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斃
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たふ
ふりがな文庫
“
斃
(
たふ
)” の例文
猫は額を射られて、後ろ足で
衝立
(
つゝた
)
ち上つて、二三度きりきり舞をしてゐたが、その儘ばたりと
斃
(
たふ
)
れて、辞世も何も
咏
(
よ
)
まないで死んでしまつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それから両人は互に文通して、励まし合つてゐたが、
幾
(
いくばく
)
も無くスタインホイザアが
瑞西
(
スイス
)
のベルンで
卒中
(
そつちう
)
で
斃
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
リチャード・バートン訳「一千一夜物語」に就いて
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
〔譯〕此の學は吾人一生の
負擔
(
ふたん
)
、
當
(
まさ
)
に
斃
(
たふ
)
れて後に
已
(
や
)
むべし。道固より窮り無し。堯舜の上、善盡くること無し。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
有志之士、
不堪杞憂
(
きいうにたへず
)
、
屡
(
しば/\
)
正論
讜議
(
たうぎ
)
すと雖、雲霧
濛々
(
もう/\
)
、
毫
(
がう
)
も採用せられず。
乃
(
すなは
)
ち断然
奸魁
(
かんくわい
)
を
斃
(
たふ
)
して、朝廷の反省を促す。下情
壅塞
(
ようそく
)
せるより起ると云ふは
即是也
(
すなはちこれなり
)
。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
お勝手の
水甕
(
みづがめ
)
——早支度をするので飯炊きの權三郎が前の晩からくみ込んで置いた水の中には、馬を三十匹も
斃
(
たふ
)
せるほどの恐ろしい毒が仕込んであつたのです。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
此の山は
九四
大徳
(
だいとこ
)
の
啓
(
ひら
)
き給うて、
土石草木
(
どせきさうもく
)
も
九五
霊
(
れい
)
なきはあらずと聞く。さるに
九六
玉川の
流
(
なが
)
れには毒あり。人飲む時は
斃
(
たふ
)
るが故に、大師のよませ給ふ歌とて
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
晴
(
はら
)
す其爲に
刄
(
やいば
)
を振つて
仇
(
あだ
)
を
斃
(
たふ
)
す實に見上げたる
和女
(
そなた
)
が
心底
(
しんてい
)
年まだ
二十歳
(
はたち
)
に足らざる少女の爲可き
業
(
わざ
)
にはあらざりける男
勝
(
まさり
)
の
擧動
(
ふるまひ
)
こそ親
恥
(
はづか
)
しき
天晴
(
あつぱれ
)
女然れども人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
人目
(
ひとめ
)
に
附易
(
つきやす
)
き
天井裏
(
てんじやうゝら
)
に
掲
(
かゝ
)
げたる
熊手
(
くまで
)
によりて、一
年
(
ねん
)
若干
(
そくばく
)
の
福利
(
ふくり
)
を
掻
(
か
)
き
招
(
まね
)
き
得
(
う
)
べしとせば
斃
(
たふ
)
せ/\の
数
(
かず
)
ある
呪
(
のろ
)
ひの
今日
(
こんにち
)
に
於
(
おい
)
て、そは
余
(
あま
)
りに
公明
(
こうめい
)
に
失
(
しつ
)
したるものにあらずや
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
されどもその一旦の
憤
(
いきどほり
)
は、これを斥けしが為に消ゆるにもあらずして、その必ず得べかりし物を失へるに似たる
怏々
(
おうおう
)
は、吾心を
食尽
(
はみつく
)
し、
終
(
つひ
)
に吾身を
斃
(
たふ
)
すにあらざれば
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
頭が空虚になると同時に
斃
(
たふ
)
れると云ふ話だが、われ/\作家は、みんな「金脳の人」なのだ。
差押へられる話
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
また慾に
渇
(
かわ
)
いて
因業
(
いんごふ
)
な
世渡
(
よわたり
)
をした老婆もあツたらう、それからまた
尚
(
ま
)
だ赤子に乳房を
啣
(
ふく
)
ませたことの無い
少婦
(
をとめ
)
や胸に
瞋恚
(
しんい
)
のほむらを燃やしながら
斃
(
たふ
)
れた醜婦もあツたであらう。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
其
(
そ
)
の
頃
(
ころ
)
の
腹
(
はら
)
が一
番
(
ばん
)
危險
(
きけん
)
だといはれて
居
(
ゐ
)
る
如
(
ごと
)
くお
品
(
しな
)
はそれが
原因
(
もと
)
で
斃
(
たふ
)
れたのである。
胎兒
(
たいじ
)
は四
月
(
つき
)
一
杯
(
ぱい
)
籠
(
こも
)
つたので
兩性
(
りやうせい
)
が
明
(
あきら
)
かに
區別
(
くべつ
)
されて
居
(
ゐ
)
た。
小
(
ちひ
)
さい
股
(
また
)
の
間
(
あひだ
)
には
飯粒程
(
めしつぶほど
)
の
突起
(
とつき
)
があつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
或る物は手にて
直
(
ただち
)
に
握
(
にぎ
)
りしなるべく、或る物には
柄
(
つか
)
を
括
(
くく
)
り付けしならん。
使用
(
しよう
)
の目的は
樹木
(
じゆもく
)
を
扣
(
たた
)
き
切
(
き
)
り、木材を扣き割り、
木質
(
ぼくしつ
)
を
刳
(
けづ
)
り取り、
獸
(
じう
)
を
斃
(
たふ
)
し、
敵
(
てき
)
を
傷
(
きづつ
)
くる等に在りしと思はる。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
彼は
寧
(
むし
)
ろどこまでも自分の道を求めて、追うて、やがて
斃
(
たふ
)
るゝべきである。そしてまた彼の子供もやがては彼の年代に達するであらう、さうして彼の死から沢山の真実を学び得るであらう——
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
曾
(
か
)
つて之を争ひしが為めにワルレンスタインは悲苦の境界に
沈淪
(
ちんりん
)
したり。マクベスは間接に道徳に抵触したる所業をしたり。天神記の松王は我愛子を殺したり。娘節用の小三は義利の刀に
斃
(
たふ
)
れたり。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
彼は起き上り、そして自分を捕へに来た者を再び蹴らうと足を上げた時、「助けてやらう。お
慈
(
なさ
)
けだ!」と云ふ声が後ろにして、刀が背中から彼の胸を突き抜いた。彼は足を宙に上げたまゝ
斃
(
たふ
)
れた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
また、高窻の
鬱金香
(
うこんかう
)
。かげに
斃
(
たふ
)
るる
白牛
(
しろうし
)
の
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
おれは
思
(
おも
)
ふ、
斃
(
たふ
)
されたふたりの
同志
(
どうし
)
を
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
自らまた力尽きて
斃
(
たふ
)
れる
旱魃
(
かんばつ
)
の河!
象徴の烏賊
(新字旧仮名)
/
生田春月
(著)
僕の知人は震災の為めに何人もこの
界隈
(
かいわい
)
に
斃
(
たふ
)
れてゐる。僕の妻の親戚などは男女九人の家族中、やつと命を
全
(
まつた
)
うしたのは
二十
(
はたち
)
前後の
息子
(
むすこ
)
だけだつた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
案じゐるよし
確
(
たしか
)
に知たる忠相ぬし
獨
(
ひと
)
りつく/″\思ふ樣お光は
奇才
(
きさい
)
容貌
(
ようばう
)
とも人に
勝
(
すぐ
)
れし
耳
(
のみ
)
ならず武士の
眞意
(
しんい
)
を能く
辨
(
わきま
)
へ
白刄
(
しらは
)
を
揮
(
ふる
)
つて仇を
斃
(
たふ
)
すに其父もまた
清廉
(
せいれん
)
にて是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
オリイヴ・シユライナア女史の書いたものに、その製作のために段々痩せ衰へる画家があつた。
画
(
ゑ
)
の色はこの世のものとも思へぬ程朱に燃えてゐた。画家はやがて製作の前に
斃
(
たふ
)
れた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
二十二年の十月発行の
廿
(
にぢう
)
七号を
終刊
(
しうかん
)
として、
一方
(
いつぱう
)
には
都
(
みやこ
)
の
花
(
はな
)
が有り、
一方
(
いつぱう
)
には
大和錦
(
やまとにしき
)
が有つて、いづれも
頗
(
すこぶ
)
る
強敵
(
きやうてき
)
、
吾
(
わ
)
が
版元
(
はんもと
)
も
苦戦
(
くせん
)
の
後
(
のち
)
に
斃
(
たふ
)
れたのです、
然
(
しか
)
し、十一月に
又
(
また
)
吉岡書籍店
(
よしをかしよじやくてん
)
の
催
(
もよふし
)
で
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
野
(
の
)
に赤き
駒
(
こま
)
は
斃
(
たふ
)
れむ。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
サア・オルコツクは、
徳川幕府
(
とくがはばくふ
)
の
末年
(
まつねん
)
に日本に
駐剳
(
ちうさつ
)
した、イギリスの特命全権公使である。その日本駐剳中には、
井伊大老
(
ゐいたいらう
)
も
桜田門外
(
さくらだもんぐわい
)
で
刺客
(
せきかく
)
の手に
斃
(
たふ
)
れてゐる。
日本の女
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
取出し
與
(
あた
)
へければ犬は尾を
振
(
ふり
)
悦
(
よろこ
)
び
喰居
(
くひゐ
)
るを
首筋
(
くびすぢ
)
を
掴
(
つか
)
んで
曳
(
えい
)
やつて
投
(
なげ
)
つけ起しも
立
(
たゝ
)
ず用意の
小刀
(
こがたな
)
を取出し
急所
(
きふしよ
)
をグサと
刺通
(
さしとほ
)
せば犬は敢なく
斃
(
たふ
)
れたり寶澤は
謀計
(
はかりごと
)
成りと犬の血を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それ等の絵には
義和団
(
ぎわだん
)
の
匪徒
(
ひと
)
や
英吉利
(
イギリス
)
兵などは
斃
(
たふ
)
れてゐても、日本兵は一人も斃れてゐなかつた。僕はもうその時にも
矢張
(
やは
)
り日本兵も
一人位
(
ひとりくらゐ
)
は死んでゐるのに違ひないと思つたりした。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
斃
漢検1級
部首:⽁
18画
“斃”を含む語句
斃死
射斃
斃馬
斃鼠
共斃
双斃
噬斃
打斃
斃死者
相斃
行斃