昼過ひるす)” の例文
旧字:晝過
ちょうど、その昼過ひるすぎごろでありました。おつは、かおをあげて、おきほうますと、まごうかたなき、なつかしいふね姿すがたました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この妻親里へ行きたる間に、糸蔵という五六歳の男の病気になりたれば、昼過ひるすぎより笛吹峠を越えて妻を連れに親里へ行きたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
潜門くゞりもん板屋根いたやねにはせたやなぎからくも若芽わかめの緑をつけた枝をたらしてゐる。冬の昼過ひるすひそかに米八よねはちが病気の丹次郎たんじらうをおとづれたのもかゝる佗住居わびずまひ戸口とぐちであつたらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「ああ、それなら村へ行った。昼過ひるすぎでなければ帰るものか」
ふゆは、昼過ひるすぎになると、きゅうひかりがうすくなるのでした。のこったすすきの黄色きいろくなって、こんもりとなか一所ひとところしげっていました。
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
空には朝も昼過ひるすぎも夕方ゆふがたも、いつでも雲が多くなつた。雲はかさなり合つて絶えず動いてゐるので、時としてはわづかに間々あひだ/\殊更ことさららしく色のい青空の残りを見せて置きながら、そら一面におほかぶさる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「おばあさん、いよいよ明日あす昼過ひるすぎごろ、東京とうきょうへきますよ。サイレンがったら、そとをのぞいてごらんなさい。」と、子供こどもたちはいいました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
ついに、その昼過ひるすぎのころ、らない、野原のはらのはてにたどりついて、どっかりとくさうえたおれて、つかれきったからだしたのでした。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
白壁しらかべ土蔵どぞうがあったり、たかやぐらのっているむらをもぎました。そして、翌日よくじつ昼過ひるすぎには、故郷こきょうちか停車場ていしゃばくのでありました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼過ひるすぎごろ、百しょうはそのまちきました。そして、すぐにそのいちっているところへ、うしいていきました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるところに、四つばかりのかわいらしいおんながありました。毎日まいにち昼過ひるすぎになると、いつのまにか、おおきなげたをはいて、おうちからぬけしました。
黒いちょうとお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、なつ昼過ひるすぎのことであります。おきゃく一人ひとりもなかったので、おじいさんは、居眠いねむりをしていました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、昼過ひるすぎから、あめがぽつぽつとたってきたのだったが、おかあさんは、いつまでも、自分じぶん番組ばんぐみのすむまでは、かえろうともされずにっていられた。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
このごろ毎日まいにちのように昼過ひるすぎになると、くろいちょうがにわ花壇かだんいているゆりのはなへやってきます。
黒いちょうとお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼過ひるすぎになると、そらがすこしくもりました。そして、かぜさむくなって、さらさらとゆきちてきました。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
ずっと、昼過ひるすぎのころ、あおたまのついたかんざしをさして、さんごのくつをはいたとおもわれる、あしをしたおんなが、荷物にもつをしょって、いえまえとおったのであります。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼過ひるすぎには、どの山々やまやまも、うしろにとおくなって、故郷こきょうをはるばるとはなれたという心持こころもちがしました。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらの山々やまやまには、しろゆきがきていました。昼過ひるすぎに、トラックは、ちいさなさびしいまち問屋とんやまえまりました。問屋とんやひとたちがてきて、荷物にもつろしました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その昼過ひるすぎから、おきほうれて、ひじょうな吹雪ふぶきになりました。よるになると、ますますかぜつのって、おきほうにあたってあやしい海鳴うみなりのおとなどがこえたのであります。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうかいのご隠居いんきょが、取引所とりひきじょで、しろおとこがみんなのなかじって見物けんぶつしていたといわれました。それで、昼過ひるすぎからのかぶがたいへんにがって、大騒おおさわぎだったそうですよ。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なつ昼過ひるすぎでありました。三郎さぶろうともだちといっしょに往来おうらいうえあそんでいました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はらっぱは、はげしいあつさでしたけれど、昼過ひるすぎになるとかぜて、くさはきらきらとひかっていました。昨日きのうは、たくさんあめったので、まだくぼんだところへ、みずがたまっています。
風船虫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼前ひるまえに、おきゃくさまがあって、おかえりなされると、もうおひるですし、昼過ひるすぎに仕事しごとをしかけますと、としちゃんがかえってきて、そして、あそびにて、ころんできましたので、お洗濯せんたくをしてやりました。
さびしいお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、その昼過ひるすぎには、小包こづつみ宛名あてないえ配達はいたつされました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)