
)
に母上までも
欺
(
あざむ
)
き参らせ、親友の招きに応ずと言い
繕
(
つくろ
)
いて、一週間ばかりの
暇
(
いとま
)
を乞い、翌日家の
軒端
(
のきば
)
を立ち
出
(
い
)
でぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
母が答へる
暇
(
いとま
)
のない中に父は足早に家の方へ行つてしまひ私は
朝貌
(
あさがほ
)
の
蔓
(
つる
)
を手に持つたなりで
惘然
(
ぼんやり
)
とあとを見送つて居り升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
朗かな談笑の笑声さえ漏れていた。酒だけが楽しみのような一松斎の頬に、赤い血の色が、ぼうっと上る頃、雪之丞は、
暇
(
いとま
)
を告げようとした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
早々にお
暇
(
いとま
)
しましたが、帰りしなに勝手へ出て女中に聞きましたら、「行くなとおっしゃるのに、お出かけになったのです」
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
するとこの時何者かが矢庭に背後から彼を引っつかむと、彼が抗う
暇
(
いとま
)
もなく兇暴なる腕は、彼の首をしめつけたまま忽ち壁に向って押し戻した。
絵姿:The Portrate of Dorian Gray
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オスカー・ワイルド
(著)
「では、くれぐれもお大事にね」と彼女は、
暇
(
いとま
)
を告げる彼を見送って
蝋燭
(
ろうそく
)
を手に階段のところまで出ながら言うのだった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
阿房
(
たわけ
)
ものめが。
好
(
よ
)
いわ。今この世の
暇
(
いとま
)
を取らせる事じゃから、たった一
度
(
ど
)
本当の生活というものを
貴
(
とうと
)
ばねばならぬ事を、
其方
(
そち
)
に教えて遣わそう。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
一、幼少の折、学校で学問の大事なことを
聴
(
き
)
いて、よし学者にならなくとも、勉学読書は
暇
(
いとま
)
あるごとに
怠
(
おこた
)
るまいと思った。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかし前から
下調
(
したしらべ
)
をしておくような
暇
(
いとま
)
が無かったのだから、何事もその
意
(
つもり
)
で聞いて貰わなければならない。あるには有る。例えば
羅馬
(
ローマ
)
という国だ。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
お
暇
(
いとま
)
を貰つて大阪へ下ると云ひますからコイツ変な奴だと思ひまして、無理に座敷へ上らせ酒を呑ませて酔つた時分に、根掘り葉掘り問ひますと
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
斯
(
こ
)
の時に
方
(
あた
)
つて、天下岌岌、生民死を救うて
暇
(
いとま
)
あらず、士大夫乃ち流宕
此
(
かく
)
の如し。歎ずべけんや。或は無聊の故に出づるか。(渭南文集、巻三十)
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
其の不快を極むるところの一路なるをも忌み
厭
(
きら
)
ふに
暇
(
いとま
)
あらずして渠身不相応なる大船の数々出入するに徴して知るべし。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
すると私が心の中で、はっと思う
暇
(
いとま
)
さえなく、今まで息もしなかった菰だれの向うの摩利信乃法師が、たちまち身を起したらしいけはいを見せて
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
暇
常用漢字
中学
部首:⽇
13画
“暇”を含む語句
休暇
暇乞
御暇
御暇乞
閑暇
暇潰
余暇
御閑暇
御暇被下
暑中休暇
御暇下
賜暇
寸暇
暇取
暇々
手間暇
夏休暇
此暇
暇人
餘暇
...