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悔
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くい
ふりがな文庫
“
悔
(
くい
)” の例文
彼は
懺悔文
(
さんげもん
)
の一札を手にして、いくらかの不平をさへ感じた——もつとも彼は妻の葬儀の時、妻に対していくらかの
悔
(
くい
)
と
憐憫
(
れんびん
)
は感じた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
頑固一
徹
(
てつ
)
なやうでも、その爲に美しく育つた十九の娘を、非業に死なせた
悔
(
くい
)
のやうなものが、
犇々
(
ひし/\
)
と老ひの胸をしめ付けるのです。
銭形平次捕物控:163 閉された庭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
基地隊の方に向って、うなだれて私は帰りながら、美しく生きよう、死ぬ時は
悔
(
くい
)
ない死に方をしよう、その事のみを思いつめていた。——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
真葛
(
まくず
)
が
原
(
はら
)
に
女郎花
(
おみなえし
)
が咲いた。すらすらと
薄
(
すすき
)
を抜けて、
悔
(
くい
)
ある高き身に、秋風を
品
(
ひん
)
よく
避
(
よ
)
けて通す心細さを、秋は
時雨
(
しぐれ
)
て冬になる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
悔
(
くい
)
の
刺草
(
いらくさ
)
いたく我を刺ししかば、すべてのものの中にて最も深く我を迷はしわが愛を惹けるものわが最も
忌嫌
(
いみきら
)
ふものとはなりぬ 八五—八七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
柳吉は反対側の
壁
(
かべ
)
にしがみついたまま
離
(
はな
)
れず、口も利けなかった。お
互
(
たが
)
いの心にその時、えらい駈落ちをしてしまったという
悔
(
くい
)
が
一瞬
(
いっしゅん
)
あった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
それが出来ないなら、むしろ、「
褐
(
かつ
)
(
粗衣
(
そい
)
)を
被
(
き
)
て玉を
懐
(
いだ
)
く」という生き方が好ましい。
生涯
(
しょうがい
)
孔子の番犬に終ろうとも、いささかの
悔
(
くい
)
も無い。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
別
(
べつ
)
に
苦
(
く
)
にもならず
總
(
すべ
)
てを
義母
(
おつかさん
)
にお
任
(
まかせ
)
して
茶
(
ちや
)
ばかり
飮
(
の
)
んで
内心
(
ないしん
)
一の
悔
(
くい
)
を
懷
(
いだ
)
きながら
老人夫婦
(
としよりふうふ
)
をそれとなく
觀察
(
くわんさつ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
名はいはざるべし、
悔
(
くい
)
ある堕落の
化身
(
けしん
)
を母として、
明
(
あか
)
らさまに世の
耳目
(
じもく
)
を
惹
(
ひ
)
かせんは、子の行末の為め、決して
好
(
よ
)
き事にはあらざるべきを思うてなり。
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
また日が暮れて一日の
悔
(
くい
)
と悲しみが心に殘るやうに、日が暮れて希望や計畫が明日といふ日に殘るやうに、三十三といふ年に於いて三十四といふ年を思ひ
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
もう自分には何の
縁
(
ゆかり
)
もなくなった遠い前世の夢が、
悔
(
くい
)
もなく、ただ遥かな想い出のように
蘇
(
よみがえ
)
って来るのです。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
なぜならその言葉は、再度来ない青春の日の楽しさを、
空
(
むな
)
しく
仇
(
あだ
)
にすごすことによって、老年の日の
悔
(
くい
)
を残すなという意味を、逆説的に哲学しているからである。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
されば彼らはまず間接にこの事を暗示して、ヨブをしてその理由を認めて
悔
(
くい
)
改
(
あらた
)
めしめんとしたのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それはある
場合
(
ばあひ
)
、ある
心
(
こゝろ
)
の
状態
(
じやうたい
)
の時には、さういふことも考へないではなかつたけれど、
離婚
(
りこん
)
をもつてその
悔
(
くい
)
を
償
(
つぐな
)
ふものだとは
決
(
けつ
)
して思はなかつたらうと思ひます。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
それどころか、当今、戦国の雄といわれる
侍
(
さむらい
)
大将が、畜生の百倍もひどいことをして、なんの
悔
(
くい
)
もなく、後生安楽な月日をゆったりと送れるというのはなぜであろう。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
烈々たる炎の
如
(
ごと
)
き感情の動くまゝに、その短生を、火花の如く散らし去った彼女の勝気な魂は、恐らく何の
悔
(
くい
)
をも
懐
(
いだ
)
くことなく
縹渺
(
ひょうびょう
)
として天外に飛び去ったことだろう。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
悔
(
くい
)
の
八千度
(
やちたび
)
その甲斐もなけれど、
勿躰
(
もつたい
)
なや父祖累代
墳墓
(
みはか
)
の地を捨てゝ、養育の恩ふかき伯母君にも
背
(
そむ
)
き、我が名の珠に恥かしき
今日
(
けふ
)
、親は
瑕
(
きず
)
なかれとこそ名づけ給ひけめ
雪の日
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
悔
(
くい
)
というかたちもないものの中へ押込めてしまって、長い一生を、
凝
(
じ
)
っと、
消
(
きえ
)
てしまった故人の、恋心の中へと
突
(
つき
)
進めてゆかせようとするのを、私は何とも形容することの出来ない
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
由三はブラ下げてゐる肖像畫の
重
(
おも
)
みが腕にこたへて來て、幾度か捨て了ふか、さらずば子供にでも呉れて了はうかと思ツた。で今更なけなしの錢をはたいて購ツたのが
悔
(
くい
)
られもする。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
然らずんば臣
愚
(
ぐ
)
おもえらく十年を待たずして必ず
噬臍
(
ぜいせい
)
の
悔
(
くい
)
あらん、というに
在
(
あ
)
り。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
内省した自我の上に不充実と不満足との
悔
(
くい
)
を招くに到ることを言うのである。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「もしこたび女を呼ばうようなことがあれば、そちは免官になり女も
倉住居
(
くらずまい
)
をせねばならぬのだ、神をおそれぬそちは、間もなく神の名で足なえか、眼しいになって
悔
(
くい
)
をのこすだろうに。」
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
いつかゆっくり会って、
御蔭
(
おかげ
)
で重役になり損ねましたと言おうか、御蔭様で生涯没頭して
悔
(
くい
)
ない面白い仕事にありつきましたと言おうかと思っているうちに、その人はもう亡くなってしまった。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「ロボットを学べ、鈴木金作。したい事をして、
悔
(
くい
)
を感じない人生。」
ロボットとベッドの重量
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
(右の方に向き、耳を
聳
(
そばだ
)
てて聞く様子にて立ちおる。)何だか
年頃
(
としごろ
)
聞きたく思っても聞かれなかった
調
(
しらべ
)
ででもあるように、身に沁みて聞える。
限
(
かぎり
)
なき
悔
(
くい
)
のようにもあり、限なき希望のようにもある。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
ト、
悔
(
くい
)
の
八千度百千度
(
やちたびももちたび
)
、眼を釣りあげて
悶
(
もだ
)
えしが。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
悔
(
くい
)
と死と真黒に
噎
(
むせ
)
ぶ血の底に歯を噛みながら
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ねたみや、
悔
(
くい
)
や、
丹
(
に
)
の雨、
瑠璃
(
るり
)
のあらし
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
悔
(
くい
)
も無く、
望
(
のぞみ
)
も無く、
怖
(
おそ
)
るる所も無く。
失楽
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
きし
方
(
かた
)
の
悔
(
くい
)
をもて
築
(
きづ
)
きたる此
小舍
(
こや
)
は
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ひそかに胸にやどりたる
悔
(
くい
)
あり
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
春宵
(
しゅんしょう
)
をあだに過ぎなば
悔
(
くい
)
あらん
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
悔
(
くい
)
も
望
(
のぞみ
)
も消えうせつ
カンタタ
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
僕の
頭
(
ヘッド
)
は僕の
胸
(
ハート
)
を
抑
(
おさ
)
えるためにできていた。行動の結果から見て、はなはだしい
悔
(
くい
)
を
遺
(
のこ
)
さない過去を
顧
(
かえり
)
みると、これが人間の常体かとも思う。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お慈悲で御座います。御情で御座います。たった一言
宥
(
ゆる
)
すと仰しゃって下さいまし。師よ、わたくしは
悔
(
くい
)
に虐まれて、息が詰りそうなので御座います。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
名はいわざるべし、
悔
(
くい
)
ある堕落の
化身
(
けしん
)
を母として、
明
(
あか
)
らさまに世の
耳目
(
じもく
)
を
惹
(
ひ
)
かせんは、子の
行末
(
ゆくすえ
)
のため、決して
好
(
よ
)
き事にはあらざるべきを思うてなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
八五郎をからかひ過ぎて、うつかり出動を遲らせた爲に、亡者に先手を取られた、淡い
悔
(
くい
)
を感じて居るのでせう。
銭形平次捕物控:203 死人の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
若し夫れ涙をそゝぐ
悔
(
くい
)
の
負債
(
おひめ
)
を
償
(
つぐの
)
はざるものレーテを渡りまたその水を味ふをうべくば 一四二—一四四
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
『
何故
(
なぜ
)
「ビールに
正宗
(
まさむね
)
……」の
其
(
その
)
何
(
いづ
)
れかを
買
(
か
)
ひ
入
(
い
)
れなかつたらう』といふが
一
(
ひとつ
)
の
悔
(
くい
)
である。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
些細
(
ささい
)
な感情などに動かされて、利害を忘れ、長き
後
(
のち
)
の
悔
(
くい
)
を残すと——けれど、もしそういう人があったならば、わたしは誇らしく
面
(
おもて
)
をあげていうであろう。冷徹な理性の人にも失敗はある。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
巍幸にして天下の為に死し、太祖在天の霊に
見
(
まみ
)
ゆるを得ば、巍も亦以て
愧
(
はじ
)
無かるべし。巍至誠至心、直語して
諱
(
い
)
まず、尊厳を
冒涜
(
ぼうとく
)
す、死を賜うも
悔
(
くい
)
無し、願わくは大王今に於て再思したまえ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その女は自ら恥と
悔
(
くい
)
とを覚えるばかりでなく、淑女たる資格なき者として社会から
擯斥
(
ひんせき
)
せられても涙を
呑
(
の
)
んで忍ぶより外はない。進んで貞淑な人の妻となる資格に欠けた所のあるのは勿論である。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
神よなんじは砕けたる
悔
(
くい
)
しこころを
藐
(
かろ
)
しめたまうまじ。
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
強い
悔
(
くい
)
が、彼女の心を苛んでゐることを示してゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
悔
(
くい
)
と
夜
(
よ
)
のなげかひを
懇
(
ねもごろ
)
に
通夜
(
つや
)
し見まもる。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
孰
(
いづ
)
れか
缺
(
か
)
けゆく
悔
(
くい
)
のあわだつとき
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
きし
方
(
かた
)
の
悔
(
くい
)
をもて築きたる此
小舎
(
こや
)
は
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
悔
(
くい
)
もなく
誇
(
ほこり
)
もなくて子規忌かな
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
人を
傷
(
きずつ
)
けたるわが罪を悔ゆるとき、傷負える人の傷ありと心付かぬ時ほど
悔
(
くい
)
の
甚
(
はなはだ
)
しきはあらず。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
うつかり餘計なことを言つてしまつた
悔
(
くい
)
が、
處女
(
をとめ
)
心をさいなんで居る樣子です。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
悔
常用漢字
中学
部首:⼼
9画
“悔”を含む語句
懺悔
後悔
悔恨
悔改
悔悛
悔悟
懺悔録
痛悔
改悔
懺悔状
一切我今皆懺悔
懺悔話
懴悔
色懺悔
懺悔心
悔状
慚悔
懴悔話
可悔
懺悔致
...