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おうおう
ふりがな文庫
“
往々
(
おうおう
)” の例文
ことによると人間の弱点だけを
綴
(
つづ
)
り合せたように見える作物もできるのみならず
往々
(
おうおう
)
その弱点がわざとらしく誇張される
傾
(
かたむ
)
きさえあるが
文芸と道徳
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何事がなくても、こうした興味がある上に、そこには、
往々
(
おうおう
)
にして、
滑稽
(
こっけい
)
な、悲惨な、或は物凄い光景が、展開されています。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
机上の案というものは
往々
(
おうおう
)
にしてどこかに手落ちのあるもので、この時犯人はヌキサシならぬ心理上の足跡を残してしまった。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しかしそうばかりではなくこの世には、実に不思議なことが
往々
(
おうおう
)
にしてあるものだから、今私がお前
達
(
だち
)
にも
談
(
はな
)
してきかせよう
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
彼はただ対者の欠陥を察し、これに智慧の光を注ぐことを
以
(
もっ
)
て、
畢生
(
ひっせい
)
の念願とする。それが真の仁者である。が、世には
往々
(
おうおう
)
仁者の偽物がある。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
▼ もっと見る
直感のするどい人の常として、それが
反
(
そ
)
れて猜疑化することは
往々
(
おうおう
)
にしてある。信長は表面の理由といきさつだけを以て事実とは聞かなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし日本の兵が直ちに支那の国境に臨むという事には
往々
(
おうおう
)
にして誤解を生じ易い。誤解は嫉妬を生じ、嫉妬はやがて平和を攪乱する事ともなる。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
世人
往々
(
おうおう
)
この事実を知らずして、政治の思想要用なりといえば、たちまち政治家の有様を想像して、
己
(
おの
)
れ自から政壇にのぼりて
政
(
まつりごと
)
をとるの用意し
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
女の子供などは
往々
(
おうおう
)
その
茎
(
くき
)
を
交互
(
こうご
)
に短く
折
(
お
)
り、皮で
連
(
つら
)
なったまま
珠数
(
じゅず
)
のようになし、もてあそんでいることがある。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
甚だしきは、歴史上実在の人物の
逸事
(
いつじ
)
として伝えられていることが、実は支那小説の翻案であったというような事も、
往々
(
おうおう
)
に発見されるのでございます。
中国怪奇小説集:02 開会の辞
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
たとえば常人が
往々
(
おうおう
)
口にしていた風流と野暮との差別なども、是が無かったらもう知りようが無いのであるが、それはあまりに皮肉だから
強
(
し
)
いて
説
(
と
)
かない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
細君の選択には
往々
(
おうおう
)
にして
媒介者
(
ばいかいしゃ
)
の言に一任し、しかして結婚の式を挙げたのち、始めて両者の
気象
(
きしょう
)
の合わぬことを発見し、離婚する場合がはなはだ多い。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
世間には
往々
(
おうおう
)
伯を頑固なる守旧家の如くに思っている人もあるようなれども、我輩の伝聞し、または自ら伯に接して知るところに依れば、伯は識見極めて高く
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
往々
(
おうおう
)
にあったのだが、その頃に、
其処
(
そこ
)
を
後
(
あと
)
から汽車で
通過
(
とおりすご
)
すると、そんな山の中で、人家の無い所に、わいわいいって沢山の人々が
集
(
あつま
)
っているのが、見えるのだ。
大叫喚
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
文化
(
ぶんか
)
以降北斎の円熟せる写生の筆力は
往々
(
おうおう
)
期せずして日本画古来の伝統法式より超越せんとする所あり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
往々
(
おうおう
)
悲歌
(
ひか
)
して
独
(
ひと
)
り
流涕
(
りゆうてい
)
す、
君山
(
くんざん
)
を
剗却
(
さんきやく
)
して
湘水
(
しようすい
)
平に
桂樹
(
けいじゆ
)
を
砍却
(
しやくきやく
)
して月
更
(
さら
)
に
明
(
あきらか
)
ならんを、
丈夫
(
じようふ
)
志有
(
こころざしあ
)
りて……
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
よく友人
輩
(
たち
)
は
一口
(
ひとくち
)
に「君、それは鼠だろう」と
貶
(
けな
)
してしまう、
成程
(
なるほど
)
鼠の
居
(
お
)
るべき
処
(
ところ
)
なら鼠の
所業
(
しわざ
)
かと
合点
(
がてん
)
もするが、鼠の
居
(
お
)
るべからざる
処
(
ところ
)
でも、
往々
(
おうおう
)
にして聞くのだ
頭上の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
それから急いで主人のいるほうへ走って行くのを見かけることが
往々
(
おうおう
)
あるが、かかる場合にはこの骨はわらの下にかくされてあるため他の者に奪い去られるうれいはなく
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
武芸小伝に微塵流
往々
(
おうおう
)
存するよし見えたれば、兎角が末流近世までも行なわれしがごとし。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
世間には
往々
(
おうおう
)
これを伝うるものありと見え、現に
客冬
(
かくとう
)
刊行の或る雑誌にも
掲載
(
けいさい
)
したるよし
瘠我慢の説:01 序
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
学術的な体裁をそなえた著書論文でも、
往々
(
おうおう
)
にしてそうしたものがあるのである。その意味で語られた言葉を額面通りに受取ることは、政治の場合は幼稚でかつ危険なのである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
上世
(
じょうせい
)
の歴史を見るに、たいてい
荒唐
(
こうとう
)
疑うべきもの多し。しかれども数千年の
後
(
のち
)
にありて、またこれを
如何
(
いかん
)
ともすべからざるなり。西洋太古の伝説もまた、
往々
(
おうおう
)
疑うべきものあり。
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
それは
恰
(
あだか
)
も、
彗星
(
ほうきぼし
)
が出るような具合に、
往々
(
おうおう
)
にして、見える。が、
彗星
(
ほうきぼし
)
なら、天文学者が既に何年目に見えると悟っているが、
御連中
(
ごれんちゅう
)
になると、そうはゆかない。
何日
(
いつ
)
何時
(
なんどき
)
か分らぬ。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたくし
)
は
時折
(
ときおり
)
種々
(
いろいろ
)
なことを
妄想
(
もうぞう
)
しますが、
往々
(
おうおう
)
幻想
(
まぼろし
)
を
見
(
み
)
るのです、
或人
(
あるひと
)
が
来
(
き
)
たり、また
人
(
ひと
)
の
声
(
こえ
)
を
聞
(
き
)
いたり、
音楽
(
おんがく
)
が
聞
(
きこ
)
えたり、また
林
(
はやし
)
や、
海岸
(
かいがん
)
を
散歩
(
さんぽ
)
しているように
思
(
おも
)
われる
時
(
とき
)
もあります。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しかも、かくのごとき驚くべき暗合がつづいて起こるというのは、必ずしも疑うべきことではなく、こういう場合も
往々
(
おうおう
)
にあり得るということを勘定のうちに入れておかなければならない。
世界怪談名作集:06 信号手
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
かの子 女の方も女の権利とか位置とかを
楯
(
たて
)
にして案外
浅薄
(
せんぱく
)
な利己主義な、お
芝居気
(
しばいけ
)
を満足させるための
気障
(
きざ
)
なのも
往々
(
おうおう
)
にして見受けます。むしろ一般の
風潮
(
ふうちょう
)
が多くそうであると云い
度
(
た
)
い位です。
新時代女性問答
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仕込むにも火の出るような
凄
(
すさま
)
じい稽古をつけ
往々
(
おうおう
)
弟子に
体刑
(
たいけい
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
世界の歴史にも
往々
(
おうおう
)
見ることだが、他の力を当てにして一日の
偸安
(
とうあん
)
を計るということが一番
畏
(
おそ
)
るべしだ。これは支那の歴史にはいくつもその例がある。
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
自殺者は
往々
(
おうおう
)
最も生きたい奴だと昔彼は考えたのだが、自分のような奴は
殊
(
こと
)
にその一人であったらしいと思った。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
近世ではそんな特権は無視され、
擾乱
(
じょうらん
)
のあとでは公卿も斬られ天皇さえ
流竄
(
るざん
)
の例を
往々
(
おうおう
)
にしてみてきたが、よもや死を以て迎えるようなことはあるまい。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
年齢
(
とし
)
はその頃十九だったが、
容貌
(
きりょう
)
もよし性質も至って温雅な娘でまた
箏
(
こと
)
の方にかけては
頗
(
すこぶ
)
る
天稟
(
てんりん
)
的なので、師匠の自分にも
往々
(
おうおう
)
感心する様なことがあったくらいだ。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
専門以外の部門に無識にして
無頓着
(
むとんじゃく
)
なるがため、自己研究の題目と他人教授の課業との
権衡
(
けんこう
)
を見るの明なきがため、
往々
(
おうおう
)
わが範囲以外に飛び
超
(
こ
)
えて、わが学問の有効を
作物の批評
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人身攻撃
(
じんしんこうげき
)
のごとき、あるいは
卑怯
(
ひきょう
)
なる言葉に
陥
(
おちい
)
って、自己が弁護せんとする議題をもかえって
損
(
そこな
)
われ、加うるにおのれの
人品
(
じんぴん
)
まで下劣にすることは
往々
(
おうおう
)
にして見ることである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
世の訴訟事件には
往々
(
おうおう
)
こうした秘密がある。獄を断ずる者は深く考えなければならない。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
春に山地に行くと、
往々
(
おうおう
)
オキナグサという、ちょっと注意を
惹
(
ひ
)
く草に
出逢
(
であ
)
う。全体に
白毛
(
はくもう
)
を
被
(
かぶ
)
っていて白く見え、他の草とはその外観が異っているので、おもしろく
且
(
か
)
つ珍しく感ずる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
されば吾人は既に述べしが如く北斎がその円熟期における傑作品の
往々
(
おうおう
)
にして日本らしからぬ思をなさしむるに反し、広重の作品に接すれば
直
(
ただち
)
に日本らしき純粋なる地方的感覚を与へらる。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
故に上士の常に心を関するところは、
尊卑
(
そんぴ
)
階級のことに在り。この一事においては、
往々
(
おうおう
)
事情に適せずして
有害
(
ゆうがい
)
無益
(
むえき
)
なるものあり。
誓
(
たと
)
えば藩政の改革とて、藩士一般に
倹約
(
けんやく
)
を命ずることあり。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
また一匹のモグラが左に向うて穴をうがち偶然多数の蚯蚓を掘り当てたに反し、他の一匹は右に向うて穴をうがったために不幸にもついに一匹の蚯蚓にも出あわぬというごとき場合も
往々
(
おうおう
)
あろう。
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
健全なる精神をもち、健康なる
体躯
(
たいく
)
を有する青年であって、それで成功が出来ないということがあるものか。世の中には
往々
(
おうおう
)
泣き言を述べる青年達がある。
青年の天下
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
甚だ
飄逸
(
ひょういつ
)
自在、横行
闊歩
(
かっぽ
)
を極めるもので、あまりにも専門化しすぎるために、かなり難解な文学に好意を寄せられる向きにも、
往々
(
おうおう
)
、誤解を招くものである。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
大きいというのか、複雑と称すべきか、多角的といっていいのか、とにかく、彼があたりまえなこととして運んでゆくことも、
往々
(
おうおう
)
、人には、意表外な感をもたれた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
往々
(
おうおう
)
こういう不思議の女に出逢った経験があるそうで、ある人は試みに銅盤をその胴体にかぶせて置いたところ、首はいつまでも戻ることが出来ないで、その女は遂に死んだという。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
僕は決していかなる場合においても表裏の存在は止むを得ぬといって、これを
奨励
(
しょうれい
)
せんとする意ではないが、攻撃的に表裏々々と
非難
(
ひなん
)
する中には、
往々
(
おうおう
)
にして非難に
値
(
あたい
)
せぬものがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
藩中に商業行わるれば上士もこれを
傍観
(
ぼうかん
)
するに非ず、
往々
(
おうおう
)
竊
(
ひそか
)
に資本を
卸
(
おろ
)
す者ありといえども、
如何
(
いかん
)
せん生来の教育、
算筆
(
さんひつ
)
に
疎
(
うと
)
くして理財の真情を知らざるが故に、下士に
依頼
(
いらい
)
して商法を行うも
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
各
(
おのおの
)
その名称と詠吟の法則とを異にすといへども、もしこれを
或
(
ある
)
形式の短詩として
看来
(
みきた
)
るや、全く同工異形にしてその差別
往々
(
おうおう
)
弁じがたきものあり。これ既に
柳亭種彦
(
りゅうていたねひこ
)
が『
用捨箱
(
ようしゃばこ
)
』にいふところ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
新湖
(
しんこ
)
のこととて、
未
(
ま
)
だ生々しいところが、
往々
(
おうおう
)
にして見える、船頭の指すが
儘
(
まま
)
に眺めると、その当時までは、村の西にあって、幾階段かを上ったという、村の鎮守の八幡の
社
(
やしろ
)
も、今
吾人
(
ごじん
)
の眼には
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
またこのオニユリは
往々
(
おうおう
)
圃
(
はたけ
)
に作ってあるが、なお諸処に
野生
(
やせい
)
もある。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
宗教家などにはそういう嘘を
吐
(
つ
)
く人が
往々
(
おうおう
)
ある。これは
空念仏
(
からねんぶつ
)
といって我輩の取らざるところのものである。
始業式に臨みて
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
寸前の運命が分らないのと同様に、寸後の転換だってまた
測
(
はか
)
り知れないことは
往々
(
おうおう
)
といっていい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
保守家で事なかれの小心者でも
往々
(
おうおう
)
にして野心を起して
投機
(
とうき
)
などにひっかかるのは世の中に良くある例だが、こういうてあいが慾にからみ我を失うとあくどいことをする。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
々
3画
“往”で始まる語句
往
往来
往來
往時
往生
往昔
往還
往復
往古
往反