ぢやう)” の例文
待れけるに今日は月並つきなみの評定日なれば士農工商しのうこうしやう儒者じゆしや醫師いし或は順禮じゆんれい古手買ふるてかひ追々に罷り出控へ居ける中役人がた家々のぢやう紋付たる筥挑灯はこぢやうちん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まして「えけれしや」への出入りには、かならず髪かたちを美しうして、「ろおれんぞ」のゐる方へ眼づかひをするがぢやうであつた。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それは名を喜助と云つて、三十歳ばかりになる、住所不ぢやうの男である。固より牢屋敷に呼び出されるやうな親類はないので、舟にも只一人で乘つた。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼曰ふ、終焉をはりの日未だ至らざるに汝をこゝに導くは何の運何のぢやうぞや、また道を教ふるこの者は誰ぞや 四六—四八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ないがぢやうりませぬ。お前樣まへさま其處そこまでおはこびなさりますれば、かならます。……それゆゑに、おまをすのでありまして、まあ、おきなさりまし。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「へ、あんぢやうおいでなすつたな。色男。用事は馬にあるんぢやない。此の牝馬に乗つてゐる貴様にあるんさ。」
鳥獣とりけだもの雪中せつちゆうしよくなきをしりて雪あさき国へるもあれど一ぢやうならず。雪中にこもて朝夕をなすものは人と熊と也。
どどどと云ふ響き。——ちようど其が、此廬堂の真上の高処たかに当つて居た。こんな処に道はない筈ぢやがと、今朝起きぬけに見ると、索のぢやう、赤土の大崩崖おほなぎ
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
これまで毎年ロオデンシヤイド市に来る曲馬師の組は、普通の天幕の中で興行したのだが、それはもうめられる。旅興行がぢやう興行になる。お寺のすぐ脇のマリアの辻には、鉄骨の大曲馬場が立つ。
防火栓 (新字旧仮名) / ゲオルヒ・ヒルシュフェルド(著)
すると案のぢやう、そのあくる日家へたづねて来ました。
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぢやうかや足は得洗えあらはでやまひめにほどなくぼつしたりとぞ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
きやくさまはお二階にかいなりといふともなはるゝ梯子はしご一段いちだんまた一段いちだん浮世うきよきといふことらでのぼくだりせしこともありし其時そのとき酌取しやくとをんなまへはなれず喋々てふ/\しく欵待もてなしたるがをんなもしらば彌々いよ/\面目めんぼくなきかぎりなり其頃そのころ朋友ともいまあそびにんはぢやうものなにぞのは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
祖父殿おんぢいどん工夫くふう絵図面ゑづめんひまにあかしてつてて、わしつてたが、あんぢやう燃出もえだしたで、やれ、人殺ひとごろし、と……はツはツはツ、みづはいつておよいでげた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかれども天の気候きこう不意ふいにして一ぢやうならざれば、雪頽なだれの下に身をくだくもあり。
うたがふはつみふかきことなり一日ひとひ二日ふたひ待給まちたま御返事おへんじまゐるはぢやうぞとひしにちがひはかるべししさうならばなんとせん八重やへうへもなき恩人おんじんなればなにごとなりともることしてよろこばせたしとししたなれど分別ふんべつあるひととてことばすくなゝればねがひはあるのぞみはなしやがたきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれども、可厭いやな、可忌いまはしいこゑかずにはむまい、とおもふとあんぢやう……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
抱持はうぢ不十分ふじふぶん甲斐かひなきうらめしくなりててたしとおもひしは咋日きのふ今日けふならず我々われ/\二人ふたりくとかば流石さすが運平うんぺい邪慳じやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほ一徹いつてつこゝろやはらぎらば兩家りやうけ幸福かうふくこのうへやある我々われ/\二人ふたりにありては如何いか千辛萬苦せんしんばんくするとも運平うんぺい後悔こうくわいねんまじくしてや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)