兩人ふたり)” の例文
新字:両人
主人も行くがいいと勸め、我々兩人ふたりもたつてと言つたのだが、わたしはそれよりも自宅うちで寢て居る方がいいとか言つてつひに行かなかつた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
つみおとし入んと計りくらき夜に昌次郎と兩人ふたりにて男女をころし悴娘の着類をきせ兩人の首をきつて川へ流せしおもむき最早兩人より白状はくじやうに及びしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
間も無く兩人ふたり階下したに下りた。階下はまた非常に薄暗い。二階から下りて來ると、恰で穴の中へでも入ツたやうな心地がする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
鋭くしやんとした酒井と、重くかゞみ加減になつてる行田とはいつも兩人ふたりながら膝前をきちりと合はせて稽古の座敷の片隅に並んで座つてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
マーキューシオーのたましひがつい頭上とうじゃう立迷たちまようて同伴者どうばんじゃもとめてゐる、足下おぬしか、おれか、兩人ふたりながらか、同伴どうばんをせねばならぬぞ。
大佐たいさこゝろでは、吾等われら兩人ふたり意外いぐわい椿事ちんじめに、此樣こん孤島はなれじま漂着へうちやくして、これからある年月ねんげつあひだぶにはねなきかごとりむなしく故國ここくそらをばながめてくらすやうな運命うんめいになつたのをば
が、其上そのうへ修業しうげふをさせるとなると、月謝げつしや小遣こづかひ其他そのた宗助そうすけはう擔任たんにんしなければ義理ぎりわるい。ところそれ家計上かけいじやう宗助そうすけえるところでなかつた。月々つき/″\收支しうし事細ことこまかに計算けいさんして兩人ふたり
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まへさまお一人ひとりのおわづらひはお兩人ふたりのおなやみと婢女共をんなどもわらはれてうれしときしが今更いまさらおもへばことさらにはせしかれたものならず此頃このごろしは錦野にしきの玄關げんくわんさきうつくしくよそほふたくらべてれよりことばけられねど無言むごん行過ゆきすぎるとは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兩人ふたりの病人を殘して夫婦とも何處へ行つたのだらうと一度昇りかけた階子段はしごだんから降りて子供の寢てをるへやのぞいて見ると
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
そして由三が家を探しに來たことをいふと、綾さんと兩人ふたりで、那處あすこは何うの此處は何うと、恰で親族の者が引越して來るとでもいふやうな騒をする。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
呼び出し對決申付る其節閉口へいこう致すな依て吟味中入牢じゆらう申付るとあとの一聲高く申渡さるゝに兩人ふたりの同心立懸たちかゝり長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同伴者どうばんしゃ連立つれだたうとて、同門跣足どうもんせんそくある御坊ごばうたづねて、まちある病家びゃうかをお見舞みまやってゐるのにうたところ、まち檢疫けんえき役人衆やくにんしゅう兩人ふたりながら時疫じえきうちにゐたものぢゃとうたがはれて
かくしづんでときには、にぎはしき光景くわうけいにてもながめなば、幾分いくぶんこゝろなぐさむるよすがともならんとかんがへたので、わたくし兩人ふたり引連ひきつれて、此時このときばんにぎはしくえた船首せんしゆかたうつした。
しばらくして、御米およね菓子皿くわしざら茶盆ちやぼん兩手りやうてつて、またた。藤蔓ふぢづるいたおほきな急須きふすから、にもあたまにもこたへない番茶ばんちやを、湯呑程ゆのみほどおほきな茶碗ちやわんいで、兩人ふたりまへいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みのるはその兩人ふたりが一人合點の話を打突ぶつつけ合つてゐるのを聞いてゐると面白かつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
食器類その他の不潔だといふこと、何だかだと新しくもないことを言ひ合つてゐたが、それにも倦んで、やがては兩人ふたりとも默り込んでしまつた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
其處に彼は、よぼよぼした飯焚めしたきの婆さんと兩人ふたりきりで、淋しいとも氣味が惡いとも思はずに住ツてゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
悦び合中遠山影とほやまかげに差のぼる月の明りにすかし見て然すれば此等の者共はと男女の死骸に當惑たうわくする色を見てとり九郎兵衞は其方そのはう兩人ふたりかねてよりのぞみの如く江戸へゆき充分しつかり金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
てんいまやかの朝日島あさひたうくるしめる櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ誠忠せいちうをばつひ見捨みすてなかつたかと、兩人ふたり不測そゞろ感涙かんるいながるゝやうおぼえて、わたくし垂頭うつむき、武村兵曹たけむらへいそうかほ横向よこむけると、此時このとき吾等われらかたはら
唯顏を見て心をさわがせてゐたばかりで無い、何時か口をき合ふことになツて、風早は其の少女が母と兩人ふたりで市の場末に住ツてゐる不幸な娘であることも知ツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
兩人ふたりは顏を見合せたが、それでも水神樣にゆくよりその方が多少心を慰められる氣がしたので、若者に禮を言ひ捨てゝ急いでその森の中の枯草の野へ向けて足を速めた。
「ま、耐らない、のむべゑが兩人ふたりになられたんじや、私が遣切やりきれないよ。」とお房は無遠慮ぶえんりよにかツけなす。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
輕井澤での不圖した言葉がもとになつて思ひも寄らぬ處を兩人ふたりして歩いて來たのだ。時間から云へば僅かだが、何だか遠く幾山河を越えて來た樣なおもひが、盃の重なるにつれて湧いて來た。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
晝飯を待つて兩人ふたりの小さな娘はもうちやんと其處に來て坐つてゐる。