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厭
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い
ふりがな文庫
“
厭
(
い
)” の例文
と母親は少し
厭
(
い
)
やな顔をした。お父さんに内証で独息子を
悉皆
(
すっかり
)
馬鹿にしてしまう。男親が厳し過ぎると思って
庇
(
かば
)
う気があるからいけない。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
『人のことを、そないに見るのは
厭
(
い
)
や。』と、お光は自身の
身形
(
みなり
)
を見𢌞はしてゐる小池の視線を
眩
(
まぶ
)
しさうにして、
身體
(
からだ
)
を
竦
(
すく
)
めた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それは『自由詩の原理』と題する部分的の詩論であったが、或る事情から出版が
厭
(
い
)
やになって、そのまま
手許
(
てもと
)
に残しておいた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
けれどもそれほど不倫の行為と
厭
(
い
)
む人たちが、男女
相殺
(
そうさい
)
の恋愛の苦悩を述べ、歎き訴えるものには、同情を寄せるのはどうしたものだろう。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
で、實際にあたつては、彼が私に話し聞かせたやうに職業としてのつらさ、
厭
(
い
)
やさを同時に味ははなければならないのである。
探偵小説の魅力
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
▼ もっと見る
このあいだ、一同は
穢
(
けがれ
)
を
厭
(
い
)
み、口をきよめ、
念誦
(
ねんず
)
一心、一歩も忠義堂を出ることはない。そこに寄りつどったきりなのである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでも性来、徒党をくむことを甚しく
厭
(
い
)
み嫌ったために、博徒ギャングの群にも共産党にも身を投ずることがなかった。
安吾巷談:06 東京ジャングル探検
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
恩ある人は二年目に亡せて今の
主
(
あるじ
)
も
内儀様
(
かみさま
)
も息子の半次も気に喰はぬ者のみなれど、此処を死場と定めたるなれば
厭
(
い
)
やとて更に
何方
(
いづかた
)
に行くべき
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
足を近しくまいりますが音羽は誠に
厭
(
い
)
やで、何うも虫が好きません、
傍
(
そば
)
へ来られても
慄
(
ぞ
)
っと致しまするから振ります。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
厭
(
い
)
やン。いやだわ。初めて来たお部屋に、一人になるの嫌い。ここにいて、ねえ! お茶なんか飲みたくないわよ。お婆さんじゃないんだもの……」
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
へどを
吐
(
は
)
いたり
下痢
(
げり
)
をしたりする不風流な
往生
(
わうじやう
)
は
厭
(
い
)
やである。シヨウペンハウエルがコレラを
恐
(
こは
)
がつて、逃げて歩いたことを読んだ時は、甚だ彼に同情した。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いとものうくて、日ごろ親しき友に
文
(
ふみ
)
書
(
か
)
かんも
厭
(
い
)
や、行田へ行かんも
厭
(
いと
)
ふにはあらねどまたものうく、かくて絵もかけず詩も出でず、この十日は一人過ぎぬ。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
そして自分の好きな女と一緒になりたいのだ。この
厭
(
い
)
やな女と好きな女と、
何
(
いず
)
れに決するかという問題になった時、
厭
(
い
)
やな女を
遠去
(
とおざ
)
けて、好きな女を貰ってしまった。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
べりべりッという
厭
(
い
)
やな音がして、学士の洋服が引裂けると、右腕が急に自由になった。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
Prosper
(
プロスペル
)
Mérimée
(
メリメヱ
)
と云ふ文學者は決して人道其のものを
厭
(
い
)
み輕んずるのではないが、然し自分だけは苦しみ惱む人から隔離して居られるやうに富裕でありたいと云つたし
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
露西亜にこの問題のあるのは、同国が欧羅巴における最後の立憲国として、日露戦争後民間の要求に迫られて
厭
(
い
)
やいやながら頗る専制的なる憲法を発布したという事情に徴して明白であろう。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
紅梅の京を離れて住むは
厭
(
い
)
や
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
「女が何うしたんですよ。
真正
(
ほんとう
)
に
厭
(
い
)
やな子ね。お祖父さんが、この子は男だから豪いなんて仰有るものだから、好い気になっているんだわ」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「處が、先生は何時も
厭
(
い
)
やさうな顏をしてお教へになります。そして先生のお教へになることはちつとも身に
染
(
し
)
みません。」
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
何
(
なに
)
が
樂
(
たの
)
しみに
轅棒
(
かぢぼう
)
をにぎつて、
何
(
なに
)
が
望
(
のぞ
)
みに
牛馬
(
うしうま
)
の
眞似
(
まね
)
をする、
錢
(
ぜに
)
を
貰
(
もら
)
へたら
嬉
(
うれ
)
しいか、
酒
(
さけ
)
が
呑
(
の
)
まれたら
愉快
(
ゆくわい
)
なか、
考
(
かんが
)
へれば
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
悉皆
(
しつかい
)
厭
(
い
)
やで
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
およそ、人間が住み、人間が営む世間に、伯耆どのが
厭
(
い
)
み嫌う人間の
醜
(
しゅう
)
なるものが、まったく、ここにはないなどという別天地があるわけはない。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卓一はその陰惨な獣臭を
厭
(
い
)
み、蛇に似た執念深さを憎むのだつた。然し木村重吉は執拗にその親しみを寄せつづけた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それが汽動車でゝもあつたら
厭
(
い
)
やなことだと、小池は切符を車掌に渡し、プラツトフオームから、線路を越えて、
直
(
す
)
ぐ
其處
(
そこ
)
に見える街道の方へ歩いた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼女の心に浮んだものは、いつものような退屈な部屋ではなく、それよりももっと悪い、
厭
(
い
)
やな陰鬱なものが隠れている、不快な気味のわるい部屋であった。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
貴方
(
あなた
)
どうぞお
嵌
(
は
)
めなすって、そうして貴方の指環を
私
(
わたくし
)
にくださいまし、あなた
若
(
も
)
し嵌めるのがお
厭
(
い
)
やなら
蔵
(
しま
)
って置いてくださいまし、私は何も知りませんが
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
苦しい
破目
(
はめ
)
もあるというのは、一人の六十あまりになるおばアさんの人があって、このおばアさんの考えでは自分の身内の或る人を嫁に入れようとする。が銀行員の婿さんはその女は
厭
(
い
)
やなのだ。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
われ遺書を
厭
(
い
)
み墳墓をにくむ。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ですが、さう申すからには、つらい、
厭
(
い
)
やな仕事だと思ふ一方に、やつぱりこの仕事を捨ててしまふ事の出來ないやうな、ちよつと
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれない。
探偵小説の魅力
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
己れはお前が居なくなつたら少しも面白い事は無くなつてしまふのだからそんな
厭
(
い
)
やな
戯言
(
じようだん
)
は
廃
(
よ
)
しにしておくれ、ゑゑつまらない事を言ふ人だと
頭
(
かしら
)
をふるに
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『いや、あれは
厭
(
い
)
やだ。日が暮れるまで待つても汽車に乘らう。』と、小池は横の方の茶店へ入つて行つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「でも辛抱が足らないわ。
二月
(
ふたつき
)
や
三月
(
みつき
)
で直ぐ
厭
(
い
)
やになったんじゃ何処へ行っても出世は出来ませんよ」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼の側に坐ることを
厭
(
い
)
む大名もあるし、大廊下ですれちがって、
袂
(
たもと
)
の触れぬようにして人は歩いた。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
外
(
ほか
)
に出来る
目途
(
あて
)
もないけれども、仲の町の
井桁伊勢屋
(
いげたいせや
)
から来るお侍の、
青髭
(
あおひげ
)
の生えた色の白い
丈
(
せい
)
の高いお客は、来て/\来抜くが、わちきは
厭
(
い
)
やーでなりまへんから
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
船員たちが二人の女を見る時には、すでに優しさを失い、最も
厭
(
い
)
まわしい物を見るような憎みきった目附きになり易いのは、愛慾が野獣のものになりかけている証拠であった。
明治開化 安吾捕物:07 その六 血を見る真珠
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
何分
(
なんぷん
)
か
經
(
た
)
つた。
突然
(
とつぜん
)
一人
(
ひとり
)
の
兵士
(
へいし
)
が
私
(
わたし
)
の
體
(
からだ
)
に
左
(
ひだり
)
から
倒
(
たふ
)
れかかつた。
私
(
わたし
)
ははつとして
眼
(
め
)
を
開
(
ひら
)
いた。その
瞬間
(
しゆんかん
)
私
(
わたし
)
の
左
(
ひだり
)
の
頬
(
ほほ
)
は
何
(
なに
)
かに
厭
(
い
)
やと
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
突
(
つ
)
き
上
(
あ
)
げられた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
夫
(
それ
)
ではお
前
(
まへ
)
加减
(
かげん
)
でも
惡
(
わ
)
るいか、まあ
何
(
ど
)
うしたと
言
(
い
)
ふ
譯
(
わけ
)
、
此處
(
こゝ
)
まで
挽
(
ひ
)
いて
來
(
き
)
て
厭
(
い
)
やに
成
(
な
)
つたでは
濟
(
す
)
むまいがねと
聲
(
こゑ
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
車夫
(
しやふ
)
を
叱
(
しか
)
れば、
御免
(
ごめん
)
なさいまし
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と孫右衞門の妻が是から次の間へ連れて行って
種々
(
いろ/\
)
娘に迫るから義理にも
厭
(
い
)
やとは言われません。
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かきみだした最も
厭
(
い
)
むべき時代には、半面にまた、楠氏一族のような、また諸国の尊王武族のような、真の
日本武士
(
やまともののふ
)
があらわれたが——今は——今の武門は——また武士道は?
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そんなことを
仰有
(
おっしゃ
)
って、芳夫さん、あなたはもう
厭
(
い
)
やになったんじゃなくて?」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私の女はいたわりの心の深い女であるから、よるべないアキの長々の滞在にも表面にさしたる不快も
厭
(
い
)
やがらせも見せなかった。然し、その復讐は
執拗
(
しつよう
)
だった。アキの面前で私に特別たわむれた。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「おい
小泉
(
こいづみ
)
、
厭
(
い
)
やに
蒸
(
む
)
すぢやないか‥‥」と、
私
(
わたし
)
の
右隣
(
みぎどなり
)
に
歩
(
ある
)
いてゐる、これも一
年
(
ねん
)
志願兵
(
しぐわんへい
)
の
河野
(
かうの
)
が
囁
(
ささや
)
いた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
その
代
(
かは
)
り
吝
(
しは
)
き
事
(
こと
)
も二とは
下
(
さが
)
らねど、よき
事
(
こと
)
には
大旦那
(
おほだんな
)
が
甘
(
あま
)
い
方
(
はう
)
ゆゑ、
少
(
すこ
)
しのほまちは
無
(
な
)
き
事
(
こと
)
も
有
(
あ
)
るまじ、
厭
(
い
)
やに
成
(
な
)
つたら
私
(
わたし
)
の
所
(
とこ
)
まで
端書
(
はがき
)
一
枚
(
まい
)
、こまかき
事
(
こと
)
は
入
(
い
)
らず
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お
厭
(
い
)
やなら仕方がありませんが、嬢様
何
(
なん
)
とか
仰
(
おっ
)
しゃいな、
何故
(
なぜ
)
此方
(
こっち
)
へお尻を向けていらっしゃいます、
宅
(
うち
)
でばかり
斯
(
こ
)
う云おう、あゝ云おうと仰しゃって本当に
影弁慶
(
かげべんけい
)
ですよ
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この日、十日は
厭
(
い
)
み日(悪日)なればとて、洛中攻めは翌日にのばす——
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一字書き、一行進めては氣に入らなくなり、不滿になり、
厭
(
い
)
やになつたりして、私は幾度か原稿紙を引き裂き、幾度か書き出しの稿を改めずにはゐられなかつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
その代り
吝
(
しは
)
き事も二とは
下
(
さが
)
らねど、よき事には
大旦那
(
おほだんな
)
が甘い
方
(
はう
)
ゆゑ、少しのほまちは無き事も有るまじ、
厭
(
い
)
やに成つたら私の
所
(
とこ
)
まで
端書
(
はがき
)
一枚、こまかき事は入らず
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
い「誠に申しにくいけれども、どうか
御膳
(
ごぜん
)
だけ召上ってください、
若
(
も
)
しお
厭
(
い
)
やならばお
母様
(
っかさま
)
はお加減が悪くていらっしゃるから、お
肴
(
さかな
)
を
除
(
の
)
けて置いて、あのお見舞に上げたいものだねえ」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
我が事として我慢のなるべきや、それよりは美登利といふ名を聞くごとに恐ろしく、又あの事を言ひ出すかと胸の中もやくやして、何とも言はれぬ
厭
(
い
)
やな気持なり
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
從つてあんまり露骨に奇々怪々だつたり、ふんだんに血潮やピストルが飛び出したり、
厭
(
い
)
やに眼まぐるしく探偵や犯人の隱現出沒する探偵小説はほんとの面白味には乏しい。
探偵小説の魅力
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
何うも死んだ父様のお
位牌
(
いへい
)
へ対して済みやしねえから、おえいに
私
(
わし
)
が気に入らねえで夫婦に成って居るのが
厭
(
い
)
やならば厭やで構いやせんから、
家内
(
うちわ
)
は切れても表向だけは夫婦と言わなければ
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
“厭”の意味
《形容動詞》
(いや)拒否したいと思うこと。不愉快だと思うこと。
(出典:Wiktionary)
厭
漢検準1級
部首:⼚
14画
“厭”を含む語句
禁厭
可厭
厭々
厭悪
厭世
嫌厭
御厭
厭勝
厭気
倦厭
厭離
厭世家
厭忌
見厭
厭倦
厭惡
厭味
厭世的
厭世観
厭応
...