打消うちけ)” の例文
『戀塚とは餘所よそながらゆかしき思ひす、らぬまへの我も戀塚のあるじなかばなりし事あれば』。言ひつゝ瀧口は呵々から/\と打笑へば、老婆は打消うちけ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
吾等われら叫聲さけびごゑたちま怒濤どたうひゞき打消うちけされてしまつたが、たゞる、黒暗々こくあん/\たるはるか/\のおきあたつて、一點いつてん燈光とうくわうピカリ/\。
さりながらおうかげをもとゞめざるときだに、いとふべき蛇喰へびくひおもいださしめて、折角せつかく愉快ゆくわい打消うちけされ、掃愁さうしうさけむるは、各自かくじともなをさなもの唱歌しやうかなり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私には如何どうしてもそれが冗談として打消うちけされない、矢張やはり何か一種の神秘作用としか思われないのである
頭上の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
そんなつまらぬかんがえ打消うちけすと、結局けっく夢中にそんな所も過ぎるので、これまことによいことだと自分は思う。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
串戯じやうだんツちやいけぬとおもひながら『一個ひとつ千兩せんれうでもふよ』とわらふてこたへると、親分おやぶんがそれを打消うちけして。
打消うちけし忠兵衞はいやさうでは有ますまいかくほどあらはるゝと申如く尚々なほ/\あやしき事にこそさりながら今迄まつた後家暮ごけくらしにて居られしならば少しは何かの御相談相手ごさうだんあひて昔馴染むかしなじみ甲斐かひだけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不安ふあん段々だん/\あがつてた。それ打消うちけさうとするそばから、「あの始終しゞうひと顔色かほいろんでゐるやうなそこには、何等なんらかの秘密ひみつひそんでゐるにちがひない。」と私語さゝやくものがある。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
が、不思議ふしぎなもので、だんだん修行しゅぎょうむにつれて、ドーやら情念こころ発作ほっさ打消うちけしてくのが上手じょうずになるようでございます。それがつまり向上こうじょうなのでございましょうかしら……。
重力を打消うちけ仕掛しかけが、あの砲弾の中にあるのだ。これはわしの発明ではなく、もう十年も前になるが、アメリカの学者が、ピエゾ水晶片すいしょうへんを振動させて、油の中に超音波ちょうおんぱを伝えたのだ。
なんでとがめるもんか」勘次かんじ抑制よくせいしたあるもの激發げきはつしたやうにすぐ打消うちけした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是は下の児の答えが当らなかった場合に、それを打消うちけして「三本! 何本」とたたみかけて問う言葉ともみられるが、一本も出さずに握り拳で出すことを、零本れいぼんというのは少し出来過できすぎている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『まァ、それはかく福鼠ふくねずみふには——』と帽子屋ばうしやつゞけて、しや打消うちけされはしないかと、心配しんぱいさうに四邊あたり見廻みまはしましたが、福鼠ふくねずみ打消うちけすどころか、もうとツくに熟睡ねこんでました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
をとこは、自分じぶんくちから言出いひだしたことで、おもひもけぬ心配しんぱいをさせるのをどくさうに、なか打消うちけ口吻くちぶり
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくし單獨ひとりさけんでた。いてかゝ妄念まうねん打消うちけさんとてわざ大手おほてつて甲板かんぱんあゆした。
美人びじんは、團扇うちは敷居しきゐかへして、ふいと打消うちけすらしく、ときふやう。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
無論むろん此樣こん妄想もうざうは、平生いつもならばもなく打消うちけされるのだが、今日けふ先刻せんこくから亞尼アンニーが、だのこくだのとつた言葉ことばや、濱島はまじま日頃ひごろ氣遣きづかはしなりし樣子やうすまでが、一時いちじこゝろうかんで